「いってらっしゃ~い♪」
「いってきます!」
2週間も経てば最早日常な朝のやり取り。
しかし真からすれば決死の覚悟を込めた挨拶だった。
「へいへい。」
気だるげにクラレントも手を振る。
素直にいってきますを言うのが恥ずかしいのだろうと真は思う。
「しっかりね。」
「...ええ。無駄にはしません。」
真剣な面持ちでリーゼも頷く。
出発の時は来た。
必ずここに戻ってくる。
決意を握り締め、真たちは研究所を後にする。
――――――――――――――――――――――――――――――
□◼️管理局地上本部付近□◼️
「ついに来ちゃったね...。」
「ええ...。」
そびえ立つ地上本部が見える程度の位置で、目標の場所を再度確認する。
近すぎるとその時点で捕まりそうだし。
ちなみにここまでは電車移動だった。
社会科見学に行く学生か!と頭の中でツッコミを入れてしまった。
ちなみにりーちゃんは変装でサングラスに帽子だった為、なんかものすごく怪しかった。
ヒヤヒヤした。持ち前のお嬢様オーラで有名人感を出してもらって何とかなったけど。
そんなことより、作戦のおさらいである。
目標は石動中将の捕縛...なんだけど。
証拠になる物があればそれでいいらしい。
計画書とか、コントローラーとか。
石動中将本人と会わないとどのみち証拠も見つからないだろうけど。
でも偉い人なので、部屋の位置とかは
りーちゃんが把握しているみたい。
問題はどうその部屋に突入するかだけど。
作戦は簡単。
私が倉庫で暴れる。→その間にりーちゃんが突入する。以上。
...作戦?
「人手不足なのですから、仕方ないでしょう。」
「あ、うん...。」
「ここは陸の本拠地。言ってしまえばエース級の魔導師はほとんどいません。なので、まーちゃんでも逃げるだけなら問題ありません。」
「ほとんどって...。」
「ランスター執務官とか、いないことを祈って下さい。」
うへぇ...。いたら困るなんてもんじゃないよ。サインは欲しいけど。
「上手く撒いて、合流して下さい。通信は出来ますね?」
『そんくらいわけねぇ。』
わっ!ちゃんと外にも聞こえてる?
その状態でも喋れるんだ...。
「...腹話術みたいですね。」
「確かに...。」
お腹から声聞こえるし。
「...こほん。ではまーちゃん。また後で会いましょう。」
「...うん。また後で。」
握手し、離す。
りーちゃんがデバイスを取り出す。
その時。
「待ちなさい。」
雷が迸る。振り返ると、そこにはバリアジャケットに身を包んだフェイトさんがいた。
「フェイトさん...!?」
「真。それにリーゼ、だよね。」
「...お久しぶりです、ハラオウン執務官。」
フェイトさんは私たちを交互に見て、意を決したように話始める。
「何をする気なの。リーゼ、貴女は手配されている。見逃すわけにはいきません。」
「ま、待ってフェイトさん...!りーちゃんは!」
「真...いえ、星宮真さん。手配犯と行動を共にするということは、貴女も同様に犯罪者となること。分かっていますか?」
「それは...分かって、ます...。けど!」
「ヴィヴィオから聞いたの。」
「!?」
ヴィヴィオちゃん...?
「貴女は知らなかったようだけど。あの子はなのはの娘であり、私の娘でもある。...ナカジマジムに貴女が通っていた話は聞いていた。勿論ヴィヴィオは、新しい友達が増えたことを報告してくれただけ。」
フェイトさんの娘!?
あれ?そんな情報...あったっけ?
「真、知らなかったのですか...?」
「う、うん...。」
りーちゃんは少し呆れたようにため息を吐く。
「ヴィヴィオから昨日、貴女が深刻な様子でフーカと話していたと聞いた。だから何かあると思ったの。リーゼと幼なじみだったことも調べて分かった。」
「流石ですね...。」
やっぱり、迂闊だった。
なのはさんの娘だと分かった時点で逃げ出すべきだった。
「止まって、リーゼ。貴女のしていることの意味も、私たちには分かっている。後は私たちが正しいやり方でやる。これ以上犠牲になる必要はないの。」
「っ...。貴女方には隠せませんか。しかし、止まるわけにはいきません。正攻法では手遅れになる。それに海から陸に捜査などすれば、角が立つどころではありません。」
フェイトさんたちに動いてもらうのは、フェイトさんたちにとってリスクがあり過ぎる。
この人たちがいなくなったら管理局の力も正義も、失くなってしまうだろう。
だから私たちでやらなくちゃいけない。
りーちゃんから聞かされた話だ。
「...なのはさんは軟禁されているのでしょう?」
「え!?」
「私と親しい中で、最も強い。それに自分を犠牲にしても人を助けるお人好しでもある。いつ犯罪者の教え子の幇助に出るか分かりませんから。」
仕事が忙しくて会えないってそういう...。
「...そうだよ。なのははずっと局内に軟禁、大好きな娘と会うこともできず、それでもずっとリーゼを心配している。これ以上なのはを悲しませないで。」
フェイトさんは武器を構え、私たちに突き付ける。
私の憧れ、私の夢。
それが今障害となって立ち塞がっている。
戦いたくない、勝てるわけがない。
それでも。
だとしても。
「今日で終わりです。私たちが終わらせて、全てを取り返します。その為なら。」
「フェイトさんとだって、私たちは戦える...!」
『さっさと始めるぞマスター!』
拳を握り締め、気合いを入れて叫ぶ。
「武装ッ!」
「セットアップ。スターティアーズ!」
刹那にして、私もりーちゃんも戦闘装束を身に纏う。
たったの二週間。しかもその力を試す相手がフェイトさんだなんて。
でも、負けるわけにはいかない。
私たちで全部終わらせるんだ!
「っ...。確保します。」
フェイトさんの表情が険しくなる。
「いくよ!」
勢いよく飛び出そうとした瞬間。
ドォンッ!!
魔力砲がフェイトさん目掛けて炸裂した。
「な、なな...!?」
何事!?今度は誰!?
「貴女たちは...!」
フェイトさんは障壁で防いで無事みたいだ。
...というか、この状況。何だか見覚えがあるんだけど。
「ここで会ったが百年目!管理局の閃光もまとめて、ぶちまけタイムですよ!」
「...やっと出番。」
あの緑とピンク!イズナちゃんとミラちゃん!?
「何でここに!?」
「お気楽な化け物です。私たちの狙いはクラレント。諦めたつもりはないのです。」
「ずっと、見張ってた。」
嘘!?諦めたと思ってたのに...。
「例の真を狙う魔導師ですか。面倒なタイミングで出てきたものです。」
「獲物が1、ムカつく奴が1、どうでもいいのが1。」
「...まとめて、やる。」
ミラちゃんが無差別に魔力砲を撃ち放つ。
私たちは飛び退いて回避。
フェイトさんとりーちゃんが空のミラちゃんに接近していく。
「手っ取り早く頂くですよ!」
チェーンソーを吹かせながらイズナちゃんが私の前に飛び降りてくる。
立ち合うのはこれで3回目。
「イズナちゃん。何でこんなことするの。何でレンちゃんを狙うの。前に言ってた、失敗作って何なの?」
「気安く呼ぶな化け物!お前に教えてやる筋合いはないのです!」
チェーンソーを轟かせながら突っ込んで来る。
前まではどうすればいいのか分からなかった。だけど今は。
「...。」
左手を伸ばし、右腕は曲げ拳を軽く握る。
この構えを取ると不思議と落ち着いてくる。
冷静に相手を見る。
衝動に任せた突進。
...大丈夫、見えた。
「くたばれー!!」
「せいッ!」
身を翻し突進を躱す。その勢いのまま右足で背中を蹴り飛ばした。
「なっ!?」
イズナちゃんは勢いのまま吹っ飛び、地面を磨り減らす。
「ぐっ...!お前ぇ...!」
イズナちゃんを見据え、構え直す。
「私が勝ったら、お話聞かせてくれる?」
躊躇いはいらない。殴った先に、未来はあるはずだ。
――――――――――――――――――――――――――――――
「めんどくさい...。」
魔力砲を放ち牽制するが、二人の空戦魔導師は華麗に回避を続ける。
ミラの戦闘方法は基本的に、イズナが前衛に出ることを前提としている。
コンビで動いてこその大火力。
単独で機動力のある相手を担当するのは不得手なのだ。
作戦としては、イズナが速攻でターゲットを確保し撤退するはずだった。
しかし遠目から見る限り、イズナはあの化け物に追い詰められているようだ。
暴走さえしなければ雑魚だと侮っていた。
やはり『本物』、ということだろうか。
表情は変わらないが、内心苦い思いをミラは抱いていた。
『力』を解放すべきか、撤退するべきか。
考えていたミラの視界に奇妙な物が映る。
「ロボット?」
複数の人型ロボットのような物がこちらに飛行してくる。
「まさかあれは...!」
「例の新型ドローン...!」
空戦魔導師二人はどうやら知っている物らしい。
管理局付近での戦闘だ、管理局のドローンなのだろう。
「邪魔。」
ドローンに向けて魔力砲を放つ。
並みの機械ではこれで跡形もなくなるはずだ。
並みの機械ならば。
『ー。』
ドローンたちに傷は付かなかった。
着弾する直前に魔力が霧散したのだ。
「AMF...!」
フェイトがバルディッシュをザンバーモードに切り替え、そのまま斬りかかる。
『ー。』
ドローンは金属のその腕で刃を受け止めてしまう。
「!?」
咄嗟に蹴り飛ばし、フェイトは距離を取る。
「AMFでも、魔力で強化した斬撃は無効化出来ないはず...!スカリエッティの物より強化されているの!?」
ドローンは散開し、真とイズナにも迫る。
「何ですかこのヘンテコは!?」
「これがりーちゃんが言ってた...!」
イズナがチェーンソーを躊躇いなく叩き付ける。
金属を削る音が辺りに響く。
「無駄にガッチガチです...!」
「この...!」
真が右拳を叩き付け、ドローンは派手に吹っ飛ぶ。
「大丈夫!?イズナちゃん!」
「敵の心配なんてお前バカですか!?」
『こいつとは気が合いそうだな。バカかお前。』
戦況を冷静に観察していたリーゼが真に念話を行う。
『真。この混乱に乗じてハラオウン執務官と魔導師にドローンを押し付けます。合図をしたら走って下さい。』
『え!?でもフェイトさんたちが...。』
『大丈夫です。ハラオウン執務官であればこの数は対処できるはず。このままでは突入すらできません。』
『...分かった。』
リーゼが魔法陣を展開し、拳銃を構える。
「スタンショット!」
放つと同時に凄まじい閃光が辺りを包む。
「!?」
フェイトとイズナ、ミラは思わず目を庇ってしまう。
その隙に真は駆け出し、リーゼの元に飛び上がる。
「りーちゃん!」
「真!」
飛行するリーゼの手を掴み戦域から離脱。
そのまま管理局本部に向かっていく。
「真、リーゼ...!」
「ごめんなさい...。」
引き留めるフェイトを残し、真とリーゼは目的地へと向かうのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――
◼️□管理局本部◼️□
「おかしい。このタイミングでドローンを使って来たのも、こちらに警備がないのも。まるで誘い込まれているような...。」
「誘われてる?」
確かに、ドローンが出てきたのは私たちに気づいていたからだよね?
なら管理局に近づけば近づく程、敵の攻撃は激しくなりそうなのに。
何だか静かなような...。
人はいる。だけどいつも通りな感じだ。
警戒もされていないし、このまま部屋まで行けるのかな?
「真。そう簡単にはいかないようです。」
「え?」
振り返るとそこには、身の丈程にも大きな刀を担いだクレアさんの姿があった。
「リーゼ。中将がお前をお待ちだ。」
「待っているですって...?」
「お前を自らの手で始末したいそうだ。」
クレアさんが冷たく言い放つ。
「...貴女は露払いということですか、先輩。」
「中将と立ち合う以上、お前は助からない。私と戦う以上、そいつも助からない。終わりだ。」
りーちゃんを庇うように私は前に出る。
「終わらせません。りーちゃんも、あなたも。」
「真!貴女一人では先輩には...!」
「大丈夫。」
いつも見たいに手を握って、微笑みかける。
「りーちゃんの分まで想いを伝えてみせる。だから、ここは私に任せて。
大丈夫!必ず追い付くから。
ちょーっと待っててね!」
「真...。」
りーちゃんから手を離し、クレアさんに向き直る。
「っ...。必ず、来て下さい。待ってますから!」
りーちゃんが飛び立つ。
背中がどんどん小さくなる。
大丈夫、私もりーちゃんも負けない。絶対に負けられないんだ。
「工場で一度会ったな。お前はリーゼの何だ。」
「友達です。何より大切な、親友です。」
「...そうか。」
クレアさんは少し目を閉じ、やがて頷いて鋭くこちらを睨んだ。
「それはとても残念だ。」
一瞬にしてクレアさんが私の目の前に接近する。
速すぎる!あんなに重そうなのに...!
刀を横凪ぎに振り抜く。
私は何とか反応し飛び退くが、再度近づかれ何度も必殺の一撃が迫ってきた。
「身のこなしはなかなか!だが...!」
気づけば壁際に追い詰められていた。
大上段からの一振りが私に迫る。
ガギンッ!!
「何だと...!?」
金属と魔力がぶつかり合う、激しくけたたましい音が響く。
長大な対艦刀を、私は左腕のガントレットで受け止めていた。
回避はあまり得意じゃない。ヴィヴィオちゃんみたいに相手の動きを見切る目も、頭もないし。フーカ師匠とアインハルトさんみたいな技巧もない。
私にあるのは丈夫な体と、根性。
そして。
「覇王!断ッ空ッ拳ッ!!!」
「がはっ...!?」
全霊の一撃がクレアさんを穿つ。
足の踏ん張りを拳に伝え、文字通り空を断つ一撃と化す。
二週間で叩き込まれたのは、基本の型と、タフネスを活かした戦い方。
教えられた技はこの覇王の拳のみ。
耐えて断空拳を決める。
それだけを真っ直ぐに。勝つまでやるんだ。
そうですよね、師匠!
「っ...。油断したのか、私が...。」
気を抜かず、立ち上がろうとするクレアさんに向き直り、覇王流の構えを取る。
「ナカジマジム所属(仮)!覇王流、星宮真!あなたをぶん殴ってでも、あなたを助けますッ!!」
第16話『対峙』
「決まった!覇王断空拳!」
「まあまあじゃな。」
「ええ、及第点ですね。」
「私が受けたフーちゃんの断空拳は、すごくよかったと思うよ。」
「何か、言い方が変態みたいじゃ...。」
「えぇ!?」ガーン
「次回もリリカルマジカル、頑張ります!なのはママ、大丈夫かなぁ... ?」