魔法少女リリカルなのはS.G.   作:月想

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こんなん管理局めちゃくちゃやんけ!どうすんだこれ←


第18話『Starry Wish』

「助けに来たよ、リーゼ。」

「なのは、さん...。」

 

白き星が降り立つ。

リーゼを庇うようにエルダー・ガーディアンに立ち塞がる。

 

「何故来てしまったのですか...!犯罪者を助けたりしたら、なのはさんの立場が!」

「リーゼ。」

 

動揺するリーゼに優しく語りかける。

 

「犯罪者じゃない、私の大切な教え子だよ。約束したよね、助けに行くって。私は立場が欲しくて魔法を手にしたんじゃない。困っている誰かに手を伸ばす為、その為の力。

...リーゼはすぐ一人で無理しちゃうから。帰ったら、ちょっときつめのお説教だからね。」

 

軽くウィンクしてみせるなのは。

危機的状況だと言うのに、その余裕はくぐってきた修羅場の数故か。

それとも不屈の魂をその身に宿している故か。

 

『高町一等空尉。管理局の規定に則り待機を命じたはず。教え子可愛さに賊と成り果てたか。』

 

ガーディアンより石動の音声が流れる。

 

「賊はあなたの方です、石動中将。

友達が無茶を通して私をここに行かせてくれた。後輩が証拠を集め、あなたの所業を突き止めた。あなたの負けです、投降して下さい。」

『笑止千万。狸娘の浅知恵など恐るるに足らず。貴様諸とも賊を始末し、エースの反乱として公表。打倒したガーディアンの性能は世界に認められ、儂の計画は遂行される。すべて予定通りよ。』

 

返答を予想していたのか、なのはは淀みなく杖を構え宣言する。

 

「このドローンを破壊して、リーゼを守って、あなたを拘束する。それで全て終わりにします。行くよ、レイジングハート。」

『了解しました、マスター。』

 

エルダー・ガーディアンが標的をなのはに定め、実弾兵器の弾丸を炸裂させる。

対してなのはは障壁を展開。

 

『マスター、魔力阻害を検知。出力が通常の70%となっています。』

「っ...。武器にも応用してるんだ。」

 

背後のリーゼをチラリと見てなのはは上空に飛ぶ。

弾丸も彼女を追い、射線上からリーゼが離れる。

障壁の展開を止め、空中軌道による回避に移る。

まるで鳥のように軽快な動きにガーディアンは翻弄されているようだ。

しかし避けてばかりでは状況は変わらない。回避の合間に拘束しようとバインドを放つも、触れた途端魔力が霧散してしまう。

速度重視の魔力弾も牽制にすらならない。

 

「ダメ。拘束も出来ない。高出力の魔力を浴びせ続けるしかないみたい。」

『先程の一撃も軽微な損傷を与えるのみでした。』

 

なのはの額に冷や汗が浮かぶ。

想像以上の魔法対策。

前のガジェット・ドローンより遥かに厄介だ。

空中軌道を続けながら思考を張り巡らす。

その最中。

エルダー・ガーディアンの弾倉が放たれることなく爆発した。

 

「効いた...!」

「リーゼ?」

 

リーゼのデバイスより放たれた2つの弾丸。

それはAMFを『打ち消す』ように機体を貫いていた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

◼️□前日・バレンシュタイン研究所◼️□

 

「完成出来たのはそれだけ。二週間で新しく発明したんだから、数に関しては大目に見てね。」

 

財布サイズのカートリッジケースが手渡される。

 

「使えるのですか?」

「たぶんね。実験も出来てないから保証はしな...でもそうね。この天才の天才的理論で作ったんだもの。きっと効き目バッチリよ!」

 

どこからその自信が出てくるのだろうか。

呆れつつケースの中身を確認する。

見た目は通常のカートリッジシステムの物だ。

問題はその中身。

 

「アンチAMF...。」

 

魔力阻害領域。それを『中和』し『無効化』する為の弾丸。

本当に作ってしまうとは。

これが常態化したら石動の野望など水泡に帰す。

凄まじい発明なのだが。

 

「設計図は私の頭の中にだけ。戦争の道具にされても困るもの。」

「...助かります。」

 

これが新しい火種になっても困る。

その点この変わった博士は信用できる。

少なくとも管理局に靡くタイプではない。

 

「A.AMF...Aが重なってていまいちなネーミングだわ。そうね...ボイド。VAMF弾ってところかしら。」

「VAMF...。」

「ヴィクトリーのV!なんちゃって♪」

「はぁ...。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「認めざるを得ませんね、あの天才。」

 

弾丸は後9つ。

弾倉を破壊すれば誘爆によるダメージを狙えると思ったが、致命傷には成り得ない。

問題は2つ。

AMFがなくともガーディアンの装甲は強固だ。

生半可な火力では破壊できない。

そしてもうひとつ。

VAMF弾を放ち中和させた後、同じ位置に攻撃を命中させなければいけない。常人であれば使いこなすことすら難しい。

狙撃は得意だ。しかしリーゼでは火力が足りない。

誰もが認める火力と、正確な射撃を兼ね備える人間をリーゼは『二人』しか知らない。

リーゼは幸運だった。

 

「なのはさん!」

「シュート!」

 

リーゼがVAMFを放つと同時に、まったく同じ箇所にアクセルシューターを炸裂させる。

飛び散る装甲。

初めて『ダメージ』が与えられた瞬間である。

エース・オブ・エース。

高町なのはがここにはいる。

 

『AMFを貫通しただと!?』

 

ここにきて初めての動揺。

AMFの無効化をそう簡単に成し遂げるなど、石動に予想出来るはずもなかった。

 

「合わせてリーゼ!」

「はい!」

 

師弟二人は空中機動を行い攻撃を避けつつ、息の合った動きでガーディアンを翻弄する。

 

「そこ!」

 

リーゼは流れるようにガーディアンの四肢にVAMF弾を撃ち放つ。

それを分かっていたかのようになのははバインドを発動。

今度こそガーディアンの動きを完全に止める。

ダメ押しにVAMF弾を二発胸に撃ち込み、すかさずデバイスをライフルモードに。

なのはとリーゼは魔法陣を展開。

全身の魔力をデバイスに集中させていく。

 

「全力、全開!」

「ディバイーン!」

「「バスターーーッ!!!」」

 

桜と紫の極光がエルダー・ガーディアンを撃ち抜く。

師弟の放った砲撃は偽りの守護者を貫き地へと堕とす。

全霊の光が辺りを眩しく照らし出した。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

◼️□管理局付近◼️□

 

真・ソニックフォーム。

極限までスピードを強化し、防御を投げ捨てた諸刃の剣。

攻撃を喰らえば負ける。

その緊張感の中で、人外の力を持つ二人を相手取りながらもフェイトは圧倒していた。

砲撃と斬撃のコンビネーションを掻い潜り、必殺の瞬間を待つ。

 

「ミラ...!」

「ラジャー...!」

 

痺れを切らした二人が魔力を更に解放。

どす黒いオーラが更に濃くなっていく。

 

「ケシトバス...!!」

 

巨大な魔法陣が二人を中心に展開。

ミラから大量の魔力が放出され、イズナに流込んでいく。

 

「まずい!あんなのをここで撃ったら...!」

 

市街地はそう遠くない。

避けたら間違いなく、防いでも余波だけで甚大な被害が出る。

 

「グ、ァ...!!」

 

膨大な魔力量にイズナが苦しみ出す。

 

「っ...。そうまでして何故貴女たちは...!ブレイカーで迎撃、対象を鎮圧する!」

『了解』

 

バルディッシュが大剣モードに変化。

周囲に四散した魔力がフェイトの元に集まっていく。

一手ミスすれば大惨事。

しかしこれくらいの困難、フェイトは何度も乗り越えてきた。

ぶつかり合っても、どんな危機的状況であっても諦めず戦い抜いてきた。

そうして得た絆がフェイトにはある。

今度も同じ。

彼女たちを知る為にも、この程度で終わるわけにはいかない。

 

「マスト、ダーーイッ!!!」

 

どす黒い死の鎌がフェイトに放たれる。

 

「プラズマザンバー!ブレイカーーーッ!!!」

 

合わせるように雷の刃が放たれ、激しく魔力がぶつかり合う。

互いを打ち消し合いながら混ざり合う光。

しかし次第に黒は黄色に塗り潰され始め、やがて死の鎌は霧散する。

 

「私たちは、失敗作...。」

 

迫り来る雷に絶望するイズナ。

しかしブレイカーは二人を直撃することなく空へと駆け上がって行った。

 

「え...?」

 

呆気に取られるイズナだったが

気づけば姿はいつものBJ姿に戻り、体から力が抜ける。

 

「イズナ...!」

 

同じく元の姿に戻ったミラがイズナを抱き止める。

すかさずフェイトが接近、二人をまとめてバインドで拘束する。

 

「っ!?」

「動かないで。彼女も貴女も、もう限界のはず。命を奪ったりしない。だからもう諦めて。」

 

苦虫を噛み潰したような表情でミラはフェイトを睨むが、すぐにミラも気絶してしまう。

慌てて二人をキャッチするフェイト。

こうして見れば年相応の少女なのだが、と彼女は思う。

 

「早く真たちを追い掛けないと...っ。」

 

少しふらつきながら飛行する。

少なくない疲労がフェイトを襲う。

 

「行かなきゃ...。なのはの守りたいもの、私が守るんだ...。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

今でも思い出せる。

あの部屋、あの明かり。

あの声と、あの言葉。

 

私はとある殺し屋の家に生まれた。

代々殺しを生業としている家。

幼少の頃からひたすら人を壊す技を叩き込まれた。

その中でも剣術は一番得意な技だった。

武器が目立つので暗殺には向かないと、親は大して興味がなさそうに言っていたような気がする。

 

10歳の頃、私はすでに何度も人を殺めていた。

仕事はたくさんあった。所謂悪人が標的の仕事は多かったが、勿論それだけじゃなかった。

何も感じない。すでに人間の思考など私にはなかった。

私は、化け物だった。

 

そんな時、ある仕事が舞い込んできた。

そう珍しくない、役人の暗殺依頼だった。

簡単と踏んだ両親は私にこの依頼を担当させ、私は当然のように依頼を完了させた。

何てことない、屑の始末だ。

刃を拭い、現場から離れようとする。

しかしそこで私はふと、役人の部屋に隠し扉があることに気づいた。

普段なら無視をする、するべき扉だったが

何故かその時だけ、異様にその部屋が気になった。

扉を乱暴に破壊し、地下に続く階段を降りる。

調度いい、財産目当ての犯行と思わせられるなどと考えていた。

階段が終わり、また扉が見える。

扉を開くと、ランタンの薄明かりと質素な最低限の家具だけの部屋。

そして。

 

「だれ?」

 

鈴のように響く声。

薄青色の髪、白い肌。

儚い、というのはこういうことか。と子どもながらに思った。

愛玩用か、もしくは何かの実験動物か。

可哀想とか、そういう感情は湧かなかった。

ただ彼女の方は違ったらしい。

私に近づき、ジロジロと観察してくる。

 

「私と同じくらいの年の子、初めて見た。お名前は?私はエレナよ。」

「...。」

 

会話せずエレナと言うその少女を見る。

始末するべきか。

姿を見られてしまった。

刀を握る手に力が入る。

そんな私に気づかず、彼女は話続ける。

 

「もしかして助けに来てくれたの?あのオヤジ、最低なんだから。もしそうなら何かお礼をしなくちゃね。」

 

彼女はタオルを持って来ると、私の顔を拭き始めた。

 

「あんな奴の血なんて付いてたら、せっかくのキレイな顔が台無し。...うん、これでよし。」

 

彼女は私に微笑む。

腕を上げ、彼女に向けて刃を構える。

彼女は驚きも怖がりもせず、ただ微笑んだまま呟く。

 

「私を殺すのね?...じゃあ、あなたが私を覚えていてくれる?」

 

手から刀が滑り落ちる。

何故かは分からない、ただ殺したくないと初めて思った。

 

「...クレア。」

 

彼女は、エレナは初めて驚いたような顔をして。

私の血だらけの手を握り、再び私に微笑んだ。

 

「クレア。...そう、クレアね。助けてくれて、ありがとう。クレア。」

 

それが私たちの初めての記憶。

化け物を人間にしてくれた、彼女との出会いだった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

◼️□管理局中庭◼️□

 

「まだ、負けてないから...ッ!」

 

なるほど。人並外れた根性とタフネスがこいつにはある。

だがそれだけだ。

最早立つだけでやっと。

 

「ならば、認めさせるだけだ。」

 

敗北を確定している。

気持ちで勝てる程戦いとは優しくない。

 

分身を伴い今度こそ真に止めを刺すべく、クレアは接近する。

先程と同じ光景。

防ごうが喰らおうがどちらも同じ。

必勝を確信し、クレアたちは刀を振るう。

しかし。

 

「何...!?」

 

三人のクレアは皆一様に驚愕の表情を浮かべる。

ほぼ同時にカウンターが炸裂した。

凄まじい速さに正確さ。

急所を撃ち抜かれ、分身二体が霧散する。

 

『アクセルスマッシュ』

 

高町ヴィヴィオのフィニッシュブローであり、広い視野と分析力があって初めて可能となるカウンターヒット。

本来素人に毛が生えた程度の真に扱える技ではない。

しかし、スパーの中で何度もこの技を喰らっていたことが功を奏した。

極限状態の中で真の体が本能的に、勝手にこの技を再現した。

当の本人も何が起こったのか分かっていない様子。

 

『しゃんとしろぉ!』

 

クラレントの言葉に意識が戻る。

咄嗟にガードするクレアに更なる追撃が炸裂する。

 

「っ!」

 

断空拳程の威力は出ないが、それでも重い拳の連打がクレアに殺到する。

必死の拳にクレアも防戦一方となるが、わざと後ろに飛ばされることにより距離を取ることに成功する。

 

「まだここまでの力を...!」

「ハァ...ハァ...!」

 

息も絶え絶えの中、真は言葉を紡ぐ。

 

「りーちゃんから、聞きました...。幼なじみさんを、人質に取られてるんですよね。」

「!...それが何だ。」

 

真は構えを解いてクレアと向き合う。

 

「私とりーちゃんが助けます。だから、もうそんなに辛そうに戦わないでください。」

「辛そう、だと...?」

「クレアさんの攻撃。何度も私を倒せたのに、私はまだ立っている。確かに根性には自信があるけど、あなたから感じる力はこんなもんじゃないんです。無意識に力が出せてない。本当はこんな戦い、嫌なんじゃないですか...?」

 

真の言葉にクレア自身が驚かされる。

それ程までに甘くなっていたとは。

嫌なのは当たり前だ。

あんな外道の駒として利用され、大切な後輩を傷つける戦いだ。

だからと言って、彼女たちに任せるなど論外だ。

エレナの命が掛かっているのだから。

 

「...嫌だからどうなる。そんな簡単に放棄できるなら、私はここに立ってはいない。お前たちが助けるだと?私より弱いお前たちに何が救えると言うんだ!」

 

クレアは柄で真を殴り飛ばす。

無防備な真はそのまま喰らい、地面に這いつくばる。

 

「っ...!確かに、弱い、です。だけど...私たちは諦め、ません...!」

「貴様っ...!」

 

倒れる真に追い打つように蹴りを喰らわせる。

ボールのように跳ね飛ぶ真。

しかし、再び彼女は立ち上がる。

 

「何なんだお前は...。何故まだ立ち上がる。諦めないだと?私だって、諦めたくなかった。だが部下は無惨に殺され、私は奴に敗北した。どうしようもなかった。私は奴より弱かった。お前などに分かるものか!お前のような夢見がちな子どもに分かるものか...!現実は夢じゃない。望んだ通りになんてならない!」

 

刀を乱雑に振り下ろす。

今度は直撃せず、真は受け止めきる。

 

「現実が辛いの、私だって知ってます...。夢が叶わないことも、大切なものを助けられないことも。どうしようもないことがいっぱいですよね。りーちゃんに聞きました。クレアさん、執務官になりたいんですよね?実は、私もなんです。」

 

ボロボロの顔で微笑む。

 

「何を言って...!」

「クレアさんはこんなに強くて、立派な管理局員です。きっと執務官になれると思います。幼なじみさんの病気は、治るなんて簡単に言えないけど...。だけどこれが終わったら、きっと笑顔で会いに行けると思います。」

「黙れ...!」

 

無理矢理押し斬ろうとするクレアを弾き、再度真は距離を取る。

 

「りーちゃんとはついこないだ再会したばっかりで。最初はちょっと喧嘩しちゃって。だけど今は、また会えて本当に嬉しいんです。私もクレアさんも大切な幼なじみがいて...。私たち、似た者同士ですね...♪」

「笑うな...!私たちは敵同士だぞ!」

 

その微笑みはどこかあの時のエレナと重なる気がして、クレアの神経を否応なしに逆撫でする。

 

「りーちゃんと昔別れて、辛かったけど。諦めなかったから、また会えた。無くしたものは戻らないし、辛い思い出もなくなってくれない。だけどそれでも、未来はあるし、夢は叶うかもしれない。クレアさんには力も、大切な守りたいものもある。クレアさんの望み通り、私とりーちゃんを倒した先に、幸せな未来はありますか?」

「未来...だと...?」

 

刀を握る手に力が籠る。

 

「未来など見えるものか!お前たちは石動には勝てない!私も不要になれば消され、エレナを守るものはいなくなる!あいつは...あいつはいつ死ぬか分からない...輸血があろうとなかろうと、いつ明日を失うか分からないんだ...!エレナは私の全てだ!あいつが私を人間にしてくれた!だから!エレナを守る為なら私の未来などどうでもいい...!!」

 

感情を爆発させ、クレアが叫ぶ。

涙さえ浮かべながら魔力が対艦刀に集まっていく。

 

『ブレイカーか...!マスター!』

 

真もまた、右拳に魔力を集中させる。

稲妻が迸り、紅い魔力に包まれていく。

 

「どうでもよくなんかない!りーちゃんの未来にも、そのエレナさんの未来にもっ!クレアさんはいるんだッ!勝手に諦めるな!私たちを信じてください!クレアさんを越えて!あのお爺さんを越えて!私たちがブン守りますッ!だから!絶対に諦めさせてなるものかぁッッ!!!」

 

「砕け散れぇーーッ!!!」

「我流!雷潰拳ーーーッッ!!!!」

 

放たれる破壊の一撃。

紅の稲妻と化した真が、真正面からぶつかる。

迷いなき拳に振り抜く重さなどなく。

拳に宿した決意が、ただ光の波を潰し砕いていく。

光から飛び出た真の姿にクレアは未来を見る。

もし私にも未来があるのなら。

またエレナと笑い合えるのだろうか。

 

幸せだな、と感じる。

そんな未来が来るのであれば。

 

「信じてみるのも、悪くない...。」

 

クレアは倒れ意識を失う。

心なしか、幾分安らかな寝顔になっているように見える。

そんなクレアの顔を見つめた後、真は歩み出す。

 

「クレアさんの願い、きっと叶えますから...!」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

◼️□管理局付近・工事地帯◼️□

 

「やった...?」

 

息を整えつつ、動かなくなったエルダー・ガーディアンを観察する。

完全に機能は停止したはずだ。

胸には大穴が空いている。

 

「何とかなったみたいだね。リーゼ、ケガはない?」

「はい...。私は大丈夫です。」

 

改めてなのはを見る。

何を話したらいいか分からない。

やはり謝罪からだろうか、それとも感謝か。

どちらも必要だと決め口を開いたその瞬間。

リーゼたちの頭上に巨大な影が映った。

 

『終わりだと?馬鹿を言うな。』

 

エルダー・ガーディアンと同じ大きさ、しかし決定的に違うのはコックピットの存在。

石動本人が乗り込んでいるようだ。

武装もそれに合わせ、剣のようなものを背負っている。

 

「もう一体...!?」

『同じと思うてくれるなよ。これは儂が自ら使う為専用に作製したプライム・ガーディアンだ。』

 

リーゼはVAMF弾の残弾を確認する。

少ないがもう一体くらいどうにかなりそうだ。

 

「専用だろうと関係ありません!AMFに頼った装備では私たちには勝てない!」

『ならば、試してみるか?』

 

プライム・ガーディアンがミサイルを乱射する。

先程と同じく空中機動で回避するなのはとリーゼ。

 

「リーゼ!長引かせるとまずい。ブレイカーで一気に決めるよ!」

「了解!道は私が作ります!」

 

リーゼが囮となりガーディアンを釘付けにし、その間になのはが周囲の魔法を集めていく。

 

『小癪な!』

「それが狙いです!」

 

VAMF弾を放ち、ブレイカーの通り道を作ることに成功する。

 

「離れて!」

「!」

 

なのはの頭上に莫大な魔力の塊が出現する。

あらゆる敵を砕いてきた、高町なのはの最大、最強の切り札。

集いし星の輝きが今、撃ち放たれる。

 

「スターライト...!!」

 

はずだった。

 

『申し訳、ありません。マス...』

「え?」

 

なのはのBJが霧散し、制服姿に戻ってしまう。

 

「なのはさん!?」

 

落下するなのはをリーゼがキャッチし着地するが、途端にリーゼもBJから元の服装に戻ってしまう。

 

「な!?」

「レイジングハート!?私の声、聞こえないの!?」

 

必死に呼び掛けるがレイジングハートは光を失ったまま何も応えない。

スターティアーズも同様だ。

 

『疑問に思わなかったか?あれほど高性能なガーディアンを、どうやって意のままに動かしているのか。』

 

勝ち誇った音声が響く。

 

『ロストロギア。ヤントラサルヴァスパ。能力は機械の掌握、制御だ。』

「ロスト、ロギア...!?」

「掌握と制御...まさか...!」

 

魔法と言えど、その仕組みは『システム』として機械化されている。

その最たるところがデバイスである。

 

「デバイスを制御して、使えなくしたの...!?」

『貴様らの魔法など、所詮作り物。技術として昇華された以上、このヤントラサルヴァスパには決して逆らえぬ!』

 

ガーディアンが刀を抜き放ち、無防備なリーゼに振り抜く。

 

「リーゼ...!きゃあっ...!?」

 

辛うじて発動させた障壁でリーゼを守るなのはだったが、AMFに加え生身ではとても耐え切れず

吹っ飛ばされ瓦礫に激突してしまう。

 

「なのはさんっ!?」

 

なのははぐったりとして動かなくなる。

今の一撃で気絶してしまったようだ。

最強の魔導師とは言え、生身ではどうしようもない。

一人残されたリーゼは考える。

なのはさんを助けないと。

ガーディアンからどう逃げる。

飛行なしでは無理だ。

ならばガーディアンを倒す。

魔法なしでどうやって。

真やフェイトを待つか。

数秒後には自分は殺されている。

待っている余裕などない。

 

ダメだ。

私は助からない。

 

リーゼは理解した。

もう自分は死ぬ。

助かる方法はない。

だが、なのはは違う。

あの人を守ることは『できる』。

リーゼには一つ手段があった。

 

「っ!」

 

リーゼは指先に魔力を込め、VAMF弾を弾き飛ばし、ガーディアンに命中させる。

当然無茶な魔力の使い方に指先が割れ血が飛び散るが構っている余裕はない。

 

『何をするつもりだ...!』

 

目一杯走り、少しでもガーディアンをなのはから遠ざける。

 

お母さん。

ごめんなさい。

一人にして、ごめんなさい。

今まで育ててくれたこと、あの日泣きたい気持ちを抑えて私を守ってくれたこと。

本当にありがとうございました。

 

クレア先輩。

私に最初に声をかけてくれたのは貴女でした。生意気な私に優しくアドバイスや、励ましをくれて。

もっとプライベートで遊んだり、仕事の愚痴を聞いたりしたかった。

また笑えるようになった貴女に会いたかった。

 

なのはさん。

こんな私を大切な教え子と言ってくれてありがとう。

私を救ってくれてありがとう。

貴女に言われていたやってはいけない無茶を、今からやります。

だから、ごめんなさい。

貴女の心に影を落としてしまうかもしれない。だけど、貴女を失うくらいなら私はやります。

ずっと、みんなの希望でいて下さい。

 

まーちゃん。

また会えて嬉しかった。

本当は一緒にいられてすごく幸せで。

私の為に戦ってくれたことが、とてもとても嬉しくて。

思い出を取り戻すって言葉が泣いちゃうくらい嬉しかった。

明日は遊園地、明後日は動物園。週末は映画を観に行こって。

たくさんの約束をありがとう。

生きたかった。まーちゃんとずっと一緒に。

まーちゃんも、同じだったら嬉しいな。

ごめんね。

約束、守れないよ。

 

「大好き、まーちゃん。さよなら。」

 

リーゼの体から魔力の光が迸る。

何の工夫もない、体内の魔力を爆発させる自爆攻撃。

極光がリーゼを、プライム・ガーディアンを包んでいく。

爆風が辺りを凪払っていった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

やっとの思いで辿り着く。

飛べるってやっぱりズルいや。

こんなに遠くに簡単に来ちゃうんだから。

機械の残骸みたいなのと、瓦礫と砂の山。

たぶんここで間違いないとレンちゃんが言ってた。

足を引き摺りながら歩く。

足元に見覚えのある人が倒れていた。

 

「高町、なのはさん?」

 

ケガをしているが息はしている。

気絶しているようだ。

やっぱりここで間違いない。

 

「捜さないと。」

 

周囲を見回す。

すると、上空から巨大なロボットが降り立つ。

 

「な!?でかっ!?」

 

驚く間もなく。

ロボットは無造作に『何か』を投げ捨てる。

 

『小娘が。無駄な悪足掻きをしおって。』

 

その『何か』を見つめる。

動かない『何か』を見て、呼吸が止まる。

あの髪色。あの服装。あの身長。

知らない。

私の知ってる彼女は、動かないわけないもん。

 

何で、あんなにボロボロで。

 

死んだみたいに動かないんだろう。

 

「りーちゃん?」

 

第18話『Starry Wish』

 




君のことを守りたい。
願いは無情に打ち砕かれて。
悲しみの慟哭がただ、響き渡るだけ。
血に染まる拳に未来はなく。
誓った星は、流れ落ちて。
夢と希望は叶うことなく潰えていく。

ーーだとしても。
私たちは、諦めない。
次回。魔法少女リリカルなのは外伝。Lost Word。
第19話『流れ星、墜ちて燃えて尽きて、そしてーー』
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