伏線は撒き散らしましたが回収するかは未定です←
「紡ぎ合う絆がくれたッ!私のッ!魔法だあぁぁぁッッ!!!」
「真!?」
真を覆っていた影が消えてる?
...大丈夫だ。あそこにいるのは私が知ってる真で間違いない。
正気に戻ったんだ。
良かった...。
「待って。さっきまでの戦いの傷が癒えてなかったら...!」
「!」
まずい、自分の体のダメージも省みずに戦ってたんだ!
相当消耗しているはず!?
「せいっ!」
真がガーディアンの脚に拳を叩き込む。
関節を狙った一撃に思わずよろけてしまい、頭部が真に近づく。
すかさず飛び蹴りを繰り出し、隙だらけの頭部を蹴り抜く。
巨体故に吹き飛びはしないが、耐えきれず後ろへ倒れてしまう。
「あ、あれ...?」
「元気そう...?」
私達の心配に反して真は消耗した様子はなく、あの巨体を誇るガーディアンを体一つで薙ぎ倒した。
「暴走は驚異的な治癒能力まで与える。自らの体を造り変え、また戻すことだって出来るんだもの。暴走する前のケガさえ治っているはずよ。」
博士の説明に少し寒気がする。
やはり、ロストロギア。
悪用されていなくて本当に良かったと思う。
「尤も、痛感も当然戻るんだけどね♪」
「いった!?固い痛い固い!?」
『喚くなバカ。魔力で最大限防御してやってる。痛いだけだ。我慢しろ。』
「痛みも何とかしてよ!?素手で車壊しちゃう師匠たちと違って私か弱い乙女だよ!?」
すごく痛がってる...。
その隙にガーディアンがその体を起き上がらせてしまう。
『魔法だと...?ふざけるな!このガーディアンは魔法を否定する!魔導師などでは決して超えられない儂の力なのだッ!』
ガーディアンは飛べない真に向かって実弾のマシンガンにミサイルを乱射。
その流れ弾はこちらにまで飛んでくる。
「捕まって下さい!」
「きゃっ!?」
博士の腕を掴み飛び上がる。
両手それぞれになのはと博士を抱き抱える形で回避する。
「うっ...これ結構酔う...。」
「が、我慢して下さいね!?」
流れ弾の発する煙と爆発で真の様子が見えない。無事だろうか。
さらに上空に移動し、煙を越えて上から見下ろす形になる。
「見つけた!」
真だ。変わらず火器を発射し続けるガーディアンに対して逃げの一手となっている。
やはり飛行なしでは厳しいのか。
『止まるな走れ!』
「わわ分かってるよぉ!!」
なのはたちを避難させて、すぐに援護に行かないと。
そう思った矢先。
『...そうだ!おいバカ!お前にピッタリの戦法考えた。』
「へ?」
『何も考えんな!魔力全開!そのまま地面をぶん殴れッ!』
「お、押忍ッ!?」
逃げるのを止めた真が反転。
ガーディアンに向き直る。
「いけない!そのままじゃ直撃...!」
「言ってること全然分かりませーーんッ!!!」
地面に強烈な一撃。
岩壁と砂が舞い上がり、ミサイルや銃弾を防いでいく。
真にしか出来ない無茶苦茶だ。
「防御の為に、こんな無茶苦茶を...。」
「それだけじゃないよ。」
なのはが心なしか楽しそうに呟く。
『小癪な小娘が!』
舞い散る砂煙で下は上からでも何も見えない状態だ。
石動も真を見失っている様子。
あれだけの巨体、人間もさぞ小さく見えていることだろう。
捜すのには苦労するはずだ。
そこへ。
「覇王!断ッ空ッ拳ッ!!」
煙から飛び出した真の拳がガーディアンを確かに捉える。
凄まじい衝撃音が響く。
またしてもあの巨体を倒してしまった。
「いいね、あの子。ちょっと面白いかも。」
「なのは...。」
教官魂に火が点いたみたいだけど、下の被害が尋常じゃないよ?
『あり得ん...。たかが小娘に、儂のガーディアンが。あり得んだろうがッ!』
ガーディアンが片腕を変形させ、巨大な砲身のようなものが作成それる。
まさかあれは...!
『消え失せろ!忌々しい魔法でな!』
凄まじい出力の『魔力』砲が放たれる。
失念していた。
魔法を否定するからと言って、相手が魔法を使わない保証はない...!
「!?」
急かつ圧倒的出力の砲撃、真は反応出来ずそのまま飲み込まれるものと思われた。
しかし、魔力砲は真に当たる前に見えない『何か』にぶつかり、押し負けた。
反されるように、そのままガーディアンの腕を粉砕する。
『何だと!?AMFは確かに起動していたはず!何故直撃を受けた...!?』
「当然です。真の拳と同じく、私の矢は所謂魔法ではありませんから。」
私たちとは逆方向から人影が近づいていく。
煙が晴れ、その姿が露になる。
白銀の鎧。BJにも似たそれと、特徴的な楽器のような弓。一度失った光は再び瞳に宿り、強い意志を漲らせている。
「間に合ったんだ...!」
『おいおい、マジか...。』
「私のお手柄よ!この天才を讃えなさいな!」
「りー、ちゃん..?」
「はい。お待たせしました、まーちゃん。」
白銀を身に纏うのは、石動に立ち向かい戦死したはずのリーゼだった。
―――――――――――――――――――――――――――――
◼️リーゼside◼️
暗い。
深い闇に、どこまでも意識が堕ちていく。
私は死んだ。
もう体は動かない。
天国や地獄があると思っていたが
ロマンがないことに、やはり人間には二度目の生などないらしい。
全力は尽くした。
後悔はたくさんあるが。
ああするしかなかった。
こうなると、あの後どうなったかだけが気になる。
石動は止められたのだろうか。
なのはさんやフェイトさんが逃げ延び、あのロストロギア『ヤントラ・サルヴァスパ』を攻略する秘策を練るか。
あるいは...真だ。
クラレントは同じロストロギア。
制御出来ない可能性はある。
制御出来ないのであれば、VAMFと合わせて撃破は可能だろう。
...そういえば、VAMFなしで真は量産型のガーディアンを殴り飛ばしていた気がする。
大概無茶苦茶な幼なじみだ。
やっぱりまーちゃんはすごい。
まーちゃん。
やはり泣いてしまっているだろうか。
あの子は優しい。
私を助けられなくて、約束を守れなくて。
自分を責めてしまうかもしれない。
まーちゃんが私の最後の希望なのに。
幽霊にでもなれれば、伝えることが出来るのだろうか。
幽霊。
あの世がなければ流石に存在しないか。
便利なのだろうな。
きっとお母さんにも、先輩にも、なのはさんにも。
最後の言葉を伝えられたのに。
こんなことなら遺言でも遺しておくべきだった。
明日はまーちゃんとデート出来るかも。
そう思ってしまった。
流石に楽観的過ぎた。
まったく、誰かさんのお気楽が移ってしまったかもしれない。
何とかなるって、思ってしまったから。
『なら、何とかしてあげましょうか?』
声が響く。
私の声じゃない、聞き覚えのない声だ。
暗い世界にもう一人、住人が増える。
ピンクブロンドの中学生くらいの少女。
気の強そうな瞳に、特徴的な髪型をしている。猫耳?
「私と契約すれば、貴女を現実に引き戻すことが出来る。但し、相応しくなければ。その時は容赦なく契約を破棄するわ。」
見た目通りの堂々とした宣言。
誰なんでしょうこの子。
というか、現実に引き戻す?
まさか生き返れるとでも言うのだろうか。
「そうよ。貴女を生き返らせてあげる。その前に一つ聞かせて。貴女は死んでもなお、まだ戦おうとしている。なぜ?」
戦う意味?
「ええ。敵がまだ生きているから?怒りに身を任せ、復讐がしたいの?」
違う。違います。
確かに石動は止めなければならない。
ただそれは、大切な人たちの明日を守る為。
私の憧れるヒーローのように、誰かを助けられる自分でありたいから。
私の戦いは、守る為戦いです。
「守る為の戦い。...綺麗事ね。争いに正義など存在しない。」
私を真っ直ぐ睨み付ける。
...知っている。自分がいつも正しいなどあり得ない。
傷つければいずれも『悪』。
それは理解しています。
しかし、時に悪を貫いてでも成さねばならないことがあります。
たとえ犯罪者と罵られ、大切な人に追われる身となっても。
私には。
「独善を、悪を貫く覚悟があります。」
「悪を貫く覚悟...。」
少女は少し驚いたように目を開いた後、少し口元を緩ませ私へ手を伸ばした。
「見せてもらうわよマスター。悪を貫く覚悟とやらを。戦場で冴える、抜き身の貴女を!」
その手を掴む。
途端に私の体は舞い上がり、世界が色を取り戻していく。
「叫びなさい。私の名は――!」
「エンゲージ!絶弓、フェイルノートッ!」
フェイルノートが私の体に溶け込み、光を放つ鎧となる。
気づけば私は、墜とされたはずのあの空へ。
再び舞い上がっていた。
―――――――――――――――――――――――――――――
「援護が間に合って良かった。あの出力は並みの」
「りーちゃん...!」
「きゃ!?」
思わず飛びついて、抱き締めてしまう。
我慢なんて出来ない。
だって、また会えるなんて。
「あったかい...。ちゃんと、生きてるっ...!」
「ちょ、ちょっと!恥ずかしい、です...!?」
涙が止まらない。
生きてる。
りーちゃんが、生きてる。
こんなに嬉しいことが他にあるものか。
取り零したはずだった。
失くしたはずのものが、今目の前にある。
何度も抱き締め、顔を見て。
幻想でも夢でもないことを確かめる。
「私、約束、守れなくて...っ。悲しくて、辛くて、悔しくて...!だからっ...!」
「まー、ちゃん...。」
りーちゃんも優しく私を抱き締めてくれる。
ちゃんとある。
伝わる温かさが。
私のお星さまがまだ輝いていることを教えてくれる。
「ごめんなさい...。でも、帰って来ましたよ。」
「うん...うんっ...!」
涙でボヤけた視界に笑顔が映る。
その笑顔は子どもの時の、あの楽しかった頃と同じで。
「おかえりっ...。りーちゃん♪」
「ただいまです、まーちゃん...♪」
あの頃みたいに、何でもない挨拶をした。
『馬鹿な...確かに貴様は、息の根が止まっていたはず...!』
ガーディアンが再び立ち上がる。
すっかり意識が外れていたが、まだ私達の戦いは終わっていなかった。
「甦ったのです。私自身の手で、全てを終わらせる為に!」
冷静に見てみると、りーちゃんはいつものBJとは違う銀色の鎧みたいな服?を着ていた。
この感じ、どこかで見たような...。
『なっ!?何だこの感じ!あたしと同じ奴がリーゼの中にいやがる!?』
「え!?」
同じ奴って何!?そっくりさん!?
『私以外のアイアンメイデン。こんなところに生きているとはね。』
りーちゃんのお腹から声が!?
い、いつの間に...!
私何にも聞いてないよ!?親友なのに!?
「はぁ。何馬鹿なことを想像しているんですか。私も契約したんです。このフェイルノートと。」
ふ、ふでいるのーと?
『リーナの奴、あたしにも黙って隠し持ってやがったな...!』
「どういう事情かは分かりませんが、とにかく博士のおかげで助かりました。」
な、何だかよく分からないけどリーナさんが何かしたらしい。
流石天才だぁ。後で肩揉んであげよう。
『ふざけるな...それもまた、魔法だとでも言いたいのか...!貴様ら魔導師はッ!』
石動中将が吼える。
すごい気迫...。
ガーディアン自体は片腕を失って、満身創痍に見えるのに。
未だあの人から感じる圧力が衰えていない。
「何で、そうまでして...。」
私の呟きに気づいたりーちゃんが、私には教えていなかったと頷いた。
「...彼には理由があるのです。魔導師を、魔法を憎む理由が。」
「魔法を、憎む?」
憎む理由って...。
魔法は便利で素敵なものなのに、憎むことなんてないと思うけど。
「中将には奥様がいました。名を石動緋鞠。『エース』と呼ばれた、優秀な魔導師でした。」
「奥さんが魔導師...。いましたって...?」
「ええ。30年前に亡くなっています。不慮の事故でした。」
『不慮の、事故だと...!?』
りーちゃんの言葉に、中将が語気を荒げて反論する。
『事故などではない!緋鞠は、あいつは殺されたのだ!』
「!...殺された...?」
「いいえ、事故です。事故ですが...。」
りーちゃんは悔しそうにというか、恥じるようにというか。
言葉をわずかに引っ掛けながら、何とか話を続けようとする。
「局内の事故だったと聞いています。」
―――――――――――――――――――――――――――――
◼️□30年前・管理局研究棟◼️□
見渡す限りの火と瓦礫。
きっかけは新型デバイスのテストだった。
何でもない実験のはずだったが、制御装置が暴走。建物内を魔力が駆け巡り、破壊の限りを尽くした。
勿論局員には魔導師がいる。
彼らは非常事態に対処し、人々を避難させることに尽力した。しかし、優秀な魔導師はそのほとんどが今で言う所の『海』の業務に当たっており、現場に居合わせた魔導師の質は良いとは言えなかった。
エースと呼ばれる、彼女を除いて。
「緋鞠!一人じゃ無理だ。いくらお前でも全員は助けられない!」
男が叫ぶ。
魔法が使えないただの人間である彼には、炎の中にいるだけで限界が近づく。
「先に行って!私はまだやれるから!」
凛とした声が響く。
男とは違い、彼女はバリアジャケットと呼ばれる防御装束を身に纏う魔導師だ。
炎の中でも平然と息をしている。
男はその彼女の姿に頼もしさを感じながら、同時に愛する者を庇えぬ自分への怒りに拳を固くする。
「いつ建物が壊れるか分からない!何かの拍子に動力に引火する可能性もある!お前が強いのは良く分かってる!だけど今は俺の言うことを聞けよ!俺の妻だろうがっ!」
酸素がなくなる中、お構い無しに男は叫ぶ。
他の奴はどうでもいい、早く逃げようと。
「...そうよ。あなたの妻。だから、信じてくれるでしょ?」
彼女は叫ぶ男とは打って変わって、穏やかな表情で告げる。
「ああ、信じてるよ...。だけどダメだ。他の奴らは皆逃げた。お前と同じ魔法使いも、全員だ!エースだからって何故お前だけ残らなくちゃいけない!魔法を使えたってお前は人間だ。不死身じゃないんだぞ!?」
男は必死に彼女を引き止める。
行かせてはならない。彼の本能がそう言っていた。
「エースだからじゃないよ。」
そんな男に彼女は微笑む。
「私の魔法は誰かを助けられる。守れるし、救える奇跡だって。そう褒めてくれたのは刃だったでしょう?」
男は魔法が使えない。
いくら体を鍛え上げ、技を磨いたとしても。
当たり前のように行使できる『奇跡』には敵わない。
だからこそ、彼には彼女が輝いて見えた。
優れた魔導師としての力を有しながら、常に誰かを思い行動する彼女が太陽のように眩しくて。
いつの間にか自らの正義より大切な存在となっていた。
「戻ってくれ緋鞠...。人助けなんてしなくていい、ただ俺の側で...!」
笑っていて欲しい。
言い掛けたその時。
二人の間に瓦礫が落下。
男では決して緋鞠の側に行けなくなってしまう。
「緋鞠っ!?」
瓦礫を退かそうとするが、その熱と重さに動かすことすら儘ならない。
「逃げて、刃。任せて!いつも言ってるでしょ?」
声だけが彼の元に届く。
それが彼が聞いた、彼女の最期の言葉。
「へいき、へっちゃら!」
顔は見えないはずなのに。
彼女のいつも通りの笑顔が、最後も同じように輝いていたと彼には分かった。
彼。石動刃凱の胸には、今も彼女の声と笑顔が焼き付いて離れないのだ。
―――――――――――――――――――――――――――――
「彼女は他の局員が我が身恋しさに逃げ出す中、最期まで人命救助を続けました。文字通り一人になっても。最終的に動力爆発が起こり、彼女『だけ』が巻き込まれました。」
「っ...。」
自分を犠牲にして、みんなを守ったんだ...。
「管理局は彼女を英雄、真のエースと呼び讃えましたが、石動は違いました。」
「...魔法が、緋鞠さんを特別にして。魔法が原因で事故が起きて。魔導師が、緋鞠さんを見捨てた...。」
だから、魔法を憎んで。無くしたいって。
「絶対的な少数による守護。それはその少数が犠牲になるのと引き換えの平和です。彼の考えは、私からしても100%間違っているとは言い切れないものです...。」
なのはさんに救われたりーちゃんだから、そう思うんだ。
もしりーちゃんが助けられた事故で、なのはさんの身に何かがあったら。
もしなのはさん以外にも、人を救える力を持つものがたくさんいたら。
石動さんの理想は、否定し切れない。
だけど!
「やり方が間違ってるよ!大切なものを失くす痛みが分かるのなら!何でクレアさんやりーちゃんから奪ったんですか...!そんなの、緋鞠さんが喜ぶわけ...!」
『黙れぇッ!!貴様らにあいつの何が分かる!?魔法など、魔法使いなど!跡形もなく消え去れぇいッ!!!』
石動さんの叫びに呼応するように、
ガーディアンに周囲の瓦礫、残骸が集まっていく。
只でさえ巨大な体躯が、更に巨大に肥大化していく。
「これは...!?」
「ロストロギアの暴走...!?」
ロストロギア!?
あのロボット、ロストロギアなの!?
「まーちゃん!」
「っ!」
巻き込まれていく地面に立っていられない。
飛行するりーちゃんの手を握り、地面から離れる。
地面をも飲み込み、ガーディアンは巨大な山と化す。
「こんなの、どうすれば...!?」
一度高台に着地し、弱点がないか探す。
...いや、探しようがなくない!?
立ち尽くす私とりーちゃんの近くに、フェイトさんたちが降りてくる。
「ふーむ。ロストロギアの暴走なんて興味深いことこの上ないけど。仕方ないわね、この天才が一肌も二肌も脱いじゃうわよ~♪」
何やら端末を操作するリーナさん。
30秒程で立体映像が映し出される。
「いくらでかくても、その核は変わらず人間サイズのまま。つまり、中将本人さえロストロギアごと取り除けば。」
「アイスが溶けるように巨人は消え去る...。」
「その通り!デザートが食べたくなる例えね、好きよそれ♪」
な、なるほど。
中将の位置は巨人の大体胸の真ん中辺り。
あそこを貫けばいいのか。
「でも、どうやって?」
「砲撃魔法はガーディアンのAMFに阻まれるし、またデバイスを制御されれば私達が耐えきれない。...切り札は、一つだけ。」
なのはさんが私を真っ直ぐ見つめる。
「...へ?」
私!?
「私達の魔法は届かないかもしれない。だけど、今のリーゼと真なら通用するはず。」
「私の攻撃では石動を倒すことしか出来ない。でも、まーちゃんなら。武器を持たないまーちゃんだからこそ、あの人をあそこから救い出せるはずです。」
動揺する私に、フェイトさんとりーちゃんがそれぞれ言葉を掛ける。
「でも、私なんか...。空も飛べないし、頭も悪いし...。」
「真。」
フェイトさんが私の肩に手を掛ける。
「手を伸ばすのを諦めない。まだ、忘れてないよね?」
「!...押忍ッ!」
フェイトさんに教えてもらった私の正義。
一度だって忘れるものか。
やるしかない。
今、やるしかないんだ...!
「私達で道を切り開く。真はここでその瞬間を待って。」
「お、押忍!」
真を庇うように、なのはとフェイトが前に出る。
「こうやって並んで戦うの、久しぶりだよね。」
「...うん。だけど、大丈夫。なのはと一緒なら、絶対に負けない。」
「私もフェイトちゃんと一緒なら、何度だって立ち上がれる。そうだよね、レイジングハート!」
『その通りです、マスター。』
折れたはずの翼は再び空に羽ばたく。
風は空に。星は天に。
輝く光はこの腕に。
不屈の魂はこの胸に。
「レイジングハート!セーット!アーーップ!」
白く輝くバリアジャケットに身を包み、高町なのはは再び戦場に降り立つ。
白と黒。
管理局最強の魔導師コンビが肩を並べ、魔法を否定する巨人に立ち向かう。
巨人は二人を脅威と判断したのか、未だ健在であった実弾兵器を発射する。
二人は重ね合うように障壁を張り、最後の希望の盾となる。
「真、信じてるよ!」
「行っておいで、リーゼ!」
「「はいッ!」」
リーゼは飛び立つと同時に『不可視』の矢を撃ち放つ。
放たれたことにも気づかず、巨人の体から砂や瓦礫が千切れ飛ぶ。
攻撃ではない。リーゼの役目は、あくまでも陽動である。
リーゼはただ惹き付けることに注力し、巨人に矢を放ち続ける。
苛立ったように巨人はリーゼに向けて実弾兵器は勿論、魔力砲まで発射する。
あれだけ嫌っていた魔法を躊躇いなく使う。既に石動の意識はないに等しいのではないかとリーゼは考えたが、すぐ近くに迫る攻撃へと意識を集中する。
「彼のことは真に任せた。私は私の仕事をするのみです!」
空中軌道により回避しつつ、弓に魔力を溜める。
「フェイルノート!」
『いつでもいいわよ!』
反転し、狙うは両腕。
「インビジブル・バスター。」
見えない、しかし確かに空間を切り裂き音色を響かせる二撃。
矢とも弾丸ともつかないそれは、巨人の腕を文字通り粉砕する。
「今です!」
なのはとフェイトが魔法陣を展開。
大量の魔力の弾丸、雷の矢が周囲に生み出される。
チャンスは一度。
ならば出し惜しみは不要。二人の魔力が限界まで注ぎ込まれる。
「なのは!」
「フェイトちゃん!」
「二人の全力全開!」
「中距離殲滅コンビネーション!」
「ブラスト・カラミティ!」
「「ファイアーーーッ!!!」」
雷光と星光。
二つの光が混ざり合い、巨人に炸裂する。
AMFがあるにも関わらず、その光は巨人の装甲を削り、剥がす。
全ての攻撃が終わり、二人の魔力すら底を突いたその時。
表れる巨人の核。
ロストロギアに飲み込まれた石動の姿がそこにあった。
「真!」
「真ちゃん!」
「まーちゃん!」
『貫けぇぇぇーーーッッ!!!!!』
三人の声に答えるように、唸りをあげる右拳。
ガントレットはロケット噴射のように魔力を爆発させ、勢いのまま真は飛び立つ。
最短で、最速で、真っ直ぐに。一直線に。
稲妻と化した真が石動に向け突撃する。
「儂を殺すか...。いいだろう、所詮お前たちの魔法など、何も守れん。何も救えん...。」
「違うッ!殺したりしない!私のこの手はッ!!」
真の拳はロストロギア、ヤントラサルヴァスパを貫き、そのまま巨人を殴り抜ける。
着地した真の腕には、息をしたままの石動の姿が。
「私の魔法は、手を繋ぐ為の奇跡なんだからっ...!」
薄れ行く意識の中で、そう言ってみせた真にあの日の彼女が重なる。
守り救う為の奇跡。
死んでもなお、俺を救おうと言うのか。
「緋、鞠...。」
巨人は老人の妄執と共に消え果てる。
射し込むのは太陽の光と、魔法という名の奇跡の光。
その光は断罪の光ではなく。
命を暖かく包み込むように、ただ優しく鮮やかに輝いていた。
―――――――――――――――――――――――――――――
◼️□二日後◼️□
端末を叩く音だけが響く。
執務官に割り当てられる仕事部屋。
その一室でフェイトは今回の事件に関する報告書を作成していた。
あれからまだ二日経たないというのに、既に仕事に戻っている彼女のバイタリティーは恐るべきものだ。
と、他の同僚は思っている。
彼女の場合くぐってきた修羅場の数が違うわけだが。
何かを思い出したかのように端末操作を止め、通信モニターを展開する。
どうやら誰かと約束をしていたらしい。
『お疲れ様です、フェイトさん。』
「お疲れ様、ティアナ。ごめんね、少し遅れちゃった。」
通信相手はフェイトと同じ執務官であり、かつては六課で共に戦ったティアナ・ランスターだ。
今回の事件でも、ティアナは執務官として大いに活躍していた。
石動の罪状の裏取りや、ガーディアン製造工場の証拠など。
凶悪事件担当の彼女の知識と腕がなければ、解決出来なかったはずだ。
「改めてありがとう。ティアナがいなかったらどうなっていたか...。」
『そんなことないですよ!結局現場には急行出来ませんでしたし...。』
「それはあの二人の護送を引き受けてくれたからでしょ?おかげで私はなのはたちの所に迎えたわけだし。」
『まあ、状況的に私よりフェイトさんが向かった方が効率的でしたからね。...あの二人、イズナとミラは何か話しましたか?』
「ううん。今のところは黙秘を貫いてる。」
フェイトに捕縛された後、イズナとミラはティアナに引き渡され護送された。
今はフェイトの手で取り調べを続けているが、以前真を襲った魔導師と同じく黙秘を貫いている状態だ。
「あの時の彼女たちの力は異常だった。真を襲った理由以外にも、聞き出さないといけないんだけど...。」
『そう、ですか。...そういえば、なのはさんはヴィヴィオに会えたんですか?あの仲良し親子のことだし、会えない分爆発しちゃったんじゃないかと。』
暗くなったフェイトの表情に気づいたのか、ティアナは明るい話題へと話を変える。
「ああ、うん。爆発してたよ。ヴィヴィオも強がってたけど、やっぱり寂しかったみたい。泣いてるなのはなんて久しぶりに見た。」
でもこの前、映画を観て泣いてたような。
確か、犬が出てくるやつだったか。
久しぶりじゃなかったかも、とフェイトは思う。
『ふふっ、なのはさんもすっかりお母さんですよね。もう6年も経つのに、相変わらず新鮮ですよ。』
「ティアナは特にスパルタだったもんね。」
『あ、あはは...。』
『あれ』は傍目から見ても怖かった気がする。
「私も早く帰りたいけど、今は一刻も早く事件をまとめて、リーゼたちの無実を証明しないと。はやてにも無理させちゃったし。」
『無理だなんて思ってないと思いますよ、あの人は。』
「そうだろうけど、だから心配なの。」
『それは、そうですね。』
またしても海側のはやてが、陸の不正を暴いた形になった。
自業自得とも言えるが、石動の言っていた陸と海の格差。更に溝が深まるのは確かだ。
『執務官としての在り方が問われる時代になりますね。』
「そうだね。何を正義として、何を悪とするのか。」
難しい話だ。正しいことと間違っていることは表裏一体。
どちらかに平等に決めるのは難しい。
『難しいからこそ、私達は一緒にいるんですよ。』
「時には引っ張って、時には引き止めて。そうやって一緒に歩いていく為の手だからね。」
受け売りだけどね、と付け加える。
『はい!リーゼと、未来の後輩はどうしてるんですか?』
「後輩はまだ気が早いと思うけど...。元気だよ...♪」
―――――――――――――――――――――――――――――
あれから1ヶ月が過ぎた。
私は今も研究所でリーナさんとレンちゃん、それにりーちゃんとフェイちゃん。
総勢6人のちょっとした大家族で暮らしてる。
りーちゃんは今回の一件で手配されてしまっていたけど、フェイトさんたちのおかげで事件に誤解があり、石動さんのクーデターを未然に防ごうとした『ヒーロー』として改めて報道することになった。
もちろん今回の事件を知っている全員が、ただ犯罪者として石動さんを告発することに喜びはしなかった。
けど、目的の為に局員を犠牲にした事実は変わらない。だから裁きは必要になる。
納得するしかなかった。
大切なのは私たちが忘れないことだって、フェイトさんが言ってたっけ。
私は忘れない。
あの人だって、大切なものがあって、それをただ守りたかっただけなんだってこと。
...ちょっとシリアスになっちゃったけど、そのおかげでりーちゃんとクレアさんは無罪放免。二週間程で普通の生活に戻れた。
クレアさんと言えば、幼なじみのエレナさん。
なんと、聖王教会の偉くてそれはもうすごい人が治療を担当してくれることになったらしい!
りーちゃんが教えてくれたけど、話を聞いたクレアさんが号泣していたらしい。
クールな人だと思っていたので、とっても意外である。
何やら八神はやてさんの伝手らしい。
ちなみになのはさんからはサインをもらい損ねた。
今度もらって来て!とりーちゃんに頼もうとしたが、管理局はしばらくお休みにするとのこと。やはりほとぼりが冷めるまでは静かにしていたいらしい。残念。
ちゃんと今回のことで大変な心配をかけたので、おばさん(りーちゃんのお母さん)には会いに行った。
相変わらず綺麗だったけど、りーちゃんの無事が分かってずっと泣いてたなぁ。
ちなみに連れて行ったフェイちゃんを見て「いつの間に!?大き過ぎないかしら!?」と私みたいな勘違いをしていた。
流石に娘には見えないと思う。
結構大人っぽいし。
レンちゃんが頑張って話掛けようとしていたが、そもそもレンちゃんが照れ屋さんなのでなかなか距離が縮まっていない印象。
アドバイスしたら、顔を真っ赤にして怒られ罵倒された。相変わらずの酷い扱いである。
そうそう、レンちゃんと言えば今回の事件がナカジマジムのみんなにバレてしまった。
何やらヴィヴィオちゃんがなのはママに会えた嬉しさのあまり口を滑らせてしまったらしい。
元からみんなほぼなのはさんたちの関係者らしく、恐がれるかと思いきや普通に受け入れていた。
やっぱりな。
だと思いました。
ですよねー。
だそうです。
フーカ師匠が一番驚いてたかも。
そんなわけで、レンちゃんをみんなに紹介したのだ。
年頃的にはヴィヴィオちゃんたちより幼く見えるからか、ものすごく可愛がられていた(怖い意味じゃないぞ)。
恥ずかしがっているのか怒っているのか分からないレンちゃんが可愛かったので、写真を撮ってリーナさんに送っておいた。
飛び蹴りを食らった。痛かった。
正式にナカジマジムに通うことになったのはいいものの、レンちゃんがいないとダメな私が大会に出れるかは微妙。
でもいいんだ、守る為に強くなれる場所が出来たから。
運動は体にいいからね!
気になってる人もいるだろうから教えておくと、イズナちゃんとミラちゃん。
脱獄したらしい。まさかのプリズンブレイクである。
最も正確には取り調べ中の独房から逃げちゃったみたいだけど。
フェイトさんが離れてる隙に、大分強引な逃げ方をしたとのこと。
またレンちゃんを狙いに来るのかな。
その時は、今度こそお話を聞かせて欲しいと思う。
ちなみにフェイトさんが言っていた、私達の避難のお話。
研究所のセキュリティとりーちゃんが側にいるということで、とりあえず保留となった。下手に移動するより目立たなくていいそうだ。
すっかりここでの生活にも慣れてきたので、素直に嬉しかった。広いし。
そんなわけで。
それなりの平穏がまた訪れていた。
日常がなくなってしまった、よよよ。とか言ってた頃が最早懐かしい。
ん?長々と喋ってるけどどうしたのか?
誰に向かって言ってるのかって?
そりゃ決まってるでしょ。
「聞いてますか星宮さんっ!!」
「ひゃいっ!?」
現実逃避です。
「貴女という人は!毎日毎日!今度は何ですか!?おばあさんですか!?おじいさんですか!?猫!犬!うさぎ!」
「狸です。」
「珍しいっ!?」
また遅刻してしまった。
車に轢かれそうになった狸を助けたのだが、その狸にお弁当を盗まれてしまい、ちょっとしたお伽噺みたいな展開を味わってしまった。
こうしている間にも先生の怒声は響き続けている。
「何ていうか。安心するよねぇ。」
「はい、日常という感じですね。」
「相変わらずアニメ見たいな生活してるわねぇ、真のやつ。」
何故かほっこりしている三人組。
お説教されてる私に平和を感じないで欲しい。そろそろ終わる頃かな?
「先生、この子の見張りは今日から私がしますので。」
...ん?何やら聞き覚えのある声が。
「あ、すっかり忘れてしまいました。すみませんね。貴女、星宮さんとお知り合いだったんですか?」
「ええ、幼なじみですので。」
な、ななな...!?
「何でりーちゃんがここにっ!?」
「皆さん、紹介します。本日からこのクラスに転校してきた、リーゼ・グレーデンさんです。」
「リーゼです。よろしくお願いしますね。」
当たり前のように自己紹介を済ますりーちゃん。
「あー!?テレビで見た人!アニメみたいな展開じゃん!?」
クラスがざわついている。
ほとぼり冷めてないみたいなんだけど?
困惑する私にりーちゃんが耳打ちする。
「貴女を護衛する為です。それに、私も真と一緒に学校行きたかったですし。」
「だからってそんな簡単に...。」
「権力とはそういうものです。聖王教会系の学校でしたから、潜り込むのは簡単でした。」
「悪者みたいなこと言ってる...。ちょっとくらい教えてくれても。」
りーちゃんは悪戯っぽく笑う。
「びっくりさせたかったのです。これからよろしくお願いしますね、真♪」
してやったりと言うような彼女の笑顔を見て、再会したあの日と、彼女を一度失ったあの瞬間を思い出す。
もう二度と失いたくない。
レンちゃんを狙う人がいる。
これからどんな危険が待ち受けているかも分からない。
だけど、この笑顔だけは守り通す。
「うん。よろしくね、りーちゃん♪」
私達の日常は、始まったばかりだ。
「お説教もまだ始まったばかりですよ、星宮さん?」
「最後くらいキレイにまとめさせてぇ!?」
第20話『Synchrogazer』
「何とか終わりまで来たね!」
「続きがあると聞きましたが?今までは少し長めのプロローグです。」
「長すぎない!?綺麗にまとまってたしこれで終わりでも」
「ダメです。次回は簡単なアンソロジーなオムニバスで行きます。」
「尺稼ぎだ!?」
「私達の戦いはこれからです!」
「それ本当に続くんだよね!?」
※続きます。
ここまで見て頂いた方、本当にありがとうございます。
少しでも真たちが好きになってもらえたら幸いです。
第二期作成予定ですので、もしご興味があればこれからも宜しくお願い致します!
設定まとめとか需要があれば書きますね()