魔法少女リリカルなのはS.G.   作:月想

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明けましておめでとうございます!
今年も宜しくお願い致します(ペコリ)
今年は大体週刊連載を目指します!
今回はちょっとした小話を集めてみました。


閑話小話
閑話『Little Tales』


◼️□『あたしの帰る場所』□◼️

 

 

「レンちゃんってさ、リーナさんのこと好きだよね。」

「はぁ!?」

 

顔が真っ赤になる。勿論怒りからだ、恥ずかしいからじゃない。

 

「だってリーナさんの言うこと聞くし、あの時もリーナさんのとこに帰れて良かったって。」

「だからって好きってことになるか!別に好きじゃねー!」

 

こいつはやっぱりバカだ。

まったく、誰があんな変人好きなもんか。

 

「でもリーナさん、レンちゃんとお話してる時とか、笑顔がちょっと違うんだよ?何だか優しいっていうか。お母さんみたい。」

「っ...。あいつは、お母さんなんかじゃ...。」

 

私に、母親なんていない。

いないんだ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「あのバカが変なこと言うから、飯の味分からなくなったじゃねーか。」

 

手持ち無沙汰にリビングに向かう。

 

「大体急に何の話なんだよ。何でそうこっぱずかしい話ばっかり...。」

「恥ずかしい?」

「うわ!?」

 

...忘れてた。留守番はあたしだけじゃなかった。

うちの新入り、フェイルノート。

リビングのソファーに座って、何やら読書している。

 

「何が恥ずかしいの?」

「何でもない!関係ないだろ!」

 

興味を無くしたように本へと目を落とすフェイルノート。

 

「...。」

 

向かい側のソファーの対角線に座る。

こいつのことはよく分からない。

同じアイアンメイデンってことしか知らない。

いっつもムスッとした顔をして、笑ってるところを見たこともない。

 

「...何読んでんだよ。」

「この世界の辞書よ。私たちの時代とは違う言葉がたくさんある。学んでおかなければ困るでしょう。」

「...あっそ。真面目なんだな。」

「あなたは真面目じゃないの?」

「この世界のことなんかどうでもいい。」

「そう。その割には楽しんでいるみたいね。」

「は?」

 

楽しんでる?あたしが?

 

「星宮真とリーナ・バレンシュタイン。あの二人といる時は、あなたはいつも笑っている。」

「んな!?わ、笑ってない!」

「笑っているわ。口では憎まれ口を言っていても、気づけば少し笑っている。あの二人のことが好きなのね。」

「ふ、ふざけんなっ!お前まで変なこと言いやがって...!」

 

よく喋ると思ったらこれかよ。

部屋に戻ろう。

みんなしてあたしをからかって楽しんでんだ。

 

「良いことだと思うわ。あなたが大切に思ってるあの二人は、あなたのことを愛している。お互いを思い合える人がいて、帰る場所があるのは素敵なことよ。」

「愛って...!」

 

またこっぱずかしいことを。

あたしは別に帰る場所なんて!

 

「...羨ましいわ。あなたはここで生きていける。」

「な...。何、言ってんだよ...。」

 

急にそんな、悲しそうな顔すんなよ...。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「何だってんだ...。」

 

部屋に帰ったあたしはベッドに座る。

今日は変な日だ。

みんなしてあたしの感情を逆撫でしやがる。

愛してるだと?

家族だとでも言いたいのか。

あたしに家族なんて...。

 

「...。」

 

ふとベッドに寝かしているぬいぐるみに視線がいく。

手を伸ばし、抱き締める。

 

「ふわふわだ...。」

 

これはあたしが覚醒して間もない頃に、リーナがプレゼントしてくれたものだ。

何でもない、くまのぬいぐるみ。

何でもないはずなのに。

 

「あったかい...。」

 

胸のとこがポカポカする。

これを渡された時のことは覚えている。

リーナが少しでも私を笑顔にしようとして、不安そうな顔しながら渡して来たんだ。

可愛いのは、嫌いじゃない。

だから、小さく言ったんだ。

 

「ありがとう...。」

 

そしたらあいつ、すっごい笑顔で喜んでた。

...分かってる。大切にしてくれてること。

私を人として扱ってくれてる。

私は幸せなのかもしれない。

幸せになれるのかもしれない。

だけど。

 

「あたしの、帰る場所...。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「はい!レンちゃんにプレゼント!」

「え?」

 

それなりに大きいラッピングされた箱。

帰って来たと思ったら、いきなり渡された。

 

「今日はレンちゃんがリーナさんと暮らすようになってから、ちょうど一年目なんでしょ?だから、誕生日プレゼント!」

 

...もう、そんなに経ったんだな。

 

「今りーちゃんがケーキ焼いてるんだって!リーナさんはまた別に買い物に行ったみたい。」

「そう、か。...開けていいのか?」

「うん!」

 

包みを破り中身を見る。

中には白い猫のぬいぐるみが。

 

「レンちゃん、くまのぬいぐるみ喜んでくれたってリーナさんに教えてもらったんだ。だから、この子も可愛いし、プレゼントにピッタリかなって。」

「...。」

 

そっか。リーナも覚えてたんだ。

ぬいぐるみを見つめ、抱き締める。

...やっぱり、あったかい。

 

「その。...ありがとう...♪」

 

今度は少し、柔らかく、ハッキリと言えた気がする。

今はどうしたらいいか分からない。

でもいつか、答えが出るその時までは。

 

ここがあたしの帰る場所みたいだ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

◼️□『深愛』◼️□

 

 

「本当にすまなかった。」

「いいんです、先輩は悪くないですから。」

 

そう言って私が殺そうとした後輩は、私を許した。

 

「悪くないなど...。」

「もうその話はなしです。それより、紹介してくれるのではないのですか?」

「...分かった。借りは必ず返す。」

 

強引な後輩だ。

苦笑いしつつ、病室の扉を開く。

 

「あら、来たのね。」

 

今日はリーゼとエレナを会わせると約束した日だ。

 

「リーゼ、こちらがエレナ。エレナ、リーゼだ。」

「紹介下手くそですか...。」

「む?」

 

ため息を吐くリーゼ。

何か問題があっただろうか。

 

「後輩のリーゼ・グレーデンと申します。先輩からお話は聞いていました。...ここまで綺麗な方とは思っていませんでしたが。」

「ふふっ、クレアの後輩にしては口が上手いのね。幼なじみのエレナよ。よろしくね。」

 

互いに握手を交わす二人。

 

「お前たち、私を何だと思って...。」

「口下手な先輩。」

「口下手な幼なじみ。」

「枕詞をいきなり合わせるな。」

 

まったく。

端的に紹介しただけでこの扱いか。

 

「気が合うようで何よりだ。私は飲み物でも買ってこよう。」

 

口下手とは何だ。

確かに言葉は足りなかったと思うが、私だって色々と勉強しているのに。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「拗ねちゃったみたいね。」

「ええ、先輩はあれで意外と繊細ですから。」

 

...さて、と。

クレアがいなくなって、上手く二人きりになれた。

私は立ち上がりクレアの後輩ちゃんに近づく。

 

「どうしました?」

「聞いておかないとってずっと思ってたの。」

 

そのまま壁に追い詰めるように近づく。

 

「な、なんですか?」

「...。」

 

ドンッ!

 

見事に壁ドンを決める。

初体験だ。

 

「あなた、クレアのこと好き?」

「へ?...好きですけど、後輩として。」

 

後輩として。

 

「そう。じゃあ大丈夫ってことでいいのね?」

「大、丈夫...?」

 

後輩ちゃんの目を真っ直ぐ見て言葉を続ける。

 

「クレアは私のクレアなの。」

「あなたの、クレア...?」

「そう。だから、リーゼちゃんが友達なのか。それとも敵なのか。ハッキリさせたいでしょ?」

 

クレアが私以外を見るようになったら困るもの。

クレアは私の大切な幼なじみ。

それだけじゃないけど。

 

「あぁー...。そういう...。」

 

後輩ちゃんは冷や汗を流しつつ、納得したような声を漏らした。

 

「安心してください。私の本命は別にいますので。」

「...そう。なら良かった。あなたとはいいお友達になれそうね♪」

 

手を離し、ベッドまで戻る。

戻ると同時に病室の扉が開く。

 

「買って来たぞ。...そんなところに座って何をしているんだ?リーゼ。」

「い、いえ...。何でも、ありません。」

「?そうか。」

 

クレアは後輩ちゃんにジュースを手渡し、私にいつものスポーツドリンクを渡してくれる。

 

「ほら、お前の好きなやつだ。」

「ええ。ありがとう、クレア...♪」

 

そう、私も大好きよ。

 

 

 

実は同化していたフェイは、後にこう感想を残している。

「かなり恐怖を感じた。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

◼️□『比翼の鳥』◼️□

 

 

「イズナ、ごはんの支度出来たよ。」

「ありがとですよミラ。何を作ったんですか?」

 

ミラと呼ばれた少女がVサインを以て答える。

 

「298円。」

「ごちそうですでーす!」

 

廃墟と化した郊外のボロ家。

そこが彼女たちの家だった。隠れ家と言った方が適切だろうか。

 

彼女たちは少し前に脱獄したばかりだ。

管理局でも選りすぐりの、優秀な執務官と相対したのが運の尽きだった。

気づけば豚箱行きである。

ただ天は彼女たちを見捨ててはいなかった。

執務官は常に張り付いているわけではない。

チャンスがあった。

幸い彼女たちは少々『特殊』であり、デバイスを取り上げられることはない。

厄介な執務官が離れている間に力を解放し、まんまと逃げ果せたというわけだ。

 

「んー!ミラが作ったカップ麺は格別です!」

「ん。愛情が、隠し味。」

 

298円のカップ麺を幸せそうに食べているのには理由がある。

端的な話、お金がない。

彼女たちは今まで魔獣狩り等で生計を立ててきたが、現金は持ち歩く派だったのだ。

捕まり、そして脱獄したことで今までの報酬がパアである。

今は何とか隠れ家の隠し金で生活出来ているが、長くは続かないだろう。

 

「ごちそうさまでした!」

「お粗末さまでした。」

 

二人はカップ麺を食べ終わると、幸せな表情から一変。ため息を吐く。

 

「...ごめんなさいミラ。私のせいです。いい仕事だと思ったのです。」

「...ううん。イズナは悪くない。」

 

ミラがイズナに寄り掛かる。

それをイズナが肩に手を回して横向きに抱き締める。

 

「私たちの全力も、あの管理局には効きませんでした。」

「上には上がいる。」

「捨て身の全力ですよ?それをあんなに簡単に...。」

 

ミラが震える手を握る。

 

「...一人で失敗作でも、二人なら本物。イズナが言ったんだよ?」

「ミラ...。」

 

本当に微かに微笑むミラ。

 

「イズナと一緒なら、何も怖くないよ?」

「...私が、ミラを守ります。絶対の、絶対です。」

 

より強く抱き締める。

お互いにお互いの存在が世界であり、全てを賭けてでも守りたい命。

 

「だから最後まで。一緒にいてくださいね。」

「...ん。」

 

お互いしか頼れない儚き少女たち。

二人が流れ星に願いを捧げるのは、もう少し先の話になる。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

□◼️『愛おしい日々は永遠に』◼️□

 

 

「真ちゃん!オーダーお願い!」

「はい只今ー!」

 

昼間のランチタイム。

今時珍しいチェーンではない、個人経営のファミリーレストラン。

『SONG』という名のその店は、隠れた名店としてここ一帯の仕事人間、学生に有名である。

全然隠れていないのはともかく、今日もそのそこまで大きくない店は大盛況。

注文を聞いては料理を運び、料理を運んではまた注文を聞く。

誰かが退店すれば誰かが入店する。

ランチタイムは3時間のはずが、永遠のようにも感じる。

驚くべきことに店員はシェフを入れて4人しかおらず、一人はアルバイトの学生である。

にも関わらず、店の回転はなかなかのもの。

少数精鋭とはこのことだと言わんばかりに回っている。

 

「お待たせ致しました!鯖の味噌煮定食に、チーズハンバーグ定食です。ごゆっくりどうぞ!」

 

昔ながらのファミリーレストランのはずが、和洋中何でも御座れのチェーン店顔負けの品揃え。

料理を担当しているのは筋骨隆々のドラゴンのような髪型の男性と、落ち着いていて、大人な雰囲気を醸し出す黒髪の女性。

ホールスタッフは少し軟派な印象のある髪を薄く染めた男性と、先程触れたアルバイトの少女である。

絶妙に噛み合ったコンビネーションで注文を捌いていく4人。

 

「...見事だ。」

「確かにすごいけど。...さっきから手が止まってるよクロノ。早く食べないとお店に悪いだろう。」

「おっと、悪い。相変わらず真面目だな、ユーノ。」

「君が大分砕けただけじゃないか?」

 

ちょっとした有名人じゃ済まないかなりの重役の二人なのだが、店の賑わいに上手く隠れられているようで、周りを気にせずお互いに名前を呼び遇っている。

 

「...美味い。最近食べた中じゃ一番だ。」

「それ、奥さんに聞かれたらまずいんじゃないかな?」

 

ハンバーグの味に舌鼓を打っているクロノを嗜めるユーノ。

 

「こういうところの料理と、家の料理は別だろ。ま、独り身には分からないか。」

「うるさいなぁ...。」

 

また始まったとユーノは思う。

 

「で、なのははどうなんだ?」

「元気そうだよ。長めの休暇を取って、ヴィヴィオと過ごしてるって。」

「じゃなくて。」

 

クロノが不満そうに告げる。

 

「いつになったら付き合うんだ。」

「だからボクたちはそんなんじゃないって!」

 

何回言わせれば気が済むのだろうか。

会うたびに聞いてきて、まるで親戚の叔父さんである。

 

「またまた。遠慮してるだけだろ?」

「だから違うって。ボクたちは家族みたいなもので、この距離感がちょうどいいんだ。そういうのは、ないよ。」

「ふーん。」

 

つまらなさそうに返事をする。

これは1ミリも信じてないな?

 

「ヴィヴィオだってお前に懐いてるだろ?なのははいつまで経っても無茶ばかりするし。誰かが側で支えてやるべきじゃないのか?」

「それは...。支えるよ、ボクやフェイトが。友達だからね。」

「はぁ...。」

 

そういうことじゃないと言わんばかりにため息を吐くクロノ。

 

「はいはい、そうですか。」

「そうだよ。そっちこそ、フェイトにそういう話はないの?」

「あるわけないだろ?フェイトだぞ?...そりゃモテるらしいが、あいつにその気がまったくないんだ。

あいつもお前と一緒、恋や愛じゃなくて家族と友達がいればそれで満足なんだ。」

「そっか。」

 

ヴィヴィオにエリオ、キャロ。既に三人も子どもがいるのだ、家族や友達が他の人間より遥かに貴重で大切な彼女には、今でも十分過ぎる程に幸せなのだろう。

 

「...なんか、すっかり大人になっちゃったね、ボクら。」

「...まあな。随分遠くまで来たもんだ。」

 

昨日のように思い出せる。

助けを求めるボクに、手を差し伸べてくれた少女。

大人の女性となった今も、きっと誰かの為に走っていくのだろう。

 

「アースラに母さんたちといた頃が恋しいよ。今じゃ書類仕事に部下のやんちゃの後始末ばかりだ。」

「はは。はやてがまた無茶したって聞いたよ。」

「まあ、仕方ないことだ。あいつらの無茶はいつだって、正しいことをしたいって気持ちを通した結果だからな。」

 

ため息を吐きつつ、どこか嬉しそうな顔をしている。

よく知ってる、いつものクロノの顔だ。

 

「...変わってないね、ボクら。」

「...ああ。変わらないよ、オレたちは。」

 

今も昔も、子どもから大人になったとしても。

輝く光はまだ、それぞれの腕と胸にある。

 

「失礼します。デザートの特製プリンとコーヒーになります。」

 

少ししんみりしたボクたちのテーブルにデザートが運ばれてくる。

 

「あれ?頼んでないのですが?」

 

不思議に思うボクたちに、少女がはにかみながら答える。

 

「店長からサービスです。いつもお疲れ様です!だそうです。」

 

顔を見合せるボクとクロノ。

 

「それと...サイン、いいですか?!」

 

モジモジした様子で、少女はサイン色紙を取り出した。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

□◼️『Little Wish』□◼️

 

 

海鳴市。地球と言われる世界は、今日も穏やかな日常が流れている。

 

その海鳴市の小さなカフェ、そこに5人の美女が集まっていた。

本人たちは普通にしているつもりだが、かなり近寄りがたい雰囲気が出ている。

カフェのマスターは子どもの頃から彼女たちを知っている為、成長したなぁ、としか思っていないのだが。

 

「しかしすずかちゃんもアリサちゃんも久しぶりやな~。」

 

茶髪をセミロングくらいに伸ばした女性、八神はやてが話を切り出す。

 

「本当に久しぶり~。はやてちゃん、その髪型とっても似合ってる。」

「ほんまに?!おおきにな、すずかちゃん。」

 

紫髪の女性は月村すずか。はやてにとっては一番最初の友達である。

 

「相変わらず仲良しよね、はやてとすずかは。」

「私とアリサちゃんも仲良しだもんね?」

「はいはい、仲良し仲良し。」

「久しぶりなのにアリサちゃんが冷たいよ~...。」

 

濃いめの金髪のキリッとした女性、アリサ・バニングスが、可愛いらしい髪飾りで髪型をサイドテールにした女性、高町なのはを軽くあしらう。

 

「ふふっ、みんな元気そうで良かった。」

 

最後に金髪に赤い目が美しい女性、フェイト・T・ハラオウンが全員の様子を眺めて笑う。

 

この5人はもう10年以上の付き合いとなる。

今は住む世界が(物理的に)違う為、気軽に集まることが出来なくなっているのだが

なのはたちがまた、大変な事件に巻き込まれたのをきっかけに休暇を利用して集まろうという話になったのだ。

 

「元気?心配したのはこっちよ。ね、すずか。」

「うん。通信の時のなのはちゃん、すごく元気なかったし。」

「酷い時はヴィヴィオ、ヴィヴィオ~って泣いてたもんね。」

「わ、わ!?その話はやめて~!」

 

フェイトやはやてという局員と、その知り合いとの通信を禁止され、軟禁されていたなのは。

しかし、通信禁止は地球の友人までは想定していなかったらしく、すずかとアリサが彼女の精神的支えとなっていたのだった。

 

「でもほんまに良かったなぁ。二人がおらんかったら、なのはちゃんも耐え切れんかったかもやし。」

「それは、そうだね。」

「改めてありがとう、すずかちゃん。アリサちゃん。」

 

三人のストレートな感謝にアリサの頬が染まる。

 

「べ、別にいいわよ。お礼なんか。元気なら、それで...。」

「ふふっ、どういたしましてだって♪」

「通訳しないでよ!?」

 

大人になっても、照れ屋な所は変わらないらしい。

幼なじみの相変わらずな様子に、全員が安心したような、嬉しい気持ちになる。

 

「それで?もう一安心なんでしょ?」

「まあね。後処理は大体終わって、後は時間が来るのを待つ感じかな。」

「うん。こっちも何とか、片付きそうや。クロノくんにはしこたま怒られてしもうたけどな。」

「すっかり仕事人間よね、みんな。」

 

当たり前のように雑談に仕事の話が入る辺り、すっかり社会人となってしまったようだとアリサは思う。

 

「こっちは良くない。全然良くないよ。ヴィヴィオったら久しぶりに会えたのに、次の日一緒に寝ようとしたら『もう中学生だから、ママと一緒に寝るのは卒業!』って言い出して...反抗期に突入しちゃったみたいなのです...。」

「それ、反抗期なわけ?」

「あはは、すっかり親バカママだね~。」

 

今度は娘の話。

ちなみに彼女たちは一人として結婚はしていない。

年齢は25。まだいける、まだ舞える。

まだ気にする時ではない。

 

「で、誰か浮いた話はないわけ?」

「「「「...。」」」」

 

流石切り込み隊長アリサ。

デリケートな話題をストレートにぶつけていく。

 

「わ、私はないかな。はやてちゃんは?」

「私!?あ、あはは。なまじ立場があるからか、ガード固いって思われとるんかな?そういう話はないんよ。フェイトちゃんは?」

「私!?...は、はやてと一緒かな。それに、あんまり興味ないし。」

 

普通に流す者、仕事を理由にする者、興味がないとそもそもその気がないだけですとアピールする者。

それぞれのやり方で話題に対して何とか逃走を計る。

そうなると、自然に視線は最後の一人に集中する。

 

「へ?」

 

高町なのは。今や一児の母だが、結婚はしていないしそういう関係の人間もいたことはないと、幼なじみ兼親友たちは認識している。

 

「ユーノとはどうなったの?」

「へ!?ユーノくん!?」

 

アリサがなのはに詰め寄る。

ちなみに、言い出しっぺのアリサはこの話題に参加しているようで

実は自らの近況は聞かれないという裏技染みた手法を使っている。

常に聞き手となることで自分は質問されない状況を作る。

まさに、攻撃は最大の防御である。

 

「ユーノくんは友達だし、そういうのじゃ...。」

「「「「はぁ。」」」」

「何で全員でその反応!?」

 

安心と呆れのため息である。

アイスティーに手を伸ばし一口飲む。

頭を冷やしたようで、なのははあくまでも冷静に語る。

 

「ユーノくんは友達で、家族みたいなものだから。今更そういうのは、ちょっと違うかなって。このくらいの距離感がちょうどいいなとは...。」

「恋も鮮度が命か。」

「それはちょっとおじさんくさくないかな?はやてちゃん。」

「おじ!?や、やっぱり小さい頃からみんなのおかんやったし、感性が歳を越えてしもうて...!」

「あーはやて落ち着いて!大丈夫、まだ若くて綺麗だと思うよ!?」

「ま、まだ...!?」

 

華やかな女子会が一転。

アラサー突入女子会へと変貌してしまった。

フォローしておくが、普段はこんな話はしない。

気の許せる人間が集まった、その反動である。

何故か流れ弾が当たったはやてと自らの頭を冷やそうとアイスティーをがぶ飲みするなのは。

その二人を落ち着かせるのに30分はかかった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「私が悪かったわ。この話は止めましょう。」

「「「「うん...。」」」」

 

悲しい事件だった。

この話題はしばらく封印しなければ。

もっとも、すずかだけは後でアリサを問い詰めようと考えていたわけだが。

 

「...でもやっぱり、三人が魔法使いで、今は別の世界に住んでるなんて。不思議だよね~。」

「そうよね。もう10年以上経つのに、未だにおかしいと思うわ。」

 

世界的に見ても稀有な人生を歩む三人の幼なじみを見て、所謂『普通』のすずかとアリサは呟く。

 

「私から見ると、魔法のないこの世界の方が新鮮なんだけどね。」

 

唯一魔法の世界で生まれたフェイトが答える。

 

「最初はユーノくんがなのはちゃんと会ったのが始まりやったっけ?」

「うん。ジュエルシードを集める為に無理してたユーノくんを、私が拾ったのが最初だね。」

 

なのはは回想する。始まりのあの日。

今でも思い出せる。

初めて魔法を知り、使い、戦ったあの日のことを。

 

「拾った...拾ったのよね、確かに。」

 

アリサちゃんがぷぷっと笑いを吹き出す。

 

「フェレットだったから、拾ったで合ってるよ。」

 

答えるすずかちゃんも口元を抑えて笑っている。

 

「あ、あはは...。ユーノくんが普通の男の子だったのは驚いたけど。そこからフェイトちゃんに会って、友達になって。」

 

最初は助けてもらったと思ったら、攻撃されて。

その後何度もぶつかって。

結局フェイトちゃんは大切なものを失ってしまったけど、それでも私と友達になってくれた。

 

「...なのはがいてくれたから、私はみんなと出会えた。だから、今もこうやって笑ってられる。」

「そんな。私こそフェイトちゃんがいたから、色んな人たちと出会って、仲良くなれたんだよ?」

 

初めて名前を呼び合ったあの時。

今もこうして続く縁になると、未来を想像出来ていただろうか。

 

「それを言うなら私もや。二人が助けてくれんかったら、家族みんな、私もここにはおらんよ。」

 

はやてちゃんが微笑む。

闇の書事件。

はやてちゃんを救おうとする4人の守護騎士との激突。

暴走するプログラムをみんなで止めて。

その先に待ってた、悲しいお別れがあって。

 

「あの事件があって、管理局に所属しようって思ったんだ。だから、スバルたちと会えたのははやてちゃんのおかげだよね。」

「色んなことが繋がって、今の私たちになってるんだね。」

「ほんまにな。人生、何があるか分からんもんや。」

 

今まで色んなことがあった。

悲しいことも、嬉しいことも。

これからもそんな日々が、きっと続いていく。

 

「私たちのことも忘れないでよね?」

「忘れないよ。私の大切な、最初のお友達だもん。」

「なのはちゃん...。」

 

忘れない。

救えなかった人。

別れた人。

たとえ簡単に会えない人がいても。

絶対に忘れない。

一つの別れと、一つの出会いが。

今の私を作っているから。

別れた人たちがもし、私たちを見ていて、何か伝えられるとしたら。

いつだって、胸を張ってこう言えるように、今日を生きていこう。

 

「私は笑顔でいます、元気です!」




現れる二振りの聖剣。
再び引き裂かれる日常。
訪れる敗北。
明かされる真実は、破滅への残響となり。
無垢な命は絶望に絡み捕られて、何も出来ないまま...。

次回、魔法少女リリカルなのはS.G.
第二部『Antiphona』
始まります。
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