魔法少女リリカルなのはS.G.   作:月想

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ギリギリセーフ()


必ず完結させます。信じて。←


第22話『銀のヤドリギ』

「照剣、ガラディーン。クラレントのマスターを発見。捕縛します。」

『来るぞ!』

 

ガラディーンと名乗った少女が一閃。

遠距離から長大化した炎の剣を振るう。

とっさに真は、イズナを抱き上げ飛び退く。

初撃は回避したものの、追撃とばかりに今度は切り下ろしが迫る。

 

「やばっ!?」

 

イズナを抱き締め身を転がすことで何とか回避に成功する。

 

「は、離せっ...!」

「ちょっ!大人しくしててよ!?」

「隙だらけ、です。」

 

かつての敵が自分を助けに来たという事実。理解出来ない状況を飲み込めないイズナが足を引っ張り、ギリギリの回避が続く。

 

「しょうがない、か...!ごめんね、イズナちゃん!」

「は?」

 

何を思ったか、真はイズナを文字通り離れた場所へ放り投げる。

予想外の行動に反応出来ず、イズナは見事に宙を舞った。

 

「諦めた...?」

「とんでもですかぁ!?」

「覇王流!旋衝波ッ!」

 

真が拳を振り抜くと、まるで小さな嵐のように魔力の風が撃ち出された。

風は真っ直ぐイズナの元に向かい、地面に落ちる直前にクッションとなった。

 

『上手くいったな。』

「うん!私本番には強いタイプだから!」

「投げるなら先に言うですよ!!」

 

無事(?)イズナを戦闘から遠ざけることに成功した真。

仕切り直しとばかりに覇王流の構えを取る。

 

『見ろよあれ。クラレントなのに剣じゃなくて拳だってよ。面白いな、あいつ!』

「ラン...今はふざけてる場合じゃないよ。」

 

少女は自らの中にいるガラディーンと会話しているようだ。

よく見知った光景に、改めて違和感と驚きを感じる真。

 

「何でイズナちゃんを襲うの!?」

「...教える必要はありません。」

「何でレンちゃんのこと知ってるの!?」

「話す必要はありません。」

「けち!」

「けちじゃ、ないです...!」

『あはは!悪口に耐性無さすぎだろお前!』

「ら、ランうるさい...!」

 

茶化すように笑うランと呼ばれたアイアンメイデン。

誤魔化すように少女は真に接近。

剣を振り上げ切り裂こうとするが。

 

「...!」

「あぐっ!?」

 

真のカウンターが左頬にヒット。

そのまま拳の連打からの、左足蹴りが少女に容赦なく突き刺さる。

 

事件が終わってからも鍛練を続けていた真。

その力は以前より洗練され、一部先輩たちの技を再現するまでになっていた。

カウンターはヴィヴィオから、決めのキックはミウラから学んだものだ。

奇しくも師匠であるフーカと同じく、真はナカジマジムの仲間たち全員の薫陶を得ていたのであった。

 

『おいおい。大丈夫か?見事にフルコンボじゃないか。』

「っ...お日さまが出ていれば...。」

 

少女は悔しげに立ち上がる。

ガラディーンの方は相変わらず余裕そうである。

 

『なあ、もうそろそろ帰らないか?今の時間じゃ効率悪いしさ。』

「ダメだよ、まだ始末も出来てないのに...。」

『大丈夫だって。クラレントをここで見つけるのは想定外だし、本気になりゃ後でまとめて片付けられるだろ。』

「でも...。」

『無理すんな。あたしらはまだ日が浅いんだ。焦って無駄にケガすることもない。そうだろ?』

「...分かった。ランが、そう言うなら。」

 

少女は踵を返し、イズナと真を交互に見遣る。

 

「次は、必ず...。」

「待って!まだ話が...!」

 

捨て台詞を残し、少女はそのまま飛行。

真たちを置いて逃げ去ってしまった。

 

「行っちゃった...。」

『歯応えのないヤツだったな。』

「まだ本気じゃなかったみたいだけど...。」

「おま、え!」

 

ガラディーンの少女について考える真に足を引き摺りながらイズナが近づく。

 

「私はいいから、ミラを!ミラ...ミラ、を...。」

「イズナちゃん!?」

 

糸が切れたように倒れるイズナ。

真が抱き止めるが、その体は傷だらけで一刻を争う状態だと一目で分かった。

 

「病院...!病院行かなきゃっ!?」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

「喰らいなさいっ!」

 

不可視の矢を放つリーゼ。

突然現れたアロンダイトと名乗る女性。

引き摺られていた少女は犯罪者だが、私的に死刑になどさせるわけにはいかない。

そう思い女性から殺気を感じた瞬間、フェイルノートを纏い矢を放っていた。

しかし。

 

「うふふ。」

「なっ!?」

 

女性はまるで見えているかのように、不可視であるはずの矢を剣で切り落とした。

 

「このっ!」

「あらあら。」

 

間髪入れず矢を連続で放つが、いずれも容易く切り落とされてしまった。

 

「フェイルノート。見えない矢が必ず相手を射抜くことから『絶弓』なんて呼ばれていたみたいだけど、案外大したことないのね。」

「何故矢の位置が...!」

 

女性は得意気にその豊かな胸を揺らす。

 

「知りたい?知りたいでしょうねぇ。でも教えないわ!」

「っ...!」

『きゃはは!すごく悔しがってるよママ!』

「ええ、私はすごく楽しいわアートちゃん。」

 

幼い少女の笑い声が響く。

リーゼは苛つく心を抑え、なぜ矢の位置を把握出来るのか考える。

 

『マスター、音よ。』

「音...?」

 

フェイルノートが冷静に推測を述べる。

 

『矢が空を裂く音。それを頼りに矢の位置を判断している可能性があるわ。』

「そんな...達人か何かですか、あの人。」

『あれ、バレちゃったみたいだよママ?』

「そうみたいねアートちゃん。最低限知恵は回るらしいわ。だけど、それだけじゃないのよ?」

 

楽しげに女性が囁くと、手に持つ剣が『変化』していき槍の形状となった。

 

「形状変化!?」

「そーれ!」

 

女性は槍を投擲、とっさに障壁を展開し防御するリーゼ。

 

「ぐっ...!?」

『っ!?マスター...!』

「ばーん...♪」

 

槍が変化し、巨大な爆弾となって炸裂した。

防ぎ切れず派手に吹っ飛んでしまう。

 

「あらあら。つまらないわ。」

『よわーい。つまんないね、ママ。』

「そうよねアートちゃん。期待外れもいいところ。」

 

再びその手に剣を精製し、ゆったりと近づいていく。

リーゼを見下ろし、刃を突きつける。

 

「くっ...!」

「じゃあ、さようなら。か弱いマスターさん。」

『あ、ママ?』

 

振り下ろす瞬間、女性の背後から巨大な魔力砲が撃ち放たれた。 瞬時に障壁が展開され虚しくも直撃はしなかったが。

 

「あら、ありがとうアートちゃん。」

『どういたしまして!じゃあ、後でお菓子食べてもいい?』

「困らせないでアートちゃん。こんな時間にお菓子なんて食べたら...虫歯になっちゃうかもしれないじゃない!」

「ハァ...ハァ...!」

 

アロンダイトの障壁によって防がれてしまった砲撃は、気絶していたはずのミラが放ったものだった。

魔力を使い果たしたようで、バリアジャケットの維持すら出来なくなっている。

 

「鼬の最後っ屁。まあ、無駄だったみたいだけど?」

「無駄では、ありません。」

「あら?」

 

ミラの最後の一撃は防がれたが無駄ではなかった。

女性の手足にはリーゼが放ったバインドが嵌まっていたのだ。

 

『分かっていたところで、防ぎきれなければ意味はない!』

「ディバインバスター!!」

「!」

紫色の極光が女性を包む。

ゼロ距離砲撃。

確かに手応えはあった。

 

「...?」

『いない...?』

 

光が収まると、女性の姿が完全に消えてしまっていた。

流石に跡形も残らないわけがない。

逃げられたことをリーゼは悟った。

 

『退いてくれたのならマシよ。かなり危なかったわ。』

「そう、ですね...。」

 

あと一歩で負けていた事実に歯噛みするリーゼ。

新しい戦いの始まりを感じつつ、再び気絶したミラに気付く。

 

『どうするの?』

「どうするって...。放っておくわけにはいかないでしょう。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

◼️□研究所◼️□

 

「それで、二人共無事に悪い子を回収して、わざわざこの研究所に連れて来たと。」

「ごめんなさいっ!」

 

戦闘を終えて帰宅した真とリーゼ。

お腹を空かせて待っていたリーナ博士が始めに見たのは、彼女たちが抱えるぼろぼろになった女子二人だった。

 

「仕方ないでしょう。病院に連れて行けば管理局に連行されます。話も聞けずに連れて行かれては困りますから。」

「いやりーちゃんも一応管理局じゃん。」

「今はお休み中ですので。真も、分かっていてここに連れて来たのでしょう?」

「あ、あはは。...まあね。」

 

眠る二人を横目で見る。

こうしてみれば、やはり自分たちと変わらない普通の女の子だと真は思う。

 

「二人揃って偶然他のアイアンメイデンに出会うなんて。あの子たち、あなたたちを頼って逃げてきたのかしら?」

「目標を擦り付けようとしたのではありませんか?彼女たちはフェイとレンも狙っているようですし。」

「り、りーちゃん...。」

 

ガラディーンとアロンダイト。

二振りの聖剣が現れ、クラレントとフェイルノートを狙っている。

 

「興味深いわね。新しいアイアンメイデンなんて、調べてみたいわ。」

「はぁ。緊張感なんてお構い無しかよ。どうでもいいけど治るのか?アイツら。」

「そこは任せなさい。医療魔法もちょちょいのちょい。だって私は天才だもの!」

「はいはい。」

 

自信満々のリーナ博士に応えるように、黒髪の少女、イズナが目を覚ます。

 

「っ...。ここは...。」

「目が覚めたんだね!良かった...。」

「!?ば、化け物っ!?」

 

周りを窺う前に視界に飛び込んで来た真に驚いたようで、イズナは咄嗟に距離を取る。

 

「ば、化け物って...。あはは。私、星宮真。あなたはイズナちゃん、だよね?」

「気安く呼ぶな、です!」

 

敵意を露にするイズナ。

 

「何ですかその態度は。真がいなければ貴女は死んでいたんですよ!」

「ま、まあまあ。落ち着いてよりーちゃん。」

「っ...?ミラ!?ミラ...!」

 

すぐ隣に眠るミラを視界に納めた途端、取り乱してしまう。

 

「寝ているだけです。彼女は私が保護しました。」

「良かった...。ミラ...本当に無事でっ...。」

 

嬉しそうに涙を流すイズナに、感謝を述べないことに文句を言おうとしたリーゼも押し黙ってしまう。

 

「...私たちはイズナちゃんたちと戦うつもりはない。戦うつもりなら、治したりしないでしょ?だから大丈夫。お話を聞かせて欲しいだけなんだ。」

「...。」

 

真たちに害する気持ちがないのが分かったのか、敵意が少し薄らぐ。

 

「...貴女たちにクラレントを奪うよう依頼したのは先程の彼女たち。失敗した貴女たちを今度は彼女たちが始末しようとした。ここまでは合っていますか?」

「...。」

 

無言でリーゼの問いに頷く。

そこにリーナが思い出したように口を挟む。

 

「さっき検査して分かったんだけど。あなたたち二人、もしかしてアイアンメイデンだったりする?」

「は?」

「へ?」

 

リーナの突拍子もない質問に真もリーゼも間の抜けた声を上げる。

 

「レンレンもフェイちゃんも何か感じなかった?同じアイアンメイデンに会った時の違和感、みたいな?」

「...ああ、最初にこいつに襲われた時感じた違和感。フェイとガラディーンに会った時と似たような感覚だった。」

「にしては変だわ。デバイス本体が変化して戦うなんて。」

 

思い思いの推察に苛立ったように、イズナが口を開く。

 

「私たちはアイアンメイデンじゃないです。...私たちは、『失敗作』なんですから。」

「失敗作...?」

「...ミストルティン。それが私とミラの体に埋め込まれた『呪い』の名です...。」

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

私は孤児だった。

本当の歳も、名前も分からない。

気付いた時には独りで、大人に捕まって、売りに出された。

私と同じくらいの子どもが沢山集められていて、研究所みたいな場所に買われたらしい。

 

私たちは実験台だった。

聖遺物、俗にロストロギアと言われるモノを生体に融合させ、兵器として利用しようという話だったらしい。

何故わざわざそんなことをするのかも教えられなかったが、どうせ優秀な魔導師を凌駕する私兵が欲しかったとかそんなところだろう。

毎日一人一人、連れて行かれてはいなくなっていった。

私たちは何となく理解していった。

次は私が死ぬ番だろうか、君が死ぬ番だろうか。

考えることはそれだけ。

辛くて怖くて、震えが止まらなかった。

でもその中で、一人だけ恐怖を浮かべずにただじっとしている女の子がいた。

真っ白な長い髪の、キレイな女の子。

いつも眠そうで、食事の時だけ本当にわずかに、嬉しそうにする子だった。

だから私は聞いたんだ。

 

「こわく、ないの...?」

 

すると女の子は話かけられたのが自分だと思わなかったのか、少しキョロキョロした後不思議そうに答えた。

 

「こわいの?」

「こわいよ...しんじゃうんだよ、わたしたち。」

 

そう返すと、女の子は少し考えた後。

 

「でも、きのうのごはん。すこしおいしかったから。」

「え...?」

「きょうのごはんも、おいしいかも。」

 

わずかに微笑んで、答えてくれた。

 

ミラはあの地獄の中で、希望を持っていた。

ご飯が昨日より少しおいしいかもしれないとか、そんな小さな希望だったけど。

私に、生まれて初めての希望を見せてくれたんだ。

 

ついに私たちの番が来た。

昨日のご飯は今までで一番おいしかったねと笑い合った。

 

だけど、私たちは生き残った。

ここにきて聖遺物を分けて一体化させる方針に変更したらしかった。

 

聖遺物ミストルティン。

伝承によればそれは武器ではあったが、剣かはたまた弓か。

どちらか定かではないという代物で、その不確定さを概念として持つが故に、それぞれの形に落とし込めたらしい。

 

仲が良いと見なされた私たちが実験台になり、まんまと適合してしまった。

私が剣のミストルティンを。

ミラが弓のミストルティンを受け入れた。

 

ただ問題があった。

そもそも人体に聖遺物を融合させるなど、無理があったのだ。

馬鹿みたいな話です。

聞いただけでも、そりゃ無理でしょ?って思うですよ。

力を使えば使う程、私とミラは命を削る。

研究者たちは私たちを指してこう罵倒した。

 

「失敗だ。」

「失敗作め。」

 

私たちは力を解放し、研究所を破壊して逃げた。

それ以降は知っての通り。

生きるために力を使って、ミラと二人で生き抜いてきた。

話せないこともやった。

私たちは、悪い子だ。

でも、後悔なんてしない。

贅沢なんていらない。

いい人間じゃなくたっていい。

ただ一つ。

 

私たちは一緒に、おいしいご飯を食べていたいだけなんだから。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

◼️□深夜・リビング◼️□

 

「まーちゃん、まだ起きていたんですね。」

「あ。...うん。りーちゃんも?」

「ええ。」

 

何の気なしに隣に座る。

月明かりだけが差し込んで、落ち着く気がする。

 

「何だか、前もこんなことあったよね。」

「そうでしたね。今回はアルバムを見ていたわけではありませんが。」

 

二ヶ月前の事件を思い出す。

あの夜の後、私は確かに一度大切なモノを失った。

色んな奇跡が重なって、取り戻すことができた。

 

「りーちゃんは、今日イズナちゃんの話を聞いてどう思った?」

「...ああ言った話は珍しくありません。局員として、力不足を悔いています。」

「...私ね、イズナちゃんと最初からああやって話したいと思ってたんだ。友達を傷つけようとしたことは許せないって思ってたけど。」

「...まーちゃん。彼女たちは犯罪者です。守ったところで裁かれねばなりません。」

「分かってる。だけどさ。」

 

戦っている時も、襲われてボロボロになっている時も。

いつもミラちゃんのこと心配してたな、そういえば。

 

「一緒にいたいだけなんだよ。私とりーちゃんと同じ。犯罪者かもしれない、敵かもしれない。でも、一緒なんだ。」

「まーちゃん...。」

「私守るよ。イズナちゃんも、ミラちゃんも。私が手を伸ばしたの、間違いじゃなかったから。」

 

りーちゃんはため息を吐きつつ、それとは逆に優しい笑顔を浮かべて答えてくれた。

 

「仕方ありませんね。...一緒に守りましょう、みんなを。」

「うん!」

 

月明かりの中、再び誓い合う。

今度こそ取り零さない。

 

私たちが、ぶん守るんだ。

 

第22話『銀のヤドリギ』

 




新たな戦いの始まり。
守る拳は振り抜かれる。
しかし彼女は忘れていた。

その力は決して砕けぬモノではないことを。

次回、魔法少女リリカルなのはS.G.
第23話『弱き者』
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