「剣です。」
フェイトは地上に降り立ち、自らのデバイスを回収する。
「フェイト、さん...。」
「...。」
フェイトは真を一瞥し、黒い少女に向き直る。
「現行犯です。通報もされています。おとなしく投降して下さい。」
一切の感情を挟まず少女に告げる。
「っ...管理局の、閃光...!」
少女の表情に緊張が走る。
真はいい。力を解放しさえすればあんな素人には負けない自信が彼女にはあった。
しかし目の前の管理局員は違う。
その実力は噂で聞いているし、今の虚仮威しの雷でさえあの魔力量。
単独で相手取るには荷が重過ぎる。
「くそっ...!」
少女が逃走を選ぶ。
しかし
「逃がしません。」
フェイトは瞬時に少女の後ろに回り込む。
このスピードこそ、彼女が『閃光』と呼ばれる由縁である。
スタンモードで起動したバルディッシュを躊躇いなく振り抜く。
「あっ...!?」
少女が認識した時にはもう、攻撃は終わっていた。
少女の体は力を失い、地面に崩れた。
「すご、い...。」
真はただ呆然とその光景を眺めていた。
「...星宮真さん。貴女は嘘を吐いていましたね。」
「!...それは...。」
フェイトは一瞬、悲しそうな顔をした後。
再び感情を出さずに言葉を紡いだ。
「貴女を連行します。いいですね?」
「っ...はい...。」
次の瞬間、周囲を極光が包んだ。
「!?」
フェイトは咄嗟に真の近くに移動し、障壁を展開した。
「何て威力...!」
昔受けた親友の砲撃を思い出す。
それに匹敵する威力だ。
何とか障壁で防ぎきるも、周囲はほぼ焼け野原となってしまっていた。
「あの子は...?」
「フェイトさん、あそこ!」
上空に浮かぶ一人の少女。
長い銀髪をツインテールにした可愛らしさとは裏腹に、少女の表情は人形のように固まっている。体には先ほどの少女によく似た黒と桃色の鎧を纏っていた。
目を引くのはその得物。
巨大な砲門を持つバズーカを二丁、肩に背負っている。
先ほどの砲撃は彼女が原因で間違いないだろう。
「...硬い。」
「ミラ...!ごめんなさいです...!下手打っちまったですよ...。」
先ほどの少女は意識を取り戻し、ミラと呼ばれた少女の近くに控えていた。
「ん。イズナは無理しすぎ。今日は帰ろう。」
「はい...仕方ないですね。」
「逃がすわけには!」
即時に反応するフェイト。
「イズナ。」
「はいですよ!」
今度は砲撃じゃない。
辺り一帯を包む閃光。
目眩ましだ。
光が消えた後には、もうすでにミラとイズナは姿が見えなくなっていた。
「...イズナちゃんと、ミラちゃん...。」
真は現れた敵の名前を反芻して、ただ項垂ることしかできなかった。
―――――――――――――――――――――――――――――
◼️取調室◼️
「貴女が何かを隠していることは、昨日話しを聞いた時に気づいていたの。だから近くに控えて、監視していた。」
「監視、ですか...。」
戦いの後、車で任意同行を求められた真は従い、フェイトから取調を受けていた。
憧れの人に信用されていなかったこと、憧れの人を騙してしまったこと。
喪失感と罪悪感が交じり合って、真の感情はぐちゃぐちゃになってしまっていた。
「昨日からお家に帰ってないよね?あの廃墟で何をしていたの?」
「それは...その...。」
『ちっ。見られてたのか。お人好しに見えてなかなか抜け目がないな。』
私が嘘吐くの、下手だったから..。
「...言えないんだね。それは知られては困るから?私に知られたら、貴女の守りたいものが危険な目に遭うと思っているからかな?」
う、バレバレだ...。
レンちゃん、ってやっぱり特別だと思うし。
もしレンちゃんのことがバレちゃったら、管理局の人が調べるって名目でレンちゃんの嫌がることをたくさんするかもしれない。
私は管理局に入りたくて憧れているけれど、『管理局』って組織が単純な正義の味方じゃないのも分かってる。
フェイトさんも管理局の人なんだ。
信じたい、けど。
「私は、信用できない?」
「!そんなこと、ないです!信じたい...けど...」
万が一があれば
危険な目に遭うのはレンちゃんとリーナさんなんだ。
リーナさんが研究所を秘密にしてるのには理由がある。
それを私が捕まったせいで無駄にするなんてできないよ...。
『...傷つける覚悟もないくせに。一丁前に守る気だけはありやがる。』
「...真ちゃん。もし貴女が悪いことをして、それを隠しているのだとしたら。
私は真相を知らなくちゃいけないし、然るべき対処をしないといけない。それが執務官だから。」
分かってる。それがフェイトさんのお仕事だから。
「...でも、貴女とは昨日初めて会ったばかりだけど。真ちゃんが良い子だって私は思ってる。きっと貴女は誰かの為に戦える人。貴女のお友達から聞いたの。自分が狙われていると分かっていて、三人を守る為に離れて行ったって。」
そっか。弓美ちゃんたちがフェイトさんを呼んでくれたんだ...。
「だからこれは、執務官としてではなく。フェイトとして聞きたいの。何か、困っていることがあるんじゃないかな?
聞かせて欲しいんだ。優しい子が困っているなら、私は助けたい。」
「フェイト、さん...!私...。」
ああこれが、私がずっと憧れていたヒーローなんだ。
『...はぁ。どうせ捕まってる時点で話さなくても追われる身なんだ。信じた方が得かもしんねーぞ。』
レンちゃん、私のことを思って...?
『ばーか。信じようが信じまいが関係ねーんだ。勝手にしろバカマスター。』
...ありがとう、レンちゃん。
「フェイトさん。私、フェイトさんのこと、信じます。」
「ありがとう。私も、真ちゃんを信じるね。」
私は今日まであったことを、全部フェイトさんに説明した。
―――――――――――――――――――――――――――――
「なるほど。ロストロギアを狙っての襲撃。さっきの二人もクラレントちゃんが狙いだったってことだね。」
フェイトさんは冷静に話を聞いてくれた。
途中からレンちゃんも外に出て、質問に答えてくれている。
「事情は分かったよ。難しいけど、特殊な出自の知り合いは多いから。きっと警護対象にしつつ、不要な究明を避けるようにできると思う。」
「本当ですか!?」
「うん。だから博士も含めて、私たちがすぐに守れるような場所に移動して欲しい。一度博士に話をしてみてくれるかな?」
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◼️窓口近く◼️
一度窓口近くに出て電話をかける。
リーナさん、分かってくれるかな?
難しそうだけど、精一杯気持ちを伝えて、聞いてもらえるように頑張らなきゃ。
レンちゃんはニュースを流してるモニターをじっと見てる。
端から見ると社会情勢に関心がある小学生といった感じだ。可愛い。
『自動車生産工場にて火災が発生しており、一連の工場襲撃事件と関連があるか』
ニュースが途切れ途切れ聞こえてくる。
...リーナさん出ないな?
『只今新しい情報がございました。監視カメラ映像より容疑者が判明したとのこと。
容疑者は』
「...おい。マスター。あれ確か...。」
ダメだ、繋がらない。寝てるのかな?
「おいバカ!あれ!!」
「何レンちゃん。公共の場でバカバカ言うなんて育ちが悪いとか陰口をぐちぐち」
『繰り返します。容疑者はリーゼ・グレーデン一等空士。』
端末が手から滑り落ちる。
『はいはーい。ごめんね、ちょっと手が離せなかったの。何かあったの?位置情報が縁起悪そうな所になってるけど。...あら?真ちゃん?』
モニターに映される、監視カメラから見たその顔は。
私のよく知る親友の面影があって。
「りー、ちゃん...?」
私の知らない、冷たい目をしていた。
第7話『正義を信じて。』
流れ変わったな。(確信)
リーゼの階級高過ぎ問題を修正しました。←