ヴィオ視点
~フリッジタウン~
ミミッキュの『トリックルーム』の発動にあわせてリキキリンに持たせていた『ルームサービス』が発動してリキキリンの『素早さ』が下がる。
普通に考えれば効果としてはデメリットでしかないんだけどそれは『トリックルーム』下では全く変わってくる。
この世界における『トリックルーム』は比較的ゲームとの相違点が少ない技であり、フィールド内のポケモンを敵味方問わず素早さ関係を逆転させる。
つまり全力の動きが遅ければ遅い程ポケモンの動きが素早くなり、元々素早いポケモンは体の感覚が鈍りまともな動きすら出来なくなる。
空間が歪むという効果の都合上フィールドの各所が歪んで平行感覚すら麻痺してくるというのもあり、慣れていないポケモンはこれを発動されるだけでなにも出来なくなる程だ。
ただこの点は大きいけど明確な弱点として適切な訓練を受けてトリックルームに慣れていれば全く効果が無くなるのだ。
最大の弱点である持続時間の短さは変わらない為に結局短期決戦なのは同じなのである。
「畳み掛けなさい!ミミッキュ!『シャドークロー』!リキキリン!『シャドーボール』!」
「カ、カゲボウズ!ボチ!避け……ッ!」
「遅い!」
「カゲエッ!?」
「バウバウバウゥゥゥウウウ!?!?」
ミミッキュは一気に素早く加速してカゲボウズへと『シャドークロー』で切り裂き、リキキリンはルームサービスにより下がった素早さを逆手にとって瞬時にボチの目の前に移動してゼロ距離で『シャドーボール』を叩き込む。
「カゲボウズ&ボチ戦闘不能!!
勝者チャレンジャーバイオレット!
圧倒的じゃねぇかぁ!」
「うぅ……1+1の答え……2であってるよね?」
相手の子が若干涙目で可哀想だとは思うのだけど……。
「ダブルバトルは足し算じゃないわよ。」
正直掛け算割り算なのよねぇ……ゲーム的に考えるとするなら。
とぼとぼとさっきの子がステージを降りていくとステージ周辺のライトが光り、周囲の声援が大きくなる。
「フリッジステージは最新技術!
観客のボルテージが上がる程ライトアップするシステムだ!その調子でどんどんカマしていってくれよ?」
成る程ね……これは確かに盛り上がりが分かりやすいわね。
これならテストとしてもちゃんと成立する。
とりあえず私はレティ達の所へと戻る。
「ヴィオ姉すごかったぁ!いつの間にあんなのを?」
「元々考えてたのよ。
それに前世だとダブルバトルでの『トリックルーム』なんて良く見る構築だもの。」
「とはいえお前のポケモン達にあの『トリックルーム』を慣れさせるのは相当大変だったんじゃないか?」
「ええ、確かに時間がかかったわよ。
実際まともに動けたのがこの二匹だけだったもの。」
「すごいなぁヴィオ姉……。」
私達が軽く雑談しているとカマーさんがマイク片手に進行を続けていく。
「続きまして!次の対戦相手は……人を選ぶ音楽家!ベシャミ!」
音楽家が人を選ぶのはどうかと思うのだけど……。
カマーの呼び出しにあわせてやたらとウエスタンな服を着たミュージシャンの女性がステージに上がってくる。
「弱さをっ補っい強く!二っ匹のユッニゾンハーモニー!」
うん……ちょいちょいリズムを外してるわね……内容は良いのだけど確かにこれは人を選びそう。
「んじゃ次は任せてくれ。」
「わかった、気を付けてね?」
「あんまりやりすぎないのよ?」
「わかってる。」
ライズは軽く手を振ってバトルステージへと向かっていく。
すると私の言葉が気になったのかレティがこちらを見て聞いてくる。
「ねぇヴィオ姉、やりすぎないでねってどういうこと?」
「そうね……よく考えてみてレティ。
ライズの手持ちには何しかいないのか……シングルとダブルバトルの理不尽な違いを。」
ライズが定位置に来たのを確認すると相手は早速ポケモンを出してきたわね。
「いくわよGO!GO!ゴースト!ムウマ!」
「ゴースゴスゴスゴスゴス!!」
「マァッ!」
ただでさえ単体でポケモン数匹を余裕で相手する程のポテンシャルを持っている。
そしてライズは手持ちを唯一不明なポケモンを除き全てがアナザーポケモンで構成されている。
そして今のライズのアナザーポケモンは4匹が進化している。
つまり……。
「いくぞ!アグナコトル!ザボアザギル!」
「コルルルルルルッ!!」
「サバァァアアアア!!!」
「な、なんだあのポケモン達はぁぁあああ!?」
一気に会場の声援が大きくなって更にステージがライトアップされていく。
「うっわ容赦無いわね……。」
「やっぱりアナザーポケモン二匹が並ぶと狭そうだね。」
「レティ……気にするのそこなのね……。」
やっぱりレティはどことなくズレているのよねぇ……でも直感的な考えは一番鋭いからちゃんと見れてはいると思うのだけど……。
ちなみにライズは軽々と圧勝していった。
流石に可哀想だったわね……。