オオナズチ視点
~過去の回想~
あれから二年の月日が経過した。
あの子にずっと名前が無いというのもどうかと思うとあの方に言われ、あの子はシロ様からライズという名前を与えられた。
いろんな物事への興味が尽きず向上心の塊みたいな子だからだそうだ。
それにあの方のおっしゃっていた通り黒の狂気が少しずつではあるが広がり始めており、私が管理していた森もいい加減住むのにリスクが出かねない為に今はあの方のお誘いを受けてシュレイド城へと一時的に引っ越していた。
ただあの方はあの子に会ってからと言うものの10日置きに毎回家にやってくるようになってだいぶ肝が冷えた。
というか暇なのだろうか?
それにそれ以上に若干困っているのはあの子がだんだんあの方に対して遠慮しなくなってきたことだろう。
「ねぇシロちゃん、なんでここって黒焦げなの?」
「それはね、ここの王が悪いことをしてたからなんだよ。
あとそろそろ前みたいに私の事おねーちゃんって呼んでくれない?」
「やだ、シロちゃんちっちゃいしなんかおねーちゃんって感じしないもん。」
「ふぐぅあ!?」
あ、あの方が崩れ落ちた。
まぁ元の姿ならともかく人間としての肉体はただの幼女だものね。
「お母さん、森にはいつ頃帰れるの?」
「そうね……最低でも黒の狂気が収まるまではちょっと危険だから戻れそうにないわね。
黒の狂気は私達古龍ですら危険視しているもの。」
そう、正直な所これが一番厄介な部分だった。
黒の狂気は下手したら私達すらも正気を失い、暴走を引き起こす危険性がある。
かなり長く生きている私でもあれだけは耐えれるという確証がない為こうやってわざわざ姿を隠すしかないのだ。
あれは一度発症したら死ぬまで苦しみ続けてやがて衰弱していく。
狂竜ウィルスとかみたいに自力で克服可能ならもう少しやりようはあったのだけどね。
多分森に戻るにはあと2年は必要だろう。
するとあの子はまだ帰れないと分かっているからか行きたい場所があると言う。
「ねぇお母さん。
俺、街っていう所に行ってみたい!」
正直いつか言うだろうとは思っていたけどやっぱり興味を持ってしまった。
今はまだこの子の力を受け入れるには人間は世界を知らなすぎる。
もしこの子の力が街単位で知られてしまえば何が起こるか分かったものじゃない。
けれどいつまでも人間の友の一人もいないと言うのはやっぱりこの子も孤独を感じてしまうだろう。
「…………シロ様。」
「言わなくても分かるわ。
ちょっと迷ったけど一度街に遊びに行くくらいなら構わないでしょう。
問題はこの子の力が世間にバレる事だからそこだけ注意していれば大丈夫なはずよ。」
「分かりました……それじゃ今度街に遊びに行きましょう。」
「うん!」
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失敗した。
まさかハンター側の捕獲方法が甘いせいでモンスターが街中で逃げだしてくるなんて……。
結局あの子の力が知れ渡ってしまった。
恐怖されてしまった。
「…………お母さん。」
「何も言わなくて良いわ。
ごめんね……。」
「…………。」
私は人じゃないからこの子の慰め方は分からない。
今私が出来るのは抱き締めてあげるくらいだった。
すると急に何かが地面を掘り進めるような音を感じた私は地下を警戒する。
すると地面からイビルジョーの顔がひょっこりと出てきた。
この子……どうみてもあの森にいたやたらと温厚な個体よね……。
まさか追いかけてきたの?
「グルル……。」
「ジョー?」
「グゥゥウ。」
「痛い……。」
イビルジョーはあの子を慰めるように頭を擦り付けてるけど顎にある牙がちょっと痛いらしい。
でも嫌がってはいないみたいね。
すると今度はシュレイド城近くの森から次々といろんなモンスター達がやってくる。
アオアシラの親子にリオレイア希少種の幼体、ドスランポスの率いる群れに何故かナルガクルガ希少種までいる。
おそらく黒の狂気から逃げている途中でこの子の気配を感じ取ったのでしょうね。
この子は普通の人間と違って独特なやさしい気配をしているもの。
「みんな……。」
この子は本当にモンスター達に愛されている……。
「やっぱり皆がいればそれでいいや……。」
この日を境にこの子は人間への不信感を募らせていってしまった。
あの方にこの事を伝えるとあの方は何か考え込むような表情になっていた。
そして一年後…………あの方の提案によりあの子は……ライズはこの世界とは違う別の世界へと一時的に向かってもらうことにした。
その世界はかなり平和でお人好しな人物が多いらしく、自然に愛されるライズの能力はこの世界のように否定されることはまず無いらしい。
ただ流石に記憶を持ったまま向こうの世界に送るのは少し難しいらしく、一定のトリガーで記憶を思い出すように調整する必要があるらしい。
あの子が私達の事を一時的とはいえ忘れてしまうのは悲しいけどこのまま人間との関わりを完全に断って孤独になるよりは良いだろう。
あの方はライズに試練を与えるつもりみたいだけどこの子ならきっと乗り越えることが出来ると私は信じている。
いつかまた会える日を私は楽しみに待つことにした。
人間の成長はとても早いから次に会う時が楽しみね。