マム・タロト視点
~過去の回想~
童がこの大陸にやってきてから1年の時が過ぎた。
正直この一年の間であやつが連れてきたモンスター達の事はあまり思い出したくもない……というか心臓に悪すぎるわ。
というかあの方もあの方で何があればあんな風になるのやら……お陰でへし折られた角が痛むのじゃ。
いやまぁ童を守る護石とすると聞いておったからわらわとしては別に文句はないのじゃがあの方の事よ……絶対に何か余計なことをやりおるだろうな。
あの方は真面目な時こそしっかりしておるが気を緩めるとすぐに余計なことを無駄に力をいれてやりおるから質が悪い。
それにしてもこの大陸もそうじゃが世界各地で同時に様々な災いが起ころうとしておるな……。
ここまで完璧にタイミングを合わせられてしまうとどうにもあの方が余計なことをしておる気がしてならんのぉ……。
そんな事を考えておったある日、オオナズチと童がわらわの所へとやってきてそろそろ次の地へと向かうと告げて来おった。
『ずいぶんとまぁ突然じゃの。』
『ごめんなさいね、いい加減この森で隠れるのも限界が来てしまっていい加減人間に見つかりそうなのよ。』
「この間も森にハンターが来てた……。」
ふむ、確かにここ最近大型の船がこの大陸にまた来ておったのは知っていたが奴らはそこまで行動範囲を広げて来おったか。
最近奴らは自然に溶け込む事を覚えたのもあってわらわも少し奴らを見つけにくくなっておるゆえに自由に動きにくくなっておるしの。
『次は何処を目指して進むつもりなのじゃ?』
『それなんだけどね……あの方からシュレイド城に一度来いって言われてるのよ。』
『…………何?』
それ本気で言ってるのじゃろうか?
あの方は何を考えておられるのやら……。
「ねぇ義母さん、マム、シュレイド城って何?」
ぬ?あやつめ、シュレイド城に関してはまだ伝えておらなんだか。
まぁとはいえ人間の間でもほぼおとぎ話に近い話ではあるしこの手の話は躾の為に聞かせるからかなり大人しかった童にはあまり聞かせる理由が無い訳じゃな。
それにしてもどう伝えたものか……下手に説明すれば童のあの方への印象が悪くなりかねんし絶対にあの方から半殺しにされるのじゃ。
『…………そうね、これはかなり昔にあった話よ。
私達が元々いた大陸にはシュレイド王国というかなり巨大な王国が存在していたの。
でもシュレイド王国は大昔に自然との調和を忘れてモンスターや自然、環境生物たちの住みかを次々と荒らして調和を乱し始めていったわ。』
「なんで次々と荒らしていったの?」
『おそらく自分の事しか考えなかった上に欲深かったのでしょうね。
お陰でその周辺の生態系は大きく崩れてしまっていたわ。
そしてついに王国は禁忌にまで手を出してしまったの。』
すると童は禁忌という言葉が欲わかっていないのか首を傾げていた。
『童よ、禁忌と言うのは消して手を出してはいけないことということじゃ。
これに手を出した者は皆等しく悪人と呼ばれる。』
まぁあの方々に挑戦して狩猟するような例外中の例外もおるのじゃがな……。
あの方にとって肉体など仮初めの化身でしか無いとはいえ何故殺せるのやら……人間という存在は本当に恐ろしい。
「シュレイド王国は何をしてしまったの?
何が禁忌だったの?」
『…………これについては私はその当時は遠くにいたから詳しい訳じゃないのだけどあの方曰く生命を冒涜するような行為だったそうよ。
モンスターや環境生物といった自然の命を弄んだのでしょうね。
これによってシュレイド王国はあの方達の逆鱗に触れてしまったわ。』
「あの方ってもしかしてたまに僕達と遊んでるシロちゃんとかクロさん達?」
ちゃん…………本当にあの方何やってるのじゃろうな。
『ええ、主に動いたのはクロ様。
あの方はシュレイド王国へと攻め行った結果シュレイド王国は一夜にして火の海となり壊滅したわ。
シュレイド城はあの方によって滅ぼされたシュレイド王国の唯一残っている跡地ね。』
「クロさんすごい……!」
『…………童、そなたは怖くはないのかの?』
「ううん、だってクロさん達は悪い人たちをやっつけたんでしょ?」
…………まぁ一概に王国の民全てが悪い訳じゃなかったが下手に手心を加えてしまえばそれこそ人は恐怖を忘れてまた禁忌に触れてしまう故な……これは伝えない方が良さそうじゃ。
それにしてもやはり童の考え方は少し独特なようじゃ。
何処かでもう少し他の人間共と話をする機会があれば良いのじゃがな……。
『今となってはあそこはクロ様の住みかとなっていてたまにあの地に開いている異空間からシロ様がこの世界に来られるのよ。
そんな所に呼んだということは何か伝えたい事があるのかも知れないわね。』
「そっか……でもマムとはしばらく会えないんだよね。」
童…………なんとまぁ嬉しい事を。
わらわはこの一年割と必死に練習した人への変化を行う。
まだ未熟ゆえ一部に龍としての姿が残っておるが大体は人間の姿になれるようになっておる故な。
人の姿へと変化したわらわは童を抱きしめた。
「安心するがよい童よ。
わらわはずっとそなたの事を忘れぬ。
またしばらくさたら会いに来るが良い。
わらわはいつまでもこの地でそなたを待ってやろう。」
「むぎゅぅ…………。」
『…………マム、顔が完全に埋もれて苦しそうよ。』
…………ぬ?