ライズ視点
~エリアゼロ(結晶エリア)~
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……。」
凄まじい激痛と共に虫食い状態だった記憶が完全に戻り、ガルバダオラから教わった膨大なまでの向こうの世界の知識が頭を過る。
それにしても……とんでもない試練を課されてたんだな……俺は。
「ラ……ライズ君?」
「大丈夫なの?」
「あぁ……若干きついが大丈夫だ……。
完全に記憶を取り戻しきった。」
「…………ふむ、あの方はずいぶんと人が耐えられるギリギリの封印を施したらしいな。
完璧な状態で記憶を保持できるとはいえ忘れねば記憶の容量に限界が来てしまう人間の脳に無理矢理記憶をねじ込む形で思い出させれば脳にダメージが入りかねないというのに……。
まぁ様子を見る限り紙一重で脳に異常が出ないように調整されているみたいだがな。」
あの方となるとシロちゃんか……いや、ミラルーツと呼んだ方が良いのか?
「さて、貴様の記憶が完全に戻り使命を思い出した所で本題に入るとしよう。
貴様は自分が相手にしようとしている存在についてどれ程知っている?
とはいっても俺が教えた知識で全てなのだろうがな。」
「ええ、30体以上の成体のモンスターを素材として新たに産み出した禁忌の生命であり鋼鉄の鎧に包まれたその巨体は並の竜どころか古龍にすら匹敵するほどのフィジカルや能力を持っているってくらいですね。
後は予想ですけどまともな思考能力は無いんじゃ無いですか?」
俺がそう答えるとヴィオが今まで以上に見たことがない程顔色を悪くした。
まさか竜機兵の事も知ってるのか?
「…………そこの小娘には後で話が出来たが今は置いておこう。
まずは貴様の問いに答えるとしよう。」
ヴィオ……もう少し隠せば良いのに。
「奴の思考能力についてだが……それは貴様が甘く見すぎているな。
奴は思考能力は殆ど人間と変わらない程度に持ち合わせている上に闘争本能をかなり高いレベルで備えている。
さらに人間共による思考誘導によってこと戦闘に至っては俺ですらまともにやりあいたくはない。」
モンスターを素材にして作った新たな生命……人が作った以上は限界があると甘く見すぎていたか……竜大戦で滅ぼされる前の文明はどれだけ技術力が発達していたというんだ……。
「思考誘導に関してはこの世界に来た影響で人間共の制御から完全に離れたのか無くなっているようだが逆に言えば奴は今ある意味で暴走状態とも言える。
そしてもう一つこの世界に来た影響がある。」
既に先程の情報だけで嫌な予感しかしてないのだが今度はなんだ?
「元々奴は30……いや、それ以上のモンスター共を素材として生まれた存在ゆえ火、水、氷、雷、龍の5属性をかなり高いレベルで扱っていた。
貴様ならばこれが何を意味するか分かるな?」
全属性への高い適正……それを聞いただけでもう嫌な予感しかしていない。
こんなもの答えは一つだろう。
「ポケモンにおけるありとあらゆるタイプ……つまり全18種のタイプ全てに対する高い適正ですか。」
「その通りだ。」
考えたくはなかったがやはりそうだったか……アローラで産み出されたタイプ:ヌルが進化したシルヴァディもありとあらゆるタイプへの適応が可能となっていた。
「そうなると特性はシルヴァディの持っていた『ARシステム』に近い代物……いや、同時に複数のタイプを使いこなせると見るべきか。
あまりにも厄介すぎる。」
「弱点が無いポケモンならいくつかあるわよ?」
「何?」
するとヴィオがスマホロトムを操作してボックスアプリから一つのモンスターボールを取り出した。
「シビルルルル。」
…………そういう弱点無しか……確かにありと言えばありなんだがな。
ヴィオが出したポケモン……シビルドンは電気単タイプでありながら特性は電気タイプ唯一の弱点であるじめんタイプを無効にする『ふゆう』……確かに弱点は実質無い。
だがこれから想定される激戦に着いていけるとは思えない。
「ガルバダオラ、何か対策になりそうなのは無い?」
「ふむ……これは貴様の試練ゆえに己で考えろと言いたいが奴相手に何も対策も無しにというのもアレだな。
一つ俺が言うとすれば……完璧なものなぞ何一つありはしない。
特に奴のような無理矢理作った物には明らかに無理をしている部分が複数ある……といった所か。」
確かに……進化する前のタイプ:ヌルもシルヴァディになるまではあまりにも不完全で無茶な融合によって暴走する危険性があり、頭部に封印用のマスクを装着して無理矢理力を押さえ込んでいた。
そうなると最低限弱点を見つけるまでの時間稼ぎが要るか……。