「チョッパー印の化粧品、優秀すぎる〜!」
「そうね。もう市販品には戻れないわ」
「二年でなにが辛かったって、これがないことよね~!」
ジンベエの加入と新しい濾過装置のおかげで開発された、海洋深層水をベースにした化粧水を叩き込む。二年前にはない。なんか浸透力が違うらしい。
「ナミは化粧がうまくなったわね」
「ウェザリアにはおばあちゃんもいたから。かなり念入りに」
「ケアは大事よ」
手早くケアを終えて鏡の中で本を開いている親友に振り向く。
「ロビンも化粧だいぶ変わったよね?」
「あら? 興味ある?」
研鑽は大事。
「そうね。チョッパーのおかげでファンデーションで誤魔化すことはなくなったわね」
「ちょっと日に焼けてたものね」
「アラバスタは確かに陽射しは強かったけど、まさか海に出て元の肌色に戻れるとは思ってなかったわ」
嬉しそうである。
「そうね……。あの頃は目鼻立ちをもう少し強調してたと思うわ。なんというか、そういう役割だったし」
「ウンウン」
「鼻筋は、母譲りだから」
「そうなんだ! 高くて羨ましいのよね」
自分の小鼻を潰す。
「とっても可愛らしくて好きよ、アナタのお鼻も」
「えへへ。アリガト!」
「代わりにちょっと目元周りの毛が薄くて。眉もキッチリ描かないといけなかったわね」
「ワタシはちょっと濃いかな。抜いたり剃ったりしないと毛虫みたい」
「整えるならその方がいいのよ。描くとなると大変だし、なかなか納得出来ないのよね」
「あー! 昔ノジコがやりすぎてブツクサ言ってた! ワタシも全部剃っちゃおうかと思ってだけど、止められたのよね!」
「元あるものを生かした方が、結局は楽ね」
「へー。うーん。へー」
細眉への憧れが捨てきれないらしい。
「チョッパーに言われたの。流石は魔女の弟子ね」
「あ! そっかー。チョッパーの知識ってドクトリーヌが元なんだ。うーん、なるほど~。それは侮れないわね」
「ステキな人だったみたいね」
「なんかちょっと敵う気がしないわね。ある意味マムなんかより手強いわ」
「アレと並ぶのは相当ね」
「なんか別ベクトルで人を超えてるわね」
若さの秘訣かい?
「聞いてないわ」
「どうしたの?」
「ううん。幻聴」
「そう」
「え? じゃあ、今は生えたの?」
「そう! まつ毛もね。母のようにはならなかったけど、おかげでアイラインを書くことはなくなったわね」
「ああ! それで前より。柔らかくなってるのね!」
「どうしても硬質な印象になりがちだから。前はそれでもよかったの。母は自然とそうだったから」
「ロビンってお母さん大好きよね?」
「あら? 人のこと言えるの?」
「化粧を真似したりしないもん! むしろ、ライバルだったんだから!!」
「ステキな関係ね。ワタシは、そうしたことも教われなかったから」
「あ、ごめんなさい」
「謝らないで? でも、そうね。自分の顔に面影を追ってたようなところがあって、それが化粧にも出てた気がするわ」
「スゴく凛々しいお母さんだったのね」
「ええ。カッコよかったの」
「いいなぁ。ウチのもカッコよかったけど、なんか、こう、荒々しかったし」
「とても勇敢だわ」
「他人のお母さんとか憧れちゃう」
「みんな他人が羨ましいものよ」
「濃〜い眉毛ならあげるわよ?」
「フフフ、もういらないわ」
「チェっ。揃っちゃったかー。でも、なんで?」
「まつ毛美容液を眉にも塗ってるの」
「え?! アレってそんな効果があるの?!」
「まったく同じではないけど、ブルックの毛生え薬が元よ」
「そうなんだ?! え?! じゃあ、扱いには注意しないと!!」
「フフフ、モジャモジャになっちゃうわね?」
「イヤーっ!! でも、アレのおかげでマスカラいらずなのよね」
「一番落ちやすくてカバーの難しい化粧だから、とっても助かるわね」
「水に弱いからすぐパンダになっちゃう」
「潮風に耐えられるようになるのはありがたいわ」
「潮風といえば!! ロビンも髪伸びたよね?」
「ブルックのおかげよね」
「たまのヘアケア楽しみなのよね。スゴい気持ちいいから」
「痛むことを考えると、ある程度の長さはほしいものね」
「でも、結局短くなっちゃうやつね」
「枝毛は、切るしかないから」
「ある程度伸びちゃえば頑張り次第だとは思うんだけど」
「面倒になって切っちゃうのよね」
「そうそう」
「ナミの髪質で広がらないのは、本当に貴重ね」
「たまに朝、爆発してるけど」
「遅くまで仕事をしてるからよ」
「ロビンのは大人しくて羨ましい」
「あまりボリュームのないのも難しいの」
「そっかー。でも、色んな髪型出来て楽しいよね?」
「ええ。アナタの髪をイジるのは楽しいわ」
「もう! ワタシじゃなくて!!」
「フランキーに改造してもらう?」
「自分で出来るようになります! イジワル!」
「まだまだ、教えることがありそうね?」
「まだまだ道半ばだわ」
「さ、そろそろ寝ましょ」
「ロビン、今日は一緒に寝よ?」
「甘えん坊ね」
「いいの! 遠慮なんてもったいない!」
「いらっしゃい」
「ワーイ!」
「ねぇ、ロビン? お母さんを目指すのはやめちゃったの?」
「元々、目指してはないのよ。ただ、受け継いだの」
「受け継いだ?」
「母を知っている人と出会ったの。その人に似ていると言われた。ワタシはちゃんと母を受け継いでいるのよ」
「ロビンはロビンよ」
「ええ、そう。そんなことに気がつくまで、こんなにかかっちゃった」
「ダメダメね」
「ええ、そう」
「まったく、みんなワタシがついてないとすぐ迷子になっちゃうんだから」
「そうね。その通りね」
「ちゃんと連れていってあげるからね」
「頼りにしてるわ、ナミ」
化粧のことなんかわかるわけないやん