その真の管理者が決まったようです
「意外だな。ジンベエってあんな顔するんだ」
「なんかカワイイわね」
「ええ、とても微笑ましいわ」
食後の一時、珍しくバーに集まった一味は食欲以外の目的でアクアリウムを眺めていた。
「ちょっと、ペットとか飼ってみたくなるわね。ネコとか」
「オレは犬が好きだ。あと、虫」
「絶対許さない」
「チョッパーがいるだろ?」
「……さらっとペット枠に入れてやるな」
無慈悲な船長に剣士が呆れる。
「一応、メインは生け簀なんだがな。こりゃ、改造してやった方がいいのか?」
「航海中に取れる魚は、回遊魚や深海魚。どちらも肉食だったり、戯れるには不向きかも知れませんねぇ」
「回遊魚なら上の方に留まるでしょう。問題は深海魚ね」
「ここまで生き残ってるなら大丈夫じゃない? ほら、サンゴとか海藻とかに隠れられるし」
「どうかしら?」
「実際は食われてるぜ。繁殖もしてるから目立たないがな」
「ジンベエがいるならあんまり、保存とか考えなくていいんじゃないか? 下手すりゃこの水槽に入らないぐらいデカいの獲ってくるし」
「ダメだ。オレはアイツを何時サンジが料理してくれるか楽しみにしながらここを眺めるのが好きなんだ」
「……どいつだよ」
船長が指差しているのは、ジンベエの頭上を回るサバのような魚群だった。
「イワシ」
「イワシなのか?」
「デカ過ぎだろ」
「グランドラインだから、全部デッカイんだ」
「なんだその信頼感」
「ヨホホ。ルフィさんにとってはグランドラインもお腹を満たしてくれる恵みの海ですか」
「そういえば、なんだかんだ航海中に飢えることもなくなってきたわね」
「そういえばあの牛食いそこねたな」
「ネコはウマいのか?」
「話聞いてた?」
アダルト組の笑い声と航海士の説教のなか、上からコックが降りて来る。
「お代わりはいるかい?」
「ええ、大丈夫よ。ありがとう」
「どういたしまして、ロビンちゃん♡ 甘さはどうだい?」
「ちょうどいいわ」
「チョコは苦手だったが、酒にも合うんだな」
「コーラにも合うぜ」
「ウマソウだな」
「そっちは苦いぞ。こっちの干しミカンのヤツにしろ」
「これ、皮まで食べられるのね」
「ナミさんのミカンは最高だからな♡ てか、チョッパーのヤツ、居ないと思ったらアクアリウムの中にいるのか」
アクアリウムでは、熱帯魚に手ずからエサをやるジンベエと、その腕に抱えられた潜水服仕様のチョッパーが楽しげに戯れていた。
能力者であるチョッパーは水の中では無力だが、この世で最も頼りになる漢が付き添っている。
カラフルな魚達に群がれたり、突かれたりしながら二人で微笑みあっていた。
「少し寒くなってきたからな。チョッパーの分は温めてやろう」
「次は冬島かしら?」
「サンジさんは座っていて下さい。お代りついでにワタクシがやってきます」
断ろうとした料理人を考古学者と航海士が引き止める。海賊王になる食欲を日夜相手にしている料理人は、恐らくこの世で最もヤリガイのある毎日を送っているのだろう。
それを一切苦にしない男の大丈夫を、どれだけ頼りにしても信用はしないのが一味の共通認識だ。
アクアリウムから上がってきた操舵士は、どこか嬉しそうに言った。
「ワシのことは気にせんでええ。これでも魚人。食った食われたは自然の摂理じゃと弁えとる」
しかし、チラッと視線をズラした顔は憂い顔になった。
「ワシはいいんじゃが、随分喜んでおったでな」
考古学者にタオルケットで包まれ、ホットミルクに口をつける未来の万能薬。狙撃手や船長や料理人に、全力で今の体験を報告している。
「漢なら越えなきゃならねぇ波もあらァな」
「アイツも立派なウチのクルーだ」
「まあ、大丈夫でしょう」
「気づかれるようなヘマはしないわ♡」
舌を出した航海士に、その場の一味はかける言葉を見つけられなかった。
デカい親分丸くてカワイイ
ちっちゃいチョッパーモコモコカワイイ
カワイイ