麦わら一味の日常   作:HIRANOKORO

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ワノ国で


大工の交流

「へー。長い方が速度が出るのか」

「ああ、海列車がそうだな。だが、代わりに波に弱くなる」

「横波にな。むしろ、正面からの波には強くなるから、四つの海じゃ、そういうのの方が主流だな」

「風が読みやすいからな。グランドラインだと風と関係ない波に出会うこともある」

「なんなら、丸い円盤みたいな船なら沈まねぇんだがな」

「クッソ遅ぇ」

「追いつけねぇし、逃げられねぇし、海賊向きじゃないな」

 入国にかかる多大な労力のほとんどを受け止めた船は、修理しなければならない。天険のワノ国ではそもそも港以外に停泊出来るような岸も少なく、三つの海賊船が並んで大工たちが腕を奮っていた。

 互いに競い合うというか、鎬を削るというか、なんなら額を突き合わせるようにした結果、住民の協力もあって一週間と経たずに目処が見えている。

 もっとも、ノリで生きてる海賊。アダムのおかげで将軍の修理までたった二人にも関わらず最速で終わらせた麦わらの一味。

 船長直々の指揮でも追いつけぬ早業にぐぬぬしつつ、なんだかんだと手伝いを受け入れて、楽しそうに技術談義に花を咲かす。

「船が揺れるのは浮いてるからだ」

「そうそう、沈んじまえば波なんて関係ないんだ」

「それ、船か?」

「ま、ウチみたいな潜水艦にしても海面と無縁なわけじゃないがよ」

「波を乗り越えようとするより、被っちまった方が被害が少ないこともあるのさ」

「だから、本来はもっと深く作りたいんだがな」

「深く?」

「浮いてるもんだから、高さで表さねぇんだよ」

 腕は良いのに素人、なんていう大工にしてみたら獲物かと思うような人材までいて、盛り上がらないハズもない。船大工同士が散らす火花で物理的にベポが燃えた。

「帆は高い方がいい。風を受ければ速くなんだからよぅ」

「船体は深い方がいい。荷も積めるし、波にも強い」

「だが、グランドラインってヤツはそんな常識を覆す」

「エネルギーは質量だ。風を受けて膨らんだ帆が船体を動かすのは、そんだけ重みがかかってんだ」

「つ~と、重みが勝って重心がマストの方に移っちまう」

「浮いてるってこた、重みも相殺されてんだからよぅ」

「そんなんで横波にあったら、すぐにひっくり返る。だから、浅く、高く作ってとにかく浮いてりゃいいってのがグランドラインの船なのさ」

「それでどうにかなるわけでもねェがな」

「他に方法もないんだよな」

「基本的に浮くのは簡単なんだ、簡単」

「そうとも。船は浮くように作ってんじゃなくて、浮くもんで作ってんだ」

「てか、鉄だって船の形にすりゃ浮くんだよ」

「船大工の腕ってのは、実は上手く沈めることなのさ」

「へー」

 外科医の一味、鼻高々である。

「まあ、それで言ったら海列車の右に出るものはねェがな」

「あれはもう、船大工のオレからしても不思議列車だ」

「あの線路、多分、張力で繋いでんだと思うんだが」

「どういう工夫をしたら、それで成り立つんだ?」

「島と島をどうやって繋ぐか、ってのを日夜考えるのが船大工ってもんだがよ」

「本当に繋げちまうのは素人の発想なんだよな」

「それを実現しちまうんだからなぁ」

 フランキー、鼻高々を越えてリーゼントがカブトムシ。ワンピースと同等の存在に。キラーたち、海賊の憧れとなる。

「まあ、アレも海賊船には向かねぇ技術だから、オレらも腕の振るい甲斐は残ってるがな」

「アレが普及しちまったら、オマンマの食いあげかぁ?」

「速力もなんもかも勝負にならねぇからな」

「風も波も関係なく越えて行くってのがカッコいいよな」

「流石に荷量では負けねぇ、と言いたいが」

「それも機関次第だわな?」

「なら、船にも応用出来るだろ? 負けねぇさ」

 自嘲の笑みが止む。

「まあ、そうだな」

「死ぬまで勉強だ」

「海賊のやることじゃねぇな」

「それが上を目指すってことだろうよ」

 なんでか撫でられるウソップ。ふんぞり返るフランキー。

 和気あいあいと修理は進む。

 

 

「馴れ合いやがって」

「気に入らないなら行って来るが?」

「いい、ほっとけ」

「アレ? 今日のお頭優しい?」

「キラーさんも明るくなったし、路線変える?」

「踊るか?」

「祭りか?」

「やめろ、バカ。そんなんじゃねぇ」

「え? あのロボと記念撮影したらダメっすか?」

「テメェら……! だが、それもいいか。麦わらのヤツらなら断んねぇだろ」

「マジか! 頼んでくる!!」

「ちょっ、オイ!! キラー?!」

「抜けがけはダメですよ!!」

「オレも!!」

「オレも!!」

 義手で頭を抱えるキッド。

「どうしたんだ、カシラ? オマエらしくもねぇ」

「なぁ、麦わらに勝てるか?」

「本当にどうしたよ? 負けるつもりなんてねぇだろ?」

「そうさ。誰が相手だろうと負けねぇ。赤髪やカイドウと同じだ。例え、万が一、あるかないかの仮定として、もし一回は引くことがあったとしても、何度だって再起してやる」

「ああ、だからオレたちは強い」

「ヤツらは甘い一味だ。ウチが負けるなんざ、ありえない。だが、その万が一があるなら、あの二人だ」

「あの船大工とヒョロっこい兄ちゃんが?」

「逃げ隠れのウマい狙撃手だと? そんなもんが甘さを捨てて殺しに回ったらどうなる? あんなもんを盾に、クルーを狙われたら? あの船だってそうだ。まるで遊覧船か、よくて客船だがよ、武装はホンモノだ。あのロボも」

「海賊が出会うなら、本来は海だ」

「あっちには海侠がいる。それも厄介だが、あのパシフィスタと同じレーザー撃つんだぞ、ヤロウ。そんなもんと海戦なんかしたらどうなる?」

「確かに、負けるかもな」

「麦わらも海賊狩りも、ジェルマも、オレやオマエらが負けるとは思わねぇ。叩き潰してやるさ。だが、あの二人はヤベぇ」

「なるほどな。情報か」

「いくらなんでも、そう容易くアレコレ漏らすとは思わねぇが、なにもしないよりマシだ」

「ウチのもバカだしな」

「言うな、悲しくなる」

 仮面をキラキラさせながら走ってくるキラー。

「キッド!! あのジェネラルに乗せてくれるってよ!! オマエも来いよ!!」

 崩れ落ちる最悪。

「もっとバカだった」

「いや、違う。そんだけ余裕があるんだ。ナメられてんだ」

「カシラ。現実は受け入れねぇと」

「こんな現実があってたまるか!! 逆だろ、普通?!」

「カイドウに挑むような一味に普通って言われてもよ?」

「キラーさん、超嬉しそう」

「そうだけど?! そうだけど!!」

「カシラ!! あの船、見学して来ていいッスか!? 宝樹アダムの船なんて、今後いつ見れるか!!」

「好きにしゃがれ!! クソッタレめ!!」

「ワーイ!」

「ヤッター!」

「早く来いよ、キッド!! スゲェぞ!!」

「泣くぞ、テメェ?!」

 

 

「哀れだな」

「自分のこと? キャプテン」




曇らせ
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