「ルフィさんってお歌、お上手ですよね?」
「そうかぁ?」
「本人が首を傾げてるぞ?」
「作詞作曲はヒドイものだと思います」
「そうかなぁ?」
「ばっさりだな」
「オイ、船長が涙目になってるぞ」
「ワタシ、ウソつけないんで」
「キリッとするところじゃない」
「人の心を忘れたのかしら?」
「ルフィさん主役で演奏会でもしますか?」
「お、いいな! やろう!」
「却下だ」
「おちおち昼寝も出来ねえ」
「あまり、寝てばかりもどうかと思うわ」
「遠回しにオレを経由するのやめろ」
「慎みよ」
「ハハハ、そっかぁ」
「と、まあ、こんな感じだが?」
褒められて嬉しかっただけに、落ち込みもヒドい船長。
「ワタシ、これでも五十年、外の世界から隔離されてたんですよ」
「サラッというな、コイツ」
「だからワタシが演奏する曲って基本、皆さんご存知でないんですよね」
「まあ、そういやそうか」
「興味深いわ」
「でも、ルフィさんは一生懸命合わせてくれますから、どうしても下手に聞こえると思うんです」
「言われてみれば」
「納得出来るような気もするな」
「センスがねぇっていわないか?」
「才能とは別よ」
「そこです。ルフィさんは、練習した曲ならちゃんと歌えるんです!」
「なんか重大なことみたいだが」
「当たり前っちゃ当たり前じゃないか?」
「そうね。音痴ではないというだけじゃないかしら?」
「では、誰が練習させたんでしょう?」
「どういう意味だ?」
すでにちょっとついていけない船長に、四人の視線。
「コイツに、か」
「酒場で歌うのに混ざってたかもしれないけど」
「酔っぱらいどもの歌なんざ、調子外れもいいとこだぜ?」
「ええ、音程やリズムなんかを、正確に伝えた人がいるハズなんです」
「というと、赤髪の音楽家か」
「シャンクスの?」
「ビンクスの酒を教えてくれた人よ」
「ああ、そうだな!! シャンクスのとこの音楽家だ!」
「どんな方でした?」
「どんなって……いいヤツだったよ。懐かしいな」
違和感を覚える四人。
「まあ、いいじゃねぇか。昔のことだ」
逃げ出すように、お茶会を終わらせるルフィ。両翼は何かを察して黙り込むが、残りは違う。
「あれは、女の子ね」
「オイオイ、ロビンちゃん」
「複雑な事情があると見ました。いやぁ、ルフィさんも隅に置けませんね」
「やめとけ。好奇心で踏み込むもんじゃねぇよ」
「踏み込むつもりはありません。遠くから野次馬するつもりなんです」
「ええ、そうよ」
「もっと悪いわ!!」
鼻息の荒い美女と死体。
「オレはあんまり好かねぇな」
「趣味が悪いのは認めるわ」
「ここだけの話です。でもね、幸せだった日々のことを思うのは、人様の話でも素敵なものですよ」
言いたいことはあったが、相手がよりにもよってこの二人である。
「まあ、加減を間違えなきゃいい」
「弁えております」
「オレは仕事に戻るよ」
「ごめんなさいね? 不愉快にさせたかしら」
「いや? 恋バナに花を咲かせる乙女は美しいよ。相手がホネでなければだけど」
「ありがとう」
二人して席を立ち、なんとなく連れ立って歩く。
「まさか、あんな地雷があるとはな」
「知らなきゃ踏まねぇさ。あの二人も、余計なことは言わないだろ」
「だな」
芝の甲板で狙撃手や船医と遊ぶ姿は、いつもの脳天気なままだ。
「謎な男だねぇ」
「誰にだって抱えるもんぐらいあるさ。むしろ、わかりやすいヤロウだろうよ」
「それもその通りだ」
なんとなく、人生の深みを実感した。
上手いよね、田中さん