麦わら一味の日常   作:HIRANOKORO

25 / 50
声優、映画ネタ


船長の拘り

「ルフィさんってお歌、お上手ですよね?」

「そうかぁ?」

「本人が首を傾げてるぞ?」

「作詞作曲はヒドイものだと思います」

「そうかなぁ?」

「ばっさりだな」

「オイ、船長が涙目になってるぞ」

「ワタシ、ウソつけないんで」

「キリッとするところじゃない」

「人の心を忘れたのかしら?」

「ルフィさん主役で演奏会でもしますか?」

「お、いいな! やろう!」

「却下だ」

「おちおち昼寝も出来ねえ」

「あまり、寝てばかりもどうかと思うわ」

「遠回しにオレを経由するのやめろ」

「慎みよ」

「ハハハ、そっかぁ」

「と、まあ、こんな感じだが?」

 褒められて嬉しかっただけに、落ち込みもヒドい船長。

「ワタシ、これでも五十年、外の世界から隔離されてたんですよ」

「サラッというな、コイツ」

「だからワタシが演奏する曲って基本、皆さんご存知でないんですよね」

「まあ、そういやそうか」

「興味深いわ」

「でも、ルフィさんは一生懸命合わせてくれますから、どうしても下手に聞こえると思うんです」

「言われてみれば」

「納得出来るような気もするな」

「センスがねぇっていわないか?」

「才能とは別よ」

「そこです。ルフィさんは、練習した曲ならちゃんと歌えるんです!」

「なんか重大なことみたいだが」

「当たり前っちゃ当たり前じゃないか?」

「そうね。音痴ではないというだけじゃないかしら?」

「では、誰が練習させたんでしょう?」

「どういう意味だ?」

 すでにちょっとついていけない船長に、四人の視線。

「コイツに、か」

「酒場で歌うのに混ざってたかもしれないけど」

「酔っぱらいどもの歌なんざ、調子外れもいいとこだぜ?」

「ええ、音程やリズムなんかを、正確に伝えた人がいるハズなんです」

「というと、赤髪の音楽家か」

「シャンクスの?」

「ビンクスの酒を教えてくれた人よ」

「ああ、そうだな!! シャンクスのとこの音楽家だ!」

「どんな方でした?」

「どんなって……いいヤツだったよ。懐かしいな」

 違和感を覚える四人。

「まあ、いいじゃねぇか。昔のことだ」

 逃げ出すように、お茶会を終わらせるルフィ。両翼は何かを察して黙り込むが、残りは違う。

「あれは、女の子ね」

「オイオイ、ロビンちゃん」

「複雑な事情があると見ました。いやぁ、ルフィさんも隅に置けませんね」

「やめとけ。好奇心で踏み込むもんじゃねぇよ」

「踏み込むつもりはありません。遠くから野次馬するつもりなんです」

「ええ、そうよ」

「もっと悪いわ!!」

 鼻息の荒い美女と死体。

「オレはあんまり好かねぇな」

「趣味が悪いのは認めるわ」

「ここだけの話です。でもね、幸せだった日々のことを思うのは、人様の話でも素敵なものですよ」

 言いたいことはあったが、相手がよりにもよってこの二人である。

「まあ、加減を間違えなきゃいい」

「弁えております」

「オレは仕事に戻るよ」

「ごめんなさいね? 不愉快にさせたかしら」

「いや? 恋バナに花を咲かせる乙女は美しいよ。相手がホネでなければだけど」

「ありがとう」

 二人して席を立ち、なんとなく連れ立って歩く。

「まさか、あんな地雷があるとはな」

「知らなきゃ踏まねぇさ。あの二人も、余計なことは言わないだろ」

「だな」

 芝の甲板で狙撃手や船医と遊ぶ姿は、いつもの脳天気なままだ。

「謎な男だねぇ」

「誰にだって抱えるもんぐらいあるさ。むしろ、わかりやすいヤロウだろうよ」

「それもその通りだ」

 なんとなく、人生の深みを実感した。




上手いよね、田中さん
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。