グランドラインには数多の島がある。基本的にはログポースで繋がっているが、そうでない島も多い。
船長が舵を握らない限り、麦わらの一味と言えど目に見える脅威は避ける。よって、嵐や渦潮のために指針を外れると、ときたま誰も知らない無人島を見つけることがある。
見つけてしまえば、立ち寄らないなどありえない。ヘラクレスがワンピースと等価値の船長が呟く「お宝はあるかなぁ?」に共感するのはウソッチョ。
今日はまだ病気も出ていない。
上陸出来そうな場所を見つけて近づけば、早速、巨大な猛獣に襲われた。が、朝飯前である。
本当に朝飯前だったので、とりあえずサンジが弁当を包んだ。
「昼はどうするよ?」
「オレぁナミさんたちの護衛だからな」
仕留めた猛獣はなんか食えそうでもったいない。しかし、危険だと入口で主張する島なので、一番に縋られた料理人が船を降りる。
考古学者は人の痕跡がないか見てみたいようだ。それに身軽な音楽家が付き合う。
船長は好きにするだろうが、なんだかんだ見るだけで測量できちゃう航海士や、薬草を探したい医者と、実は戦力がDIYである狙撃手には目的がある。
剣士が散歩とか言い出すと厄介なので、強制的に船番にすると、相方は船大工になった。
「まぁ、軽めになんかするよ」
「いや、たまにはオレサマに任せな」
変態が光る。歯は白いが、不安だ。鉄串が両手にいっぱい握られていた。
「どっから出した?」
「こんなこともあろうかと、バーベキュー機能を搭載している」
無駄に高性能だ。あと、こんなこともあろうかとが、生活に密着し過ぎている。バーベキューが生活の一部かは知らない。
しかし、一味は大歓迎だ。バーベキューが嫌いな海賊はいない。
「厨房のもんは、遠慮なく使ってくれ。荒らされなきゃなんとでもなるからな」
「オウ! とりあえず、塩だな!」
一味は冒険に出掛けた。フランキーは猛獣の解体から始める。
この辺は慣れたものだ。サンジが熟成させた肉もウマいが、新鮮な肉もそれはそれで味わいである。
「島か?」
「オウ、他のヤツらは上陸したぜ!」
「手伝うか?」
「イヤ? 寝てても構わねぇぜ」
「なら、釣りでもしてるよ」
フランキー謹製のバーベキューセットは、船のどこにしまってあったんだというぐらい豪華だ。調理台にコンロはもちろん、焼いたものを並べたり食べたりするための机やチェアなど、キャンプ場のよう。実はその場でチョチョイと作っただけだが。
足りないのは炭ぐらい。薪には不足のなさそうな島なので問題はないだろう。必要なら作る漢だ。
ときたま聞き慣れた悲鳴が木霊したりもするが、顔が職人になったフランキーは気にしない。
肉のブロックを切り分け、串に差し、塩を振る。野菜も、シーフードも、それぞれ用意した。
忘れてはならないのは米だが、これはサンジがキチンと炊いている。あまりに消費量が多いので、用意が間に合わず朝がパンになるぐらいだ。
しかし、昼には間に合うようにしてあった。
少し考えたフランキーは、それをお櫃一つ分だけよそい、おにぎりにし始めた。そのごっつい手でどうやってるんだと言いたくなるが、ちゃんと女性にも配慮した小さめサイズなのが心憎い。
いい漢の仕事は繊細でなければならない。
半分には味噌を。半分は醤油ダレを。ハケを使って丁寧に塗っていく。
ところ狭しと並んだ食材は圧巻だ。
思ったより早く済んでしまった。まだ昼には早く、冒険を満喫している一味が帰ってくるまではもう少しかかるだろう。
悲鳴がさっきより遠い。
ゾロは釣り糸を垂れながら寝ているのか起きているのかわからない。ならば、バーベキューの真髄を極めてやろうと、再びナイフを握った。
定番なのは様々な肉巻きレシピだろう。タマネギやアスパラなどの野菜やチーズ。牛や豚を合わせてみたり、ハンバーグなども全部肉で巻く。
船長は喜ぶだろうし、一品ぐらい作ってみてもよいが、一味には甘いものやフルーツを好むメンバーも多い。
果物を焼くのかと思われるかも知れないが、これがなかなか侮れないウマさなのだ。
そもそも甘みは焼くことで強まるし、独特の香りも引き立つ。なんなら皮まで食べられるようになってお得だし、ヘルシーだ。
シナモンやバターなどを用意して、まずは焼きリンゴ。
芯をくり抜き、そこに調味料を詰めて、焦げないように包んで火の中に入れてしまう。
バナナは皮ごとそのままで。それぞれの好みで香辛料を選べばいい。ほっくりと粘りの増した果肉の甘みと香りで、口の中が熱々になる。
パイナップルも忘れてはいけない。肉との相性も抜群だし、酸味が和らいでまろやかになる。繊維質の果肉がさっくりして、皮ごと焼くとジューシーだ。
変わり種ではオレンジ。甘さが苦手な人間でも、苦味や酸味を楽しめる。はちみつなんかで甘みを足してもいい。
「へぇ? そんなのも焼くのか」
「釣れたか?」
「いいタイが釣れた」
岩場が多く、水深も深いらしい。なかなかのサイズが、ピチピチとはねていた。
ゾロはフランキーの隣に並ぶと、ドンとタイを置く。
「借りるぞ?」
「オウ!」
柄でタイの頭を叩くと、あれだけはねていたカラダが大人しくなった。両方のエラにさっとナイフを入れる。
「手慣れてんな」
「これぐらいはな」
酒と釣りが好きなゾロは、こうして自分で捌くこともある。用意されていたバケツで、血抜きを始めた。
「水変えとけよ。そりゃ消火用だ」
「はいよ」
安全策も万全だ。
タイのエラが白くなり、とりあえず氷で身を締める。血を洗ったバケツの水を捨て、新しく張っておく。
「握り飯もあるのか!」
「ちょいと摘むかい?」
嬉しそうだ。ゾロは焼かずに、そのまま口に入れた。生味噌の塩味と香りが一気に口の中を支配する。
「酒が飲みてぇ」
フランキーは笑って酒瓶を置いてやった。手酌でくつろぎ始める。
「あんまり、水が豊富ではない島のようね」
「ただいま帰りました」
純粋な調査組が戻ってくる。空振りで残念そうなロビン。飄々と音楽家。
「オッホー!! これは見事ですねぇ。心が踊ります!」
食卓といってよいのか。船の前に出現したキャンプ施設全般か。
とにかく、出かける前とは全然違う景色に、ブルックは喜んだ。
「そうだろう! アイツらも腹を空かせる頃だ。焼き始めちまいな」
「そうしようかしら」
焼きおにぎりを真剣に炙っている剣士を横目に、考古学者も賛成する。
「お任せ下さい。料理は出来ませんが、焼き加減には拘りがあるんですよ」
強火で一気に焼いてしまうのが一番だと思われがちな肉だが、実は時間をかけてじっくり焼いた方がウマいのだ。
特に大きめの塊肉などはそうだ。ステーキも焼き色をつけたら一度休ませるなどすると、一ランク上の美味しさを味わえる。
ブルックはコンロの一つに陣取ると、火加減を調整し、串を並べていく。
遠火で油を落とした肉は、塩の旨味だけで何本でもかぶりつきたい代物に変わる。
ロビンは片隅で水を入れたポットを火にかけた。あっという間に湯が沸き、それでコーヒーを入れ始める。
時間のかかる工程に入ったブルックはもちろん、一味を待つ間の一息にピッタリだ。
「あなたもいる?」
片手に焼きおにぎり。片手に酒のゾロが両手を見比べる。慌ててそれを腹にしまうと、しかつめらしく言った。
「貰う」
三人の笑い声があがる。ゾロは知らん顔。
悲鳴が近づいている。
これ以上は冗長かな
宴っぽいのは本編で見れるし