「さ、サンジ」
「オウ、おはよう、チョッパー。どうした? ベーコンか目玉焼きでも足してほしいのか?」
「ルフィじゃあるまいし」
「てか、どうした? 顔色悪くないか?」
「ルフィに熱がある」
「……待て待て、チョッパー」
「え? どういうこと? え?」
「冗談だろ?」
「冗談じゃない」
「オイ、ウソだろ?」
「ナミっ!! 止まれッ!! 未知の感染症かも知れねぇ。ルフィは隔離だ」
「だって!! そんな、ルフィが?!」
「今、フランキーとブルックで医務室に運んでもらってる。男部屋もとりあえず、入らないでくれ。サンジにはお湯をわけてもらいたいんだ」
「大丈夫だよな?! ただの風邪だよな?!」
「わかんねえ」
「チョッパー、アンタ医者でしょう?! なんでわかんないのよ?!」
「医者だって検査しなきゃわかんないんだ!! だから、毎日診てるんだ!! それでも防げないのが病気なんだ!!」
「やめろ、ナミ。落ち着け! 確かにびっくりだが、ただ熱が出ただけだ、そうだろ?」
「そうだ」
「だって、だってルフィだよ?」
「大丈夫だから、座ってろ、ホラ」
「お湯だな? すぐにもってくよ。他にほしいもんは?」
「消化のいいものを。なんにしろ、栄養がなくちゃ治らないからな」
「すぐに用意する」
「チョッパー……」
「安心しろ、オレはこの船の船医だ」
「な、任せとけって、ルフィがどうにかなるわけねぇよ。そうだろ、サンジ」
「当たり前だ。オレたちの船長だぞ?」
「ウソップ、サンジくん」
「ココアでも入れよう。なに、湯を沸かすついでだ」
「行ってくる」
「頼んだぞ! チョッパー!」
「いやー、見たかったですねー。取り乱すナミさん」
「可愛かったでしょうね」
「ウルサイ」
「そりゃもう、最高だ!! いつも勝ち気なナミさんが、涙目になって見上げて来るんだもんよ」
「忘れて」
「いや、もうあんまり強く握るもんだからアザになっちまったぜ! 見ろよ、コレ!!」
「ま、漢の勲章よ!」
「ええ、羨ましいわ」
「ダマレ」
「たまにロビンが怖いんだ」
「ほぼ、ロビンさんが慰めてたのに」
「まあ、ことがことじゃなければオロしてたけどな?」
「なんでそんな扱い?!」
「ウッルサーイ!! なによ!! 心配したらいけないワケ?! 前代未聞の事態なんだから、ちょっと取り乱すぐらいしょうがないでしょ!!」
「そうじゃの。全員、人のことを言えるモンでもなかったの」
目をそらす一味。
「味付け間違えるとか、サンジさんにあるまじき失敗でしたね」
「マジモンの亡霊になってウロウロ、オタオタ徘徊してたヤツに言われてもな」
「ウソップとフランキーはチョッパーの邪魔にされてたわね」
「テメェだって腰抜かしてたろうが」
「いや、まあ、実際、どうしていいんだかよー。まさかこんなことになるなんて」
「ただの風邪じゃぞ。オマエらの狼狽えぶりに驚いたわい」
「わかってないわ、ジンベエ」
「アイツに勝てるウイルスだぞ?」
「世界が滅んでもおかしくねぇよ」
「ありえるわ」
「そんな心配しとらんかったじゃろうが」
「まあ、カラダだけは丈夫なヤツだからな」
「殺しても死にませんし。いや、ホント。ワタシ死んでるんですけど?」
「立場ねぇな」
「まったくです」
「まあ、ええわい。後で看病にでも行ってやろう」
「一人ずつだぞ? 押しかけんなよな」
「じゃあ、順番を決めるぞ!! どうやる?」
「おもしろそうね?」
「ワシは最後でええよ」
「よっしゃ、じゃあくじ引きだな」
「待ちなさい、ウソップ! アンタの作ったくじなんて信用出来ないわ!!」
「いや、流石のオレもこんなんでイカサマはしねぇよ」
「いいから、やるぞ! 何番でも変わんねぇよ」
「それもそうね」
「気合が足んねぇんだよ」
「わりぃ」
「なにが風邪だよ。ふざけてんのか?」
「ふざけてはいたかもなぁ?」
「ところで、どうなんだ? 風邪ってヤツは?」
「辛い」
「オマエでもか」
「なんか海ん中いるみたいに力入んねぇし、あっちこっち痛えし、カラダの芯から寒いのに熱があるとか」
「寒いのか?」
「すっげー寒い。なんか、じいちゃんに置いてかれたことを思い出す」
「毛布でももってくるか?」
「いや、側にいてくれよ」
「そうか」
「あと、ノドとかイガイガする。アラバスタで乾いたときみたいなのに、なに飲んでもよくならねぇんだ」
「なんかイヤだな、それ」
「イヤだ」
「なあ、それって伝染るんだろ?」
「らしいな」
「どうやるんだ?」
「わかんね」
「ちょっとなってみたいんだよな」
「やめといた方がいいぞ?」
「そうだぞ。医者の前でバカなこと言うな」
「いたのか、チョッパー」
「ずっといた! つーか、オマエを入れたのオレだし!」
「そうだったな」
「風邪引くぐらいなら、メシ抜きにされる方がマシだぞ?」
「そこまでか。ヤッパ、いっぺんなっとくべきじゃないか?」
「やめろ!! ルフィが熱出しただけで大混乱なんだぞ?! 一味が崩壊する!!」
「大げさだな。たかかが風邪じゃねぇか」
「死ぬような怪我してくるヤツが病気までナメるなよ!! 絶対に許さないからな!!」
「でも、風邪ってヤツは医者でも防げないんだろ?」
「まあ、チョッパーがいればすぐ治るよな?」
「期待してるぜ?」
「嬉しくねぇよ!! 万能薬はオマエらの便利アイテムじゃないんだぞ?!」
「そうなのか?」
「冒険には必須だろ?」
「まるでもうあるみたいに言うな! まだ違う!」
「まあ、すぐだろ?」
「誤差だ、誤差」
「医者を困らすな!!」
拳骨二つ。
「一応、病人だぞ、オレ」
「ノックぐらいしろよ」
「したわ!!」
追加。
「ナァ〜ミィ〜っ!!」
「ハイハイ、バカ相手によく頑張ったわね」
「ゾロが風邪引きたいって」
「バカじゃないの?」
「いや、まあ、そうバッサリ言われると」
「やめとけよ、ゾロ」
航海士、悪巧みを思いつく。
「そういえば、キスすると伝染るらしいわよ、風邪」
「キス?」
「魚か?」
「ううん、こういうの」
チョッパーの額にキス。
「くすぐったいぞ」
「ゴメン、ゴメン。これを唇どうしでやるのよ」
「コイツと?」
「ゾロと?」
「そう」
見つめ合う二人。
「あ、ワタシたちお邪魔よね? 部屋出てるわ!!」
「あ、オイ!!」
「えー? ゾロと~?」
「 みんな〜、ゾロとルフィがキスするって〜!! 」
「あの女ぁ!!」
「自業自得だと思うぞ」
「オマエのそれはもはやワザとなのか? 隠れてねぇし、覗いててもやらねぇよ」
「ま、ゾロならいいぞ?」
「この船長は、まったく」
「ウワァァァ! ルフィが受け入れたぁっ!!」
「 なぁにぃぃぃッ!!」
ドドドド。
「大騒ぎじゃねぇか」
「子供の頃はみんなにやってたしな! なんか、ヤソップとかよくリクエストされた」
「やめろ、なんか、もう、色々やめろ」
「風邪になりたいって言ってたじゃねぇか」
「反対してただろ? なんで追い詰めるんだ」
「オマエが言い出したことじゃねぇか?」
「ドキドキ、ワクワク」
「そこも隠れる気がないなら、せめて口を挟むな」
「不潔だわ」
「表情が裏切ってますよ、ロビンさん」
「そのけがねぇとは思ってたが、そうだったのか」
「やめろ、フランキー」
「お粥作ったけど、オマエがフーフーするか?」
「ヨシ、わかった。命がいらねぇんだな」
「安心しろ!! 応援するからな!! あ、ウソップ工場は二人の部屋にするか?」
「隣は鉄板張りだから声は漏れねぇぞ?!」
「やらねぇよ!! そこに直れ!!」
「ギャー!! ゾロが怒ったぁ!!」
ドドドド。
「ホントバカよねぇ」
「いらんと思うが、止めてくる」
「お願いね。ジンベエ」
「みんないなくなっちまったなー」
「なに? アタシだけじゃ不満?」
「いや? 残ってくれてよかった」
「アンタが風邪とはね」
「オレもびっくりだ」
「お粥食べる?」
「あんま食べたくない」
「食べないと治んないわよ、ほら、口開けて」
「あー」
「おいしい?」
「ウメェ」
「後でミカンあげるわ。風邪にいいのよ」
「辛いけど、ちょっと得したなー」
「もうゴメンよ。ちゃんとチョッパーの言うこと聞きなさい」
「そうする」
「ホラ」
「あー」
筆が乗るぅ