マジでそれだけ
「こいつは新鮮だ。オススメはあるかい?」
「ああ、オタクら他所から来た人かい? ウチは旬なんて、港ごとに違うからね。どこで穫れたかで見るんだよ。といっても、わからないか。なんでも聞いとくれ」
「そうだな、特産ってのはあるかい?」
「いい質問だ。なんたって一度は口にして欲しいのは、コイツ! オイセエビだ! 鬼ヶ島の近海でしか穫れなくてね。さっそく揚がった第一号だよ!」
「へー、ロブスターに似てるな」
「甘みと身の歯ごたえが全然違うよ! あっちは淡白だから色んな味付けで楽しめるが、コイツはむしろ素材そのまんまを楽しむもんさ! 刺身がオススメだが、この頭を豪快に味噌汁にしても最高だよ?」
「いいね。一箱まるごと貰おう」
「毎度!!」
「コイツは?」
「まだ買ってくれるのかい? いや、ありがたいけどね」
「まだ、畜産の方は品薄だろう? ウチには自慢の冷蔵庫があるんでね」
「ああ、そうだね。こっちは船さえ出しゃ、売り物はごまんと獲れるからね。ああ、ソイツはモドリガツオだよ」
「マッシブだな」
「近海で生まれて外海に出たコイツは、この時期、滝を昇って帰って来るのさ! それでモドリガツオ。珍しく、旬のある魚だね」
「あの滝を? スゲぇな」
「お侍さまでも、海では仕留められないって噂さ。コイツは漁師が一本釣りするのさ」
「どう料理する?」
「見てわかるようにとにかく泳ぐのが得意の魚でね。今すぐなら刺し身もいいが、足が早いんだ。生姜なんかで臭みを消したり、たたきにするのが一番だね。酒に漬けたり揚げたりもいいよ」
「コイツも貰おう。それから干物なんかも見繕ってくれるか?」
「オマケしとくよ!! ヤツらから隠しといたいい貝柱があるんだ!! いつかこんな日のお祝いにしようってね!!」
「オイ、そんなに持てねぇぞ?」
米俵を担いだゾロ。
「オレも持つ。問題はねぇ」
「いや、酒も買う約束だろ?」
「兄ちゃん。船は常影かい? なんなら配達しようか?」
「いいのか?」
「そりゃこんだけ買ってくれたらね。勢いでみんなたんと水揚げしてるが、まだまだこんな高級品を買えるわけじゃない」
「そんなもんか?」
「昔はちょっとした贅沢品ぐらいのもんだったが、さんざん痛めつけられたからね。食ったら精がつき過ぎて腹を下しそうだよ」
「ま、ありがてぇ。ウチはとにかく量がいる」
「味も保障付きさ。これで漁師に金が回りゃ、街にも、人にも流れていく。そんで豊かになるのさ。おでんさまの教えだよ」
「九里の大名だったろ?」
「だからなんでぇ? 商売人が儲けをくれるお人を知らないとでも?」
「そうか。スゲェ剣士だとは聞いてたが」
「大名でお侍だ。ただ強いだけのヤツに従うんなら、オレらはカイドウの手下になったさ」
「頼もしいのか、前途多難なのか」
「モモの助さまかい? なぁに、前よかよくなる。それで充分さ。アイツらの元でも二十年生きた」
「頼もしいね」
「ヘヘ、これ以上は鼻血も出ねぇよ。だが、そこの通りを行った酒屋には、こんな時期でも品に不足はないよ」
「ありがてぇ。寄ってみるよ」
「あんまり買い過ぎるなよ。またチョッパーにどやされる」
「わかってるよ」
「じゃあな。旅の人たち。無事を祈っておくよ」
「アンタも達者でな」
「腕が鳴るぜ。ありがとよ」
続くかも