麦わら一味の日常   作:HIRANOKORO

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あるの?


船長の仕事

 ルフィの仕事は帆の操作。ゴムの機動力と射程を活かして、素早く折り畳んだり、広げたり。

 風との戦いではとても便利な能力だ。遊蛇海流ほどではなくとも、一体どこから来たんだという海流や波と戦う操舵も、推進力なくしては空回り。危険度に合わせてナミが指揮し、ウソップが監視と補助をする。その間を飛び回るのはルフィが一番だ。

 常に順風満帆とはいかない航海。実は忙しい船長である。

 もちろん、ときたま航海士なんかは自問自答するし、船長の働きを褒める狙撃手を見て首を傾げることもある。

 それは船長の仕事なのか、と。

 まあ、海賊なんて素人の集まりである。これがウチのスタイルと納得はしている。実際、こんな少人数なのがそもそも非常識なのだ。そして、船長は非常識の塊である。

 突っ込むのも疲れる。

「ルフィ、ちょっと変な海流に捕まったから、今日は夜通し航海よ」

「ん、わかった」

 もっとも、こうした報告はまずキチンと船長に行く。指示はするが、それは船長をたてた上でだ。

「サンジ〜! 弁当〜!!」

「なんでだよ?!」

「不思議海流に乗ったから、今日は徹夜だ!」

「それを先に言え。わかった。問題なく用意しとくよ」

「えーと、今日の当番は?」

 言いながら伸びる手を撃墜する。

「盗み食いはダメだって言ってんだろ。当直前にも腹ごしらえが出来るようにしとくから、さっさと知らせてこい」

「わかった」

 単なる伝令かも知れない。ちなみに、サンジはちょっとだけくれた。

「ウメェ」

 

 

「ヤード新しいから気をつけてくれ。なんか違和感があればすぐに言えよ」

「わかった」

「で、よ。オマエかジンベエがいれば洗濯が楽になるかもしれねぇ機構を思いついたんだが、乗るか?」

「いいぞ。なんかいるか?」

「今のところはなんとかなりそうだ。ダメそうならまた相談する」

「わかった」

 ゾロを除いた全てのクルーに伝達を終え、甲板に戻る。ゾロはどうせ起きないし、起きればすぐに察するし、暇があればトレーニングをする。

 ゾロは怪我の具合によって、トレーニングが制限されることがある。オーバーワークすれば、船医が船長に泣きつく。

 要請を受けた船長の命令で、たいがいブルックかナミが寝かしつける。ある意味でもっとも船長権限が輝くときかも知れない。

 一緒に眠らされなければ、ルフィはチョッパーの診察からベッドに寝かせるまでを黙って見ている。クルーはそれを邪魔しないし、今回のようなときにゾロが除外されていてもなにも言わない。

「いって来たぞ。それから、フランキーがなんか開発したいって」

「お金になるんでしょうね?」

「知らねぇけど、洗濯が楽になるってよ」

「ふーん。許可は出したんでしょ?」

「オウ。好きにしろって」

「なんならウソップも巻き込みなさい。必要なものは用意するから」

「いいのか?」

「あんたが船長でしょ?」

「ありがとな! ナミ」

 盛大にタメ息をつく航海士の内面はわからないでもない。

 

 

 夜になるまで時間がある。帆はフォアとメインのスルを畳んで、縦帆だけで航行中。サニー号の主要推進力であるため、むしろもっとも操作性の高いこの帆は、クルーの誰でも一人で動かせる。

 スループの定石ならフォアと船首を繋ぐこのジブが後ろにあることで、スパンカーのようにも使えるし、ミゼンとしても使える。少人数で運営する麦わらの一味のためにあるような工夫だ。

 おかげで順番の早いものから仮眠に入る余裕もある。だから、船内は少し静かだった。

「寝てなくていいのか?」

「あんま眠くねぇ」

「そんなこと言って居眠りすんなよ?」

「大丈夫だ」

 人数分の弁当に具材を詰め込むサンジを眺めながら、ルフィは珍しく大人しくしていた。

 目の前に食べ物があってもヨダレを垂らさないのは、飢えてないから。どこかと戦闘しているならともかく、日常でそんなことをこの料理人が許すハズもない。

 それでも、日々戦いだが。

 ただ、冒険と同じぐらい楽しみにする弁当を前に、ルフィがワクワクを表に出さないのは、他に興味があるからだろう。

 誰かにメシを用意するサンジがご機嫌なのも、鼻歌交じりなのも珍しくはないが、船長には奇異に映ったらしい。

「なんか最近、機嫌いいな?」

「オレか?」

「よくわかんねぇけど、嬉しそうだ」

「んー、まあ、わかっちまうか。まあな」

「いいことでもあったのか?」

「別に確信があるわけじゃねぇよ」

「でも、嬉しいんだろう?」

 本当に自信はないのだろう。ちょっとだけ迷い、それでも耐えきれないようにニカッと笑った。

「クソジジイの言ってたことが、最近、実感出来たんだ。オールブルーは可能性だ。夢じゃないってな!」

「へー! なにを見つけたんだ?」

「別に見つけたわけじゃねぇ。まだ、可能性だしな。でもよ、荒唐無稽な夢物語なんかじゃないぜ? このグランドラインならあり得るのさ!」

「教えてくれよ! どういうことだ?」

「ワノ国ってのは一応は一つの島だろ?」

「うんうん」

「だが、レッドラインみてぇに、場所によって季節が違っただろ?」

「そうだった!」

「魚には旬がある! ウソップが好きだろ?」

「オウ! 秋のサンマ!!」

「ワノ国なら一年中食えるんだよ!! これだけでもスゲェ!!」

「スゲェ!! 食べ放題だ!!」

「もちろん、それだけじゃダメだ。ワノ国の特産品は穫れても、全ての海の魚は獲れない」

「うーん、そうだな?」

「でも、そんな島がいくつも集まる海域があったら?」

「おお?」

「きっとある。あるぞ! オールブルーはあるんだ!!」

「はー、それで喜んでたのか?」

「確信はないって言ってんだろ? でもよ、多分、オレと同じなにかを、ジジイも感じたんだ」

「あのおっさん、ワノ国まで来たのか?」

「そりゃわからねぇ。もしかしたら、他にもそんな島があったのかも知れねぇし」

「じゃあ、他にもきっとあるな」

「だろ?」

「サンジはオールブルーを見つけたらどうすんだ?」

「さあな? レストランでも建てるか? 客なんか来そうもねぇが」

「オレは行くぞ?」

「じゃあ、まずはオマエにゴチソウしてやるよ」

「マジか?!」

「約束だ。四つの海をまるごと食わせてやる」

「スゲェ!! スゲェぞ、サンジ!!」

「きっとオマエでも食いきれねぇぞ?」

「そんなわけあるか! オレは海賊王になる男だ!!」

「食い気でなるんじゃねぇよ、そんなもん!!」

「じゃあ、勝負だな?」

「オマエの胃袋と? 急に負け戦な気がしてきた」

「そんなことねぇ!! サンジは絶対に腹いっぱい食わせてくれる!!」

「勝つ気があんのかよ?」

「オレは負けねぇ」

「そうかよ」

「約束だぞ、サンジ?」

「ああ、オールブルーを見つけたらな」

「早く見つけろよ」

「調子に乗るなよ? このウスラトンカチが」




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