麦わら一味の日常   作:HIRANOKORO

45 / 50
リクエスト?
公式三つ目の棚


男子事情

 夜のくじ当番がたまたま、女性二人になった。一応は待機ということで、男部屋に集まった野郎ども。

 女っ気なく、この聖域に全員が揃うのは珍しい。そして何故か誰も寝ていなかった。

「流石にフランキーとジンベエが並ぶとデカいな」

「なにげにブルックも長いからな」

「そうだな。高いとか細いじゃなく、長いだよな」

「どういう意味でしょう?」

 本人たちもわからない。ただ満足である。

「誰も寝ねぇのか? チョッパーは大丈夫か?」

「昼間寝たから大丈夫だ」

 壁に背中を預けたゾロの膝の上で、なにやら医学書を見ながら答える。

 どことなく、居心地の悪い空気があった。暇つぶしにゲームをしようと言い出すわけでもなく、話題がポツリポツリと消えていく。部屋の角に、サンジがいたからだ。

「グフフ、ワノ国の美女ってのは色っぽいな〜」

「邪な雰囲気じゃ」

「ブルックはいいのか?」

「ええ、今は生の気分です」

「生ってなんだ?」

「遠慮しろよ」

「今頃、お二人は仲睦まじくカラダを寄せあっているんでしょうか?」

「それは生なのか?」

「斬るぞ?」

「ナミとロビンは仲いいからな~」

 船長に視線が集まり、ホネがちょっと浄化された。

「男が集まっても猥談って雰囲気じゃねぇな」

「エロガッパは一人で十分だ」

「サンジ、それおもしれーのか?」

「あ? まずは見てみろ」

「なんなら、見慣れてんだよな」

「バカだな、ウソップ。なんの遠慮もなく眺められる女体と、我らがご神体たるナミさん、ロビンちゃんを一緒にすんじゃねぇ」

 部屋の隅に三人で固まる。女性陣にはナイショで、公然たる料理人のロッカー。その新たなコレクションが、クルーに披露された。

「ジンベエ、禁欲はあんまり体に良くないからオレに言えよ。医務室使っていいからな」

「そうなのか? ワシはこの歳じゃし、あんまり苦労はないんじゃが」

「歳ったって、まだまだだろう」

「そうですよ。むしろ、男盛りでは?」

「うむ、どう声をかけたもんかの?」

 励ますように、煽るように白い歯を煌めかせるサイボーグと、キリッとした表情を作る骨格標本。どちらもそうしたことには無縁なようで、そうでもないというか。

「戯言だ。気にすんな」

「むしろ、テメェはどう処理してんだ? 筋トレのやり過ぎで勃たねぇか?」

「元気いっぱいだよ。言わせんな」

「ヨホ! 羨ましいですね~」

「オマエは、いや、いい」

 文字通り、第二の人生を歩む音楽家が楽しそうならそれでいい。剣の勝負とは違って、踏み込んでも勝てない。

「俺やアホコックはアレだ。心配なのはアイツらだ」

 明らかに妖しい雰囲気を垂れ流している料理人に比べれば、無関心な背中。片一方はそれなりにはしゃいではいるが、隣と比べればあまりに健全。

 不思議である。どうにも納得がいかない。

「どっちも異常はないぞ?」

「じゃあ、なんなんだ?」

「さぁ? オレは季節で発情するから人間の感覚はわかんないし」

「まあ、そういうのが薄いヤツもいる。アイスバーグも若い頃からそうだった」

「へぇ? モテそうなのにな、あのおっさん」

「兄弟分が色男だと、苦労する。おかげで色々経験は積めたがな」

「わかる。ワシもそうじゃ」

「へぇ~、ジンベエこそモテそうだがな」

「おや? 良いのか?」

「取られた」

 部屋の隅では女性のあられもない姿を題材に、なにやらウケまくっている二人。

「なんなんだ? アイツらは」

「気にすんな。興味がねぇのさ。それより、ジンベエだ」

「といってもな。ソイツはさっさと身を固めよったし」

「ああ、アイツか」

「ワシはなんならアーロンよりも怖がられておったしの。それより子供の世話が好きじゃ」

「オマエはどうなんだ?」

「どうなんだって言われてもよ。ジジイにレディへの扱いを叩き込まれる前は、アホだったし。それからも、まあ、長続きするような付き合いはなかったな」

「思ったより不器用ですね」

「自覚はある」

「で、ゾロは?」

「あ? オレ? 来る者は拒まねぇよ」

「ウソつけ」

「バカらしくなってきやがる」

「ま、ものの分別がついとるだけじゃろう。むしろ、好ましいと思うぞ」

「ヨホホ! 色男ですねぇ」

「オレは、ミンク族にドキドキした!!」

「アイツらより、よっぽど大人じゃねぇか?」

「レディの扱い方ならきっちり教えこんでやる」

「駆け引きもな!」

「贅沢ですね~」

「ま、まだそんなんじゃねぇけど、家族が出来たらいいなぁ」

「そうだな。出来るといいな」

「応援してやるよ」

「ウン!!」

 ほっこりしたところで、部屋の隅から二人がバタバタと立ち上がった。

「ゾロ! 立って、立って!! ホラ、早く!!」

「なんだよ?」

「フランキーも! こっちに並んでくれ!」

「あぁ? なにをしようってんだ?」

「いいから!! ジンベエはこっち! チョッパーは、ゾロの肩に乗れ!!」

「え? なんだ?」

「ブルックは、どうする?」

「一緒に並べちゃえ!!」

 なんだかよくわからないが整列させられ、なんならポーズを取らされ、服まではだけさせられれば、手にした雑誌を再現したいのだとわかる。

 だが、この面子である。なにが楽しいのかわからず、戸惑いながら指示に従った。

「こんな感じでムキッとしてくれ!」

 どう見てもムチッとしているが、なんとなく筋肉を盛り上げる。すると二人は床にうずくまり、彼らを見上げて言った。

「雄っぱい」

 おそらく、迫力だけなら世界トップレベルのグラビアだろう。

 年長組の顔に影が。両翼のコメカミに血管が浮かぶ。

「アンタらなにしてんの?」

 そのタイミングで交代の時間がやってきた。いつか体験したロギアよりも冷えきった視線が注がれる。

 その足元では笑い転げるバカコンビといかがわしい本。彼らは息も絶え絶えに、伝えた。

「雄っぱい」

 ロビンが口元を抑えて走り去る。ナミは言葉もなく、ただその光景を眺めた。

「貧相なカラダですいません」

「そういう問題じゃねぇ」




よろしいか?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。