麦わら一味の日常   作:HIRANOKORO

46 / 50
人知れず夢を捨てた


失くした夢

「なあ、ウソップ。夢ってヤツは遠いな」

「唐突だがわかる。そしてやめておけ。流石に止めるからな」

 サンジの視線の先には、船尾から湯気を吐き出す丸い構造物がある。あの中は今、ピンク色の極楽。

 ナミとロビンが入浴中だった。

「なぁ、ウソップ。オレはもう少しで、あそこに届くハズだったんだぜ?」

「させねぇよ。どうした、オマエ」

「スケスケもギロギロも、オレが手に入れたかった」

「やべぇな。コイツ、下手したら黒ひげみたいになんじゃねぇか?」

「だが、一度は手に入れたんだ。科学の名を持った悪魔を」

「おそばマスクは魔がさしたと言っていいと思う」

 遠い目の先には、ソウルキングと閻魔王が壮絶な戦いをしていて、ジンベエが海水をぶっかけている。

 見た目だけなら大スペクタクルだ。医者も走るし、大工も素早く点検を始めた。

 もしかしたら、今日、仲間が一人旅立つかも知れない。

「確か、戻って来れるの一度だけだよな?」

「あそこが天国だろ?」

「無敵じゃねぇか」

「そう、オレは無敵になれた」

「コイツも斬った方がいいか?」

「これでも正気なんだよ」

 渋々、刀を納めたゾロが歩き去っていく。

「オレは、夢を叶えるために船に乗ったのに!」

「泣くな」

「サンジの夢ってオールブルーじゃなかったのか?」

「今はややこしいから向こう行ってろ」

 不満そうに観戦していた船長も立ち去る。

「怖かった! 人の心を失くすのが!! オレは、どんなバケモノになっても、人の道を外れた外道にだけはなりたくない!!」

「なんだったら、あのスーツ再現してやろうか?」

「マッドはやめろ。誰も幸福にしねぇよ」

 納得したように、フランキーも消えていった。

「だが、同時に思い出した。あの日の誓いを」

「いつのことじゃ?」

「あ、いつでも海に叩き込めるようにしててくれ」

 ジンベエが腕を組んで、後方待機する。

「なにかの力を借りるんじゃない」

「去勢するか?」

「もう少し経過を待とう」

 チョッパーは準備を始めた。

「夢は自力で叶えるものなんだ!!」

「ええ、サンジさん!! ともに力を併せましょう!!」

「コヤツ、いつの間に復活を?!」

「バカ、ジンベエ!! ちゃんと拘束しておかないと!!」

「仲間じゃぞ?!」

「関係ねぇ!!」

「鎮静剤が刺さらねぇぞ?!」

「ムダにパワーアップしやがって!!」

「もはや、誰もオレたちを止められない!!」

「やめろォ!! また鼻血で死にかけるだけだ!!」

「そんなことなどとうに承知!! ロマンを追いかけるのに生命の計算をするバカがどこにいます?!」

「紛れもないバカじゃ!!」

「必殺!! 捕獲星!!」

 航海に反乱はつきもの。

 男たちの夢は、今日も無惨に破り捨てられていく。

 

 

「アレ、放っといていいのか?」

「いい鍛錬じゃねぇか?」

「ゾロ、風呂入らねぇ?」

「オマエ、悪いヤツだな?」

 踏みにじられている。




戦いは虚しい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。