「なあ、ウソップ。夢ってヤツは遠いな」
「唐突だがわかる。そしてやめておけ。流石に止めるからな」
サンジの視線の先には、船尾から湯気を吐き出す丸い構造物がある。あの中は今、ピンク色の極楽。
ナミとロビンが入浴中だった。
「なぁ、ウソップ。オレはもう少しで、あそこに届くハズだったんだぜ?」
「させねぇよ。どうした、オマエ」
「スケスケもギロギロも、オレが手に入れたかった」
「やべぇな。コイツ、下手したら黒ひげみたいになんじゃねぇか?」
「だが、一度は手に入れたんだ。科学の名を持った悪魔を」
「おそばマスクは魔がさしたと言っていいと思う」
遠い目の先には、ソウルキングと閻魔王が壮絶な戦いをしていて、ジンベエが海水をぶっかけている。
見た目だけなら大スペクタクルだ。医者も走るし、大工も素早く点検を始めた。
もしかしたら、今日、仲間が一人旅立つかも知れない。
「確か、戻って来れるの一度だけだよな?」
「あそこが天国だろ?」
「無敵じゃねぇか」
「そう、オレは無敵になれた」
「コイツも斬った方がいいか?」
「これでも正気なんだよ」
渋々、刀を納めたゾロが歩き去っていく。
「オレは、夢を叶えるために船に乗ったのに!」
「泣くな」
「サンジの夢ってオールブルーじゃなかったのか?」
「今はややこしいから向こう行ってろ」
不満そうに観戦していた船長も立ち去る。
「怖かった! 人の心を失くすのが!! オレは、どんなバケモノになっても、人の道を外れた外道にだけはなりたくない!!」
「なんだったら、あのスーツ再現してやろうか?」
「マッドはやめろ。誰も幸福にしねぇよ」
納得したように、フランキーも消えていった。
「だが、同時に思い出した。あの日の誓いを」
「いつのことじゃ?」
「あ、いつでも海に叩き込めるようにしててくれ」
ジンベエが腕を組んで、後方待機する。
「なにかの力を借りるんじゃない」
「去勢するか?」
「もう少し経過を待とう」
チョッパーは準備を始めた。
「夢は自力で叶えるものなんだ!!」
「ええ、サンジさん!! ともに力を併せましょう!!」
「コヤツ、いつの間に復活を?!」
「バカ、ジンベエ!! ちゃんと拘束しておかないと!!」
「仲間じゃぞ?!」
「関係ねぇ!!」
「鎮静剤が刺さらねぇぞ?!」
「ムダにパワーアップしやがって!!」
「もはや、誰もオレたちを止められない!!」
「やめろォ!! また鼻血で死にかけるだけだ!!」
「そんなことなどとうに承知!! ロマンを追いかけるのに生命の計算をするバカがどこにいます?!」
「紛れもないバカじゃ!!」
「必殺!! 捕獲星!!」
航海に反乱はつきもの。
男たちの夢は、今日も無惨に破り捨てられていく。
「アレ、放っといていいのか?」
「いい鍛錬じゃねぇか?」
「ゾロ、風呂入らねぇ?」
「オマエ、悪いヤツだな?」
踏みにじられている。
戦いは虚しい