麦わら一味の日常   作:HIRANOKORO

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男と女
兄貴分と弟分
ライバル関係
わかり合えないこともある


犬も食わない

 ルフィは自分で本は買わないが、図鑑を眺めたり、誰かと一緒に新聞や小説を読んだりもする。

 専門書を読むフランキーの後ろでわかったような顔をするのは得意だし、ブルックとクロスワードを解いた気になるのも楽しんでいる。

 最近はジンベエとロビンの読み聞かせがお気に入りというお子様ぶりである。

 ちなみに、子供に本を読ませる理由の第一位は寝かしつけだったりする。

 いつもは発明家のウソップや、医者のチョッパーが選ぶせいで、ヒーロー物のようなSF寄りの小説を眺めていることが多い。

 しかし、それに感化された三人が変な騒動を起こすことも多かった。なんならフランキーやブルックが悪ノリして協力するし、敵役と認定されたゾロやサンジがマジになって相手をするからだ。

 防げないとわかっていても、人情だろう。平和なファンタジーや女の子向けの物語なんかも、図書室のラインナップに増えてきて、ロビンが嬉しそうである。

 そんな地道な布教のおかげか、今日のウソップファクトリー支部で広げられたのは魔法少女物。

 読んでるときは真剣で大人しいのに、と内心で零しながらミカンの世話をしていると、ルフィと目があった。

「なによ?」

 冷や汗を出しながら、なにかに気がついたかのような顔をするルフィ。そんな目で見られる覚えのないナミは、とりあえず聞いてみた。

「いや、なんでも」

 しかし、返ってきたのは珍しく歯切れの悪い返事。不思議には思ったが、視線も外れたので作業に戻る。

 ウソップもチョッパーも集中している。なのに、ルフィのチラチラが止まらない。

 うっとうしいが、長く生活を共にした仲間である。聞いても無駄だと、考えてみた。

 読んでいるのは昔、自分も見た定番もの。幼い少女が喋れる魔法の杖を相棒に、正体を隠して様々なトラブルを解決していく。主に変身魔法なので、戦ったりはあまりしない。その変身シーンに挿絵がついていて、子供心に興奮した覚えがある。

 懐かしさがこみ上げるが、ちょっと待ってほしい。

 あのなにか重大な秘密でも見つけた顔で、こっちを見てくるバカはなにを考えた。

 ピンっときたナミは、ルフィに歩み寄った。怒られる雰囲気を察したバカは早速、言い訳をする。

「オ、オレはなにも知らねぇ!!」

「ああ、やっぱりそうなのね?」

「ち、違う!! 誰にも言わねぇ!! ナミが魔法少女だなんて!!」

「え?! ナミってそうなのか?」

「だって、魔法の杖持ってる」

「オレ製だがな」

「ええッ?! ウソップって精霊だったのか?!」

「しゃべるし」

「ゼウスな」

「ホントだ?! じゃあ、ナミは変身すんのか?」

「魔法の呪文で?」

「キラッとしてピカッとしてポーズするぞ」

「あれをナミがやんのか?」

 三人の視線が腕を組んだナミに集まって爆発する。三人は床を転げ回って大笑いした。そして、当然のように頼む。

「やって見せて?」

「出来るかぁ!!」

 拳が唸る。

「だいたい、なによ!! バカにして!! カワイイじゃない?!」

「どこがだよ?! こんなナヨナヨして、あっちこっちに星を飛ばすとか、不自然だろ?!」

「そういうもんなの!! アンタたちが好きなヒーローとなにが違うのよ?!」

「バカやろう!! 一緒にすんな!! あれはちゃんとそういう理屈があってだな」

「魔法だって同じじゃない?!」

「魔法なんかこの世にねぇよ!!」

「オマエが言うな!! なんなのよ、あの能力?!」

「自由なオレだ!!」

「意味わからんわ!!」

 ヒートアップする航海士と船長を、狙撃手と船医は黙って見物した。

 

 

 

「オイ、酒くれ」

「食事の時間まで待てないのか? ってかなんだ、それ?」

「そこで取り憑かれた」

 何故かルフィを背負って現れた剣士に、料理人は抵抗を諦めた。

「カウンターに座ってろ。ちょいと摘めるもんぐらい出してやる」

「サンジー、サンジー」

「ああ?」

「チェスマリーモ」

「ブフぅ!!」

「汚ぇな、テメェ!!」

「さ、流石にスマン。だが、似合ってるぞ?」

「また、ボールでも被りたいのか?」

「よお、ルフィ。ゾロがアフロにしたいってよ?」

「ホントか?!」

「しねぇよ!! テメェ、面倒なことすんな」

「おーおー、酒をタカリに来たロクデナシが偉そうな口を」

「あ? 言われた通り出しゃいいだろが。立派なお題目はウソかよ?」

「毒もカミソリも出してやっただろうが!!」

「ああ、旨かった」

「旨かったじゃねぇよ!! なんで食ってんだ?! そこはオレに詫びを入れるトコだろうが?!」

「オレはオマエに頭を下げねぇ」

「なんだ、その拘りは?! オマエには食への感謝が足りねぇ」

「まずは酒を出せ。話はそれからだ」

「酒を出して下さいだろ? 瓢六玉」

「言われたことも出来ないのか? 三流コック」

「上等だぁ!! 今日こそマナーを叩き込んでやるぜ!!」

「表に出ろ、コラァ!!」

 カウンターに座るルフィの前にはちゃんと二人分のツマミがあるが、酒はない。

「元気だなー、アイツら」

「また、ケンカか。お? コイツ食っていいか?」

「ゾロのだぞ?」

「じゃ、やめとこう」

 ルフィですら手を出さないそれを、後でごちそうさました。

 

 

 

「オレは変身トナカイだ」

「ん? まあ、そう、だな?」

「変身するとルフィは喜ぶし、強くなれる」

「確かにあの怪物姿はカッコいいし、強えぇよ」

「なんでサンジは変身してくれないんだろう?」

「そうきたかぁ」

「オレだってわかってるよ。色々、事情とかあるし、サンジの決断だ。尊重したいって思う」

「そうだな」

「でも、なんにも話してくれない」

「そうだなぁ」

「ちょっとショックだったんだ。ブルックはわかってたみたいだけど、ホントに居なくなるつもりだったなんて」

「あー、なんて言ったらいいか」

「そうよ!! アイツら勝手が過ぎると思わない?! なんでもこっちが察してやらないといけないの?!」

「うぉぉ! 突然、入ってくるな!! 今、オレは手一杯なんだ!!」

「はぁ? アタシの話は聞けないってワケ?」

「そうは言ってねぇよ。ただ、順番にだな」

「ゾロはドンと構えろとか放っておけとか言うけど、オレだって力になりたいんだ」

「普通に続けるな! 待て、ちょっと待てよ」

「アイツら、なんなの? ただでさえバカなのに、理解を押し付けられてもわかんないんだけど?」

「ウソップ、オレ、どうしたらいいかな?」

「それをオレに言うな!! いったん、落ち着こう、な?」

「アンタら、男どもは結託してなんかわかった雰囲気出すでしょ!!」

「だって、あの二人に頼むって言われるの、いつもウソップだし」

「いやいやいや、そんなことないから」

「オレもナミもそうだけど、ウソップだって援護の側だろ? オレも頼りにされたい」

「そうよ。むしろ、か弱い乙女なんだから頼らせなさいよ!! こう、アンタたちが察してアタシを甘やかすのよ!!」

「無茶を言い始めたぞ?!」

「なにが無茶よ?! ちょっと、一声かけるだけのなにがそんな難しいの?! 不安にさせて、不満にさせて、それで背中向けたら終わりなの?! 勝手もいい加減にして!!」

「ロビンも頼られて羨ましいぞ?! 頑張ってるのに、オマエらみんな医者の言うこと聞かないし!!」

「悪かった!! 悪かったから!! いや、なんでオレが謝ってんだ? とにかく、落ち着けって!!」

 わーわーしている甲板の影に、その二人はいた。

「言われてんぞ?」

「黙れ。オレは忘れてねぇぞ。スリラーバークの一件を」

「ん? なんだコレ?」

「メモ用紙?」

『ただちに出てこい。バカども』

「さ、仕込みしなきゃな」

「トレーニングの時間だ」

「頼んだぞ。ウソップ」

「そういうのは、オマエの役目だ」

 

 

 

「最近、ちょっと甘やかし過ぎじゃねぇか?」

「あら、そう? この船は自由な気風でしょう?」

「別に厳しくしろとかじゃねぇんだ。ただ、同盟とか色々あったろ?」

「必要な助言はしたと思うわ。アナタこそ、なんにも言わないのはズルいんじゃない?」

「オレが出るまでもねぇだろ。ジンベエも加入したし、不足があったって話じゃねぇんだ」

「じゃあ、甘いのはアナタね」

「オレサマが? 締めるトコは締めてるぜ?」

「そうね。ドレスローザでは、結局、アナタだけで工場をどうにかしたものね」

「そりゃオメー、ドフラミンゴをブッ飛ばしちまったら関係ねぇだろうが」

「でも、そういう約束だったでしょう? それに海軍もいた」

「あの大将なら手を出して、ムチャクチャになった国を、さらに悪くするようなことはねぇだろ」

「あら? 包囲されてたことはなかったことに? それに船大工さんは情報通ね。新しい大将の人柄を知ってるなんて」

「人を見る目があるからな」

「フフフ、やっぱりズルい」

「ズルくはねぇよ」

「いいえ、ズルいわ」

「とにかくよー、もうちょいアイツらに知恵をつけてやれんだろ?」

「ほーら、甘い」

「そうじゃねぇって、誤魔化すな」

 ロビンの膝の上で、フランキーが苦言を零す。

「仲がよいのぉ」

「皆さん若いですねぇ」

 ジンベエとブルックはそれを肴にお茶を飲んだ。




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