麦わら一味の日常   作:HIRANOKORO

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起きるまで一週間


鬼の居ぬ間に

「しまったな。あと先考えず、潰しちまった」

「オレが持ってきた資料と、アイツから聞いた話から推測しよう」

「面倒だ。だが、ヒントがないわけじゃない」

「鬼ヶ島かこの城に少しでも残ってないかな? 欠片でもいいんだ」

「探させましょう」

「要は中毒だ。パンクハザードのガキどもよりは楽だろ」

「えびす町のみんなをあの時みたいに切り刻むのか? 出来るならいいけど、この国の病巣はそれだけじゃないみたいだ」

「工場の廃液か。そっちも深刻だな」

「ウチのクルーも患者だ」

「なんでこの短い期間に」

「しかも自覚がないんだ」

「バカってスゴいんだな」

「鈍いのか無事なのか、診断が大変だ」

「まあ、仕方ねぇ。言っても無駄なのは理解した」

「トラ男は船長なのに、話をちゃんと聞いてエラいな!」

「比較対象がアレじゃあ、喜べねぇよ」

「なんでだ?」

「オマエ、ウチ来る?」

「トラ男こそ仲間になってくれたら嬉しい!!」

「アイツらの制御役は割に合わねぇよ」

「バカは治らないけど、ダメなら治せる気がするんだ。だから、きっと大丈夫だ」

「きっとの意味がわからないし、仲間になる気もねぇ。とにかく、探すぞ。鎖国してるなら、国内で自給出来なきゃな」

「量も、数も、期間も重要だ」

「しかし、ある意味、悪魔の実の効力を無効化するのか」

「不可能じゃないハズだ。オレのランブルボールはそこに働きかける。なら、逆も出来る」

「不可逆かも知れねぇ」

「それでも症状は抑えられる。どんな悪魔の実も、なにかを変化させることが基本的な効能なんだ。促進出来たんだから、抑制も可能だ」

「なるほどな。それはそうかも知れねぇ」

「なんにしろ、科学で生み出されたんだ。どんな形であれ、解決方法は見つかるハズだ。ウチの船長は、神だってブッ飛ばしたんだ。オレは悪魔ぐらい制御出来ねぇと」

「船長はともかく、オマエはいい医者だな」

「トラ男も、外傷の処置はスゴい勉強になったぞ。ルフィの胸の傷も、二年前じゃ手が出せなかったかも」

「まあ、これでも外科医だ」

「ウチのクルーは病気とは無縁だから、やっぱりトラ男の方がいいのかな?」

「馴れ合うな。この島を出たら敵に戻る。オマエがちゃんと医者をしろ」

「無理だぞ? 敵になったぐらいで、ルフィから逃げるのは」

「なんなんだ、オマエの船長は」

「世界で一番自由なヤツ?」

「ワガママっつうんだ」

「でも、たいがい、船長ってそんなもんだろ? マムもカイドウもそうだし」

「オレは違う」

「え?」

「心底、不思議そうにこっちを見んな!」

「キッドと合わせて、似た者同士だぞ?」

「一緒にするな!!」

「え?」

「だから、その顔やめろ」

「なあなあ、ここで別れるならペン交換しないか? それ、ベポか?」

「ダメだ」

「じゃあ、ウソップに見せてくれよ。多分、作ってくれるから」

「なんなんだ、オマエの一味」

「自慢の仲間だぞ!!」

 万能の男が困惑する万能さ。

 

 

 この国にはちょうどもう一人、名高い医者がいる。

「慢性疾患の治療かよい」

「一応、経験はあるだろうと思ってな」

「人がいいな。この国にゃ縁はあっても、義理はないだろうによい」

「でも、出来ることならしたいんだ」

 そう言って見上げるトナカイを抱き上げ、肩車するマルコ。あまりに自然なお父さんムーブに、ローがびっくりした。チョッパーは、違和感すらもてない。

「治療法も大事だが、まずは治療院なり療養所なり、腰を据えて患者の面倒を見れる施設が必要だよい。長期治療なら、医者が生活を管理しねぇと」

「そうか! みんな言うこと聞かないもんな!」

「逃げ出す患者を閉じ込めるんだな?」

「物騒だな。苦労してんのはわかったが、そういうことじゃねぇよい」

 心当たりがあるのか、楽しそうに笑う。

「長い治療ってのは、その間きっちり面倒を見てやらないといけねぇ。そのための体制は、費用から研究まで全部纏めちまうのがいい。オマエらもナワバリを持つようになるとわかるよい」

「なるほど。どうせオレたちはこの国を出る」

「薬だけ用意してもダメなんだ」

 ちょっと落ち込んだ様子を見せる若い二人。こんなもの躓きでもなんでもないのに。

「その辺は新しい将軍に任せるとして。どんな症状なんだ?」

「心配してた重金属中毒は少なかったんだ」

「この国の鉱山は質がいい。余計なもんは混じってねぇし、なにより技術が高い」

「問題はスマイルだ」

「ああ、ひでぇもんだ」

「人造である以上、なんとか出来ると思うんだ」

「トニー屋も薬である程度、手を加えてる」

「急ぎ過ぎだよい。まず、病変はどこなんだ?」

 不意を打たれたような二人。人造とは言っても悪魔の実。症状をただ現象として扱っていたことに気づく。または、原因物資から逆算しようとしていた。

「スマイルは体の一部を動物に変えるだけで、オレらみたいに好きに変身出来るわけじゃない。悪魔の実が起こす現象ってのはロギアに限らず、ある種の流動性があるんだよい。それが不完全なせいで固定化されてるなら、感情表現の固定化も似たメカニズムかもな」

 診察によってデータを集め、そこから仮説を立て、検査によって確定する。内科診療の基礎だ。マルコは現場主義の職人型だが、この二人は研究者タイプかも知れない。

 どちらがどうということもないが、そもそも内科は経験がものを言う。今回は時間がない焦りから、得意に流れたのだと思う。

「なんらかの麻痺と考えるには、たるみや不自然さもない。感情そのものは変わりなく存在する。だが、感情とは関わりなく、常に笑顔。カナヅチみたいに筋弛緩を伴う特殊な条件反射とも違う。単純な自律神経の失調ではないよな?」

「大脳基底核を調べるべきだな」

「笑いの発作だと側坐核だ。あそこが興奮状態だとそうなるって論文で見た」

「なんなら外科的に解決可能かもしれねぇ」

「だから、急ぐなよい」

 ちょっとしたヒントから即座に仮説を組み立てていく二人に、笑いながら冷水を浴びせる。

「治療ってのは技術だ。オマエらだけが出来ても、オマエらしか救えない。そして、この国の人間を助けたいのは、オマエらよりもこの国の人間だろうよい」

 不満そうな顔を見せるが、マルコは気にしない。

「ゆっくりやるしかないんだよい。オレら医者にとっちゃ、毒も薬も同じなんだ。一つずつ確かめて、そうやって積み重ねないとクイーンみたくなっちまう。どうだ? 安易にバラまいたウィルスと薬。どっちもヤバいだろう?」

「それは」

「だが、オレの能力なら時間を短縮出来る」

「じゃあ、助けてやんな。あんまり欲張るなって言ってるだけだ」

「そうだな。ちゃんと臨床もしないとな」

「ワリぃな不死鳥屋。少し、焦ってた」

「取り戻してやるのは、健康とか以前の生活だ。治療ってのはそのための方法でなきゃいけねぇ。年寄りの説教じみた話が役に立ったってんなら、嬉しいよい」

「とんでもねぇ。流石の見識だ」

「マルコはスゴいな!! これだけでだいぶ進むぞ?!」

 どっちも育ちがいいなとは口にしなかった。チョッパーを手渡しすると、受け取った後に疑問を覚えていて笑った。

 あれこれ議論しながら去っていく新時代を見送る。

 ついに、自分の手では果たされないものを思いながら。




締めが気に入らないので加筆修正
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