日本国召喚×アサルトリリィ-World Allied Forces-   作:空社長

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やっぱりアールヴヘイムが強すぎるだけで、普通のリリィはこんなぐらいの技量だと思う。


第十二話【一撃】

_中央暦1642年4月23日_

 

 軍人たちが自分達の戦場で死闘を繰り広げ、ギガント級の攻撃を引き付けている間に、少女──リリィ達はノインヴェルト戦術の開始位置への再配置を行っていた。

 彩月が袖のポケットから小さなパレットを取り出すと、そこから抜き出したノインヴェルト戦術専用特殊弾を隣にいた初音に手渡す。

 

「初音。最初はお願い」

「!……はい!彩月先輩!」

 

 初めてのノインヴェルト戦術に緊張し、彩月の声にドキッとする初音だったが、特殊弾を受け取ると慣れた手つきでCHARMに装填する。

 CHARMの砲口が白く光り、初音は構える。

 

「ノインヴェルト戦術開始!!」

 

 彩月がインカムを通して言い放った言葉に、支援の『鎖日隊』含めて初音を除いた10人のリリィが跳びだす。

 ノインヴェルト戦術のパスコースの露払い。その目的の為にマギの弾丸が飛び交い、スモール・ミドル級が撃ち抜かれて眼下に墜ちていく。

 

(お姉ちゃんを超えたい、それが私の目標。だけど……!)

「今は、仲間を、みんなを守る!!」

 

 初音はトリガーを握り、マギを砲口に貯めていく。

 密かに〈レジスタ〉を発動させてパスコースを把握すると、跳びだしながら構えた。

 だが、当然の如く近づくリリィに対して放たれるギガント級の迎撃レーザーの雨は激しくなる。

 そして、パスを受け取ろうと構えていた唯が、遂に避けきれずに腹部を2発のレーザーで貫かれる。

 

「ぐ……かはっ」

 

 貫通したレーザーによって背中は彼女の血で真っ赤に塗れ、口から血を吐き出した。

 咄嗟にCHARMを持っていない右手で傷口をおさえるも、手を赤く濡らしても尚、血は溢れ出てくる。

 

「唯……!」

「初音……お願い……!」

 

 初音は悲鳴を上げて、唯にパスを渡すのを躊躇する。

 だが、傷を押さえながらも戦う意思を見せた彼女の悲痛な願いを聞き入れ、砲口から光球──”マギスフィア”を撃ち出した。

 

「痛っ……私は大切な人を守るため、この力を使いたいっ。使わなくて守れないのは、嫌だっ!!」

 

 唯は痛みに耐えながらも左手のみでCHARMを動かすと、マギスフィアをブレイドモードの刃で受け取り、流れるような動きで振るってパスを繋げる。

 その直後、力を使い果たしたかのようにふら付いて倒れかける。

 だが、咄嗟に初音が唯の元に走り、その体を受け止めて事無きを得る。

 

「唯……!このまま連れていくね……!」

「……うん」

 

 初音は唯の返事に返すことも無く、インカムで彩月に連絡すると医療設備のある護衛艦「あまぎ」へと運ぶため、戦場を離脱した。

 その間もマギスフィアは山なりに飛んでいき、対岸にいる由佳が疾走してそれを受け取る。

 

「受け取った!」

 

 由佳は『ティルフィング』の刃にマギスフィアを乗せると、そのまま全力疾走してリータの下へと向かう。

 だが、ギガント級のレーザーが迸り、ティルフィングを持つ右腕を貫かれ、右足にも切り傷を受ける。

 

(ぐっ……私がブルーフロート第2班の班長なのは役不足かもしれない、だけど例え違う世界でも、どんなに傷ついても未来を守りたいという思いは決して誰にもっ、譲らない!)

「!……リータ先輩っ、お願いします!」

 

 涙目になり足をふら付かせながらも、由佳は10メートル程度の距離まで近づくと、そこからCHARMを振るってマギスフィアを投げる。

 リータは地に下ろしていたCHARMを肩と平行な高さまで上げて飛んできたマギスフィアを受け止める。

 その瞬間を見届けた由佳は右腕から力を抜き、ティルフィングを杖替わりに下ろして左手で右腕の傷口をおさえる。

 

「由佳、ありがとう。……私はただ支えるだけ。だから、これを最後までつなげるのが私の使命……!朱音」

 

 リータはすぐ横にいた黒髪テールヘアーの少女──入沢(いりさわ)朱音(あかね)の名前を呼ぶ。

 朱音のCHARMに自分のCHARMの刃を直接触れ合わせ、マギスフィアを受け渡す。

 

「くっ……重い」

 

 既に4人分、自身も含めれば5人分のマギが籠ったマギスフィアはかなり重く、初経験の彼女にとっては体がぐらつく程だった。

 それをリータが支えつつ、朱音はマギスフィアを受け取ったままのCHARM『マルテ』をシューティングモードへと変形させて狙いを定める。

 パスを渡す大事な役目、そのプレッシャーに押し負けそうになり朱音の腕は震える。

 

「ゆっくり、落ち着いて」

「は、はい!」

 

 リータの声掛けに促されて、朱音は深く深呼吸して再び構える。

 

「こんなポンコツな私だけど、私だって人が死んでいくのは見たくない。だから、これに想いを預けます!」

 

 『マルテ』の銃口が光り輝くと、ギガント級の頭上を超えてマギスフィアが対岸に向けて飛ぶ。

 それを受け止めるのは、『デュランダル』と呼ばれるCHARMを振るう奏で、美由希の〈ファンタズム〉の効果で迫ってくるレーザーを避けながら上空でキャッチする。

 

「先輩に繋げて、ヒュージを倒す。ただそれだけ」

 

 奏はデュランダルを振るい、美由希にマギスフィアを繋げてギガント級の射線から逃れる。

 それを受け取る美由希は自身のCHARM『ブルトガング』の湾曲してる刀身でギガント級のレーザーを防ぎ、ギガント級の頭頂部へと着地して受け取る。

 

「皆さんを絶対に守る、その想いは今も変わることはありません。あの時の悲劇は二度と繰り返させない……!」

 

 ファンタズムで攻撃を予測した美由希は再び疾走してジャンプすると同時に、ブルトガングを振るってマギスフィアを投げ渡す。

 その時、連合艦隊を狙っていた主砲塔がマギスフィアを追うように狙いを定めようとするが、ブルトガングから放たれたマギの弾丸がその動きを阻害する。

 さらに朱音から放たれたマギのレーザーによって砲塔が1基損壊するとともに、リータがCHARMを叩きつけてもう一つの砲塔の動きを止める。

 

 飛んできたマギスフィアを志穂が受け止めると、滑らかに体を捻り〈天の秤目〉で彩月への照準を向ける。

 

「これからも彩月を必ず守って見せる……だから、未来の為に繋ぐ!彩月、受け取って!」

 

 アステリオンの銃口が光り、マギスフィアが一直線に飛翔し、正確無比な投球で彩月のCHARMに到達する。

 だが、安心したのもつかぬ間、マギスフィアを追っていたギガント級から数多のレーザーが放たれる。

 先ほどの痛みとその恐怖を思い出して彩月の顔が強張るが、そんな彩月の前に志穂が出てきてアステリオンで防ぐ。

 しかし、アステリオン程度の刀身ではその体全体を守ることができず、レーザーが降り注ぐ。

 志穂の頬を切り裂き、腹を、肩を貫いて、その血飛沫が彩月にもかかる。

 

「志穂……?」

「撃って……決めて……!」

 

 志穂の息を切らしながらも放たれた言葉に、彩月は頷く。

 志穂の傷口から地面に血が垂れる光景に視線が向きそうになるのを抑え、8人分のマギが集まったマギスフィアに最後の一人、自分のマギを込めていく。

 力強く地面を踏んで高く跳躍し、CHARMの砲口をギガント級へと向ける。

 

「今だって戦うのは怖い。だけど、私は仲間と戦う道を選んだ。私には守れる力がある、だから多くの人をこれからも守っていきたい!」

 

 トリガーを引く。

 CHARMの砲口が光り輝き、9人分のマギスフィアが輝きとともに放たれる。

 ギガント級のマギ結界を容易く貫き、装甲をも突き破る。

 中へと放り込まれたマギスフィアはギガント級の内部構造を破壊し、わずか数秒の間でマギで構成された体が次々に崩壊。

 ギガント級が光り輝きつつある中、リリィ達は次々に跳んで距離を取り、負傷したリリィは動けるリリィが抱えて離れていく。

 そして、崩壊が頂点に達した時、轟音と共に巨大な爆発が起きる。

 眩い光が周囲を照らし、爆炎が広がっていく。

 艦隊にも衝撃波という名の強風が襲う。

 

『ギガント級……いえ、敵超大型種、撃破に成功です!!』

 

 興奮の余り、三浦は言い間違えるも、撃破したという事実を連合艦隊へと魔信を通じて伝える。

 巨大な爆発に半ば呆然としていた彼らだったが、その通信を聞いた直後、飛び上がるような歓声が各地で上がる。

 

「撃破はした……だが、その代償が重いな……」

「カルトアルパスはおそらく壊滅……、艦隊の被害も大きいですからな」

 

 一方で、十分に喜べない者も確かにいた。

 バッティスタは喜びたい気持ちもあったが、一方で今後の事を考えて頭を悩ませていた。

 

「あのデカ物を撃破するなんて……」

「だが、無傷では無いだろう。しかし、あんなものが我が国にもし現れたらと思うと、ゾッとするな」

 

 また、リリィ達を脅威と感じる者もいた。

 自分達では決して傷をつけられない化け物を傷をつけるどころか、撃破までしてしまうことに畏怖の念を感じた。

 それはギガント級ヒュージの有するマギ結界がマギを有するものでしか貫けないことによるものだったが、今の彼らが知る由も無かった。

 

護衛艦「あまぎ」戦闘指揮所

 

「待ってください!まだ……マギの反応が!」

 

 オペレーターが叫ぶ。

 

「は?……戦場だからそれぐらいは」

「違うんです!ギガント級に相当する、いえそれ以上の悪性マギ反応があるんです!!」

 

 CIC内に沈黙が走る。

 三浦は身震いすると共に、最悪の想像をする。

 

 

 カルトアルパス湾、海底──

 

 そこには巨大な空間の歪みが発生しており、海底を見渡す、獲物を射貫くような鋭く赤い1つ目が現出していた。




■次回

第十三話【撤退】
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