日本国召喚×アサルトリリィ-World Allied Forces- 作:空社長
_中央暦1642年4月23日_
あまぎ型護衛艦「あまぎ」戦闘指揮所
薄暗いCIC内にて、三浦は眉を顰めながら一つのモニターを他の幹部らと見入っていた。
「!……マギ反応急速増大!!識別は……アルトラ級だと思われます!!」
勝利の余韻冷めやらなかった室内に、一気に絶望の空気が蔓延する。
アルトラ級。
紛れもないヒュージ最大の個体であり、ギガント級が戦闘の役割を担う一方で、アルトラ級はヒュージの巣である『ネスト』の営巣を行う。
だが、今回確認されたアルトラ級は身を隠すことも無く、連合艦隊の前に出ようとしている。
それが意味するのは、このアルトラ級がネストを営巣しておらず、未だにネストが生成できていなかったことだった。
「ネスト反応は確認できず……『巣無しアルトラ』か!」
「アルトラ級の撃破記録は近くて3年前、それも佐渡島の柳都S級ネストに営巣する世界7大アルトラの1体『ファーブニル』です!しかも、当時討伐に参加したのはかの高名な『アールヴヘイム』に加えて『ロネスネス』と『ヘオロットセインツ』の有力メンバーです!」
アルトラ級の撃破方法はただ一つ、CHARMを使った連携必殺攻撃を叩きこむ事のみであることが分かっていた。
それも、リリィ達が万全な状態で行うのが最善とされていた。
「とにかく凶暴で攻撃的な巣無しアルトラ、一方で我々にはギガント級の戦いで一部が負傷し、疲れ果てているリリィ達……勝てるわけがないっ!」
「……ひとまず聞いてみましょう」
幹部の悲鳴を三浦が窘めつつ、インカムを繋げる。
『た、確か……なんですか?』
”アルトラ級が出現した可能性がある”。
その言葉を聞いて、彩月は声を震わせる。
その声には明らかに恐怖の感情を露わにしていた。
由佳の代わりにブルーフロート第2班班長代行を担うリータも沈黙するばかりだった。
「……本当だ。聞くまでもないと思うが、戦えるか?返事は聞きたい」
『無理、です……!死にたくは、ありませんから……!』
三浦の質問に、彩月が恐怖で口を震わせながら、拒否する。
リータも、美樹も続けて同じ答えを出す。
「分かった。避難完了の報告があり次第、直ちに撤退する!」
カルトアルパス湾
ギガント級の爆発で未だに煙に覆い隠された湾内。
海面近くで多量の赤いパルスが生じ、海面下に留まっていた歪みが海の上まで広がっていき、広範囲に伸びていく。
そこから這い出てきたのは薄鈍色の装甲に覆われた巨球。
その球体が回り出し、海面下にあった何物もを貫くような鋭く赤い眼光が姿を現す。
さらに、その光点に白い輝きが収束し、レーザーを迸る。
一直線に伸びたレーザーは「コールブランド」の艦橋端部を抉り、見張り員や対空銃手の体を引き裂いていった。
「は!?撃破したのでは無いのですか!!」
動揺が走る艦橋内で若い参謀が声を荒上げる。
先ほど撃破したと報告が来たばかりであり、攻撃を受けたことに疑うのは仕方が無かった。
「いや、違う!攻撃方法がまるで違う。奴らの大型種でもこんな砲撃は無かったはずだ」
艦長のクロムウェルが反論する。
技官らしい正確な観察眼が生かされ、レーザーの初速がラージ級のそれを遥かに上回っていたを感じ取っていた。
その横では、砲撃による破片が腕に突き刺さったバッティスタが魔導師によって応急処置を受けていた。
治癒魔法によってある程度血が収まると、魔導師の腕をバッティスタが払う。
「これ以上は終わった後でもいい。まずは各艦に無事を伝えろ。それと、日本艦隊に先ほどの砲撃が──」
言葉は続かなかった。
アルトラ級の球体上部に巨大な眩いばかりの輝きが生まれ、すぐに一点に収束され激しい圧力に耐えかねたマギのエネルギーは指向性をもった奔流となって撃ちだされた。
その照準は戦果を狙った物ではなく、射線上に存在した艦艇は少なかったものの、互いの距離を比較的離していたシルバー級魔導巡洋艦3隻を一撃で残骸すら残さず消滅させた。
その光景に唖然とするものは少なくなかったが、一部の者は奔流が放たれた方向を向いていた。
「煙が……空が、切り裂かれている……」
「あのデカ物は一体……?」
カルトアルパス湾内を覆っていた煙と大気の一部が白熱化する一方で、視界を遮るものが無くなったことでアルトラ級の全容が露わとなった。
全長620m、全高660m。超大型種とすら言い表せない、まさに怪物の姿がそこにはあった。
「これが……アルトラ級の力か……!」
『こちら鎖日隊!、全住民の避難完了!!』
あまりの威力に呆然とする三浦。
だが、愛菜から届いた避難完了の報告に我へと返る。
幹部要員らがホッと息をつく中、三浦は「まだだ。まだここからが気の引き締め時だ」と渇を入れる。
そうしたやり取りをしつつ、魔信機に手を伸ばす。
「全ての友軍艦に達する。カルトアルパス全住民の避難が確認された。これ以上の抵抗は無用と判断し、本艦隊は撤退に移行する!」
三浦はそう言い放つと、転回命令を下す。
「彼らでも叶わぬか……」
その魔信を聞き、バッティスタはボヤく。
カルトアルパスの地を捨てることに悔しさを滲ませたが、その半面今までのギガント級との戦闘を経て、諦めの境地にも至っていた。
誇り高き帝国艦隊の約半数を
必死に抵抗し、撃破すらした日本艦隊が撤退を即決する程の敵。
艦隊が全滅することは想像に難くなく、無駄に減らすよりは温存した方が良策だと確信していた。
撤退の陣容は早急に整えられる。
撃沈した艦から救助された負傷者を含む将兵たちを乗せた護衛艦「あしがら」、駆逐艦「ジュバ」、巡洋艦「ラサラス」、リバー級小型艦4隻及びムー艦隊が先頭を行き、中央をミリシアル、グラ・バルカス巡洋艦群、後方を戦艦「グレード・アトラスター」、「ベテルギウス」、魔導戦艦「コールブランド」、「クラレント」、「フォーキオン」、そして第3護衛隊が展開する。
そして、連合艦隊は撤退を開始する。
各艦隊は可能な限りの全速で逃れようとするが、おこがましくもアルトラ級は自らが設定した縄張りに侵入し、視界に入った敵を逃すつもりは毛頭無かった。
球体上部からクラッシャー種の兜のような頭部と同様の器官を2つせり出すと、大きく口を開き6連3基18門、計36門の発射管を展開する。
即座に発射管からは小さい筒状のミサイルが後部から火を吹かして放たれる。
全ての弾頭が一旦上空へと向けられた後、それぞれが設定された目標へと向きを変えた。
「くっ、対空戦闘始め!SAM発射!」
三浦が号令を出し、第3護衛隊4隻の垂直発射装置から轟音と共に艦対空ミサイルが次々に発射される。
同時に近接防空ミサイルも発射され、それぞれがイージスシステムによって即座に重複無く割り当てられた目標へと飛翔し、凶器を火球へと変えていく。
残ったミサイルも、20㎜多銃身機関砲と12.7㎜機銃の形成する弾幕に絡めとられ、撃墜される。
「目標、全弾撃墜!」
「まだだ!まだ来るぞ!」
だが、アルトラ級は絶えず36門の発射管からミサイルを乱れ撃ち、新たに球体側面から現れた2つの18門発射管からも撃ちだしていく。
既に発射した数を含めると、100発にまで膨れ上がるミサイルの波状攻撃。
当然、第3護衛隊の護衛艦4隻だけでは、対空迎撃能力はすぐに飽和した。
他の艦艇も迎撃を試みるも、音速近いミサイルを撃墜することは叶わない。
「目標2、接近!」
護衛艦「はぐろ」に2発のミサイルが近づき、20㎜機関砲と12.7㎜機銃が迎撃を試みる。
対空ミサイル程の大きさの為、ダメージは少なそうに見えるも被害が無いに越したことはなく、ヒュージのミサイルであるため何が起こるかわからなかった。
運悪いことに機関砲弾は掠めるだけに留まり、容赦無く直撃した2発のミサイルは大きさに合わず強力な威力を発揮して、爆発が船体を飲み込んだ。
「『はぐろ』轟沈……!」
「本艦にも敵ミサイル接近!!」
第3護衛隊の中で最も分厚い装甲と強力な対空設備を誇る「あまぎ」も迎撃を開始する。
ラージ級、ギガント級との戦闘を経て損害は出ていても、未だ残る20㎜機関砲が猛烈な弾幕を形成する。
接近する多くのミサイルを海に墜とすも、1発のみが後尾から煙を引きながら船体中央部へと迫ってきた。
間に合わない、そう思った瞬間。
薄橙髪の少女がCHARMを盾にして眼前に滑り込み、真正面からミサイルを受け止めた。
その直後、大きな爆発を起こしその破片が服の一部を切る。
少女の正体は初音だった。
服を切られたことを気にも留めず、甲板にゆっくりと降り立つ。
「勝てないのは分かってます。だけど、絶対に生きることは諦めない」
初音はそう言い放つと、再び上空へと飛び上がる。