日本国召喚×アサルトリリィ-World Allied Forces- 作:空社長
今回の話は少し長引かせし過ぎたかもしれませんね。
_中央暦1642年4月23日_
分厚い雲が生じ始め、太陽の光が陰り、薄暗くなり始めていた頃。
連合艦隊から少し離れたアルトラ級の周囲では、火花が散らされていた。
艦隊の守りに回った美樹を除く美由希、奏、双葉の三人は、住民避難の護衛をしていた他の鎖日隊のリリィと合流することなく、先行して戦闘に突入していた。
鎖鎌状の触腕が薙ぎ払うようにして横に振るわれるが、美由希のファンタズムによってあっさりと回避していく。
「攻撃開始……!」
美由希の声で三人は一斉に飛び上がる。
双葉が自身のティルフィングを変形させて堅牢な短砲身をアルトラ級に向けると、その砲口からマギの砲弾を叩きつけていく。
他二人からもマギの銃弾とレーザーが撃ち出され、戦場滞留マギ量の強さを表すマギインテンシティが高いためにマギ結界を貫通する。
だが、装甲表面で阻止され、その分厚さが伺えた。
「行くよっ……フェイズトランセンデンス!」
数時間以上の戦闘で疲れを見せる双葉だったが、ティルフィングをブレイドモードへ変形させると、フェイズトランセンデンスを発動して、触腕に思いっきり叩きつけた。
だが、それは一撃で破壊される事は無く想像以上の硬さを見せつけ、双葉は苦悶の表情を露わにする。
美由希のブルトガング、奏のデュランダルも同じ箇所に斬りつけられる。
深く傷が入ったのを見た双葉はティルフィングを抜くと、力いっぱい振るう。
そして、その触腕は断ち切られ、青い体液をまき散らしながら重力に従って海中へと沈む。
初めてダメージを与えられたことに、そのアルトラ級はあらゆる動きを急停止させるが、赤い一つ目で双葉のことを睨みつけると球体各部に設けられたレーザー砲を撃ち出した。
「くっ……」
刀身を盾のようにしてかざしてその攻撃を防ぐ。
だが、連続で撃ち込まれていくレーザーのあまりの圧力で、よろめいた瞬間に激痛が走る。
レーザーによって左腕が焼かれ出血していた他、右足を貫かれていた。
その時、双葉は目に涙を浮かべ、初めて死の恐怖を実感していた。
逃すまいとアルトラ級から撃ち込まれていくレーザーの勢いを増し、ティルフィングにひびが入る。
一瞬ふら付き”もうダメ”と思い目を閉じた瞬間、体を柔らかなクッションに受け止められた。
「双葉、意識は問題無いようね……良かった。私たちも撤退します」
レアスキル縮地のS級、〈異界の門〉によって文字通りワープによる瞬間移動を行った愛菜は倒れかけた双葉を抱きかかえると、レーザーを避けるべく再び瞬間的に移動する。
それでも尚レーザー砲は跳躍を繰り返す愛菜を執拗に狙い続ける。
「しつこい!」
愛菜との距離を離さずに撤退に移行していた奏は、装甲表面に露出するそのレーザー砲の砲身目掛けて、デュランダルでレーザーを撃ち込み、叩きつけて砲身を折るなどして無力化していく。
だが、アルトラ級がそれを許すはずも無かった。
「!……っ」
彼女の死角に位置していた側からレーザーが迸り、背中から貫かれる。
傷口から血が漏れて制服を濡らしていき、喉の奥から溢れる鉄の味を噛み締めながら、痛みに耐えつつアルトラ級から逃れるように退いていく。
他の鎖日隊リリィと合流した瞬間に倒れるも、すぐに「あまぎ」へと運ばれて事無きを得る。
鎖日隊を退けたアルトラ級は新たな兵装を展開。
その砲口にエネルギを充填させると、連合艦隊目掛けてマギの光球からなるエネルギー弾を連続で射出した。
「敵”巨大種”からの攻撃来ます!」
攻撃に曝されたのは、アルトラ級から最も近い後衛の神聖ミリシアル帝国魔導戦艦群だった。
数多の小さな光球が迎撃できない速度で迫り、「クラレント」、「フォーキオン」の甲板上で爆発を起こし、炎上をもたらしていく。
「コールブランド」にもその牙は迫るが、その寸前で艦上構造物の頂上に立っていた美樹が飛び、1発をCHARMで盾にして防ぎ、迫りくる2発目を両断して爆破させていく。
「グレード・アトラスター」の艦橋上部に立つリータもその迎撃に参加しようとするが、その直後艦隊上空に空間の歪みが現れる。
美樹の様子を気にしながらも、リータはCHARMの砲口を上空へと向けて弾丸を撃ち放つ。
歪み──ケイブから現れたカウダ型に弾丸が命中して爆散するが、それを盾として飛行型ヒュージが多数出現し、その総数は百を下らなかった。
「多いっ……」
マギの銃弾が上空に撃ち込まれていき、カウダ型複数体が体液をまき散らしながら墜ちていくが、その膨大な数には手に負えず、近接戦闘を強いられる。
カウダ型の吶喊をCHARMを盾にして防ぐと、横薙ぎに払われる。
「上空敵集団、主砲発射!」
はっきり言って異常な数だった。
二人だけで対処するのは難しく疲労が蓄積する中、咆哮が鳴る。
カウダ型の大集団に向かって放たれた46㎝対空砲弾と、38.1㎝魔導砲弾。
カウダ型には過剰な程の暴力を発揮して、大集団の中央で炸裂し、多数のヒュージが砕かれていく。
その後、リリィと将兵たちの奮闘で艦に損害を出すも、カウダ型が全て殲滅される。
直後、その瞬間を待っていたとばかりにアルトラ級の上部が瞬くと、間髪入れずに定めた目標に向かって一直線に奔流が放たれた。
狙われたのは連続した戦闘で疲労し、CHARMを下に降ろしていた美樹だった。
彼女は無理な体勢のまま、体をひねらせてCHARMを盾として構える。
巨大な衝撃が彼女に伝わり、奔流自体は防ぎきれたものの足元がふら付き、空中での姿勢が崩れる。
そこに狙い澄ましたかのように、光球が着弾。
バランスを崩し防御姿勢が取れていなかった彼女はその衝撃をそのまま受けて吹き飛ばされ、たまたま背後にいた「コールブランド」の艦橋後部構造物に激しい音を立ててぶち当たる。
「……何の音だ?」
「確認してきます!」
手に空いていた海軍士官が音のあった場所へと向かうと、美樹が壁に背を預けたまま座り込み気絶していた。
だが、額から血を流しており、体の各所には痛々しい傷が見受けられた。
遅れてバッティスタもその光景を見て、顔をしかめる。
「あ……ここは……!?」
その時、美樹は目を覚ます。
感じた痛みに苦しそうな表情を浮かべるが、病室へと運ぼうとする水兵の言葉を優しく断ると、強く念じてあるスキルを発動させた。
ブーステッドスキル〈リジェネレーター〉。そのスキルを発動させた途端に、体中にあった全ての傷が体組織の再生によって全て消え失せ、周りにいたミリシアル将兵たちを驚愕させた。
美樹はよろめきながら立つと、ずっと左手に掴んでいたCHARMを構え、再び飛び立とうとする。
だが、体に受けた痛みは予想以上で、飛び立つことができない現状に悔し涙を零すと、艦尾へと向かい艦上から迎撃していく。
場面は変わって第3護衛隊後方。
そこでは彩月と初音の二人が絶えず迫ってくるミサイルを空中で迎撃し、すり抜けたミサイルを第3護衛隊最後方に位置している「あまぎ」の艦尾にて『マルテ』を構えている朱音が的確に撃ち抜いていく。
初音がアステリオンを縦に構えて刃身でミサイルを防ぎ、体を翻してアステリオンの砲口から放たれるレーザーが幾つものミサイルを貫いて破壊していき、
彩月は接近していたミサイルを刀身で受け止めると、体を捻り自身のCHARMを振るって投げ返す荒業を見せ、自身が発射された方向に投げられたミサイルは標的に向かって動いていたミサイルと衝突することとなり、複数のミサイルが爆発に巻き込まれて空に黒煙が起こる。
ミサイルの量は多く、さらにそんな二人をすり抜け、3発のミサイルが接近する。
しかし、そのミサイルが一直線に並行にならんだ瞬間、朱音のマルテから放たれたレーザーが3発共に撃ち抜いて爆発させる。
「初音、大丈夫?」
「は……はい!少し疲れてるかもだけど、まだ……大丈夫です!」
彩月の問いかけに、初音は疲れた様子を見せながら元気よく答える。
だが、彩月にとってはそれが空元気のようで仕方なく、さらに初音のアステリオンを見ると、わずかだがひびが入ってるのが確認できた。
「……わかった。でも、無理そうだったらすぐに下がって」
「それは先輩も……ですよ」
初音の言葉に、彩月は改めて気づかされる。
誰もが、自分でさえ死にたくないという恐怖を持っていることに。
そんな思考は突如として中断される。
『ミリシアル艦を攻撃した光球が異常な速さで接近!すぐ来るぞ!』
全艦放送で彼女達のインカムにもその怒号は聞こえた。
二人がCHARMを構える中、光球が迫る。
二人はマギの弾丸を放ち光球を撃墜していくが、それでも余りある数が迫っていることを視認する。
そして、二人はさらに飛び、互いのCHARMをブレイドモードにすると、CHARMを振るい一閃して光球を砕き、弾き返していく。
時には自身の体に危害が及ばないようにCHARMを盾にして耐える。
だが、打撃と防御を繰り返し、幾つもの衝撃が伝わる中、初音のアステリオンはひび割れが徐々に酷くなっていた。
「ふぅ……」
攻撃が一旦収まるも束の間、全ての発射管から一斉射されたミサイルが襲い掛かる。
シューティングモードで銃撃を加え、迫りくるミサイルを墜としていく。
普段の二人なら滞りなく行える行為だったが、長い戦闘によって疲労が蓄積していた彼女達は幾つかのミサイルを見逃してしまう。
二人は即座に気が付き、CHARMをブレイドモードへと変形させて攻撃を防ぐ……
長い戦闘による酷使と疲労で限界に近づいていた初音のアステリオンは1発のミサイルを食らっただけで割れ、もう1発のミサイルは身体そのものに直撃を受け爆炎が彼女を飲み込んだ。
「……初音!!」
彩月が気が付いた時には、初音の体は力無く「あまぎ」の甲板上に墜落していた。
墜ちた身体の惨状は直接触れずともはっきりと彩月の目に映る。
彼女達『ヘオロットセインツ』が着る御台場女学校の青を基調とした制服は煤だらけで各所が破れ黒焦げ、複数の傷口から服を濡らす程の真っ赤な血が零れ甲板上にまで広がっていた。
顔にも傷が見られ一部は出血していた。
何より目が閉じられた初音の意識は既に無く、口は一切動かず彼女の声は一切聞こえなかった。
「初音……!目を覚ましてっ!」
彩月の声掛けも効果は無く、「あまぎ」の乗員によって担架に乗せられ運ばれていく。
その光景を見つつ、彩月は床に広がった血に触れ真っ赤に染まった右手を握りしめ、自身の無力さを痛感して甲板を拳で叩いた。
(お願い……生きて……!もう、誰も死なせたくない……!)
彩月は涙を流し、悲痛な想いを心から願った。
声に漏らすのは、悔しさの余り泣き出したことによる嗚咽だけだった。
多くのリリィ達の献身によって、連合艦隊はフォーク海峡より脱出した。
エンディング感ありますが、まだ続きます。