日本国召喚×アサルトリリィ-World Allied Forces-   作:空社長

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第十六話【現況】

_中央暦1642年4月23日午後_

護衛艦「あまぎ」艦内 中央会議室

 

 時間が経ち、会議室には各艦隊の責任者が集まっていた。

 そこに三浦も踏み入り、声をかけられる。

 

「ミウラ殿、ミリシアル精鋭の第一魔導艦隊が到着したのだ、これならば反撃できるだろう?」

 

 三浦は声をかけて者の国籍を見て、あの戦場に参加していないのを確認すると、前方へと視線を向ける。

 

「……はっきり言わせていただきますが、無理ですよ。困難どころの話ではありません。戦闘に参加した者なら既にわかっていることでしょう?」

 

 三浦の物を言わせぬ視線と発言に誰もが黙り込み、三浦は会議室のモニターをつけると話を始める。

 モニターには、三浦は手元のタブレットで操作された画像が投影される。

 

「さて、話をさせていただきます。まず理解して頂きたいのは、我々日本国が前世界からの転移国家であることです。そこで、我々人類はヒュージという敵に熾烈な戦争を繰り広げてきました、我が国でさえ本土の3割近くを奪われたことがありました」

 

「続いて、敵性生命体であるヒュージについてです。

生憎、正体などは深く分かりきっていない部分がありますが、様々な種類が存在しており、我々は大きさ等の等級によってある程度区別をしています。

 

一つ目は、スモール及びミドル級。

戦闘において既にお分かりかと思いますが、これらは通常兵器でも十分損害を与えられます。前世界においては、我が国の数倍以上の軍事力を持つ国がこれらに対して優勢に戦況を進めました。

当然、戦艦グレード・アトラスターの46㎝砲でも可能です」

「なぜ……口径を知っている?」

 

 ラクスタルが疑念を浮かべるのも無理はなく、グラ・バルカス帝国最大の戦艦である「グレード・アトラスター」の主砲口径は国家機密とされており、他国の人間が知るはずが無いと思っていたからだ。

 

「前世界において110年前、我が国は国力の10倍以上もある国に敗戦しました。当時の我が国が保有していた軍備の一つに、あなた方が『グレード・アトラスター』と呼ぶ大和型戦艦2隻を有していたのです」

 

 三浦はモニターに大和型戦艦、金剛型戦艦、翔鶴型空母、零式艦上戦闘機等のCGモデルを表示する。

 当然、自国の軍事情報が予想もしなかった点から筒抜けなことに、ラクスタルは衝撃を受ける。

 

「話を戻します。

しかし、ラージ級の出現によって既存の軍備では歯が立たなくなりました。その理由は、ラージ級の展開するマギ結界でマギを持つ者以外を通さなくなり、攻撃が無効化されていったのです。ラージ級に損害を与える事が出来ず、軍事大国は敗北を重ねていきました。

それに対抗するため、軍事的に余裕の少なかった我が国やフランスと言った国々は、決戦兵器CHARMという刃を開発し、それをリリィという選ばれた者達が扱うことで、ラージ級にも損害を与えることができたのです」

 

 三浦は参考とまでに、モニターにあるCHARMの外見モデルを拡大表示する。

 

「ですが、ヒュージにさらなる格上が存在しました。それがギガント級です。

全長数十メートル以上ある巨大種であり、その戦闘力はラージ級よりも桁違いで、艦隊を多く減じた一番の要因でもあります。

そして、リリィでさえも簡単には抗えない強敵でもあり、過去の資料では多くの戦死者を出した戦いもありました。

当然、通常兵器ではダメージを与えることができません。ただ……神聖ミリシアル帝国の魔導戦艦による砲撃でラージ級に傷がつき、ギガント級のマギ結界に変容が見られたことは事実です」

「何っ!?」

 

 バッティスタがその事実を聞き、大きく驚きの表情を浮かべた。

 

「おそらくは、マギと魔力の近似性によってマギ結界に作用したと思われます」

「ならば我々の魔法攻撃でもダメージは与えられるはずだ」

 

 三浦の推測を聞き、声を上げたのはエルフの女性だった。

 

「アガルタ法国艦隊司令のシルフィ・バクタールだ。我々の艦隊級極大閃光魔法を使えば、ダメージを与えられるのではないか?」

 

 三浦はその言葉を聞くと、気づかれないようにため息を吐き、無情にも反論を諭すようにして叩きつけた。

 

「スモール級、ミドル級の攻撃に耐えれる装甲を持っていますか?最悪、ミリシアル巡洋艦の装甲を突き破る程の攻撃に」

「は……?」

「我が国が軍艦に求めるのはミドル級の攻撃に耐えうる装甲、高い命中精度、そして高い対空火力です。数の多い小型種を撃墜しきることは不可能に近く、数十発耐えれる装甲が求められます」

 

 シルフィは反論を封じ込められ、無言となる。

 普段なら反論を返すのだが、彼女は三浦の目にどす黒い何かを見つけ、不安を感じて押し黙った。

 

「……続けます。ギガント級の格上、アルトラ級です。

はっきり言って全長400mから1kmという規格外の大きさです。ギガント級含めてヒュージに対抗できていなかった小国が滅んだこともあります。

当然、戦闘力も非常に高く、並大抵のリリィでは勝つことさえ困難です。

そして、このアルトラ級最大の特徴は、ギガント級が最大の戦闘個体であるならば、これはネストの営巣、つまり巣を作り出すことです。

今は……その形成準備段階に入ってると思われます」

 

 最後の言葉に、会議室にいる多くの者が衝撃を受け、騒然とする。

 バッティスタはその厳しい現状に顔をしかめる。

 

「それらを倒すための存在がリリィです。我々軍人では損害ですら与えられない相手故に、我々は彼女達に重責を背負わせることしかできないのです。

私はリリィについての知識は深くなく、現時点の説明は省かせて頂きます」

 

 三浦は説明を終わろうとすると、1人の人物が待ったをかける。

 

「トルキア王国戦列艦隊司令のルシル・ヴェンティストである。私としては、日本がその異形、ヒュージを出現させたのではないか、と思っている」

 

 煌びやか勲章を身につけた貴族らしい人物の発言に、他の複数の文明国が賛同の意思を示す。

 一方で、バッティスタ、レイダー、ラクスタルの三名からは冷たい視線で見られ、シルフィは先の三浦のどす黒く淀んだ目を思い出して頭を抱える。

 ルシル自身は、真実を見抜いたと思っており、他人に気づかれない程度で誇らしげにしていた。

 しかし、三浦の発言は意外にも怒りを伴わない冷静な言葉だった。

 

「なるほど……そういう意見もありますか。……少し昔話をさせてください」

 

 三浦はそう切り出して一旦言葉を止め、再び話し出す。

 

「私は現在の日本国防衛軍が、自衛隊という組織だった最後の年代で入隊しました。20年程前だったかと思います。そこで同期の女性と出会い、部隊は違いましたが交流を持ち続け、結婚に至りました。休暇らしい休暇は無く年頃の男女がするような交際はしませんでしたが、両方とも仕事気質の人間でして、例外は子供を授かったぐらいでした。良い妻だったと思います」

「だった……?」

「前世界暦で、2046年5月11日16時45分。忘れることは無いと思います、海上防衛軍の作戦に私が乗る艦と妻が乗る艦は従事し、当初の作戦は順調でした。ですが、突如として海上からヒュージが襲来し、瞬く間に妻の乗る艦が沈みました。

幸い、艦隊の損害は少なく済み、すぐに救助活動が行われました。

しかし……生きて還る事は無く、戻ってきたのは妻の遺体だけでした」

 

「それからというもの、私はヒュージ憎しの思いだけで任務を遂行してきましたよ。そんな私が、ヒュージを出現させる?何のために?」

 

 三浦は笑った。面白い、可笑しいからではなく、何の思いも籠っていない空虚な笑いだった。

 

「何より、人々を守りたいという使命で戦うことを選んだ彼女たちの思いを裏切っていることになりませんか?彼女たちは幾らでもいる存在ではなく、我々の希望なのです」

 

 三浦は会議室内を少し歩き、壁際のスイッチを押して出現した棚から何かを取り出す。

 それはデジタル化の進んだ現代において珍しい写真立てだった。

 

「私の娘もリリィとして戦う道を選びました。しかし、復讐心ではなく、自分も誰かを守りたいと。ほんと、いい子ですよ」

 

 三浦が話し終えると、沈黙が会議室一帯を支配する。

 そしてルシルを非難する視線が殺到し、彼はたまらず頭を下げる。

 

「……すまない」

「分かってもらえて、なによりです。他に質問はありませんか?」

 

 三浦がそう言うと、バッティスタが静かに手を上げる。

 

「神聖ミリシアル帝国第零式魔導艦隊司令のバッティスタ・ノーゼストだ。一つ聞きたい、貴国は魔法を持たない科学文明国のはずだが、我々が見た傷を瞬く間に再生した光景は魔法ではないのか?」

 

 バッティスタの言葉に三浦は眉をひそめる。

 

「他言無用にしていただきたいのですが、結論から申し上げるとそれは魔法ではありません」

「……では、なんだ?」

 

 バッティスタは魔法ではない事に驚きつつも、次の言葉を求めた。

 

「リリィはレアスキルという戦闘の補助に使う能力に覚醒することがあります。ですが、それは人類の勝利を急ぐあまり理性を捨てた者たちが、本来無い能力を痛みとともに少女に付与する所業によるもので、『リジェネレーター』と呼ぶ体組織を再生させるスキルです」

「そんなことを……」

「ええ。ですので、他言無用にして頂きたい。我々が抱える負の遺産でもあるので」

 

 バッティスタはその言葉に頷く。

 

 その後、彼らは自国の外交団を迎え入れると、帰路へとついた。




デュアン様の「つよつよ神竜イルクスさん」より、シルフィ・ショート・バクタールさんをお借りしました。
ありがとうございました。
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