日本国召喚×アサルトリリィ-World Allied Forces-   作:空社長

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先日上げた一話目を分割投稿しました。


第二話【会議】

_中央暦1642年4月21日_

神聖ミリシアル帝国カルトアルパス

 

 世界最強と謳われる列強第1位の神聖ミリシアル帝国。

 その帝国において、「帝国第二の心臓」と呼ばれる港湾都市は60kmの半島2つに挟まれた幅14kmの海峡の奥に位置していた。

 「先進11ヵ国会議」の前日である今日は、会議に参加する各国の代表団を乗せた艦隊がカルトアルパスへと訪れる日でもあった。

 

『第一文明圏トルキア王国から戦列艦7、使節船1、計8隻が到着!第一文明圏区画へと誘導します!』

 

『遅れて同じく第一文明圏アガルタ法国から魔法船団6、民間船2、計8隻が到着します!トルキア王国の誘導完了次第、誘導させます!』

 

「分かった。相互の距離に注意しつつ、誘導を完遂しろ」

 

 カルトアルパスの港湾管理局は多忙を極めており、局長ブロント・ベッカーの下に各国代表団の到着が逐一報告されていた。

 普段なら局長自身が指示を出すことは無いのだが、参加各国が「代表団の護衛」を名目に自国の最新鋭艦を派遣してくるために、それを局員自身が判断して誘導するには荷が重かった。

 

「……この辺りのは変わり映えせんな」

 

 だが、ブロントにとってそれは苦痛ではなかった。

 軍艦マニアの彼は先進11ヵ国会議が好きだった。

 彼にとって、世界各国が送り出した最新鋭艦を見て堪能することが出来る一大イベントであり、仕事ではあるのだが趣味を楽しむお祭りのような気分だった。

 

『第二文明圏ムー国!戦艦5、巡洋艦4、空母1、計10隻の艦隊が到着!』

「おお……?」

 

 ブロントは双眼鏡を手に取って覗くと、怪訝な表情を浮かべた。

 

(戦艦の割合が非常に多いな。ラ・カサミ級とそれに似た艦か……だが、良いな)

 

『続けて第4魔導艦隊、ミスリル級2隻入港します!』

 

 それを聞き、ブロントは不思議そうな顔をする。

 

「珍しいな。普段は停泊する事すらないのに……まあ、今回はあの二か国がいるからか」

 

 そんな彼が期待している国が二つある。

 一つは、第二文明圏の列強レイフォルを滅ぼした「グラ・バルカス帝国」。

 もう一つは、第三文明圏の列強パーパルディアを解体した「日本国」。

 

 この二つの国が一体どんな艦隊を引き連れてくるのか、ブロントは楽しみだった。

 

 しかし、その思考は途中で中断される。

 水平線の向こうから現れた影に港湾監視員がざわつき、ブロントさえ硬直した。

 

『報告!第二文明圏外よりグラ・バルカス帝国!戦艦1、到着!』

「あ……ああ、分かった。第二文明圏区画に誘導せよ」

 

 魔信の報告を受けて我に返るも、その視線は1隻の戦艦に向けられていた。

 単艦で列強レイフォルを滅ぼすという戦場伝説を作り出した船、「グレード・アトラスター」。

 巨大な46㎝3連装砲塔を3基有し、天高く艦橋が聳え立つ。

 「グレード・アトラスター」がゆっくりと入港する間、カルトアルパスの住民はその巨艦に魅入られ、且つ圧倒されていた。

 

『局長!第三文明圏外より日本国、巡洋艦6隻の艦隊が到着!』

「そうか……日本国もか。第三文明圏区画に誘導せよ」

 

 「グレード・アトラスター」に魅入られていたブロントは、日本艦隊を双眼鏡で見ると、別の意味で圧倒された。

 

「う、美しいな……グレード・アトラスターのように余計な部分が無く、海の色を反射しそうな見た目だ」

 

 イージス艦という複数か国に分かれて受け継がれたその造形は、ブロントに感嘆をもたらした。

 

厶ー統括海軍

ラ・カサミ級戦艦「ラ・カサミ」艦橋

 

「日本からヒュージが出現する可能性を踏まえて、ラ・ジフ級と、次世代型だったラ・マツサ級を編成に組み込んだが、本当に来るのだろうな……?説得が水の泡となるが……」

「艦長……ヒュージ戦争において日本は主要艦艇の2割を失っています……来た方が良いというのは彼らに失礼かと」

 

 「ラ・カサミ」艦長のミニラル・テバル大佐と、シットラス・ジョリオ副艦長は話し合う。

 ムー統括海軍は、ラ・カサミ級戦艦「ラ・カサミ」「ラ・シキマ」、ラ・ジフ級戦艦「ラ・ジフ」「ラ・マシヤ」、ラ・マツサ級戦艦「ラ・マツサ」という5隻の戦艦を中心に、ラ・ヴァニア級航空母艦1隻等を組み込んだ10隻の艦隊を編成していた。

 

「分かっている。だから、ここで話している。日本艦隊の陣容はどうだ?」

「やはり空母はいませんね。どう対応するのかはまだ分かりませんが、日本艦隊に追随した方がよろしいかと」

 

 ミニラルは自分達ではヒュージへと対抗することができないことに悔しさを滲ませる。

 いつの間にかその視線を停泊しているミスリル級へと向けていた。

 そこには、第4魔導艦隊所属のミスリル級魔導戦艦「フォーキオン」と「エクリプス」の姿があった。

 

「あのミスリル級も日本の助言を受けたものだろうか」

「おそらくは。ただ第零魔導艦隊では無さそうです」

「……あれでも勝てるかは分からないな……やはりヒュージは脅威過ぎる」

 

 ヒュージのレーザーで焼かれていく「ラ・カサミ」を想像したミニラルは思わず体を震わす。

 

日本国海上防衛軍

あまぎ型ミサイル護衛艦「あまぎ」

 

「やはりヒュージ出現の兆候は高まっているようです」

 

 第3護衛隊司令、三浦智明少将が苦悶の表情で話す。

 

「そうか……やはり、レギオンには出撃準備態勢を?」

 

 それに答えるのは佐藤外務大臣だった。

 

「ええ、ローテーションではありますが」

「……いつ出現する?」

「明日かと思われます」

 

 三浦の回答に、佐藤は少し溜息を吐く。

 だが、それも一瞬のことで、すぐに立ち上がる。

 

「分かった。明日も早いし、休むよ」

 

_中央暦1642年4月22日_

神聖ミリシアル帝国カルトアルパス

 

 翌日、『先進11ヵ国会議』は予定通り開催された。

 世界の有力な文明国が参加し、今後の世界の流れを決定する重要な会議である。

 中央暦1642年の今年は、レイフォルとパーパルディア皇国が参加権を失ったために、日本国と、グラ・バルカス帝国が招待されており、参加国は以下の通りである。

 

・神聖ミリシアル帝国〔列強第一位〕(第一文明圏・中央世界)

・ムー〔列強第二位〕(第二文明圏)

・エモール王国〔列強第三位〕(第一文明圏・中央世界)

・トルキア王国(第一文明圏・中央世界)

・アガルタ法国(第一文明圏・中央世界)

・マギカライヒ共同体(第二文明圏)

・ニグラート連合(第二文明圏)

・パンドーラ大魔法公国(第三文明圏)

・日本国(文明圏外、第三文明圏東側)

・グラ・バルカス帝国(文明圏外、第二文明圏西側)

・アニュンリール皇国(文明圏外、南方世界)

 

 以上の11か国であり、「支配領域が広いだけの蛮族」とみなされているアニュンニール皇国が南方世界の長として招待されていることを除けば、「大国」として認識された有力な文明国が揃っていた。

 今回の会議では、列強失格となったレイフォルとパーパルディア皇国の代わりに「日本国」及び「グラ・バルカス帝国」を列強として認めるかどうかについても協議される予定となっていた。

 

「では、先進11ヵ国会議の開催を宣言する!」

 

 神聖ミリシアル帝国代表が開催を高らかに宣言すると同時に、エモール王国の代表が口火を切る。

 エモール王国は「竜人族」と呼ばれる個々の高い魔力や、風竜を使役できる民族によって構成されており、他国代表の誰よりも身長が高い代表は起立する。

 

「エモール王国代表のモーリアウルである。今回は、各国に伝えねばならない重要な事項がある」

 

 エモール王国が発言を行うことは珍しく、各国の代表は考えを巡らせながらも次の言葉を待った。

 

「先日、我が国は『空間の占い』を実施した。その結果、古の魔法帝国が遠くない未来に復活することが分かった」

 

 『空間の占い』、エモール王国は占いによって未来を見通すことができる能力を持ち、その的中率は98%ともなり、高確率で現実に起きるものだった。

 これを聞き耳程度で知っており、ヒュージ襲来に危機感を募らせていた日本の代表団も、これには苦悶の表情を浮かべる。

 加えて、各国の代表は騒然となり、互いに顔を見合わせる。

 

「なん……だと……」

「このままではまずいぞ!!」

「我らに抗う力など……」

 

 半ば議場がパニックとなる中。

 突然、佐藤外務大臣のポケットに入っているヒュージサーチャーがビーッビーッビーッとざわめきをかき消す程の音を鳴り響かせる。

 その瞬間、佐藤外務大臣の心拍数は跳ね上がる。

 それは決して会議参加者の注目を浴びた恥ずかしさではない、ヒュージが襲来するという事態への緊張によるものだった。

 

 その時、嵐は始まりを告げた。




■次回

第三話【出現】
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