日本国召喚×アサルトリリィ-World Allied Forces-   作:空社長

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少し長くなったか……


第二十話【死角からの衝撃➁】

_中央暦1642年5月19日_

【陥落指定地域】神聖ミリシアル帝国オーリブメン地方カルトアルパス

 

 時系列は数時間前に遡る。

 公に明かされたわけではないが、日本政府より陥落指定地域に定められたカルトアルパス。

 カルトアルパス湾、正確には港湾・洋上間を繋ぐフォーク海峡上に、巨大な竜巻状にそびえたつ物があった。

 分厚く暗い雲に覆われており、上空もその影響を受けて分厚い雲が広がり、太陽の光は差し込まなくなっていた。

 

 だが、眩いばかりの光を放ちつつ重力に逆らい急速に上昇していく物体が一つあり、それは不気味な明かりで周囲を照らした。

 轟音が空気や大地を震わせ、カルトアルパスにあった人の姿が無い家屋の窓が揺れ、机にあった花を生けていた花瓶が床に落ちる。

 発光する物体は周辺の状況を気にすることも無く、垂直に大気圏外まで上昇していく。

 

日本国東京 防衛省

 

「フォーク海峡ネストに異常反応!!」

 

 自身の執務室で秘書とやり取りしていた厳田虎防衛大臣は、突然の急報に身を引き締める。

 室内モニターにはEmergency(緊急事態)と赤く表示されていた。

 執務室のドアがノックされ、複数人の防衛軍士官が現れる。

 

「何が起きている!」

 

 彼らの姿を視認した厳田は、早速問い質す。

 

「ヒュージネストより射出される物体を観測しました」

 

 防衛軍士官の報告に厳田は眉をひそめる。

 モニターには可視化しやすいように情報が映っており、惑星全土を映した球体状の地図はフォーク海峡ネストに焦点が当てられており、そこから上昇していく駒にはHuge Unit Oneと表記されていた。

 逐次送られてくる最新情報が映されたモニターに目を向けながら、続きを促した。

 

「落下位置は?」

「弾道軌道の最高到達点は約2900kmです。そして落下位置ですが……予想される軌道からグラ・バルカス帝国本土である可能性が非常に高いです」

 

 厳田は内心舌打ちをする。

 その理由は、グラ・バルカス帝国と日本国との間でまともな国交が存在していないからだった。

 正式な手続きでの支援協力が難しい状況であった。

 

「大気圏は越えてくるか……」

「ええ。ですが、新世界惑星自体が巨大な為、落下軌道は比較的緩やかだと予測されています」

 

 ふむ、と厳田は呟くと、すぐに立ち上がり指示を出す。

 

「すぐに総理に連絡してくれ。官邸で協議したい」

「了解です!」

 

グラ・バルカス帝国本土 ナゴテイ

 

 帝都であるラグナに程近い沿岸都市のナゴテイは勤勉な帝国人が休暇や療養でよく訪れる保養地として有名であり、大きなビーチやホテルがあることから観光業が大きく発展していた。

 グラ・バルカス帝国帝王府副長官のオルダイカもまた、怪我の療養のためにビーチにあるパラソルの下で休んでいた。

 

「はっはっはっ、こうして美女を侍らせてリラックスするのもいいですなぁ。まるで王や皇帝にでもなった気分だ」

「オルダイカ様ぁ、皇帝はグラ・ルークス陛下だけですよぉ」

 

 隣でオルダイカにうちわを仰いでいた女性が注意する。

 それを聞いたオルダイカは下品な笑いを見せる。

 

「なぁに、そんな気分になってもいいじゃないか。これからが稼ぎ時なんだ。今度はもっと金を貢いでやるぞ」

「ありがとうございますぅ」

 

 オルダイカがまるで天国にいるような気分でくつろいでいる中、ビーチにいる人が大声を上げる。

 

「なんだあれは!」

「逃げろ!」

 

 多くの人が空を指さし、逃れるように駆けていく。

 だがオルダイカはパラソルの下におり、サングラスも掛けていた為に異変を感じてはいたが、状況を理解していなかった。

 

「ひっ、きゃぁぁ!!」

 

 オルダイカの傍にいた女性たちが騒ぎを気にして空を見上げた瞬間、悲鳴を上げながら走り去っていく。

 

「おい!どうしたんだ!何が起きて……」

 

 侍らせていた女性が一目散に逃げるのに、流石のオルダイカも椅子から立ち上がり、妙な明るさが気になり空へと視線を動かす。

 言葉は続かず、しかしその一瞬でオルダイカは自分の状況を理解した。

 視線の先には、眩いばかりの光を伴った巨大な物体が降下してきており、今まさに自分を圧し潰そうとしていた。

 唯一取れる手段はその場から逃げる事であったが、一歩たりとも足が動かず、ただ物体の一点を見つめていた。

 その間、時間がゆっくりと流れるように、彼自身感じていた。

 

「私も……ここまでか」

 

 最期にそう言い残すと、落ちてきた物体と接触し大気圏突入の熱で全身が焼かれると共に、巨大な衝撃波で一瞬のうちに身体が粉微塵となる。

 さらにその衝撃波はそれだけに留まらず、ビーチに直径130mのクレーターが形成されると共に、周辺の岩盤に巨大なひび割れを幾つも形成する。

 オルダイカ含めて複数の人間の命を奪い、ヒュージの射出体はクレーター内部に沈み込む。

 

 その射出体は、あくまでもヒュージを運ぶ籠に過ぎず、開かれると一体のヒュージが現れた。

 鋭利で険しい岩肌を持つ背の高い小山がそびえたち、その真下には4つの大柄な足があった。

 ラージ級レイザーレイ種ヴィーダーゲボイデ型──全高20m以上もある通常兵器では決して傷つけられない存在が現れた。

 そして、これから対峙するグラ・バルカス帝国兵士のほとんどはその事実を知らない。

 

「なんなんだあの化け物は!効かないぞ!」

 

 そう叫ぶのは、ナゴテイに配備されているナゴテイ警備隊の兵士であり、最前線を戦う部隊に比べれば練度も装備にも劣っていた。

 装備が優れてても効かない事実は変わらないものの、それを突きつけられる前に、ヴィーダーゲボイデ型の各所にある不規則に配置された鋭利な突起から一筋の光が放たれる。

 生身の兵士に対しては余りある威力を発揮して一瞬で消し炭にすると、他の突起からもレーザー光線が放たれて多くの兵士が数秒の内に原型を留めない遺体を砂の地面に曝す。

 

「あ……いやだ!死にたくないぃ!!」

 

 圧倒的攻撃力を見せつけられ一瞬で人が無惨な姿になる光景を見てしまえば、恐慌状態となるのは必然であり一目散に逃れていく。

 だが、背を見せる獲物を簡単に逃すヒュージではなく、ほとんどの兵士が体を裂かれて倒れていった。

 当然、グラ・バルカス帝国軍がこの程度で諦める存在ではない。

 

「装甲中隊現着……くっそ、遅かったか」

 

 遅れて到着したのは、帝国陸軍とは別組織の帝国近衛軍傘下にある第46近衛装甲中隊だった。

 何故か旧日本軍の九七式中戦車に酷似した形状を持つ2号戦車ハウンドⅡを主力としている戦車部隊で、第8近衛装甲擲弾兵師団の先行部隊として先陣を切っていた。

 しかしその勇ましさとは別で、ヴィーダーゲボイデ型は容赦無くハウンドⅡの正面装甲を溶解させて、燃料や弾薬に引火させて爆発を起こす。

 さらに、周囲にケイヴを発生させることで、テンタクル種やバスター種などのスモール・ミドル級を出現させて自身までの道を阻ませる。

 

「全車砲撃用意っ、まずは手前から落としていく!撃てぇ!」

 

 47㎜戦車砲から砲弾が放たれ、バスター種の装甲を傷つける。

 だが仕留める事は叶わず、バスター種の上下に開いた胴体より現れた砲身から吐き出されたレーザーによってハウンドⅡを真っ二つに引き裂いていき、さらに装填の隙を縫ってテンタクル種オルビオ型が前脚を装甲内部にまで突き刺し、乗員を殺傷していく。

 間髪入れず、バスター種及びヴィーダーゲボイデ型からレーザーが撃ち放たれ、中隊の半数に及ぶ車両が撃破もしくは行動不能に陥った事実に、中隊長は戦慄する。

 一切傷つけられないまま撃破されようとしてる絶望感に圧し潰されそうになるが、彼の下に無線が入る。

 

『こちら、戦艦”ヘルクレス”。聞こえているか?本艦による制圧砲撃を試みる』

「い、いいのか?」

『構わん。私も味方がやられていく姿を見たくないだけだ』

 

 艦長からの無線が切られると、洋上に浮かぶヘルクレス級戦艦「ヘルクレス」の41㎝連装砲4基8門の砲口が全て陸地を向く。

 そして、全ての主砲が一斉に火を吹いた。

 一瞬の内にヒュージが爆炎に覆われ、戦車兵たちが歓声を上げる。

 

「……馬鹿なっ」

 

 だが、煙が晴れた時にヴィーダーゲボイデ型の表面には一つも傷が無かった。

 当然、ヒュージの矛先は「ヘルクレス」へと向けられ、多数のレーザーが3番砲塔基部に集中し、瞬く間に装甲が融解する。

 

 次の瞬間、轟音と共に3番砲塔が炎に揉まれて粉砕される。

 3番砲塔直下の弾薬庫がレーザーの直撃によって誘爆したことで、「ヘルクレス」は一撃で戦闘続行が不能となってしまい、退艦命令が発令される。

 しかし、艦体が傾くことで1番砲塔が動くのを捉えたヴィーダーゲボイデ型が攻撃の兆候と判断してしまったことで、さらなる追撃が行われる。

 1番砲塔基部に再びレーザーが集中し、容赦無く1番砲塔も激しい大爆発によって吹き飛ばされてしまう。

 こうなれば、船体の浸水を抑える事も出来なかったが、浅瀬であったことが功を奏したのか「ヘルクレス」は大破着底という結果に収まった。

 

帝都ラグナ 帝王府

 

 大会議室は沈黙に包まれていた。

 最初「ナゴテイに隕石のような物が落ちてきた」と報告を受けた際、帝国近衛軍司令長官のジークス・ランデル大将はカイザルの友人であったために、ヒュージではないかという疑念を抱き、機転を利かせて本来なら過剰と思える第8近衛装甲擲弾兵師団をナゴテイへと向かわせていた。

 その結果、隷下の戦車部隊が敵を引き付けている間に歩兵大隊が住民の避難を行えていたが、僅かな時間で先行させた装甲中隊が壊滅の危機に瀕したことに、早すぎるという感想を抱いた。

 その後、さらなる急報にジークスはショックで倒れそうなほど、絶句しかけていた。

 

「ば、ばかな……」

 

 そう小さく呟いたが、一部の者には聞かれてしまっており、答えなければならなかった。

 

「はっ……先行した装甲中隊の援護に、海軍所属の戦艦”ヘルクレス”が無許可で赴きました。しかし……敵個体、恐らくヒュージと思われる大型種より攻撃を受け、1番砲塔と3番砲塔が爆発……甚大な被害を受け大破着底したと、報告が入っております。その後、先行部隊及び援護に赴いた装甲部隊は事実上壊滅して無断で撤退を開始したため、現在の状況は……避難誘導を受けていた民間人がヒュージの襲撃に遭っているという情報もあります」

 

 後ろの報告は聞く者達の耳にほとんど入ってきていなかった。

 帝国が誇るヘルクレス級戦艦が撃沈寸前の状況に追い込まれるなど、信じたくもなかったのはグラ・バルカス帝国人として当然であった。

 

「ヘルクレスが……」

 

一部には目を虚ろにしてうわ言のように繰り返し呟く者もいるほどだった。

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