日本国召喚×アサルトリリィ-World Allied Forces-   作:空社長

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第二十一話【死角からの衝撃③】

_中央暦1642年5月19日_

日本国東京 首相官邸

 

「フォーク海峡ネストより射出されたユニットが、グラ・バルカス帝国本土へと落着したことを確認しております。恐らくグラ・バルカス帝国軍との戦闘に突入してるものと思われます」

 

 ほぼ全ての閣僚が閣議室へと集っていた。

 防衛省からの報告を受け、武田内閣は緊急の国家安全保障会議の開催を決定。

 全ての予定をキャンセルしてその会議に望んでいた。

 厳田の報告を受けて、閣僚らがザワつくよりも前に、武田は口を開く。

 

「グラ・バルカス帝国軍の戦力は?」

 

 その質問を予想していたかのように、厳田は机上と壁面にあるモニターに幾つかの分析画像を表示する。

 

「先進11カ国会議にて見られた旧帝国海軍の大和型に酷似した戦艦"グレード・アトラスター"、及び金剛型に酷似した艦名不明艦等を保有しており、旧帝国海軍と変わりない戦力を有してると思われます。

陸軍においても旧帝国陸軍の九七式中戦車に似る車両を、航空戦力も零式艦上戦闘機と似た機体を有しているのではないかと予想されます」

 

 回答を聞き終えた武田はモニターを一瞥すると、目線を戻して正面を向く。

 

「負けるな。むしろ勝てる訳は無いのだが」

 

 そして、ため息を吐き軽く俯きながらも断言した。

 

「ええ。銃火器の性能は不明ですが、戦車などは火力が不足しています。海軍戦力は十分過ぎる火力を有していますが、ヒュージとの戦闘は陸戦が中心です。遅滞戦闘すら行えない可能性もあります」

 

 厳田も首肯して、詳細な分析結果を口にする。

 それを聞き、閣僚らは唸り、険しい表情を浮かべる等、様々な反応を示す。

 武田の隣にいる副総理が武田に疑問を投げかける。

 

「では、いかがしますか?」

「結論は決まっている。直ちにレギオンを派遣し、ヒュージを殲滅する。前世界においてヒュージを拡散させ数十年も戦うことを強いられた失敗を二度と繰り返してはならない」

 

 武田の言い放った言葉に、全閣僚が頷く。

 

「ですが、どのように連絡を取るのです?彼らが外交窓口としているレイフォリアに外交官を派遣するのでは、物凄く手間がかかるかと。しかし無許可では攻撃されかねませんが……」

 

 閣僚の1人が疑問を呈する。

 それに対して手を上げたのは厳田防衛大臣であった。

 

「私から二つほど提案があります。まず一つ目ですが、現在戦艦『グレード・アトラスター』を含むグラ・バルカス帝国代表団の護衛艦隊がムー大陸北方沖を航行しております。ムー国にはシーレーン防衛を名目として海上防衛軍の護衛艦1隻が停泊しておりますので、それを用いて接触させます。代表団が乗っているとなれば、グラ・バルカス帝国の中枢にまでその連絡が届きます。それを利用し、支援の申し出を行うのです」

 

「二つ目ですが、防衛省情報本部のELINT(電子諜報)任務によりロウリア王国国内にグラ・バルカス帝国諜報員が潜伏していることが明らかになっています。それを利用し、できる限り穏便な接触で支援の申し出を行います」

 

 厳田防衛大臣から挙げられた二種類の対処案。

 通常ならあり得ないイレギュラーな物であったが、武田の決断は早かった。

 

「よし、それで行こう。保険をかけるため、その二つを並行して進めるように。幸い後者に関しては、外務次官が1人ロウリア国内にいる、存分に利用してくれたまえ」

「派遣するレギオンはいかがしますか?」

「……私のツテを利用しよう」

 

 その後、些細なやり取りを終えて、国家安全保障会議は終了する。

 武田は退室したその足で迷うことなく自らの執務室へと向かった。

 

 執務室へと戻った武田はホログラムディスプレイを立ち上げ、ある相手と連絡を繋げる。

 

『珍しいですな』

「アポなしですまんな。緊急性の高い要件と理解してくれ」

 

 そのディスプレイに映るのは老齢の男性であり、向き合った武田は敬語も使わずに言葉を投げる。

 

『分かっております。やはり百合ヶ丘女学院の副理事長である私にということは、ヒュージに関する要件でしょうか?』

 

 百合ヶ丘女学院副理事長高松(たかまつ)咬月(こうげつ)は姿勢を正してそう答える。

 その言葉に、武田は身構えつつも苦笑を浮かべる。

 

「やはり君は察しがいいな、昔からそうだったか……まあ、今はそんなことはどうでもいい」

 

 武田はかつて防衛官僚だった時代をわずかな間に懐古するが、それを一瞬の内に振り払う。

 

「単刀直入に言おう。西方のグラ・バルカス帝国にヒュージが落着した、その対処の為にレギオンを派遣してほしい」

『ほう……それはそれはなんとも急な事。しかし、友人の求めであるのならすぐに編成して送り出しましょう』

 

 咬月の口から吐き出される白々しく感じる台詞に、武田は皮肉じみた笑いを浮かべる。

 

「君のところのレギオン、LG『シグルドリーヴァ』がグラ・バルカス帝国に近いムー国入りしているのは周知の事実だ。観光目的と謳っているが、対ヒュージであることは自明の理であろう」

『事情は把握しております。鎖日隊及びブルーフロートなど、政府お抱えのレギオンはカルトアルパス撤退戦において負傷し、全力を出せない状況であることも。国内ガーデンで特務レギオンを持つのは多くありません故、白羽の矢が立つのは本ガーデンかと思いまして』

「なんとも……頼もしい限りだよ。その様子から見るに、軍令部作戦会議はクリアしているか」

『仰る通りです。では防衛省からの命令が届き次第、シグルドリーヴァを現地に派遣するということでよろしいですな?』

 

 武田は無言で頷き、通信を切る。

 自分の座る椅子を机とは真反対に回転させつつ、考えに耽る。

 

「やはり君は食えない男だな。3年経ってもそこは変わらんようだ」

 

 武田は皮肉を込めた笑みを見せつつ、そこには懐かしさの感情もあった。

 

ロデ二ウス大陸 ロウリア王国王都ジン・ハーク

 

 2年半前のロウリア戦役終結以後、ロウリア王国は民主化の一途をたどっていた。

 法整備が進み、日本企業が続々と進出し、街並みが近代化されていく街の一角に、商人として国籍を偽るグラ・バルカス帝国諜報員らが住む隠れ家があった。

 そこに、ドアを叩き日本外務省と名乗る者が現れる。

 

「見つかったか!?……日本外務省?」

「治安機関ではないということは……我々がここにいるのを知って訪れてきた、ということでしょうか」

 

 諜報員らを束ねるリーダーは頭を悩ますも、ひとまず話を聞くことにしようと決断し、部下の一人に開けるよう命じる。

 中へと通された日本外務省外務次官は、警戒されていることを肌身で感じながらも、案内された席へと座る。

 

「何の用ですか、日本外務省さん」

「ありがとうございます。さて、枕詞を言うのは性に合わないもので、単刀直入に言わせていただきます」

 

 諜報員達がゴクリと息を飲み、次の言葉を待った。

 

「あなた方はこれまでの諜報活動で我が国が前世界で経験してきたことを知っているかと思いますが、今回の要件はそれと関係しています。グラ・バルカス帝国本土に我々がヒュージと呼ぶ敵性生命体が落着したことを確認しており、日本政府がヒュージの撃破を行う許可を頂きたいのです。諜報員ですので、本国との連絡手段を持ち合わせているはずですよね」

「だ、誰がそんな話を──」

「信じて頂けなくても結構です、あなた方が上司と連絡を取れば良いことだけですので。無視していただいても結構です、その場合は国が滅亡することに繋がりますが」

 

 外務次官の鋭い視線が諜報員らの目に突き刺さる。

 丸腰の相手であるはずなのに、彼らは目の前の相手に畏怖を感じていた。

 

「……分かった。連絡しよう、少し待ってくれ」

 

 外務次官の威圧に屈するように、諜報リーダーは申し出を受け入れた。

 

ムー大陸北方沖 グラ・バルカス帝国東征艦隊

 

『こちら日本国海上防衛軍!!艦隊旗艦に接舷を願いたい!!』

 

 真っ直ぐ帝国本土へと帰還するため、カルトアルパスを脱出した「グレード・アトラスター」及び東征艦隊はムー大陸北方沖を航行していた。

 突然聞こえてきた無線から放たれる言葉に艦隊はざわつくも、ただ事ではないと感じ艦隊の行き足を止める。

 海上防衛軍の灰色の濃淡のみで描かれたロービジ塗装に覆われた護衛艦は、艦隊将兵の視線を浴びながら「グレード・アトラスター」へと接舷する。

 

「何の御用でしょうか?日高大佐」

 

 艦内の会議室に案内された日高(ひだか)啓一(けいいち)海上防衛軍大佐は、シエリア外交官の言葉に返事することなく、周囲を一瞥する。

 ラクスタル艦長と、アルカイド司令がこちらをじっと見ていることを確認すると、口を開く。

 

「申し訳ありません。しかし、これは貴国にとって緊急性のある事態であるために、予告なく接舷を行いました」

「我が国にとって……?」

 

 日高の発言にシエリアは困惑する。

 

「……ヒュージに関することだろうか?」

「ええ、正解です。あまり多くは申し上げられませんが、グラ・バルカス帝国本土にヒュージの個体が落着したのを確認いたしました、現在は戦闘状態に入ってると思われます」

 

 三人は深く衝撃を受けると共に、憔悴した表情を浮かべた。

 

「……ラージ級以上が出現していれば、通常兵器では傷付ける事は出来ないと言っていたな……帝国が滅ぶ危険性も」

「残念ながら、ラージ級が含まれていない可能性は万に一つもありません、今回のような前例でラージ級がいなかったことはありませんでした」

 

 日高の追い打ちをかけるような言葉に、三人は焦りを隠さなくなっていく。

 ですが、と日高は一拍置いて自分に視線が向くのを待ってから、言葉を続けた。

 

「日本政府は、今回の事態を重く見ております。前世界の失敗を繰り返さない為に、落着したヒュージを殲滅することを決定しています。その為にレギオン──リリィ達の部隊を派遣する許可を頂きたいのです」

「……感謝する、シエリア殿は外務省に。私は軍本部へと無線で伝える」

 

 ラクスタルは即断し、本国にこの事を告げる為に動き出す。

 数秒遅れたものの、同じ考えであったシエリアとアルカイドも頷いて動き出す。

 その光景に、日高はホッと息を吐く。

 

「これで少しは安心できる、あとは本国次第だな」

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