日本国召喚×アサルトリリィ-World Allied Forces-   作:空社長

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第二十二話【死角からの衝撃④】

_中央暦1642年5月19日_

グラ・バルカス帝国ナゴテイ

 

 爆発と悲鳴が交差する。

 既に展開している第8近衛装甲擲弾兵師団の援護に、帝都防衛隊から引き抜かれた1号重戦車”ワイルダー”を含む装甲部隊も派遣された。

 だが、ヘルクレス級戦艦の主砲弾でさえ傷付ける事すら叶わないラージ級ヴィーダーゲボイデ型に対して、たかが重戦車の砲撃が意味を持たないのは明白だった。

 それ故、損害を与えられる小柄な個体を中心に撃破を目指し、一般人を避難させつつ少しでもヒュージが到達するまでの時間を稼ぐ遅滞戦闘を行うのは必然だった。

 

「全車、撃てぇ!!」

 

 大隊長の号令と共にワイルダーの75㎜砲、ハウンドの47㎜砲が火を吹く。

 迫りくるヒュージの大群に向けて放たれた数多の砲弾は、その命中率こそ低かったものの、流石にスモール・ミドル級相手では効果的な損害を与えていく。

 75㎜砲弾を撃ち込まれたバスター種の装甲殻が割れて吹き飛び、胴体を穿たれたテンタクル種が青い体液をまき散らしながら倒れていく。

 だが数が多いため、主砲装填の合間にヒュージは間合いを詰めていき、バスター種に至っては既に砲身を伸ばしていた。

 バスター種トリスケリオン型──かの重巡洋艦以上の口径を持つ砲身から吐き出される奔流は厚さ50㎜の装甲をものともせず、ワイルダー重戦車を引き裂いた。

 

「くそっ!だったらこいつを設置するしかねぇ!」

「おい!何をしているっ!」

「戦車じゃ無理だ、弾幕を貼るしかねぇだろ!」

 

 炎上し黒煙を上げるワイルダーの傍で、複数の兵士たちが重機関銃を設置し、3脚の銃架で地面に固定された7.7㎜の銃口から重低音を鳴らしつつ連射される。

 それを見た高射中隊も、13㎜高射機関砲を設置して、その銃口を眼前の敵へと向けて掃射した。

 数多の銃弾がヒュージの銀灰色の装甲を叩き、弾幕に貫かれた複数のヒュージが地に膝をつく。

 しかし、火線を避けて跳んだテンタクル種オルビオ型が三つの光点から大量の光弾を地上に向けて浴びせていく。

 

「ぐっ……接近戦だけじゃないのかよっ」

 

 設置した重機関銃が瞬く間に壊され、足を負傷した兵士が愚痴を吐く。

 だが、その兵士が動けぬまま、ファング種アッシャー型の光線を身に受けてその意識を刈り取られる。

 

 上空では複数のレシプロ機が飛行していた。

 帝国近衛軍は航空部隊をもっておらず、代わりに陸軍航空隊のアンタレス07式戦闘機が翼下に爆弾を抱えてナゴテイ救援に赴いていた。

 

「くそ……やりたい放題やりやがって。おい、行くぞ」

『ま、待て!なんだ、あれは!』

 

 僚機パイロットの視線の先に見つけたものに、彼は奇異の目を向ける。

 ヒュージの存在を見たことが無かったために、目線の先にあった銀灰色の飛行物体──ペネトレイ種カウダ型に対する反応は遅れてしまう。

 旧日本軍の零式艦上戦闘機に酷似するアンタレスに対して、カウダ型はそれを上回る亜音速を発揮し、幾つもの光弾を発射する。

 命中率は然程高くはなかったが、1機が直撃を受けて炎上し墜落する。

 

「は!?……全機散開!対処する!」

 

 驚きの余り咄嗟に指示を出したものの、性能差を理解していなかったためその指示は明らかに無謀だった。

 簡単に追いつかれ、1機、また1機と次々に墜とされていき、最後の1機となる。

 

「来るなっ、なんでそんなに速いんだっ」

 

 そう吐き捨てた途端、カウダ型はその進路を引き返す。

 一安心するもそのつかぬ間、ヴィーダーゲボイデ型から放たれた光線によって機体ごとその身を焼き尽くされ、航空部隊は瞬く間に全滅する。

 

 抵抗を続けていくグラ・バルカス帝国軍。

 しかし、対ヒュージ戦のノウハウ・戦術、さらに各種ヒュージの性質を知らない為に、明らかにヒュージの動きに対応できていなかった。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

「くそっ、こっちを狙えよ──がぁぁっ」

 

 遂には避難を続けている一般人すらも標的となってしまう。

 テンタクル種オルビオ型の腕が女性の体を切り裂き、バスター種の光線が兵士の身体を溶かす。

 既に戦線は総崩れとなっていた。

 

帝都ラグナ 帝王府

 

「失礼します!カイザル大将!」

 

 重苦しい空気が支配している大会議室のドアが勢いよく開け放たれ、カイザルの元に1人の海軍士官が駆けこんでくる。

 同時に、帝国情報局員が開け放たれたドアから入り、情報局長のバミダルへとメモを手渡す。

 カイザルは士官からの耳打ちと手元に渡された文書に、わずかに目を見開いて動揺を見せ、小声で確認する。

 

「……本当か?」

「……確かなようです」

 

 カイザルは悩むも、身体を引き締めて決意する。

 バミダルもメモの内容を見て眉をひそめるも、一つの決断を下す。

 

「……失礼します。海軍より帝国の存亡に関わる緊急の要件が入ったため、報告いたします。よろしいでしょうか」

「我々情報局も同様に帝国の行く末に関わる件があります」

 

 報告は偶然にもほぼ同時であり、カイザルとバミダルは互いに目を合わせる。

 それを受けて、皇帝グラ・ルークスはわすかに逡巡した後、カイザルを指名する。

 

「ふむ……では、カイザルから申せ」

「はっ、本日『グレード・アトラスター』より緊急の無線が入りました。簡潔に報告しますと、ムー大陸北方沖を航行中に日本の艦船より接触が行われ、艦長自身が要件を伝えに来たとのことです。その内容として、帝国がヒュージに襲われている現状を日本政府が認知しており……」

 

 カイザルは一旦言葉を切り、息を整える。

 

「日本は帝国内のヒュージを殲滅するための部隊を帝国本土へと派遣する許可を頂きたいとのことです」

 

 その報告に多くの人が驚き、バミダルは自分のメモを繰り返し見ながら目を大きく見開いていた。

 そんな中、グラ・ルークスはバミダルにも報告を求めた。

 

「ふむ……バミダル情報局長、そちらの報告はなんだ?」

「はっ、実のところ情報局の報告は海軍と同じものです。ロウリア王国に潜伏している諜報員の居場所を突き止めた日本国外務省が接触し、同様の事を話されました。……恐らくは上層部に届かない可能性も含めて、保険を掛けたと思われます」

 

 バミダルの言葉に、再び驚く声が現れる。

 グラ・ルークスは先ほどのカイザルの報告時にはヒュージに対して半信半疑であったが、現在進行形でヒュージに侵攻されている今となってはカイザル大将の発言を信じていた。

 だが、それでも日本の力には疑念を持ち、本土へと立ち入る許可を出してまで勝てるのかという、実際に戦っている様子を見ていないからこその思いはあった。

 

「……他に詳細はあるか?できる限りの情報は欲しい」

「では私から。日本より派遣されるヒュージに対処する部隊に関してですが、リリィと呼ばれる少女達の部隊、『レギオン』というのが派遣される模様です。その派遣方法は、特殊な輸送機を用いて戦域に着陸するとのことで、飛行場や空港等は使わないようです。また派遣するレギオンは、実力を有してる精鋭レギオンを派遣すると確約を頂いております」

 

 カイザルの言葉に、グラ・ルークスは険しい表情を浮かべつつ唸る。

 皇帝であるからこそ、真剣に道筋を決めようと思考を働かせていた。

 しかし、帝国は巨大な組織である為、それを妨げる者もいた。

 

「我が国が他国に防衛を任せるなど……信用できるわけがない!たとえ転移国家であろうとだ、どうせ我々を騙し討ちするに決まっている!」

 

 発言した議員は帝国に誇りを持つ人間であり、パガンダの一件から他国のことを信用していなかったために、日本にも疑いの目を向けていた。

 彼と同じ派閥にいる議員らも、そうだそうだ!と賛同の意思を示す。

 

「ですが、今回の事態ははっきり言って異例です!このままでは国すらも滅びますよ!!」

 

 その議員に対し、先進11ヵ国会議の報告時点ではカイザルに異論を唱えていた陸軍軍人が日本からの派遣賛成派となって、反論を行う。

 グラ・ルークスは目の前で行われる論争がすぐには終わらぬことを悟り、頭を悩ませる。

 同じ気持ちでカイザルがスッと手を上げる。

 

「皇帝陛下、一つ提案よろしいでしょうか?」

「……構わない。話してくれ」

 

 カイザルは周囲を見渡し、ジークス、ミレケネスとは目を合わせ確認を得る。

 

「では申し上げますが……ここは日本に賭けてみるのはいかがでしょうか?」

 

 直後、議員からの苦言がされるも、それを聞き流しながら皇帝の目を伺う。

 

「訳を聞こう」

「はっ……帝国近衛軍の部隊は苦戦を強いられており、グレード・アトラスター級を除けば帝国最大の戦艦であるヘルクレス級でさえ砲弾が効かず、無惨にも敗れ去ったのです。つまり、我々にはこれ以上抗う術はありません。ゆえに、日本に賭けてみるべきかと。日本が破れてしまえば、我々には後が無いのですから」

 

 カイザルから告げられた言葉に帝国が追い詰められていることを再確認したグラ・ルークスは決意を固める。

 

「やはり日本に救援を頼む以外は無いか。カイザル大将、『グレード・アトラスター』に連絡を頼む」

「はっ」

「ただし、この場で直接無線を行え。帝国の存亡に関わる事態となれば、私が現場の事を知らなければならない」

「……了解いたしました」

 

 大会議室に大きな無線機器が持ち込まれ、カイザルが直接無線を使う。

 

「アルカイド司令。陛下の決断を頂いた、日本に派遣要請を行ってくれ」

『はっ、ありがとうございます。それでは』

 

「日高大佐、許可を頂きました」

「分かりました!任せてください」

 

 数分後、防衛省より百合ヶ丘女学院へと指示が出され、LG『シグルドリーヴァ』に出撃命令が下された。

 ムー国に待機中だった『シグルドリーヴァ』は、エヌビア空港よりリリィ専用戦闘輸送機である「ガンシップ」へと乗り込んだ。

 すぐに離陸しF-3戦闘機の護衛の元、ムー北方沖を通過した後、グラ・バルカス帝国本土へと向かった。




最後の無線機器のところは時代設定無知なので、見逃していただけると……

ちなみにナゴテイにはゲスタもおりましたが、原作のダラスの代わりに、帝都ラグナの外務省までの50km(ぐらい?)の道程を走って逃げ帰りました。
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