日本国召喚×アサルトリリィ-World Allied Forces- 作:空社長
_中央暦1642年5月19日_
グラ・バルカス帝国本土北東沖 上空
そこには哨戒任務中のグラ・バルカス帝国軍機──アンタレス07式戦闘機2機の姿があった。
ヒュージの本土襲来を受けて、帝国陸海軍はなし崩し的に厳戒態勢を発令し、本土沖合では海軍の駆逐艦が海上から、陸軍の航空機が空から監視を続けていた。
「なあ、確か日本の機体が来るんだったな」
『ああ、3機来るって話だな。アンタレスの2倍速いとか言ってたが、信じられないな』
パイロットらが無線で言葉を交わす。
その話題は、防空司令部より告げられた日本より派遣される部隊の輸送機についてだった。
話してる内に時間は過ぎていき、雷鳴のような轟音が響き渡る。
その直後、3機の機影が彼らの前を通り過ぎていく。
「本当に……速いだとっ」
『すぐに司令部に伝達!日本の機体がまもなく到着すると!』
激しい風圧に耐え、日本機の速度に驚くのも束の間、無線にて防空司令部へと今起きたことを報告する。
一方で「ガンシップ」及びF-3戦闘機2機の編隊は、哨戒機を通り過ぎたことを確認し、対ヒュージの作戦行動へと移行する。
『こちらメイジ1、離脱する。メイジ2も続け』
『了解。メイジ2反転する』
ヒュージ、特にラージ級ヒュージに対して無力な航空防衛軍のF-3は離脱を開始。
反転するタイミングで1人のパイロットが通信を送る。
『シグルドリーヴァに勝利を。幸運を祈る』
「大丈夫です、必ず勝利してきます」
リリィの返事を聞き、『当然だな』と言い残して再び来た道を超音速で駆けていき、それを見届けたガンシップは対空型ヒュージによる攻撃を避けるために降下を開始する。
”ガンシップ”。それは前世界のアメリカ空軍にて運用された局地制圧用攻撃機の事を思い浮かべる者もいると思うが、それはラージ級に損害を与えられず航空優勢を必ずしも確保できない対ヒュージ戦争の中で過去の物となっていた。
そして、現在はもう一つの存在を指す呼称として一般化していった。
その呼称が指すのはKV-1180B強襲展開輸送機という機体。
強豪ガーデン及び防衛軍傘下のレギオンが外地遠征時に搭乗する機体で、強豪ガーデンの一つである百合ヶ丘女学院の保有する1機がレギオン『シグルドリーヴァ』をグラ・バルカス帝国本土まで輸送していた。
機体下部に円筒形の兵員用ポッドを横並びに二つ吊るしたガンシップは、着陸地周辺の戦闘でガンシップが損傷することが無いように、比較的戦域から離れた平坦そうな地に奇異の視線を浴びながら着陸する。
「ラージ級は一体のみかぁ。まあ楽な方がいいかな、早く助けないとね。決して私たちがいる前で誰も死なせないから」
着陸直後の機内でそう話すのは、紺色短髪ウェービーヘアの少女であり、〈鷹の目〉を発動させた後輩リリィと手を繋いでその感覚を共有していた。
「ありがと。それじゃあ行くよ」
「陣形はどうするの?咲良」
紺色ウェービーヘアの少女──
「もちろん、私が先行するよ。後ろで指示を出すなんて私に合わないよ」
髪を整え、学院制服の上にレギオン『シグルドリーヴァ』の隊服を慣れたように着る。
そして、レギオン『シグルドリーヴァ』隊長である彼女は声を上げる。
「シグルドリーヴァ、出撃!」
ガンシップのドアを開放した瞬間、シグルドリーヴァ──勝利をもたらす者達は、マントをたなびかせて颯爽と飛び出していく。
帝都ラグナ 帝王府大会議室
沈黙が続く大会議室、彼らは
その沈黙を破る声が、焦りの余り走っていた陸軍士官より上げられる。
「防空司令部より報告!哨戒中の第8航空隊が本土に接近する3機の機影を確認。内2機は反転したとのことです!報告が遅延したため、すでに着陸してるものと思われます」
「どこに着陸したかわかるか?」
グラ・ルークスの問いに、その陸軍士官は思わず俯いた。
「いえ……それは」
それに返す前に、次の続報が近衛軍士官より舞い込む。
「戦線後方にて再編成中の第26近衛装甲擲弾兵連隊より報告!垂直に着陸した輸送機を確認したとのこと!また、その付近で女学生のような格好をする武器を持った少女の姿を確認しており、男性の姿は見られないとのことです!」
その報告に、感嘆する声が広がった。
一部の者は目を見合わせて信じられない思いを感じ、口々に話合う。
「本当に少女を送り込んでくるか……精鋭部隊とはあるが、果たしてどうなるか」
「吉と出るか、凶と出るか……だな。あとは信じるしかないだろう」
様々な反応を見せるが、彼らは帝国の滅亡を避けるため、顔を見たことも無い少女へと神に祈ると似た思いで縋った。
ナゴテイ戦域
ナゴテイではグラ・バルカス帝国軍と、ヒュージの攻防が続いていた。
例え日本からの援軍が来るとしても、戦線を維持する役割を放棄し、ただ待ち続けることはあってはならないことだった。
バスター種の砲撃でハウンドⅡが撃破される一方で、重機関銃の銃口から弾幕がばら撒かれてスモール級ヒュージを頓挫させた上で155㎜重砲の砲撃が加えられる。
一歩も退かない構えで精一杯戦うため、避難する民間人を強引に戦線後方に押し退けるが、焦りによって避難の遅れ、部隊の孤立など様々な弊害が起きていた。
そして、ここにも取り残されていた子どもがいた。
「うぇーん、うぇぇぇぇん」
小さな女の子が泣きわめく。
近くに親がいないのを見ると、逃げる途中ではぐれたらしかった。
だが、兵士たちに助ける余裕など万に一つも無かった。
「嘘だろ!子どもが!」
「だが、俺たちの装備じゃ!……くっそ!」
ミドル級テンタクル種オルビオ型の目に当たる器官に相当する三つの丸い光点が女の子を品定めするかのように見つめる。
殺すべき対象と判断したのか、三本ある脚の一つを振り上げる。
蟷螂に似た脚は大きく、子どもであれば即死であるのは間違いなかった。
振り下ろされる直前、残酷な光景を記憶に残さぬように、兵士一同は皆目を瞑る。
「いっけぇぇ!!」
だが、女の子にその凶刃が当たることは無く、傷一つついていなかった。
突然聞こえてきた少女の声に目を開けると、紺色髪の少女が身長程の大きさもある巨大な武器で脚を防いでいた。
オルビオ型は突然の出来事に動きを止めるが、邪魔者を排除するため三つ目で狙いを定める。
「バレバレだよ、それじゃ」
だが、咲良はそれを予測しており、脚の攻撃を防いでいたCHARMの向きを変え、振り返り様にヒュージを上下真っ二つに切り裂いた。
直後、ヒュージの胴体が爆ぜ、青い体液がまき散らされるのを、咲良はヒュージに背を向けて自分の体を壁にしつつ、女の子を抱きしめて液体が女の子にかからないようにする。
爆発収まったのを確認しつつ、背中のマントにかかった青い液体を見て、残念そうな表情を浮かべた。
「はぁー……汚れちゃったな。まあ、その前に預けないと」
彼女は女の子を抱え、兵士たちの元に赴く。
驚きで固まっていた兵士に声をかける。
「この子のこと、お願いします。あと、他に生存者は?」
「あ、ああ……確か向こうに孤立した部隊がいる!」
一人の兵士が海岸線の方向を指さす。
「分かりました、それでは」
それを見た咲良はそう答えると、勢いよく駆け出す。
「あ、おい……!」
呼び止めようとする兵士の言葉は続かなかった。
咲良はCHARMを用いてマギの力で空へと飛び上がり、仲間たちが戦う所へと向かう。
道中にいたバスター種を切り裂き、スモール級群を葬り去る。
「嘘だろ、あんなに苦戦した相手を」
「……!とにかく師団長に伝えるぞ!」
兵士らは無線機器でリリィが救援に赴いたことを伝える。
敗北に進むはずだった帝国に、
咲良は勝利に進むために、砲口から一撃を放つ。