日本国召喚×アサルトリリィ-World Allied Forces- 作:空社長
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3/17、タイトルを変更しました。
_中央暦1642年5月19日_
戦車の甲高い砲撃音が連続する。
火力が低いとはいえ、ハウンドⅡ中戦車の47mm砲によって装甲を穿たれた一体のオルビオ型が、黒煙を吐いて頓挫する。
その横からもう一体のオルビオ型が現れ、胴体前面にある目のような三つの光点から光線を放ち、ハウンドⅡの表面を撫で装甲を溶かす。
不運な事に、更に連続発射された光線は容赦無く装甲を貫いた挙句、弾薬庫に到達して爆発を起こし、砲塔が空へと吹き飛んだ。
『な、7号車、大破!』
「戦車の数が半数を切りました!」
「対戦車砲の弾薬がゼロです!もう撃てません!」
無線や伝令による悲痛な報告に、第28近衛装甲擲弾兵大隊の司令部要員は険しい表情を浮かべる。
第8近衛装甲擲弾兵師団隷下にある彼らはナゴテイにいる非戦闘員を退避させつつ、戦線を維持する役割に従事していた。
だが、連続した撤退と遅滞戦闘、師団司令部の混乱、無線の不通等により、いつの間にか周りを敵に囲まれて孤立し、ナゴテイ市内の小高い丘に堀と城壁などで築かれ、かつての内戦で使われた旧要塞陣地へと司令部と部隊を移して、そこに立て篭もっていた。
「援軍はまだなのか!?我々を見捨てる気なのか!」
「……もう終わりなのか、そうだ終わりなんだ……」
参謀の1人が悲観した言葉を口にするが、誰も咎めない。
幾ら堅牢な要塞陣地であろうと、ヒュージの物量に加えて、道路や比較的緩い登り坂でなければ移動できない帝国軍に比べ、垂直に近い壁をよじ登ることができるヒュージとの機動性の違いにより、弾薬や人員を摩耗しつつ一歩ずつ追い込まれていた。
兵士らが小銃で反撃を行うも、一体、二体ならまだしも、十体以上の敵には無力だった。
「くっそ……」
大隊長は、防衛線を突破し司令部へと迫り来る一体のヒュージを凄んだ表情で睨みつける。
その次の瞬間、重厚な砲声が鳴り響くと共に、目の前のヒュージの胴体に弾痕と複数の穴が穿たれ、それは青い体液を噴出しながら倒れ込む。
「は……?」
砲声が鳴った方向へと振り向くと、そこには水色ブロンドヘアの少女が二丁拳銃のような武器を持ち、別のヒュージに銃撃を加えていた。
他の方向を見ると、紅く目を輝かせた金髪の少女が、大剣のような武器でヒュージの銀灰色の胴体を引き潰す。
視線を変え、紺色髪の少女が二刀流のような武器で跳びながらヒュージを切り裂いていく光景を目に映す。
さらに、3人の少女の後ろから撃ち漏らしたヒュージを的確に処理していく2人の少女にも注目する。
「彼女らが……かの少女たちか」
ふと口に出し、助かったと一安心した瞬間、腰が抜けた感覚に陥り椅子へと座りこむ。
紺色髪の少女が、他の将兵と比べて飾った軍服を着ている自分に気が付いたのか、駆けてくる。
「部隊長さんですか?、ここからは私たちに任せてください、後退して合流してくださいっ」
「いや、しかし──」
言い終わらぬ内に、少女は走り去っていく。
ため息を吐き、無事を祈りつつ後ろを振りかけると、その顔は驚愕に染まった。
「なっ……敵がいない……?」
敵がおらず、ヒュージだった多くの骸は大地にその身を晒す光景が広がっていた。
その光景を見て、彼は決意を固める。
「総員、撤退準備!!」
一方でリリィたち──LG『シグルドリーヴァ』は前進を続けていた。
咲良は隊長でありながら、最も最前線の
GC-34『トリスタン』はキャメロットキャッスル社のGC-20『コルブランド』を、ヨーロピアン・メカニクス日本法人が剛性を付与した上で低価格化を行った廉価版として新規製造したもので、第3世代CHARMを広めるために行ったが、第2世代CHARMがより低価格化したためそこまで使用数は多くなかった。
そんな有様だったが、性能自体は改良元が名機であったのも関係して扱いやすく、咲良は二刀モードのトリスタンを一つの大剣モードへと合体させ、目の前に立ちはだかったミドル級を左右に断ち切った。
「
咲良は唐突に仲間の名を上げる。
彼女のレアスキル〈ファンタズム〉の未来予知によって、自分に攻撃が来ることを感じ取り、右によける。
直後、さっきまでいた所をバスター種の光線が過ぎ去った。
雪と呼ばれた水色ブロンドヘアの少女──
咲良へと狙いを定めていたバスター種の装甲を穿ち、数発射撃した程でその胴体が崩れ落ちる。
「はぁ、咲良ったらもう少し注意深く見てよ……っ!」
愚痴を零すと共に迫りくる気配を感じ取ると、『トリグラフ』を構成する2機を繋げ、長刀のようなパルチザンモード「ペルーン」を起動する。
密かにレアスキル〈レジスタ〉を発動させて獲得した俯瞰視野から敵との距離を測り、頃合いを見て跳躍し、飛行型ヒュージであるペネトレイ種カウダの胴体を刀身で叩き割る。
「由加菜、AZのまま咲良に追随して。露払いだけでいいわ」
周囲を見て、雪は通信を入れる。
『……っ了解!』
「?……大丈夫?」
『な、なんでもありませんっ』
由加菜という少女から聞こえる穏やかじゃない声色に雪は指摘するも、はぐらかされてしまう。
「
『は、はい!雪様!』
不安を覚えた雪は、もう一人の後輩に連絡を入れる。
その頃、金髪サイドテールの少女──
狂気と紙一重のレアスキル〈ルナティックトランサー〉を発動させて、心拍機能や腕力、重力を無視したバーサーク状態となり、群がってくるスモール・ミドル級ヒュージを一網打尽にしていた。
だが、彼女は怒りの感情に任せて発動させており、精神的に不安定な状態に陥っていた。
「由加菜、落ち着いて!」
そこに北欧神話の主神オーディンの持つ槍の名を冠するAC-13B5『グングニル』を構えて近づく敵を的確に処理しながら、由加菜へと声をかける濃灰色ポニーテールでメガネをかけた少女──
「ごめん……でも、私はっ──」
由加菜は幼い頃にヒュージによって祖父母や両親、そして兄含めた家族全員をヒュージによって惨殺されていた。
ギリギリのところで生かされた彼女にそれはトラウマとして植えつけられ、そして今はヒュージによって殺されたグラ・バルカス人を見て、そのトラウマを掘り返されていた。
その事を仲間として知っていた亜咲は、由加菜が額に添えていた左手を強引に握る。
自然と亜咲の手を握り返した由加菜からは不思議なぐらい焦りとトラウマから来る症状は無くなり、落ち着き始めた。
「これで落ち着いた?……動揺するのは分かるけど、今は勝利の為に戦おうよ」
普段は恥ずかしがり屋の亜咲も、仲間の為に真剣な表情で言葉を交わす。
由加菜は涙を拭きながら頷き、CHARMを手に再び進む。
「やっとついたね。レイザーレイ種か、みんな用意はいい?」
ビーチの端へと辿り着いた『シグルドリーヴァ』は落着地点からほとんど移動していないレイザーレイ種ヴィーダーゲボイデ型を目視で確認した。
彼女たちに性格の差異はあっても、精鋭のレギオンらしく、土埃以外に傷は全く見られなかった。
「特型でも、グレーターラージ級でも無いわ。いつも通りの私たちなら楽勝だわ」
『シグルドリーヴァ』の副将で司令塔である雪が咲良に特殊な個体や変異体を例に挙げて助言する。
「うん。でも油断しないようにね。
「わかりましたっ!」
紫がかった黒髪ミディアムショートの少女──
個人所有のユニーク機として製造されたため、量産化はされておらず、本来なら彼女の手元にすら与えられなかった。
しかし、偶然姉と似通った戦闘スタイルだった為、再び日の目を見ることになり、彼女は実戦で初めて使う事となった。
「諸元よし……射角よし……風速調整よしっ……行ける」
緊張して手元を震わせながらもトリガーに手をかけて発射されたマギの弾丸はヴィーダーゲボイデ型を叩き起こすように甲高い衝撃音とともに表面へと直撃。
胴体表面にあった複数の突起が衝撃で損壊するとともに、その直撃音が合図となった。
「はぁぁぁぁあ!!」
咲良はヴィーダーゲボイデ型へと一直線に切りかかろうとして雑魚共が邪魔をするが、トリスタンの二丁拳銃モードへの変形が間に合わないと判断した彼女は、大剣モードのまま数体まとめて一気に両断する。
レギオンの中衛である
「咲良様、援護しますっ」
TZから上がってきた亜咲は、ヴィーダーゲボイデ型から放たれる光線を避けつつグングニルから射撃を繰り返し、その胴体に傷を与えていく。
さらに、レアスキル〈ヘリオスフィア〉を発動して、ヴィーダーゲボイデ型の攻撃力を削ぎ、自身と仲間の防御結界を強化させて生存性を上げた。
「ありがと。それじゃあやるよ」
再び璃愛から砲撃が放たれ、ヴィーダーゲボイデ型の一方向へと向いていた突起が全て破壊される。
例え一方向の突起が損壊したとしても砲撃を行うことができ、全周にある突起がシグルドリーヴァのリリィに向けてレーザーを撃ち放つ。
だが、咲良の〈ファンタズム〉によって予測されたことにより、それは避けられ、あるいは防がれて、彼女たちを捉える事は叶わなかった。
それだけに留まらず、咲良は胴体にトリスタンを突き立て、突起部のある外殻を引き剝がす。
悲鳴に似た金属の金切り音が鳴り、動きを鈍らせるヴィーダーゲボイデ型だったが、シグルドリーヴァは勝利の為に容赦などしなかった。
「これで……終わり!」
目にも止まらぬ速さで二刀モードに分離したトリスタンを用いて、一刀を脚の胴体と繋ぐ接合部へと振り下ろして動きを止め、もう一刀の刀身を装甲の剥がれた部位へと突き刺し、内部から引き裂いた。
まだ残っていた関節が動かなくなり、完全に沈黙。
咲良達が急いでその場から跳んで離れた数秒後には大爆発を起こして破片だけが周囲へと広がった。
その後、別行動していた4人とも合流してヒュージを掃討。
グラ・バルカス帝国本土からヒュージは一掃された。