日本国召喚×アサルトリリィ-World Allied Forces-   作:空社長

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第六話【共闘】

_中央暦1642年4月23日未明_

神聖ミリシアル帝国 マグドラ群島近海

 

 カルトアルパスの西方、マグドラ群島。

 その近海をくすんだ空の下を16隻の艦船が進む。

 それは神聖ミリシアル帝国海軍最精鋭の『第零式魔導艦隊』であった。

 本来ならば第零式魔導艦隊はカルトアルパスを母港としつつ、最新鋭の兵器を配備して運用試験を行う任務を担っていたが、先進11か国会議中はマグドラ群島にて訓練を行っていた。

 だが、彼らはその予定を早期に切り上げ、マグドラ群島を離れカルトアルパスへと東に進路を向けていた。

 

「空が暗いな」

 

 第零式魔導艦隊司令官のバッティスタ・ノーゼストが呟く。

 日本国気象庁によって、ヒュージ出現時には当該地域の雲量が急増し日照量を低下させる、と分析が行われていたが、彼がその事を知る由も無かった。

 

「しかし、まさか陛下より”万が一は頼む”と告げられた事が本当となってしまうとは……」

 

 バッティスタは苦々しい表情を浮かべる。

 それに気づいた艦隊旗艦「コールブランド」の艦長であるクロムウェル・ロウフィールが話しかける。

 

「ところで、司令は『ヒュージ』についてどの程度ご存知で?」

 

 クロムウェルの口から『ヒュージ』という言葉が出てくる。

 神聖ミリシアル帝国が日本と国交を締結した時、帝国の使節団は当然ヒュージ戦争についての事実を知る。

 しかし、神聖ミリシアル帝国内では非現実的として信じる者は少なく、もたらされた資料は帝国外務省の奥深くに眠っていた。

 だがその空気を変えたのは、1か月前にもたらされたヒュージ襲来の警告だった。

 これに駐日大使スタルバやフィアーム外交官等が過剰反応を見せたことで、帝国上層部は重い腰を上げてヒュージに関する情報を一部の者に公開。

 その中にはバッティスタも含まれていた。

 

「あいにく人並み程度にしか理解できていない。だが……帝国最大の脅威になりうるのは間違いないだろう」

「脅威……それがカルトアルパスに」

「うむ……」

 

 さらに会話を続けようとするが、その会話は直後の報告で断ち切られる。

 

「魔力探知レーダーに反応あり!!機械動力艦と思われます!9時の方向、距離約60km!戦艦2、重巡洋装甲艦3、巡洋艦2、小型艦5、計12隻!速度29ノットで接近中!」

 

 ミスリル級魔導戦艦「コールブランド」の艦橋に、レーダー手の報告が響き渡る。

 

「何……?そうなれば、グラ・バルカス帝国か」

 

 バッティスタはそう結論付ける。

 現状この世界でこれほどの速度を出せる機械動力艦は日本とグラ・バルカス帝国以外に存在しなかった。

 その上、日本は友好的な外交態度を鮮明にしており、連絡していないのに送るはずがないと、バッティスタは早々に候補から外した。

 残るのは、グラ・バルカス帝国だけであり、友人の外交官から聞いた話ではあるが帝国を蔑む外交態度はバッティスタに不信感を募らせた為、グラ・バルカス帝国だと断定した。

 

「いかがしますか?」

「奇襲攻撃の可能性もあるが……それを行うのであればカルトアルパスに例の大型戦艦が留まっている理由が読み取れん」

 

 バッティスタは考えに耽る。

 

「通信を開け。できるか?」

「構いませんが……いいのですか?」

 

 バッティスタの言葉にクロムウェルは驚くと共に心配そうな表情を浮かべる。

 

「案ずるな。目的が分かればいい」

 

「こちら神聖ミリシアル帝国海軍第零式魔導艦隊、司令官のバッティスタ・ノーゼストだ。貴艦隊の国籍と、司令官の名前をお聞きしたい」

 

 機械動力船用に波長が変更された通信波は確実にグラ・バルカス帝国東征艦隊旗艦オリオン級戦艦「ベテルギウス」に届いていた。

 少し間をおいてノイズがした後、返答があった。

 

『グラ・バルカス帝国海軍東征艦隊、アルカイド・アードレンだ。本艦隊の目的はカルトアルパスにいる「グレード・アトラスター」の救出だ』

「ならば、我々も同じだ。カルトアルパスの救援に赴いている。ここは共闘でもどうだろうか?」

 

東征艦隊旗艦「ベテルギウス」

 

「共闘だと……?」

 

 アルカイドは苦い顔を浮かべる。

 元々先進11ヵ国会議参加国に対して宣戦布告を行う予定だったグラ・バルカス帝国は神聖ミリシアル帝国の威光を失墜させるべく、同時にマグドラ群島にいる帝国最強と名高い第零式魔導艦隊に対して東征艦隊による強襲を計画していた。

 交戦目標である艦隊と肩を並べて戦う事など予想だにしていなかった。

 

「敵の敵は味方、か……まあ、いい。今は目前の脅威を片付けることが優先だ」

 

 アルカイドは自ら気持ちを切り替え、バッティスタの呼びかけに承諾する。

 

『感謝する』

 

 そう言い残すバッティスタの言葉に、アルカイドは”敵にあるはずだった者から感謝すると言われるなんて聞いたことが無い”と苦笑いを浮かべた。

 この後、グラ・バルカス帝国海軍東征艦隊と、神聖ミリシアル帝国海軍第零式魔導艦隊は合流を果たし、30ノットの速力で東へと向かった。

 

_中央暦1642年4月23日早朝_

カルトアルパス湾

 

 日付が変わっても戦闘が終わることは無く、その激しさは増していた。

 複数のラージ級、ウィッパー種アーレア型──12面体の頭部と3角形状の脚部を持つ個体は海面から少し浮かせた状態で浮遊していた。

 12面体の頭頂部からモノアイ状の光が生まれると、目覚めたかのように動き出す。

 

『こちら日本艦隊、貴艦は近接信管を有しているか?』

 

 突然の日本艦隊からの問いかけにラクスタルは思わず動揺する。

 

「ああ、持っているが」

『敵大型個体の周辺にいる敵の掃討を行ってほしい』

 

 その要請を受けたラクスタルらの脳内に疑念が芽生える。

 なぜ、大型個体への砲撃要請ではないのか、と。

 

「なぜ、あれへの砲撃ではないのだ?」

『申し訳ないが……詳細は後で話す。民間人の避難の為、引き付けてほしい』

 

 ラクスタルは日本艦隊の回答に疑念を膨らませる。

 だが、非戦闘員を逃がすのが現状の最優先課題であると理解している以上、答えは決まっていた。

 

「主砲発射用意!!目標、上空敵集団!!」

 

 ブザーが鳴り響いた直後、世界最大の主砲が火を吹いた。

 強力な轟音が響き渡り、その衝撃波は周囲に伝わる。

 発射された9発の砲弾は、アーレア型の上空で近接信管が作動して炸裂し、ばら撒かれた破片がカウダ型やラマ型を貫き、約20体に及ぶスモール、ミドル級ヒュージを撃墜する。

 

 だが、アーレア型は従える下僕共を撃破した「グレード・アトラスター」に目も暮れず、数多くのヒュージを撃墜し続ける日本艦隊にも関心を向けず、ムー艦隊にその牙を向けた。

 モノアイ状の光点近くにマギのエネルギーを集めると、マギのレーザーを一直線に放った。

 

「か、回避ぃ!?」

 

 射線状にいた「ラ・マシヤ」の艦長が叫ぶ。

 だが、音速近い速さで迫るレーザーに回避手段を取れるはずも無く、容易に装甲自体を融解させて貫通し甲板設備や副砲群を薙ぎ払う。

 一部の乗員が倒れ、救護班が艦内を駆け回る光景を目にしたリリィがCHARMを横に構えて2射目を防ぐと共に、甲板を蹴って大きくジャンプしてアーレア型へと斬りかかる。

 

「ゼノンパラドキサ!」

 

 速く動ける上に敵の攻撃を簡単に見切る、戦闘特化のスキルを発動させた緑髪ツインテールの彼女──小出(こいで)由佳(ゆか)は迎撃の為に放たれるレーザーを回避すると、ティルフィングの刀身を装甲に叩きつける。

 胴体上部分がその一撃で削り取られると、今度は横薙ぎしてその胴体を上下に断ち切る。

 一体のアーレア型が単眼から光を失い、水中へとその身を沈める。

 それに顧みず、由佳は別の敵に斬りかかる。

 

「彼女達……言い方は悪いですが、化け物なのでは……」

 

 レクトが言いにくそうに、「化け物」という言葉を口に出す。

 その言葉に、ラクスタルは肯定も否定もできなかった。

 彼女達──リリィが人間のように見えることも、恐るべき身体能力と力をもって敵を撃破することも事実であった。

 

「先行し過ぎだ、幾らリリィに権限が与えられるとしても仲間とは離れるな。『ブルーフロート』と『ヘオロットセインツ』は湾内のラージ級討伐を行え。『鎖日隊』は引き続き民間人の避難を急がせてくれ」

 

 由佳の独断専行に 責しつつ、第3護衛隊司令の三浦は新たな指示を出す。

 だが、その直後急報が届く。

 

「ヒュージサーチャーに反応多数!!ラージ級、アーレア型及びクラッシャー種クロコ型です!え……空中に浮いています!」

「馬鹿なっ!……あれは地上か水中でしか活動しないはずだぞ!空に浮くなんて聞いたことない!」

 

 甲殻類を模した装甲を纏い、極太の尾びれを持ち、前方に鋭利なブレードを伸ばす個体は、本来確認される水中ではなく、海面に触れない空中に浮いていた。

 そんなクロコ型の状態に、参謀は動揺を隠せない。

 彼らは反応する暇も無く、クロコ型は白く光る一つ目をチカチカと明滅させると、「まや」へとレーザーを伸ばす。

 ラージ級のレーザーに対しては、護衛艦に標準装備されているビームコート装甲は意味を為さず、船体側面にあった機関銃を薙ぎ払い、金属板を醜く歪ませる。

 

「日本艦が……」

 

 際限なく増加するヒュージ。

 被害が蓄積・増大していく連合艦隊。

 クロコ型、アーレア型は「グレード・アトラスター」にも牙をむき、片舷高角砲を薙ぎ払い、さらには船体前部にあった第一副砲塔を破壊していく。

 『ブルーフロート』、『ヘオロットセインツ』の合計7人の少女達はラージ級に対処していくが、カウダ型、ラマ型の更なる出現で、戦場は混迷を極めていく。

 実戦を経験したことのない世代であるため、撃破効率は遥かに悪く、時間が経つにつれて被害は増えていく。

 

 その時、湾外のフォーク海峡より青白い尾を引いた放物線を描いた飛翔体が迫り、爆発と共にカウダ型、ラマ型の一部が吹き飛ばされていく。

 それに続き、目に見えない放物線を描いた砲弾も着弾し、ラマ型を吹き飛ばす。

 

『こちら、第零式魔導艦隊。状況は聞いている、グラ・バルカス帝国海軍東征艦隊と共に参戦する』

 

 神聖ミリシアル帝国とグラ・バルカス帝国の合計1個艦隊並みの戦力を有する騎兵隊が到着した。




■次回

第七話【戦火】
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