日本国召喚×アサルトリリィ-World Allied Forces- 作:空社長
_中央暦1642年4月23日_
あまぎ型ミサイル護衛艦「あまぎ」艦橋
「避難状況を報告せよ」
『第1地区と第2地区はまだまだです、30%ぐらいかな』
『第3から第5地区も同じぐらいです』
『第6地区、第7地区はもう少しかかると思う』
『第8、第9地区。私のところも70%程度です』
『こちら第10地区から第13地区、私たちのところは避難完了です!』
「そうか……」
三浦はLG『鎖日隊』の所属リリィと通信を行っていた。
その報告に彼は考えに耽る中、隊長の一色愛菜が三浦に話しかける。
『隊を2つに分けませんか?』
「何?」
その提案に三浦は眉をひそめる。
『現在陸地に出現しているのはスモール級とミドル級のみ。この程度なら最低3人でも掃討できます。ラージ級が懸念事項ではありますが……』
「我々が海に引き付けていれば問題は無い、という事か」
『はい、それよりもラージ級が複数出現する海上が心配です。ヘオロットセインツとブルーフロートだけでは戦いきれません』
三浦は思わずため息を吐く。
愛菜の言葉に説得力があったのもそれが理由であり、犠牲を増やさない為にも三浦は仕方ないと割り切りつつ、決断する。
「……分かった。メンバーはすでに選んでいるのか?」
『はい。私はここに残りますが、双葉、美樹、奏、美由希の4人をそちらに向かわせます』
「了解した。到着時には戦闘に加わるよう伝えてくれ。こちらも周知しておく」
『わかりました。よろしくお願いします』
そこで通信が切られ、三浦は二度目のため息を吐く。
戦況の行く末がどうなるのか、彼はそれが気が気でなかった。
「行くよ!初音、唯!志穂は後方から援護をお願い!」
LG『ヘオロットセインツ』3番隊隊長の川田彩月は指示を出すと共に、自らCHARMで斬りかかる。
正面にいるのはクロコ型で甲殻類のような装甲は一見硬そうに見えるが、それは外見だけでCHARMであれば深々と突き刺さる。
一旦抜き、青い体液を噴出しながら挙動が硬直してる隙を見逃すことは無く、上から突き刺した。
一つ目から光が消え、その胴体がゆっくりと海に沈む光景を眺めることもせず、CHARMを抜いてその場を離れ別のクロコ型からの攻撃を避ける。
「倒れて!」
攻撃に失敗したクロコ型に襲い掛かるのは、初音のCHARMから発射される弾丸の雨。
そして、黒髪サイドテールに赤のメッシュを入れている少女──
マギの弾丸がクロコ型表面を傷つけて穴だらけにしていき、その注意を引き付ける中、藍色ポニーテールの少女──
「天の秤目……シュート」
志穂が敵味方の距離をセンチ単位で把握出来るレアスキルを発動させた後、マギのレーザーがクロコ型のマギ結界を貫き、容赦なく胴体を貫通する。
数射のレーザーが放たれ、クロコ型は光を失い沈黙する。
一方で連合艦隊は日本の要請通り、スモール級・ミドル級ヒュージの迎撃に徹底していた。
アーレア型、クロコ型が複数体出現すると共に、大量のラマ型も出現しており、その数は300を割らなかった。
20㎜多銃身機関砲が弾を吐き出し、高角砲が火を吹き、アクタイオン25㎜連装魔光砲が曳光弾の雨を叩きつけて、カウダ型の群れを撃墜していく。
ラマ型に対しても、日本艦隊の脅威的な連射速度と射撃精度で放たれる127㎜単装速射砲と205㎜連装速射砲が暴力的な鉄の雨を叩きつける。
「砲弾への魔力充填、並びに撃発回路への充填完了!主砲、全門斉射ぁ!!」
「目標、上空の敵集団!対空砲弾、一斉射!!」
さらに神聖ミリシアル帝国艦隊のミスリル級魔導戦艦4隻の霊式38.1cm3連装魔導砲とシルバー級魔導巡洋艦の霊式20.3センチ連装魔導砲から青白い軌跡を描く魔導砲弾が発射され、グラ・バルカス帝国艦隊が「グレード・アトラスター」の46㎝3連装砲とオリオン級戦艦2隻の35.6㎝連装砲から近接信管付き対空砲弾を一斉射する。
流石のラマ型も100㎜を超える艦砲の直撃には耐えられず一撃でラマ型を粉砕していき、戦艦クラスの砲弾では衝撃波とその破片で周囲十数体が巻き添えに粉々となって薙ぎ倒されていく。
だが、300以上の数を一度の迎撃で全て撃墜することはできず、当然のように反撃が襲う。
カウダ型、ラマ型の集団からは数多の光弾が降りかかり、アーレア型からはレーザーが放たれる。
「『プロキオン』機関部に損傷!『ゴメイサ』被弾……あ、爆沈しました!」
「『ゲイシャルグ』第三砲塔大破!『ロンゴミアンド』船首に甚大なダメージ!」
「あ、空母が……」
この時点で連合艦隊には甚大な被害が出ていた。
第3護衛隊各艦も被弾はしていたが、ビームコート装甲によって被害は最小限で済み、ラージ級のレーザーを受けた跡が黒く残るが、諸機能に問題は無かった。
だがグラ・バルカス帝国海軍、神聖ミリシアル帝国海軍共に黒煙を吐く艦艇が目立ち、戦艦「プロキオン」が機関部に甚大なダメージを受けたために、その速度が低下し、巡洋艦群は戦闘・航行能力に重大な損害が出ており、装甲が最小限しかない駆逐艦は撃沈される被害が目立っていた。
ムー艦隊に至っては艦隊唯一の空母、ラ・ヴァニア級航空母艦「ラ・コスタ」が艦載機を飛び立たせる事が無いまま被弾し、航空燃料に引火したことで甲板上が轟々と赤く燃えていた。
さらに二体のクロコ型の下部装甲が開くと、そこから筒状の物体を投げ始めた。
それを日本やグラ・バルカス帝国の人間が見れば、それはある物に似ていると気づいただろうが、残念ながら上空の敵に集中しておりその挙動に気づくことは無かった。
水中に落とされたそれは、大量の気泡を巻き起こしながら推進を開始する。
酸素魚雷程の隠蔽はできない為、白く細い筋を出しながらグラ・バルカス帝国艦隊へと向かう。
「ぎ、魚雷だと!!一体どこから!!……はっ、あいつか!!」
東征艦隊司令であるアルカイドは狼狽えながらも、水中からの刺客を送り込んだクロコ型を見つけ、睨みつける。
その時、青髪三つ編みおさげの少女──リータ・ブロムシュテットが「ラ・マツサ」の甲板上からCHARMを構えて海面にマギの弾丸を撃ち出すと共に、ソナーの反応からヒュージの放つ魚雷群にようやく気づいた第3護衛隊は対潜ミサイルを放って迎撃し、水中を走る魚雷が弾丸とミサイルの雨に葬られていくが、数本だけがその迎撃を潜り抜ける。
その魚雷はタウルス級重巡洋艦2隻が横っ腹に受け、轟音と共に大きな水柱が上がる。
刺客であるクロコ型はリータの銃撃を受けて回避行動を行うが、一体が上背面にCHARMを突き刺されて沈黙し、もう一体のクロコ型は多方面のリリィからマギのレーザーを受けて胴体を裂かれて青い体液を撒き散らしながら水中に没する。
「大型ケイブ反応出現!更に増加します!」
アーレア型、クロコ型の後背にどす黒い渦が複数出現する。
一見すると土偶のような形のヒュージ──ウィッパー種メリサ型が姿を現した。
メリサ型は出現直後、淡い光を放射して前方にいるアーレア型を淡い光の粒子で覆う。
そんな光景を不気味に思いつつ、リリィ達は攻撃を続ける。
だが、淡い光が晴れた後、アーレア型は変貌を遂げていた。
外見に変化は無かったが、LG『ヘオロットセインツ』が斬り掛かるも、防御力が格段に異なり、刃を進めることが出来なかった。
「レジスタ!!」
初音が声に出して、俯瞰視野の獲得と味方CHARMスペック向上をもたらすレアスキル『レジスタ』を発動させ、さらに彩月は口に出さず、力の方向性を感じ取るレアスキル『この世の理』を発動させ、自分に敵意が向いてることを感じ取る。
「私……!」
攻撃力が強化されたCHARMはあっさりとアーレア型の装甲を貫き、左右に断ち切られて青い体液をまき散らしながら水中へと沈む。
だが、その直後に強烈な反撃が襲い掛かった。
彩月は『この世の理』で突然向けられる殺意を感じ取るが、それへの反応は遅れた。
メリサ型から発射された無数のレーザー、その多くは回避していくものの、1発が左肩を貫く。
艦船の装甲を貫くレベルのレーザーは、リリィが有するマギ結界である程度威力は中和される。
だが、人体には過剰すぎる威力だった。
「え……ぐぅぁ!?」
左肩から夥しい量の血が噴き出し、少し遅れて言葉に表せない痛みが彩月を襲う。
常人と異なり、咄嗟に右手で傷口を押さえれるのは、リリィだからこそと言えるが、その程度では止めるには至らない。
レーザーが飛び交う戦場のど真ん中。
その空中で彩月は姿勢を崩し、海へと落ちかける。
「彩月先輩!!」
その声と共に彩月は右手を掴まれる。
声の主である初音は、自らの先輩が負傷して足がふらついたわずか数秒の間に反応し、彼女のCHARMを仲間に投げ渡すと共に、その身体を抱えて降りれる艦を探す。
即座に判断し、近くにいた「コールブランド」の甲板へと降り立つ。
「フェイズトランセンデンス!!」
代わりに唯が上空に跳び、数秒間マギを無限大にし、大きく消費する連続行動を可能とするレアスキル『フェイズトランセンデンス』を発動。
怒りに身を任せた行動だったが、アーレア型とメリサ型一体ずつに大穴を穿ち、さらにはメリサ型を力の余り引き倒す。
さらに強化はクロコ型にも及んでおり、ちょうど飛び立った由佳にクロコ型から1発の光弾が発射される。
回避不可能と判断した彼女はCHARMを盾として構え、光弾を防ぐが、その行動が裏目に出た。
CHARMに防がれた光弾は突然スパークを放つと広範囲にレーザーを乱射し、ちょうど盾を下げていた由佳の額を切る。
深く切られた傷口からは血が垂れだして顔の半分を覆った。
だが、痛みに襲われているはずの彼女の顔からは未だ戦意が感じられた。
グラ・バルカス帝国海軍「グレード・アトラスター」艦橋
ここからでも見えた少女が血を流す光景に、ラクスタルは無力さのあまり、手に力を込める。
「化け物などでは無いな……これ以上は限界だ」
ラクスタルは魔信機を手に取ると、力強く握りつつプレストークスイッチを押す。
「日本艦隊、彼女らにいつまで戦わせるつもりだ?」
「ラクスタル艦長…?」
レクトはラクスタルの怒気孕む発言に戸惑う。
周りの反応をよそにラクスタルは言葉を続ける。
「血を流すまで戦わせて、彼女に傷を甘んじさせるなど、私は良心を疑うが……一体どういうことだ?」
その言葉は三浦に深く突き刺さっていた。
我々が戦えるのであれば戦っていたと、言葉には出さないまま強く無力感を噛み締めた。
『……勝手な事、言わないで…』
「!?」
「コールブランド」にて処置を受けていた彩月はインカムから聞こえてきた言葉に、彼女は声は小さくとも力強く反論を返した。
『私たちは、自分でこの道を選んだの……戦う道を。そうでなければ、ここには来ていない。私に守れる力があるなら、例え別世界の人間だとしても、私は守りたい。多くの人が死ぬよりは、傷ついても守りたいから。強制なんかされてない。だから……!私たちに守らせて……!』
沈黙が、砲声と破壊音が戦場を支配する。
時間の流れはさらなる状況悪化をもたらそうとしていた。
■次回
第八話【戦恐】