日本国召喚×アサルトリリィ-World Allied Forces-   作:空社長

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激闘には辿り着けませんでした


第八話【戦恐】

_中央暦1642年4月23日_

カルトアルパス港より南方10km 臨時連合艦隊

戦艦「グレード・アトラスター」艦橋

 

「申し訳無い……」

 

 ラクスタルは少女達──リリィの意向を無視して日本軍を叱責したことを恥じた。

 

『いえ……我が国が彼女達に手を貸すことの出来ない理由、後程お伝えします……嫌でも痛感するとは思いますが。しかし、彼女たちには少し背負わせすぎました。敵大型種への攻撃を要請致します』

「無論だ」

 

 三浦の言葉にラクスタルはいち早く返事を返す。

 

『それと、ヘオロットセインツは負傷者を連れて一時的に後退しろ。《鎖日》が援護に来る』

『……了解!』

 

 初音が自分たちの不甲斐なさに悔しさを露わにしながらも、その命令に従った。

 

「主砲、発射用意!目標、敵大型個体!」

 

 ラクスタルの命令が射撃指揮所に伝達されると、46㎝砲3門を搭載する巨大な砲塔が3基も旋回し、ラージ級に横っ腹を見せつけつつも46㎝砲9門を向ける。

 「ベテルギウス」、「プロキオン」もその動きに追随し、35.6㎝砲8門を向ける。

 主砲発射時の甲板要員退避を促すブザー音が鳴り響くと、轟音と共に一斉射を撃ち放つ。

 並みの戦艦相手であれば、過剰な砲撃はメリサ型、アーレア型複数体に着弾し、大きな爆炎が上がる。

 

 しかし、ラージ級の特性上、マギ結界によって通常の攻撃を受け付けず一切無傷であった。

 だが、それでも9発の46㎝砲弾直撃の衝撃は物凄く、直撃を受けた個体はよろめく。

 当然、ラージ級群は「グレード・アトラスター」に敵意を向けた。

 

「敵大型個体複数、目……をこちらに向けています!」

「見張り員は直ちに退避せよ。高角砲、対空砲の要員もだ。副砲と主砲のみで応戦する。帝国最強戦艦の力を見せつけるのだ」

 

 艦橋基部前後に搭載されている15㎝3連装副砲が相次いで発砲し着弾する。

 主砲も装填が終わると、再び斉射を繰り出した。

 

魔導戦艦「コールブランド」艦内

 

 初音に抱えられて「コールブランド」に降り立った彩月は乗員によって医務室に運び込まれていた。

 簡易的な治癒魔法である『ヒール』によって応急処置が行われたものの、思った以上の重傷ですぐに別室に運ばれた。

 

「『エクスヒール』!」

 

 魔導師によって別の治癒魔法が使われると、悲惨だった傷口から流れる血が止まり、傷自体も狭めていく。

 だが、その瞬間魔法は止まった。

 

「……申し訳ありません。この火傷では……」

「……大丈夫です、私だって……油断してました」

 

 もう一人運び込まれており、LG『ブルーフロート』に属する由佳は『ヒール』によって額の傷口は塞がれ、水魔法によって顔に付いた血が洗い流された。

 二人が治療を受けている中、『ヘオロットセインツ』の3人は無言で俯いたままだった。

 特に彩月からリーダーを任された初音は悔しさを露わにして、命令を受けたものの行動ができていなかった。

 

 その頃艦橋では艦隊司令のバッティスタが艦長のクロムウェルと話合っていた。

 「グレード・アトラスター」のけたたましい轟音に眉をひそめながらも、真剣な眼差しで敵を睨みつけていた。

 

「我々ももうすぐ砲撃開始か……ならば彼女達を移動させる他ない」

「彼女達……ですか、軍人を何年もやっていますが、あの光景に慣れることはないでしょうな」

「……私もだ。聞きたいこともある、私自ら行こう」

 

 手に握っていた指揮棒を机上に置くと、バッティスタは艦橋を出ようとする。

 

「では、その間はお任せを」

 

 落ち込んだ空気の医務室のドアが開かれ、男性が入室する。

 

「失礼する」 

「あなたは……?」

「第零式魔導艦隊司令のバッティスタだ。質問よろしいか?」

「は、はい!」

 

 初音は思わず慌てて敬礼する。

 まさか、艦隊司令本人が尋ねてくるとは思いもしなかった。

 

「『鎖日』とは一体なんだ?」

「……軍が直接使えるレギオン……部隊です。私たちとは練度も段違いな精鋭部隊です」

 

(ヘオロットセインツと言ったか……弱くはなかったが、もしかして初陣なのか?)

 

 バッティスタは先の戦闘の光景、目の前の彼女の様子を見てそう疑問に思う。

 

「……これは質問としてよろしくないと思うが、初陣なのか?」

「はい……私たちは学生であってリリィなんです。リリィは3年の間しか戦えない、日本が転移したときに私はリリィでは無かったんです。だから……正直怖さはあります」

 

 バッティスタは同僚の娘ぐらいの年齢の少女に、思わず心を痛める。

 だが、同時に負傷した少女が語った言葉を思い出す。

 

「だが、戦うのだろう?」

「……もちろんです」

 

 彼女は臆病だったが、守りたいという決意は揺らいでなかった。

 

護衛艦「あまぎ」戦闘指揮所

 

 「あまぎ」のCICでは、乗員が淡々と任務を遂行していた。

 一見冷酷の様に見えるが、それぞれの乗員はリリィが傷つくことに申し訳なさや無力さ等を露わにしていた。

 それを隠して、作戦がより良い方向へと向かう為に、全力で任務を行っていた。

 

「超大型ケイブ反応観測!!マギ粒子濃度上昇!!……これはっ、ギガント級です!!」

 

 ヒュージサーチャーの観測画面を注視していたレーダー手を声を上げる。

 その凶報に誰もが思わず手を止め、モニターを見た。

 

「ちっ……総員気を引き締めろ!」

 

 三浦はそう言うと、リリィのインカムに繋げる無線のプレストークスイッチを押す。

 

「全リリィに告げる。……ギガント級が出現した」

『……嘘……』

 

 三浦の言葉に、初音は目を見開いて思わず呟いた。

 

 ギガント級。

 営巣するアルトラ級を除けば、ヒュージ最凶にして最大の戦闘個体である。

 その戦闘力、大きさはラージ級と比べるまでも無く、かつて地球世界においてギガント級の攻撃を受けた小国が首都を破壊されて政府機能が停止して滅亡したと語り継がれていた。

 転移後にヒュージが出現しなくなった後も、リリィ達は戦闘訓練を欠かさず行っていた。

 しかし、ギガント級相手の戦闘訓練は少なく、平時であったためにその回数は年々減っていた。

 その為、ギガント級と戦闘することは、日本政府はもちろんの事、リリィ達でさえ想定していなかった。

 だから、リリィ達が最初に感じた感情は恐怖だった。

 

「コールブランド」艦内

 

 バッティスタが目の前の少女──初音の様子がおかしくなったことにいち早く気づいた。

 よく見れば、彼女の仲間たちも体を震わせているのが見えた。

 

「何があった?……寒いのか?」

「違う……!……多分、連絡が来ていると思うけど……敵がまた来た……もちろん戦う、だけど……死にたくない……!」

 

 初音は恐怖と彩月先輩が傷を負ったこと、さらにはリーダーとなった責任に押しつぶされそうになっていた。

 

「ならば、我々も共に戦う。良く知らないが、おそらく攻撃は効かないのだろう?だが、攻撃を引き付けることはできる。勝利など求めん、ただ非力な者達を逃がすためだ」

 

 バッティスタは少女達が語る敵に恐ろしさを感じたが、それを押し殺して語りかける。

 

「……そう言われたら、戦うしかないじゃないですか。もちろん、戦い抜きますっ」

 

 そこまで言い、初音は歩いていた彩月の肩を持ち、再びバッティスタに振り返る。

 

「ありがとうございました」

 

 そう言葉を送ると、『ヘオロットセインツ』のリリィ達は「コールブランド」を後にした。

 

 その後、バッティスタが艦橋に戻ると、クロムウェルの出迎えを受ける。

 クロムウェルがバッティスタの近くに寄ると、耳の傍で話しかける。

 

「西部方面上級司令部より、艦隊引き揚げが伝達されました」

「何?命令元はクリング提督か?」

「いえ……ブレソー議員です」

 

 その名前にバッティスタは思わず舌打ちする。

 現場に良く介入する迷惑者として知られており、ずっと議員の座に居座ってるのが不思議でならない人物であった。

 

「通信に問題は?」

「はっ、今は異常ありません」

 

 バッティスタは受話器を取り、体を壁にもたれかける。

 

「こちら、第零式魔導艦隊司令のバッティスタだ。命令は確かか?」

『帝国議会議員のブレソー・ミドルトンだ。バッティスタ君、これ以上の艦隊の被害は許容できない。艦隊を引き上げよ』

 

 ブレソー議員が直接魔法通信に出てきたことに、バッティスタは眉をひそめる。

 

「できかねます、未だカルトアルパスには多くの人々が残っております。国民の為にも、我々は盾となります」

『貴重な艦隊をそんな役目で使い潰す気か!そんなの地方隊でもできる!』

「その場にいた我々が正しいと思った行動です」

『間違っている!カルトアルパス住民のことなどどうでもいい!すぐに引き揚げろ!』

 

 現実を直視せず、市民を大事だと思いもしないブレソー議員の言葉に、バッティスタの堪忍袋の緒は限界を迎える。

 

『第零式魔導艦隊が壊滅することになれば、我が国の威信は丸潰れだ!!』

 

 そして、その緒は千切れた。

 バッティスタは思いっきり息を吸い込むと、口を開く。

 

「そんなことで潰れる威信やメンツなんぞの方がどうでもいい!くそっ喰らえだ!!」

 

 魔法通信を一方的に切り、受話器を叩きつける。

 

「閣下……」

「陛下に申し上げる……帝国の民を見殺しにしようとしたのでは、無視もできないはずだ」

 

 心配そうな表情のクロムウェルと、怒りの余り一方的に切ったことを今更後悔しているバッティスタの間で会話が行われる。

 そんな二人に急報が届く。

 

「カルトアルパスに異常が!!」

 

 戦闘の被害が目立つカルトアルパス港湾部をどす黒く渦巻く巨大な渦が覆い、そこから這い出てきたのは四つの脚を持つ巨大な個体だった。

 崖のように聳え立つ屈強な四本の脚はマギの力場を海面に形成し、それに支えられるような形でお椀を上下合わせたような本体があった。

 本体にはその体格に合わせる形で半球形の砲塔が幾つも浮かび、それなりの直径がある砲身を伸ばしていた。

 

 それが一歩進むと、足元にあった港湾管理局の施設は重さに耐えきれずに無残にも木端微塵に粉砕される。

 ただの人が抗えず、破壊されるのをただ眺めているしかない存在。

 戦場にて同族を統べる、全長60メートル、全高30メートルの灰色の個体──ギガント級が姿を表した。




■次回

第九話【葛藤】
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