日本国召喚×アサルトリリィ-World Allied Forces-   作:空社長

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果たして描写は大丈夫だろうか?


第九話【葛藤】

_中央暦1642年4月23日_

カルトアルパス湾

 

 ギガント級は標的を品定めすると、行動を開始した。

 その体が光で瞬いた直後、3基9門の3連装砲が光の奔流を放つ。

 島の如き重厚な体から放たれた青白い輝きは真っ直ぐ臨時連合艦隊の方へと向かっていく。

 

 誰かが「回避ぃ!」と叫ぶも遅きに失し、魚雷攻撃を喰らい大破していたタウルス級重巡洋艦2隻を海中へと引きずり込み、リバー級小型艦2隻を葬り去り、ラ・デルタ級装甲巡洋艦2隻の船体を引き裂いた。

 

東征艦隊旗艦「ベテルギウス」艦橋

 

「あれは恐らく口径40㎝級の3連装砲です!タウルス級も、ムーの装甲巡洋艦がやられるのも仕方ないことかと」

「じゃああれはなんだ!あんな砲撃、見たこと無いぞ!」

 

 アルカイドは参謀の意見に激しく狼狽する。

 常識外の攻撃である故に、その反応は仕方なかった。

 

「再び来ます!!」

「なんだと……早すぎる!」

 

 見張り員の報告に、艦橋要員は驚愕の表情を浮かべる。

 ギガント級の各砲塔はそれぞれ個別の方向へと向くと、オリオン級の35.6㎝砲よりも早い速度で充填し、僅かな間を置きその矛先を撃ち放つ。

 放たれたエネルギーの束は寸分狂わず、再び連合艦隊に襲い掛かる。

 狙われた内の1隻である「ラ・ジフ」の装甲を容赦なく食い破り、あらゆるものをその業火に晒したのち、あまりの熱量に耐えられなくなった弾薬がわずか数秒で連鎖的な誘爆を起こし、気づいた時には轟音と共に海の藻屑と化していた。

 シルバー級魔導巡洋艦「ゲイボー」は上部構造物や主砲塔等の甲板上の全てを迸る光線に洗い流されて荒れる海上をのたうち回り、グラ・バルカス帝国海軍の駆逐艦2隻がエネルギー放射の余波を受けて沈没する。

 

「ラクスタル艦長……もう良いだろう。これ以上の被害を受けてまで将兵の命を犠牲にする意味は無い……」

 

 アルカイドは無線機を片手に悲痛な声で、向こうで自分の声を聞く者に訴える。

 ラクスタルはその言葉を聞き、両目をつぶり考えに浸る。

 

(確かに、合理的だ……だが、本当に良いのだろうか)

 

 いくら考えてもその答えを導き出すことはできなかった。

 

第零式魔導艦隊旗艦「コールブランド」艦橋

 

「何?『クラレント』が撤退を進言だと?……確か、堅実な艦長であったな……」

 

 バッティスタの命令に従っていた第零式魔導艦隊であったが、ここに来てミスリル級魔導戦艦「クラレント」の艦長が撤退の進言をしたことにより、動揺が広がっていた。

 それを示すように、バッティスタも心配する余り眉をひそめた。

 

「はい。それに続いて『ロンゴミアンド』と『ガラティーン』もです……栄光ある神聖ミリシアル帝国軍人であるのに……!」

 

 艦長のクロムウェルははっきりと怒りを表した。

 

「まあ、まて。このような不可解な状況に、そう判断するのも分からなくはない。ましてや戦況は不利なのだ」

「はっ、失礼しました」

(まあ……それをどう打開するのかは……わからないが)

 

 クロムウェルの謝罪を横目に、視界に映る日本艦隊に決して届かない思いをぶつける。

 

ムー機動艦隊旗艦「ラ・カサミ」

 

「どう打開するおつもりなんですか!我々は!日本は!」

 

 艦橋に参謀の怒号が響き渡る。

 既にムー艦隊は10隻中3隻を沈めれ、虎の子と言われた空母も火災は鎮火したものの、空母としての機能を失っている状況だった。

 当然、通常であれば撤退するべき状況に不満が溜まっているのは当然だった。

 守るべき民間人も、それが仮想敵国であるミリシアル人であれば、プライド高いムー人は怒りを募らせた。

 

「我々だけ撤退してどうなる?国際信用を失いかねないのだ。打開策とは言うが、最初から民間人の完全撤退が最低条件と言ったはずだ」

 

 司令官のレイダー・ミラン中将はそうやって参謀を問い詰める。

 しかし、負けじと参謀も反論する。

 

「それだけの為に艦艇が沈むのは納得いきません!では、日本はどう動くんですか!唯一ヒュージとの戦いを経験した国でしょう!」

「……」

 

 その空気の中、「ラ・カサミ」艦長のミニラルは一切口出せずにいた。いや、怯えているというのが正しかった。

 

(……このままではおかしくなっていきそうだな)

 

 第3護衛隊旗艦「あまぎ」戦闘指揮所

 

「は……?もう一度言ってくれ」

 

 三浦は通信機から聞こえてきた内容に思わず困惑する。

 

『ノインヴェルト戦術をやります、このままじゃ私たちと共に戦うと決めた人たちに申し訳がたちません。それに今も犠牲になってる兵士たちの仇に報いたい。だから、返すんです。ノインヴェルト戦術で、あのギガント級を倒します』

 

 その声の主は負傷した彩月だった。

 

『もう、ブルーフロートと、ヘオロットセインツ全員には合意を貰ってます……だから、お願いします……!』

「だが……」

 

 しかし、三浦の懸念は人数の事ではなかった。

 彼女たちは練度そのものが低く、ノインヴェルト戦術の模擬訓練は行っているものの、それを初実戦にて使用することに対しての懸念だった。

 それを補うことのできる要素さえあれば実行に移すことができると、三浦は思った。

 

 その時、ギガント級後方のラージ級アーレア型が爆ぜる。

 大きな爆発を起こして倒れていく中で、その爆煙の影から4人の少女が飛び出した。

 

「フェイズトランセンデンスも行くよ!」

 

 4人の内の1人、双葉はフェイズトランセンデンスS級を発動させ、無限大なマギが供給されて強力な攻撃力を手にすると、大剣型のCHARM──ティルフィングを振りかぶると、アーレア型の頭上に振り下ろした。

 一振りでアーレア型とメリサ型が斜めに一閃されて断ち切られ、さらに振り返り際にもう一体のメリサ型が斬りつけられる。

 それでもフェイズトランセンデンスの効果は続き、眼下のクロコ型に強力なマギの一撃を叩きこんで沈黙させる。

 

「双葉ちゃんと、奏にレーザーが来るよ」

 

 唐突に脳内に美由希の言葉がテレパスとなって響く、と同時にレーザーが放たれる未来幻視された光景が脳内に映る。

 レアスキル『ファンタズム』の自己の仮定から得た近い未来を信頼し合った周囲の人間にテレパスや共感で伝える効果であり、フェイズトランセンデンスでマギ枯渇状態となった双葉を美樹が抱えて飛び、奏は身を屈める。

 次の瞬間、ギガント級からレーザーが放たれるが、それは誰も捉えることができなかった。

 

「カリスマ」

 

 不意に美樹の呟きが響く。

 その感情を感じさせない冷たい言葉とは裏腹に『鎖日隊』のリリィに暖かいマギが流れ込み、身体能力が向上する。

 

「テスタメント」

 

 さらにそれに覆いかぶさるように奏の声が聞こえ、湾内にいる全てのリリィに『カリスマ』の効果が浸透していく。

 

『来ましたよ』

「……わかった。もう何も言うことはない、ただし生き残れ。それだけだ」

 

 三浦は彩月に言いくるめられたような感触にため息を吐くが、すぐさま鎖日隊に連絡を入れる。

 

「いいだろうか?」

『ええ、大丈夫です。私たちがフォローします、負傷者は出るかもしれませんが……』

「医療設備をフル稼働させる。それでいいか?」

『……わかりました。絶対に生きて戻らせます』

 

 美樹との通信を終えると、三浦は魔信機を手に取り、プレストークスイッチを押す。

 

「こちら日本艦隊司令の三浦だ。これはあくまでお願いとして受け取っていただきたい」

 

「既にご存知だと思いますが、我々が抱える少女達──リリィはヒュージと戦える力を持っています」

 

「ですが……今この場にいるのは実戦を経験していない世代です。彼女たちは今、死地に挑もうとしています」

 

「カルトアルパスの民間人を全て守り切る為、どうか力を貸していただきたい」

 

「……連携必殺攻撃であるノインヴェルト戦術……それを叩きこむまでの間、敵の攻撃を引き付けて頂きたい

 

「退いたとしても、我々は責めはしません。むしろ、艦隊を犠牲にした愚か者として責められることを『もう、いい』」

 

 突然、三浦の発言に口を挟む者がいた。

 その行為に、三浦は驚きを隠せなかった。

 

『第零式魔導艦隊司令のバッティスタだ。結論は決まっている、協力しよう』

『東征艦隊司令のアルカイドだ。我々も手を貸そう』

『こちらムー艦隊司令のレイダーです。足手まといとなることを承知で協力させていただこう』

 

 

「『クラレント』『ガラティーン』共に協力を確約してきました。『列強の誇りを見せつける』と」

 

 『コールブランド』の艦橋。その言葉を聞いたバッティスタは、ただ「感謝する」と通信士に告げると、ギガント級とカルトアルパスの街に双眼鏡で覗く。

 バッティスタの目には、後悔させてやる、という意思が強く植えつけられていた。

 

「我々が退けば、【自分の命を大事にして少女に戦いを任せた愚か者】と汚名を着られるだけだ。我々は軍人だ、倒せなくとも全力で戦える事こそ一生の誇りなのだ」

 

 『ラ・カサミ』の艦橋では、先ほどまで参謀に詰め寄られていた苦悩するレイダーの姿は無く、堂々と将兵たちにそう宣言した。

 その言葉を受けて将兵たちが勢いづく一方で、参謀は無言で艦橋を後にする。

 

 ギガント級という脅威に対して、もう一度国の違う者達は心を一つにして戦うことを決断する。

 最凶の個体は再び暴力を解き放つべく、主砲という刃を研ぎ始める。




■次回

第十話【暴獄】
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