エピソード16
別れはいつも突然に
「さあ、みんな寝る時間だよ」
院の夜の時間子供たちをせかして就寝準備をさせる
普段はもっと起きていたいと愚図る子達もなぜか今日は大人しく寝室に入っていく。
「院長先生」
なんだい?
「また明日ね」
「ああお休み」
⦅気を使わせてしまったな⦆
子供達に自身の内心を悟らせてしまったことに自分の未熟を感じながら
子供達が眠りについていった事を感じながら、
異界内へと足を運んだ。
異界内の現実と同じ夜の空間で
あらかじめ用意していた衣装に着替えると、
悪魔達が集まる平地に急ぐ。
早歩きで進むロリショタニキの目に灯された火の光が目に入る。
「待たせてしまったかい?」
女神達は首を横に振るう。
「こちらこそごめんなさいね子供たちの面倒を一人でさせてしまって」
周囲の花と香で整えられた場に
「こちらこそ手伝いに来れなくてごめんなさい」
「いいのよ、それに私たちも人の子がいない時間が必要だったから」
儀式の場、葬儀の準備をしている時間が心を整理するのに役立ったようだ。
数日前ここを卒院した子が無くなった、
突然の奇襲天使の軍勢に衆寡不敵で戦い討ち死にしたと
その死を見届けた遠視の使い手からの言葉だった。
魂は
遺体は最後の手段の【自爆】にて敵に利用されないよう完全消滅させた模様。
軍人らしい端的な分かりやすい説明、
それでも冷たさを感じなかったのは、
戦友の奮闘に敬意を示していることを瞳が語っていたからか。
分かっていた、あの子が前線に所属することを希望したその日から、
生き残れない事を。
「故郷を取り戻したいんです」
そういって従軍を希望し去っていた子を引き留める言葉を持たなかった。
これはケジメと区切りの儀式
送るべき魂も弔うべき亡骸もないただ今生きる物が明日に進むための儀式。
無言にて儀式は始まった。
泣き女達が涙を流し始めるその涙は儀式の為の形のみか、
いや慈しんでいたのは女達もだ、
楽が流れる、別れの時を示す物悲しい曲
顔色は変えずとも子の成長を見守っていたのは
仏の従者達も一緒なのだ。
数多の祈りの言葉が口から零れていく、
人間の死後を司る神々にどうかいつの日にかあの子の魂を取り戻してと、
二度と天使たちに魂を奪わせないでと、
無理な願いだと分かっていてもこの
役に立つと分かっているから。
冥府神達が最後に儀式の締めを行う、
ここでお別れと、この後は死者の為にではなく生者が生きる為に使わなくてはいけない。
風が飾られた花の花弁を運び、火の中に消えていく。
⦅さようなら⦆
火の中にあの子の姿を思い浮かべ一度だけ目礼し儀式を終える。
⦅さあ、子供たちが起きる前に片付けて何もなかった一日を始めないと⦆
ここは、ここだけは平穏に生きていてほしい
それがただのエゴだとしても。
「ちゃんと笑顔で起こさないと心配されたままになちゃうからね」
その手を握るのは、儀式の泣き女をしていたナキサワメ、
「ナキサワメ様もありがとうございました、
子供達には話せませんから、
・・・あの子の為に泣いてくださる人がいてよかった」
首を水の女神は横に振り
「まだよ、貴方の分が残っている」
今いる子ども達の為に泣けないあなたに代わって
手を引っ張られ顔を女神の胸に押し付けられる
そのまま抱きしめられ、
ぽたりぽたりと涙を女神は零し始める。
心が女神に同調する、自分の悲しみを女神も感じ
女神の愛を自分は感じる。
「いいの、理不尽への怒りも、愛した子を失った悲しみも、
ふがいない神々への失望も押し殺さなくていいの」
顔が隠れていてよかった、それがこの女神の慈悲だ
今の自分は人に見せてはいけない顔をしているだろうから。
「grrrrrrrrruuuuuuuuuuaaaaa]
言葉になってない音が自分の喉から搾り出る
自分の中に溜まってしまった物を吐き出すように。
日が昇るまでだ日が昇ったら何時もの院長先生に戻る。
⦅今だけだ直ぐにに戻る⦆
母なる女神達はその様子を何も言わずに見守るのであった。
どれだけ万全を尽くしても黒札でさえロストの危険はある、
現地民ならいうまでもなく。
それでもロリショタニキは子供たちの自由意思を否定できません
それをしてしまったらメシア教の人間牧場と同じ
人間をただの家畜に落とす行為だとわかってるので。