戦前月の異界にて
「儀式の日取りはこれで確定、神託を降ろしてっと」
ツクヨミは天津神全体の行事スケジュールの管理責任者として働いていた、
暦の神の権能は年間の祭礼が滞りなく行われるよう調整するために使われ、
内政はハッキリ言って天職であった。
「ふむ、販売用の変若水の生産量をもう少し増やしてほしいと、
増やしたものの提供先は・・・国津神の最近揉めてたところなので
一時保留ですね」
黙々と天孫の子孫たちが治める地上が太平であるよう、
主神である姉の文官として勤めあげていた。
「こちらは後継者がいないのでもう少し現役で働きたいと、
葛葉の三次団体ですが、
荒神の守り人の一族なので頑張ってもらいましょう、
嫁さんも見繕わないといけませんね」
一般にあまり目立たない神と言われるも、
日本の霊能組織で軽んじる勢力はいない。
老化によって霊格の減少がある本世界で若返りの水は、
常に後継者問題に頭を悩ませる名家において
女性の安全な妊娠可能年齢が維持できるということ、
英雄を現役に留め続け、
戦力の維持が可能となるかどうかを左右する、
権力者の夢を超えた、
一族の繁栄を左右する魔法の薬である。
葛葉四天王が何年たっても引退せず、
その間も若手が修行で成長していき、見込みのあるものは
全盛期をいつまでも維持される、
そう説明すれば戦前の葛葉がいかに大勢力でいられたか分かるであろう。
ツクヨミは何処の陣営にどの程度若返りの薬を提供するかを管理することで、
国内勢力の軍事バランスの管理を行えていたのだ。
悪魔の呪いで加齢や精気を奪うことでの老化に蝕まれ、
強敵への切り札の退魔法に寿命削りの大技を使う場合がある、
ツクヨミの顔色は一家を立てる程度に勢力を持った
霊能集団なら伺うのは当たり前となる。
「アニキ今良いか」
末弟が声をかけてきた、
戦神で海/国境の神は近年の世界中の情勢の悪化/陣取りゲームによって、
年に一度の大宴会にも碌に参加できず、
他国の神と海上でにらみ合いの日々のはずであった。
「危急の自体か?」
とち狂った神が民衆に毒電波流し込んで挙兵をそそのかしでもしたか?
それとも満〇国を始めピザカットされた大陸系がブチ切れて、
終末リセット試みようとしたか?
「いや、物騒ちゃ物騒だが人の子同士の場外大乱闘程度で済んでる」
第二次世界大戦はもうすぐそこらしい。
「ならどうした、表の争いには神は出ないのが不文律、
最悪敗戦しても外に広げた分を切り捨てれば
百年もしないうちに返り咲けると
予想がついていたではないか」
そうたとえ
星を埋め尽くす大乱ではあっても
国内に限っては生き残れるくらいの
歴史の蓄積と信仰の厚みを持っている。
「ああ、そうだったんだが・・・
最近会った天使の鉄砲玉の蝗野郎覚えてるよな」
「忘れるものか下手したら人口推移に大幅な変更が出るくらいの
大飢饉が発生しかねなかったしな、
今代のライドウはホントによくやってくれたよ」
あからさまな外国勢力からのテロ活動であり、
天使どもを崇める国からのチョッカイなのだが、
まああいつらは堕天使はうちらの敵なので、
協力?そそのかした?
我らは神のしもべぞとか抜かしてしらばっくれるだろうが。
勤務先が地獄なだけの天使が動くのなら、
神か大天使の意思が関わっていない筈がない。
「それでさ、敵国への祟りハザード準備しないか?」
「どういうことだ」
確かに急進的な派閥の神はこの国家規模の工作にガチギレし、
国家間紛争にオカルト攻撃有ならこちらも報復をと息巻いていたが、
天津・国津両方とも上層部は寧ろ諫める側に回っていたはずだ。
「霊能力者が個人的に支援する位ならともかく、
他国との戦に神々が本腰を入れて参戦すればそれこそ天使共に
大義名分を与えることとなる、
壊滅的な被害が出ることとなるぞ」
トップ勢力である一神教が他勢力を一掃できないのは、
その勢力の大きさにより統一性に難がある事、
派閥としては穏健派が幅を利かせている事が上げられる。
ぶちゃけもう勝ち組なので無理に喧嘩を売り歩いて自分達に出血をしいたくない、
資本力で懐柔していけば長期戦になれば染め切っていくことも不可能じゃなく、
急がなければならない理由もない。
こんな環境でわざわざ赤字覚悟で邪教徒は皆殺しだーとやるのは、
穏健派たちの外交戦略において大幅なマイナスになれど、
プラスになることはない、
懐柔と融和で緩やかに一神教を受け入れさせていく中で、
危険視され排斥論が噴出しかねない。
「我らが動かなければ、異教狩りをしようとする者たちは、
カルトとして内部で処理し自浄されよう、
目立つ幾つかの家門や軍部の勢力は処分されようが
そこどまり、再起はたやすかろうだが」
「ああ、俺たちが介入すればそれを大義名分に本気出すだろう
表社会の人間たちを襲う悪魔たちを退治しなければと、
負ければ焼け野原にされるだろうな」
「それが分かっていてなぜ」
「ある時を境に一斉に予言や占術を得意とする神達が一斉に警告を発した」
「我らがなりふり構わず護国の為に力を振り絞らなければ、
帝都に炎が堕ち、天使達の都市が築かれそしてなにもかもが
メギドの光によって消えていくであろうと」
重苦しい空気が流れた
「恐らく四文字が重大な決定をし天使たちに指示を出したのだろうと、
悔しいが相手が格上すぎて行動されてからしか感知できないとのことだ」
「動けばどうにかなると?」
「不明だ、だが動かなければ終わりだというのは全一致していた」
不吉の未来に一筋の光を刺すようにツクヨミは言った。
「分かりました、開戦までもう時間はありません、
全員午睡してる暇はなくなると覚悟してください」
「すまん、アニキ」