「いやね、もうすぐ沈むぞ沈むぞって上のえらい人たちは大騒ぎしてたし、
適当にやった占術でも分かるくらい地球が悪魔で溢れるのは一目瞭然でした」
VTRに映るのはモザイクのかかった人型の妙に甲高い声、
未覚醒者の悪影響を避けるために映像音声に特殊加工しておりますと、
画面の下の方に白いテロップがでる。
「私は悪魔ですが別に喧嘩が得意でも人食いの性質を持ってるわけでもないので、
寧ろ騒動からの大悪魔たちの戦争に巻き込まれたくなくって、
Nの魔界の片隅にひっそりと住んでいたのですが、
・・・まさかあんなことになるなんて」
・・・再現VTRスタート・・・
無数の本棚が設置された建物の中、
辛うじてテーブルとイスが置かれているスペースがダイニングの役割を成してるのか、
本に浸食された机上の片隅に茶菓子が籠に入っている
「いや~ビバ早期リタイア」
一頭身・・いや顔面だけの謎の生き物がこの建物の家主のようだ、
この饅頭生物が冒頭VTRででた悪魔の代役らしい。
「血みどろの戦国乱世での領土争いなんてやってらんないわよ、
しかもほぼ天使どもの一人が勝ち決まってるのに」
椅子に座り?バリボリと菓子を食いながら机の上に積んであった本を一冊抜き取る。
「幸い本霊に献上し続けた貢物のお蔭で田舎勤務、
みかじめ料用の本も100年分以上もある」
速読家なのかぺらぺらと一般人なら流し読みと思えるペースで
片手で器用に捲っていく。
「終末までに安全確保と頑張ってきてよかった、
晴耕雨読で人間界の騒動を対岸の火事として眺めながら、
スローライフの日々を楽しまなきゃ」
ネオニート万歳とハッピー状態の悪魔、ピコンピコンと効果音が発生する。
そこにジリリと警報音が壁から掛けられた黒塗りの鏡から鳴る。
「ああ、とうとうね」
終末感知用の占術を掛けてあった遠見の鏡が、
東京に雪崩れ込んでくる天使と悪魔達の群れを映し出す。
一抹の憐憫と寂しさを見せた後それを振り払うように本に顔を向ける。
「もう地球とは縁も切ったし、最低限逃がした人間にも
生存率が高い行動のアドバイスした、
後は本人たちの運命力次第よ」
自分に言い聞かせるようにか鏡を見ないが、
かといって鏡に掛けた術の解除もせず、
その場からも離れなかった。
・・・終末タイマー最終日・・・
「何でさっさと東京脱出してないのよ(怒)」
そこには趣味の読書も放り出し、
地球で働いていた時に日本まで亡命させた
難民たち(IN東京)の様子をかぶりつきで見る悪魔の姿が。
「裏切り防止(という名目の日本で無事生きていけるか確認用)の
占術マーカーで魔界の自分がはっきり把握できるって、
もうそこ半分魔界になってるってことだからね、
せめてシェルターに入んなさい」
逃げるのに失敗したのかうろうろ東京を逃げ回ってるサマナー(雑魚)に
聞こえるわけの無い文句を放つ。
「他のはすぐに自衛隊に連れられて外に行ったり
シェルターに入っていったのに、
ああもう自販機で休んでんじゃないのよ」
力尽きたように座り込んだ人間はふと何かに気づいたように顔を上げ、
驚愕に顔を染めた。
「うん?」
視点を三人称から一人称に変更し
「ミサイル、いや醜悪な妄執で作られた
さよならと思っていると。
本体じゃね?と思えるほどの高位悪魔を複数率いて立ちふさがる人影が現れ。
「うわーさすが終末、ルシファーが神をガチ殴りに来たわ」
人型から弾けるように悪魔の総大将が神に向かっていく。
そして
危険感知作動、脅威度最大、緊急脱出術式発動シークエンス省略・・グッバイ
「????????」
「何で地球がここに来るの?」
「何で
「何で地球の地脈に私の私財が組み込まれてるの?」
・・・再現VTR終了・・・
「ホント大変でした」
「ガイア連合に接触しようとして野良悪魔扱いで消されかけたり」
「かってに災害で散らばった蔵書をシェルター内に持って帰って、
防犯装置に引っかかって
「みかじめ料滞納しかけて本霊に吸収されかけたり」
その時の苦労を思い出したのか、
勝手に押しかけておいて被害者面はないわーという空気を醸し出している。
司会に何か視聴者に一言と促される
「魔界に落ちてる物をアナライズもできないのに拾うと大けがしますよ、
あと所有権とか主張はしないので書物を拾ったら相応の対価で買い取ります、
こうして伝えたので、わざわざ占術で特定してまで殴り込みに来るな」
果たしてエロ本トラップに引っかかった黒札は何人いたのか。
インタビューされた悪魔
Dオンの現地転生体(NOT黒札)
戦後から地球の書物の回収業を本霊から命じられて活動してた人。
人間性を残して悪魔化してるため百年以上の勤務に疲れてしまった。
半終末前後からは日本等に疎開させる引き換えに、
稀覯本を貰っていた。(流しの転移屋)
本体はもう少しこき使うつもりだったがさっさとノルマ以上の成果をだして、
隠居したがったのでまあたかが100年単位だしと休暇を与えた。
本人の住処として作っていた異界は低位の妖精くらいしか湧かない
魔界の浅瀬にしては過剰な防御機構を備えた異界であったが、
億単位の人間という知的生命体とついでに悪魔を抱えた地球に
メテオされて無事な強度はなかった。
壊れ飛び散っただけなら回収修理の余地もあったが、
魔界に沈んだ地球の表面上の地脈を整えるのに四文字が周囲にある物を
パーツとして組み込み利用したため、
私物の回収=ガイア連合シェルターへの破壊工作になりほぼ不可能になった。
そのせいで地脈の一部がやたらと特定の悪魔の痕跡が色濃く残っていたり、
魅力的な書物(意味浅)にトラップが仕込まれてそれが一体の悪魔の仕業で
現地の一部の人間に危険視されている。(とばっちり)