ウマ娘 名古屋地方競馬場   作:いつか帰るところ

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第5話

ウマ娘レディパイロ

 名古屋地方競馬場5

 

 

レディ「・・・と言う訳で中京競馬場開催のチャンピオンズカップ、朝は第1レースから始めて今はトントンよ」

 

トレ「何がと言うわけか分からんが、まぁ第10レースまで僕はちょいマイナスだな」

 

レディ「そしてあたしとトレーナーは2人仲良く一般入場で席なし。・・・暖かい所で座って観戦したかったなぁ」

 

トレ「僕1人ならキャンセル狙いで暖かい所で座って美味しいもの食べて酒飲んで観戦出来たかも知れないけどね・・・お互い譲らなかった結果2人して寒空の下で立ち見・・・」

 

レディ「愛馬を放っぽいといてトレーナーが1人だけヌクヌクと観戦ってどうなのよ、だいたいあたし1人だけが寒空の下なんて・・・死なば諸共よ、矜持が許さないわ」

 

トレ「なんだそのひねくれた矜持は?!捨てちまえそんなもん」

 

レディ「うーさむさむ、ねえトレーナー、競馬関係者として優待席とか関係者席取れなかったの?」

 

トレ「一応話は回っては来たけど、そんなURAから恵んでもらう様な席なんざいらん!座りたくもねぇ!」

 

レディ「うわぁその無駄な矜持ビリビリに破きたいわぁ・・・その割にはチャンピオンズカップの記念ストラップ嬉しそうに貰ってんじゃん」

 

トレ「これは正規の入場料払った対価だから良いの。・・・そんなことより、どうだよURAの奴等の走りを見て、レベルが違うか?」

 

レディ「・・・・・・」

 

トレ「・・・レベルの差を思い知ったってとこか?」

 

 レディパイロは思う。

 確かにトレーナーの言う通り、URAの奴等のレベルは高いが絶望的なほどの彼我の差ではない、特にダートレースの場合は距離的な長短は有るもののレース展開のミスが結構目立つ、それを自力でカバーして勝ちをもぎ取っている印象がある。

 これってコーナーでリードを稼げればワンチャン有るんじゃね?地方競馬の直線の短さを舐めんなよ?あとヤジるおっさん連中との距離もめちゃくちゃ近いからな?ほぼ横で叫ばれっからな?集中力でカバー出来るレベルじゃ無いと思うけどなぁ。

 けどまだあたしの自力では役者が違う、もう少し勝率が上がってから意見は吐くべきだ、だから黙っておこう。

 それに殊勝に黙っておけばトレーナーが気を使ってなんか奢ってくれるかもしれないし!

 

 

 

レディ「・・・・・・」

 

トレ「・・・おい、顔に出てんぞ、口許がニマニマしてんぞ?」

 

レディ「あれ?」

 

トレ「実力不足は認識、けど埋められない程の差じゃあねぇ、レース展開次第ではなんとか・・・無印か△ってとこか」

 

レディ「・・・ちっ」

 

トレ「舌打ち?!」

 

レディ「何か奢ってよーっ!寒いの!レディパイロちゃん朝から立ちっぱなしで疲れたのっ!何処かで座りたいの!大事な大事なレディパイロちゃんの脚が疲れてるのっ!」

 

トレ「えー・・・そこら辺の空いてる席に座っとけよ、何かホットコーヒーでも買ってくるよ」

 

レディ「場外スマートシートまで係員がチェックゲート作って勝手に座れなくしてんのっ!勝手に座れないのっ!あと暖かい飲み物じゃなくて暖かくて腹に貯まる物がいいのっ!」

 

トレ「うわ、本当だ?!わざわざURA職員が場外席までチェックしてやがる・・・これじゃ勝手に座れねぇ、力の使い所間違ってるよ・・・仕方ない新聞紙敷いて上げるからここに座っときなさい」

 

レディ「えー・・・貧乏くさい」

 

トレ「何言ってんだ、600円もする高級新聞だぞ?紙質も上質紙をふんだんに使用した逸品だぞ?昼前に全財産スッテンテンになったおっさんから譲り受けた由緒ある新聞だぞ?」

 

レディ「・・・じゃあそれでいい」

 

トレ「な、座っちまえば何処でも一緒なんだよ、あとほらアメちゃんあげるからこれ食べてなさい」

 

レディ「あ、イチゴ味の白い包装の甘い奴だ!パクっ・・・カラコロ」

 

トレ「美味しいだろ?ほら、もうすぐメインレースのチャンピオンズカップだぞ、有名なウマ娘が出てくるぞ」

 

レディ「・・・今回は突出した化物級が居ないわね、カラコロ、それだけに実力上位集団がどんなレース展開するかカラコロ、注目よ、それでカラコロ、ダートレースでの追い込みはまず度外視してカラコロ、それに逃げが逃げ切れるほど甘いメンツでもないカラコロでしょうし、ジュルリ、先行、差し連中が固いとはカラコロ思うんだよねカラコロ」

 

トレ「アメちゃん食べる音が気になって話が入ってこない・・・あと真面目な顔なのにヨダレが垂れてる・・・」

 

 

 

 そんな中チャンピオンズカップのファンファーレが高らかに響き場内の観客達の完成と手拍子が始まる。

 トレーナーは、群衆から離れた新聞紙の上で会場の様子を眺めながら盛り上がってんなぁと感心しつつ、隣にいるコイツがあのゲートにいるとしたら、地元開催、G1レース、かなりの上位人気、・・・熱狂だなぁと考えてしまう。

 掛け金もオッズも贔屓のウマ娘も今後の思惑も何も関係なく会場のみんなが大声で叫んで拍手と足踏みの地響きが響き渡り色んな物が宙に飛び交うレース。

 コイツなんだよなぁ・・・

 

 そしてチャンピオンズカップは始まりウマ娘達が掛け終盤を迎える。

 道中脚を貯めて我慢していたウマ娘が最終直線でジワジワと前へ出てゴール板前で先頭に達して勝利していた。

 

 

レディ「流石URAのG1ウマ娘ってとこね凄い差し脚・・・けど教科書通りの展開だったね、ねぇトレーナー」

 

トレ「・・・・・・」

 

レディ「トレーナー?」

 

トレ「っしゃあ!!!ちゃんと買ってるぞ!!!よっしゃあ!!よっしゃあ!!単勝厚目と三連単頭固定でこれも厚目っ!熱目の厚目だっっ!!!よしよしよしよしよーし」

 

レディ「ありぇえ??今回はあたしとトレーナーの今後を示唆するような展開の話では?

・・・ま、こっちの方が面白そうだからいいんだけとさぁ。・・・でっ、でっ、いくら?おいくら万円儲かっちゃった?レディパイロちゃんに言ってみ?」

 

トレ「んー・・・?これはこれはレディパイロちゃん、ふふふ、僕のお財布が締まるかなぁ・・・程度だよ」

 

レディ「トレーナー素敵!」

 

トレーナー「暖かい腹に貯まる物だっけ?いいぞ、いーぞぉ、食べに行くぞっ!好きなもん腹一杯食わしてやる!」

 

レディ「いやーん、トレーナー格好いい!」

 

トレーナー「ぬははははぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後の無事換金を済ませたお財布パンパントレーナーとレディパイロ。ホクホク顔の2人は群衆を避けてパドック脇を通って正面出入り口に向かう。

 

トレ「さー行こう、行こう、腹一杯食べんぞー」

 

レディ「やったね!・・・ん?あぁ最終第12レースのパドックかぁ・・・っ!?!?」

 

トレ「最終かぁ・・・G1直後のみんなが帰る中での平レースねぇ、何か親近感あるよなぁ・・・っ!?!?」

 

レディ「・・・ねぇトレーナー・・・」

 

トレ「あぁ分かる、分かってる」

 

レディ「あ、あの娘・・・」

 

トレ「うん、1人だけ仕上がりが段違いだ」

 

レディ「え?1番人気じゃない?え、なんで?」

 

トレ「マジで?前のレースが関係してんのか?」

 

レディ「・・・脚が凄い・・・けど全体のバランスが半端なく均整取れてる」

 

トレ「・・・凄い黒光りが見えちまう」

 

レディ「・・・単勝・・・7倍・・・」

 

トレ「うん・・・全額突っばで・・・えーと帯が・・・何個だ?」

 

レディ「・・・」

 

トレ「・・・」

 

レディ「・・・」

 

トレ「・・・」

 

 

 

 

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