ウマ娘レディパイロ
名古屋地方競馬9
トレ「朝日杯FS・・・安っすぅ」
レディ「3連単取れたのにねぇ・・・」
トレ「なにこの配当・・・」
レディ「トレーナー、三連単ボックスで夢見ちゃったかぁ・・・見事に取りガミね」
トレ「当たらんよりはましだとは思うけどさぁ、これじゃあ、あまりにも夢が無い・・・そうは思わないかねレディパイロちゃん」
レディ「え?私は普通に単勝一点勝負で3倍近く儲かったわよ?1番人気と2番人気で悩んだけど、固いレースの類いじゃない?」
トレ「どうやらお前とは合わんみたいだなぁ・・・つまらねぇ買い方だな、おい、いつからそんなつまらねぇウマ娘に成り下がったんだ?ええ?アルバイトでもしたらどうだい?確実に金を増やせるからなぁ、けっつまんねー奴」
レディ「へぇ・・・人に金借りといてデカイ口叩くじゃない」
トレ「あ、嘘です。手堅い買い方流石です。3倍上等っすよね!いやぁよく一点に絞れましたね半端ねぇっす!痺れちゃうっす!」
レディ「・・・ほんとトレーナーのそういう性格大好きだわー」
さてさて、あたくしレディパイロちゃんは中京競馬場1800メートル、ダート左回りに出走していた。
そう、いつもの名古屋地方競馬場ではなくURAの中京競馬場のダートコースなのよ。これが。
ある程度勝率を上げてチマチマ賞金を稼いでいたあたしは、【URA様だけど、地方ウマ娘も走ってみる?良い思い出・・・んんっ、良い経験積ませてあげるよ、あ、地方競馬ウマ娘の枠は1枠だけねレース】にちゃっかり入り込みまんまとURAレースに出馬していたのだ。あたしもURAデビュー、ぬふふふ。
うちのトレーナーが色々していたようだけど詳しくは知らない。が、結果あたしは今URAレースに出走している。
URAのレースはいつもの名古屋地方競馬のレースと比べてどうかって?
まあ、多少はウマ娘のレベルが高いようだけどやることはいつもと変わらないわ。最後にあたしがゴール板を先頭で駆け抜けてフィニッシュてなもんよ。
・・・・・・。
・・・。
嘘です。嘘ついてました。ごめんなさい、ウマ娘の仕上がり具合が段違いです。すみません。こんな場所に紛れ込んでしまって許してください。名古屋地方競馬から出てきてごめんなさい。あ、お腹が痛くなってきた。
冠レースでもない単なる平場のレースなのに出揃ったウマ娘のレベルが名古屋とは全然違う。
そりゃあ私も中京競馬のパドックでURAウマ娘を見てあーだこーだトレーナーと言ってたわよ?
けどそれはあくまで観客としての話で実際に競技者としてそのウマ娘の横に並び立ったら萎縮しか無いわよ、無言で俯いているしかなかったわよ。
そう言えば地方ウマ娘からの出場と言うことであたしとトレーナーの所にもインタビュアーのお姉さんが来てたわ。
インタビュアー「こんにちは!レディパイロさん、名古屋地方競馬からの参戦です。意気込みをぜひ、どうぞ」
レディ「・・・すみませんすみませんすみませんすみません、こんなところにいていいあたしじゃないんです、すみません」
インタビュアー「え?・・・あ、あれ少し緊張してるのかなっ、大丈夫ですよ、いつもの様に力一杯走ってくれれば大丈夫ですから」
レディ「すみませんすみませんすみませんすみません、大丈夫じゃないです、すみません生まれてきてごめんなさい、身の程を弁えずごめんなさい」
インタビュアー「あはは、少し緊張してますねぇ・・・ト、トレーナーさん、どうですかレディパイロさんの仕上がり具合は?」
トレーナー「はいっ!他のウマ娘様の御迷惑にならぬ様にうちのレディパイロ、いえこの雌豚駄馬には皆様のコースの邪魔にならないコース取りをさせる所存でありますっ!決して他のウマ娘様方のっ!邪魔はさせませんっ!ごめんなさいっ!中京競馬万歳っ!」
レディ「雌豚駄馬ですみませんっ!中京競馬万歳っっ!!」
トレ&レディ「「中京競馬万歳っっっ!!!」」
インタビュアー「異常っ!いえっ以上ですっ!」
いやぁなかなかあたしもトレーナーも舞い上がっていたわねぇ・・・
そしてレース実況・・・
『各ウマ娘、順調にゲート入りしています・・・今、最後のウマ娘が入りました』
『ゲートが開きスタート・・・各ウマ娘綺麗に出揃いました、1枠1番がハナを主張。1番名古屋競馬ウマ娘レディパイロ、外から3人のウマ娘が被せて来ようとします。』
『コースは芝を抜けてダートコースに入ります。
これは・・・レディパイロが先頭でその後3頭が1馬身ほど空けて追走、これが先頭集団を形成、その後少し離れて5人のウマ娘が固まっています。』
『今、コーナを曲がり終えてウマ娘達は向こう正面へ、先頭は変わらずレディパイロ、少しコーナーで差を広げたか、続く先頭集団のウマ娘は・・・・・・』
実況アナウンサーはウマ娘群の位置取りを説明しつつ、ウマ娘達の名を先頭から順に読み上げていくが視界の隅に捕らえていた地方ウマ娘がスピードアップしていく様子を見て、あぁ地方競馬ウマ娘が舞い上がっちゃったかぁと考えていた。
慣れない大舞台に失策する地方競馬のウマ娘の姿はよく見る光景だ。可哀想だが仕方ない。
『さて、レースは向こう正面を抜けて先頭が3コーナーへと入っていく、先頭は相変わらずレディパイロ、かなりの差を稼いでいるがゴールまではどうだ?』
『おっと!ここで・・・レディパイロが前傾姿勢を深めた?ここで更にスピードアップかっ!?最後までスタミナは持つのか?他のウマ娘達も併せて追い始めたぞっ!ここで差を稼がせる訳にはいかない!』
最終直線コース終盤でレディパイロがバテバテになりながら次々に他のウマ娘達に追い抜かされていく未来を確信してアナウンサーはウマ娘の資料を手元に寄せる。
今の位置取りの状況からどの娘が来るのかある程度の予想はつく。平レースとは言えゴールするウマ娘の名を間違える訳にはいかない。
そんな時、レース中は殆ど声を発することなく、アナウンサーの実況に任せっきりの解説の引退ウマ娘がボソリと声を出した。
『あのウマ娘、地方の子・・・ブラフですよ、全然スピードアップしていない。軽く流しているだけ、あぁコーナーが上手いから?・・・他の娘は脚を早く使わされた』
『え、そうなんですか?と、ここで第4コーナーを抜ける!先頭が大きく広がり横一線の直線勝負!ラストスパート勝負になった!先頭レディパイロに他のウマ娘がグングン迫る!』
『・・・多分まだ・・・恐らく他のウマ娘が並んで少し抜いた瞬間、ラストスパートする気ね・・・』
引退ウマ娘は放送中であることを考慮してか、自分のマイクを手で塞いでから『その方が心を折れるから、本当に意地の悪い子』とアナウンサーに囁いた。
『・・・ラスト200!ここで先頭レディパイロを後続4番が捕らえたっ!っ!レディパイロが伸びた!レディパイロが伸びたっ!!本当にレディパイロが伸びたっ!ここでゴールっ!レディパイロ粘ったか?』
『・・・作戦勝ちですね、レディパイロさん、地力もあるようです』
『名古屋地方競馬ウマ娘の勝利に、ここ中京競馬場の地元ファンも声を上げて大歓声!・・・おっと、ここでレディパイロが客席に向かってガッツポーズ?か?観客の声援が沸いています』
『いや・・・あれは・・・』
『?』
『こほん・・・いえ、そうですね地元ウマ娘の勝利は盛り上がりますものね』
解説の引退ウマ娘の目と耳はハッキリと最下位人気のレディパイロが馬券を外した観客に文句を言われて「ざまぁみろばーか」とか煽り返して更に観客をヒートアップさせている様子が見て取れたが、大人なので黙っていた。
因みにトレーナーとレディパイロは後のインタビューで約束通り他のウマ娘のコース取りの邪魔はしていませんと答えていた。
最初から最後まで先頭だったので嘘ではない?と一部競馬ファンはザワついていた。