【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第2巻「拡大期~強堅帝ジギスムント1世」   作:旧王朝史編纂所教授

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第2節 枢密院分院の設置

 強堅帝ジギスムント1世の施策の中で、後世に与えた影響が最も大きいものを1つ選べと言われたならば、筆者は、帝国領内の各地に枢密院の分院を設置した事を挙げたい。

 

 前巻にて詳述したが、先帝ルドルフが設置した枢密院は、領主貴族の意見を政治に反映させるため、かつての連邦議会の制度を範として設置された組織だが、ルドルフは領主らの増長の産物だと、その存在を必ずしも快く思っておらず、同院総会への臨席も稀だった。

 

 だが、後継者ジギスムントはこの方針を逆転。父親の派閥シュタウフェン派に対抗する必要上、反シュタウフェン派の傾向が強い領主貴族らを自身の与党とするため、日程の許す限り、総会には積極的に臨席、議員らとも親しく言葉を交わし、彼らの意見を出来る限り政治に反映させるよう努めた。

 

 それは単なる権力闘争の一環というだけではなく、反帝国勢力の討滅、事実上の内乱鎮圧だった平定戦役が終息に向かい、帝国領の過半を占める貴族領の統治を担う領主貴族の立場が確立した結果、その政治的存在感が増してきたから、という事情もあった。先帝ルドルフの政務秘書官として、帝国領内の各地に出張、現地を統治する領主や総督らと親しく交わり、その生の声を聴いていたジギスムントは、この事情を熟知していた。故に、近い将来に訪れる、自身の治世において、彼ら領主らの支持と協力は必須とも考えたのだろう。

 また、領主側からしても、政府や軍の実権を掌握し、合法的に自分達を罪に問う事さえできる文官・武官貴族に対抗するため、最高権力者である皇帝と誼を通じて、自分達の後ろ盾になってもらえる事は歓迎すべき事態であり、皇帝と領主の利害は、この時は一致していたと言うべきだろう、

 

 しかし、ジギスムントは彼ら領主達を無条件で信任したのではなかった。先帝ルドルフが危惧した通り、枢密院はその悪徳も連邦議会と同様で、領主達の談合の場となり、また政府官僚を務める文官・武官貴族との裏取引が横行する場でもあった。特に、連邦議会議員から転身した領主達は「左手で握手して、右手は背中に隠す。右手が何を握っているのか、決して他人には見せない」とも揶揄されるほど、政治的な寝技に長けていた。皇帝と誼を通じるからと言って、それが即ち、文官・武官貴族と対立する事を意味するほど、彼らは「正直」な存在では決して無かった。

 

 先帝ルドルフのように、人間不信に陥る事無く、貴族らの倫理性、道徳性を信じていた皇帝ジギスムントではあるが、同時に冷徹な統治者、政治家でもあった同帝は、枢密院議員の不品行を監視、掣肘する事の必要性を感じてもいたのだろう。それが帝国暦57年、同帝の腹心ビューロー大将が総司令官となって敢行された旧攻守連合領への再平定戦、それと前後して設立された、枢密院の分院である。

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