【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第2巻「拡大期~強堅帝ジギスムント1世」   作:旧王朝史編纂所教授

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第11節 皇族の日常生活⑥~皇子達への教育【身体鍛錬】

 最後に、身体鍛錬について述べたい。前述した通り、「支配者たる者、己の事は己で行うべし」とのルドルフの意向で、初等段階では、簡単な調理や掃除、洗濯など、身の回りを調えて、最低限の生活を行えるだけの習慣を身につけさせた。また、発達段階に応じて、陸上競技や球技等を行わせ、心身の健全な発育を促すと共に、身体を動かす喜びと充実感を教えていった。この他、オーディン内の御料地などで、登山や海水浴、川下り等の自然体験や、集団生活を経験させるためのキャンプなども季節ごとに行われた。

 

 思春期を迎え、身体能力が成人に近づいてくると、皇太子ほか皇族男性には侍従武官がつけられ、軍人としての訓練が開始された。格闘術や白兵戦技、射撃術等が指導されたほか、基本的な用兵術や軍事学も教授された。これは、名目上ではあるが、帝国皇帝は帝国全軍の最高司令官であるため、軍人教育は必須とされた事による。ただし、プロの軍人として通用する人材に育成する事が目的ではなく、あくまで皇族男性として、最低限の軍事知識の習得と、強健な身体作りが目的であったため、帝国軍で実際に行われていた兵士訓練や士官教育と比較すれば、遥かに緩やかな内容ではあったが。

 

 なお余談ながら、歴代諸帝の中には、ある意味、この軍人教育を極めてしまった人物もいる。止血帝の革命戦に参加し、大きな武勲を挙げた健軍帝フリードリヒ1世、強軍帝フリードリヒ2世(前名ハインリヒ、即位と同時にフリードリヒに改名)の兄弟は、当時の帝国軍を代表する名将と言っても過言では無い人物だった。

 

 また、旧帝国史上、初の皇帝弑逆の犠牲者となった老廃帝ユリウス1世は、青年期、白兵戦技の上達に没頭し、その格闘戦能力は、当時の帝国全軍に冠絶していたと伝えられる。

 彼の強さを示すエピソードは多彩で、兄たる喪心帝オトフリート1世の狩猟に随行した時、獲物を追う猟犬として連れてこられた有角犬の紐が切れ、皇帝がいる集団に向かっていった際、ただ独り前に立ちはだかり、拳の一撃で有角犬の顔面を破壊してみせた。

 また、ユリウスの長子フランツ・オットーが少年時、その英才である事を警戒した当時の権臣エックハルトが新無憂宮内でフランツを密かに誘拐、殺害しようと試みた際は、逸早くその危険を察知。ユリウスは我が子を小脇に抱えると、エックハルトが集めた完全武装の近衛兵一個中隊に向かって突撃、唯一自由になる右手で近衛兵たちを撲殺し、その包囲網を突破、新無憂宮から数十キロ先の自邸まで単身、全力疾走で駆け抜けたとも伝えられる。超人的とも言えるその強さと、2メートル近い雄偉な体格から、ゲルマン神話に登場する「霜の巨人(ヨトゥン)の化身」とも称された。

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