【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第2巻「拡大期~強堅帝ジギスムント1世」 作:旧王朝史編纂所教授
以下、公開された新史料に基づき、皇帝ジギスムントが定めた、主要な式典を列挙したい。なお、これ以外にも各種式典や行事は定められたが、比較的重要度が低く、後世に廃止されたものも少なくないので、本論で取り上げたのは、旧王朝滅亡まで、一貫して帝国の重要な公式行事として挙行されてきた式典だけである事を御了解頂きたく思う。
1月 1日 新年祝賀式典
2月16日 ルドルフ大帝追悼式典
8月 1日 統一(戦勝)記念式典
12月 1日 建国記念式典
12月31日 物故者慰霊式典
※上記の式典に加えて、今上帝の即位日には、即位記念式典が挙行された
まず、建国者ルドルフの即位(銀河帝国の建国)を祝賀、そして崩御を追悼する式典が挙行されているが、両式典では、連邦末期の混乱を鎮め、人類社会に平和と安寧を回復した偉人ルドルフ大帝が全人民の圧倒的な支持を得て皇帝に即位した事、そして、人類の偉大な統治者だった同帝の崩御は、全臣民をして悲嘆に暮れさせ、同帝を追慕した臣民は、その血統を受け継ぐゴールデンバウム家の当主を後継者に推戴した事が強調された。
つまり、建国者ルドルフ大帝は、人民の支持と協賛により、銀河帝国を建国し、自身は帝国皇帝に即位した。現皇帝は、同帝を家祖とするゴールデンバウム家の当主として、家祖の偉業を範とし、その大業を家業として継承するが故に、全臣民に推戴されて帝国皇帝の地位にあるのだと、自身の立場を正当化する論理が表明されているのだ。これは、ジギスムントの戴冠式で公布された即位詔書の内容と軌を一にしており、以降、旧王朝と皇帝の存在を正当化する思想的根拠となっている。両式典は、その思想を可視化して、全臣民に明示する儀式だったと言えるだろう。
そして、統一(戦勝)記念式典。これは帝国暦52年、帝国がシリウス・攻守連合・経済共同体などの敵対国家を討滅し、領内の共和主義勢力を一掃した事を記念して挙行された、戦勝記念式典を再現するものであり、銀河帝国が全人類社会を実効支配する唯一の覇権国家である事を宣言する式典だった。その性格上、軍事的色彩が強く、皇帝臨御の下、帝国全軍の閲兵式が行われるのが常だった。
これは、建国者ルドルフ大帝の血統を受け継ぐ後継者であると同時に、人類社会を支配できる軍事力を持つ存在、それが帝国皇帝なのだと表明するもので、思想的正当性だけでは、現実の統治は行えない事を認識していたリアリスト、皇帝ジギスムントの意向を強く感じさせる。
なお余談ながら、後世、皇帝権が凋落した時代は、国政を壟断する権臣らが自家の私兵を参加させて、自身が保有する軍事力の強大さを誇示する場ともなっている。