【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第2巻「拡大期~強堅帝ジギスムント1世」   作:旧王朝史編纂所教授

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第4節 新帝リヒャルトの課題②~長子オトフリートの存在

 そして、もう1つの不安要素は、新帝リヒャルトの長子オトフリートの存在。先帝ジギスムント崩御時、事実上の皇太孫だったオトフリートは、既に齢23歳の青年だったが、才能豊かな反面、傲慢で傍若無人な父親とは正反対、他人の目を見て話す事さえできない、臆病で引っ込み思案な性格だった。知性は決して劣弱ではなかったが、自分から何かを行おうという積極性が皆無で、万事、母親サビーネ(新帝リヒャルトの正妻。即位後は皇后に立てられる)の指示を受けて、初めて行動に移すという人物だった。

 

 実際、ジギスムントが長子相続の祖法化を提議した際、才能豊かだが人望に欠けるリヒャルトは皇帝に相応しくないのではないか、と主張する者以上に、もしリヒャルト殿下が即位すれば、その次はあの陰気で無気力、母親の指示が無ければ何も出来ないオトフリート殿下が皇帝になるのか…それを深刻に危惧する廷臣たちの方が多かったと云う。

 

 詳細はリヒャルト1世、及びオトフリート1世の巻で述べたいが、廷臣たちの危惧は、残念ながら杞憂ではなかった。虚無的な雰囲気を漂わせ、自身の事も、帝国の将来も、どこか他人事、自棄的に捉えていたかのようだった父帝リヒャルトとは対照的に、母后サビーネは自身と実家の権勢と将来に執着。その道具としてオトフリートを完全に支配下に置くと、自身の同志として、後世、「女帝」「女怪」とも言われ、文武官から恐れられた猛女ヴィルヘルミナをオトフリートの皇后に据えた。

 

 ヴィルヘルミナは勝ち気で男勝り、気が強い性格と言うだけではなく、もし貴族男性として生まれていれば、必ず歴史に名を残したであろうと言われたほど、高い政治力と断固たる決断力を有し、自身の判断で帝政を動かせる器量を有していた。

 

 しかし、男尊女卑的風潮が強い帝国社会では、その資質は正しく発揮されず、皇后という立場上、文武官に正式な命令を発する事は出来ず、勢い側近政治を行うしかなく、自身に忠実な下級貴族達を私的に登用。彼らを駒として、無気力で政治を行う意欲など皆無な夫オトフリートを排し、帝政に容喙していった。

 

 その結果、旧帝国史上、初の権臣、奸臣と言われるエックハルトがヴィルヘルミナの腹心として台頭、帝政を壟断した挙句、銀河帝国を汚職と悪徳の泥沼に沈めている。

 

 上記の如く、新帝リヒャルトの治世は、父帝ジギスムントの努力により、強固に確立された銀河帝国の支配体制を継承できたとの幸運に恵まれ、外見上は平穏無事な船出ではあったが、その実、将来の不安要素も決して少なくは無かった。だが、本巻の主題はあくまで、第2代皇帝ジギスムント1世であるため、これ以上の言及は控えたい。

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