【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第2巻「拡大期~強堅帝ジギスムント1世」   作:旧王朝史編纂所教授

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第3節 母カタリナのクーデター構想

 まず、ルドルフの崩御を待ち、その死に伴う混乱と動揺を静め、新帝ジギスムントの立場を盤石とするためにも、自分たち家族の和解と親睦が必要との口実を設けて、ジギスムントとアデルハイド、そしてノイエ・シュタウフェン公を皇宮に招待。その席上、密かに呼び寄せておいたノルデン男爵家の私兵が彼らを拘束する。

 

 その後、カタリナがジギスムントを説得し、新帝の名で勅令を発して、アデルハイドの処刑とノイエ・シュタウフェン公の追放を命じる。

 

 ノイラート侯爵家を含むシュタウフェン派には、今後は新帝ジギスムントが彼らを直接支配すると宣言。新帝の母カタリナは准后(皇后・皇太后に次ぐ者との意味。これ以降、皇后では無い女性が生んだ皇子が即位した場合、新帝の母への敬称として用いられるようになった)となり、帝室と帝国に無私の忠誠を捧げる真の忠臣達とともに、未だ若年の新帝を補佐する…

 

 現在的視点からすると、誇大妄想としか思えない粗雑な構想だと言わざるを得ない。疎遠な状態だった母の説得を何故、ジギスムントが素直に受け入れると確信できるのかなど、不備は無数に指摘できる。もし亡母エリザベートが存命ならば、決して許可する事は無かっただろうが、カタリナは母親から陰謀家の資質は受け継がなかったようだ。ルドルフの長女たる自分が命じれば、息子も群臣もその威光に逆らう事は無い、との誤った確信に囚われて、新帝即位後、自らが主導する新政権のメンバーを選出するべく、ノルデンを使者とし、政府や軍内部の反シュタウフェン派の勧誘に乗り出した。

 

 勧誘された者達の反応は2種類に分かれた。相応の政治的見識を有する者は、とても参加できる内容ではないと見切り、言を左右にして拒絶した。一方、目先の成功に目が眩んだ者、シュタウフェン派への憎悪が深い者達は、むしろ積極的に参加を表明した。中には、カタリナの腹心たるノルデンが無能である事を看破し、クーデター成功の暁には、自分がカタリナに取り入り、ノルデンを排除、新帝と准后を傀儡として、帝国の実権を握ろうとの野心を逞しくする者もいた。

 

 また、ノイエ・シュタウフェン公への個人的な怨恨から参加を決めた者も存在した。当時、帝都防衛司令官の地位にあったアイレンブルグ少将は、故リスナー上級大将の麾下で勇名を謳われたリーフェンシュタール少将の弟。兄たる同少将は、同公爵の策謀で軍中央から逐われたのみならず、その事への憤懣を漏らした事が上官誣告罪に当たると、予備役編入の上、男爵位も剥奪された。気性が激しい性格だった彼は、その事を不名誉として自殺している。その時、アイレンブルグは、当主が戦死して後継者が不在だった同男爵家へ養子に行っていたが、優秀な軍人だった兄を深く尊敬しており、兄の死の原因はノイエ・シュタウフェン公にあるとして、心中密かに極彩色の憎悪を燃やしていた。

 

 彼アイレンブルグのように、政府や軍内で中堅クラスの人物も参加しており、その陰謀は意外な程の広がりを見せていた。だが、関与する人物が増えるほどに、発覚の可能性が高まるのは理の当然だった。また、己の正しさを信じて疑わないカタリナ、軽佻浮薄で慎重さに欠けるノルデン、この両者に機密保持という考えは乏しく、遅くとも帝国暦41年末から同42年初頭には、彼らの陰謀はジギスムント及びノイエ・シュタウフェン公の知る所となっていたと思われる。

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