【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第2巻「拡大期~強堅帝ジギスムント1世」   作:旧王朝史編纂所教授

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第4節 息子ジギスムント、夫ヨアヒムの判断

 彼らは母そして妻の陰謀を知り、動揺しながらも、同時に納得もしている。その気性の激しさを知る2人からすれば、カタリナが自分達に対抗するため、何らかの行動を起こす事は、予測の範囲内だったのだろう。また、夫ノイエ・シュタウフェン公は帝国暦41年、側室との間に庶子カスパーを儲けており、嫉妬深い妻が何もしないはずはない、との思いもあった。だが、これほど粗雑な計画を半ば公然と行った事、にも関わらず、この計画に賛同する文武官が予想以上に多かった事は、自派で政府と軍をほぼ掌握していると考えていた2人にとって、むしろ、こちらの方が衝撃だったかもしれない。

 

 同派幹部の中には、例えば軍内の秩序維持を重んじる統帥本部次長ローエングラム中将などは、関係者の即時逮捕を主張したが、当時、皇帝ルドルフは余命幾許も無く、崩御は時間の問題と見られていたので、ジギスムントは、尊敬する祖父が死に臨んで、愛娘が大逆の罪を犯す所など見せたくない、どうか心安らかに旅立たせないと言い、彼ら陰謀家の処断はルドルフ崩御直後、自身の即位直前に行うべきと主張。ノイエ・シュタウフェン公もそれに賛同したので、皇帝ルドルフが崩御するまで、家祖クリストフが軍務省調査局長を長く務め、自家の従臣や家士に工作員や諜報員を多数抱えるグリューネワルト伯爵家の現当主アドルフに命じ、カタリナ一派の動向を監視、随時報告させるにとどめた。

 だが、この事は、ルドルフの死を安らかなものにしたい、という孫ジギスムントと、義理の息子ノイエ・シュタウフェン公の思いやりなどではなく、カタリナの陰謀を逆用して、新帝の統治に際し、その障害となり得る者達を一網打尽にしようという、彼ら2人の冷徹さの表れ、との見方もある。筆者としては、家族としての真情は確かにあったが、この父子はそれさえも政略に組み込める、強かな人物だったのだと見ている。

 

 かくして、帝国暦41年は、間近に迫った皇帝ルドルフの死を目前に、貴族達は来たるべき新帝即位の準備を密かに進め、平民達は連日発表される皇帝の体調に一喜一憂して、帝国社会は表面上の平穏を見せつつ、静かに暮れていった。

 

 だが水面下では、カタリナ一派が陰謀を画策し、各地の共和主義勢力も武力蜂起の機会を窺うなど、動乱の火種は燻り続けていた。ルドルフ崩御と同時に、火種が燎原の大火となるか、それとも火種のまま鎮火するか、その分水嶺となる帝国暦42年は、今まさに幕を開けようとしていた。

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