【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第2巻「拡大期~強堅帝ジギスムント1世」 作:旧王朝史編纂所教授
【即位詔書】
全人類の支配者にして全宇宙の統治者、銀河帝国の建国者、神聖にして不可侵なるルドルフ大帝陛下の血統を受け継ぐ、余ジギスムント・フォン・ゴールデンバウムは、全人類社会の統治という、この崇高なる責務を家業として継承するゴールデンバウム家の新当主として、茲に、銀河帝国皇帝に即位した事を宣言する。
顧みるに、大帝陛下は明哲英明にして、威武並びに表れ、常に臣民の生存と安寧を念願し、跋扈する逆賊を討滅して、世の混乱を鎮められた。また、君臣の身分を定め、社会に秩序を齎し、臣民に生業を与え、その生命を全うさせた。故に、大帝陛下は万民に賛仰され、その輿望を担い、全人類の推戴の結果、銀河帝国皇帝に登極せり。有史以来、未だ嘗て有らざる偉業である。
大帝陛下の偉業を継承する余は、その神聖なる教えである大帝遺訓を遵守し、祖法と人倫に従い、統治者の責務を怠らず、以て光輝ある大帝陛下の御稜威を失墜させぬ事、茲に誓約するものである。
卿ら貴族は、大帝陛下に忠節を尽くしたと同様、新帝たる余を輔翼し、その支配者階級としての責務を全うせよ。君臣相和し、帝国の秩序を乱す逆賊を討滅し、遍く臣民を善導して、その生存と安寧を守護せん。卿ら、余の意思を体し、余が大業を奨順せよ。銀河帝国皇帝ジギスムントが茲に命ずるものなり。
【施政方針演説】
今、全宇宙の現況を慮るに、人類社会を正当に統治する唯一の政体たる、我が銀河帝国の統治を受け入れず、徒に反帝国活動を続ける敵国は、未だ辺境域に蟠踞し、その余喘を保つ。さらに、我が帝国領内においても、民主共和主義との過てる思想を盲信し、社会の秩序と安寧を乱して、我が忠良なる帝国臣民を濫りに殺傷する逆賊が残存している。
清濁併せ呑む度量を有し、慈悲深き先帝陛下は、彼らが迷妄から覚め、正道に立ち戻る事を念願しておられたが、頑迷固陋なる彼らは、自らの愚昧なる事を悟らず、依然として我が帝国への帰順を肯んじ得ない。もはや必要なものは説得ではない、彼らにはそれを理解する能力も意思も無い、ただ力のみが彼らの蒙を啓かせるのだ。
帝国皇帝たる余ジギスムントは、茲に宣言する。我が帝国の統治を受け入れず、社会の秩序と安寧を乱す逆賊どもに対し、膺懲の鉄槌を下す事を。彼らが再び立つ能わざるまで、我が勇猛果敢なる帝国軍の進撃は止まぬであろう。
卿ら文武百官に申し渡す。全人類社会が我が帝国の統治下に置かれ、完全なる秩序と安寧を回復するその時まで、粉骨砕身、鞠躬尽力し、各々の職責を尽くせ。
また、官職を持たぬ領主達には、特に申し渡す。大帝遺訓が定める通り、逆賊の討滅は卿ら貴族の責務でもある。兵を持てる者は兵を、財を持てる者は財を、各々その持てる物を拠出して、帝国が遂行する逆賊討滅に協力せよ。
そして、逆賊討滅の暁には、彼らが有していた富は、卿らへの恩賞として与える事を茲に誓約する。信賞必罰は国家の拠って立つ所である。その功績の多寡により、卿らには相応しき報償が与えられるであろう。
また、逆賊の支配下にあった人民は、我が帝国に従わぬとの一点において、逆賊の輩であると言わざるを得ないが、凶悪なる逆賊に威服されて、やむを得ずその支配下に甘んじていたとするならば、それは情状を酌量し、寛恕すべきであると、余は判断している。
よって、彼ら逆賊の支配下にいた人民は、濫りに殺害する事勿れ。祖法に従い、我が帝国の農奴とし、生業を与え、良民としての生活を学ばせ、時至れば我が帝国の国民として遇し、その生命を全うさせる事こそ、亡き先帝陛下の大御心にも叶うものであろう。
再度、卿らに申し渡す。濫りに人民を殺害する事勿れと。愛民の心を持ち、逆賊の支配下に呻吟する人民は、我が帝国に移住せしめ、その生命を全うさせよ。
茲に、銀河帝国皇帝たる余ジギスムントが特に命じるものなり。卿ら拳拳服膺し、決して余の意思に違う事勿れ。