【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第2巻「拡大期~強堅帝ジギスムント1世」   作:旧王朝史編纂所教授

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第5章 拡大戦役①~マザンダラーンの叛乱事件
第1節 帝国暦30~40年代の共和主義勢力


 ジギスムント帝即位直後に勃発した、帝国領内の共和主義者による叛乱事件。後世、共和主義勢力が一時的に支配権を奪取した惑星の名に因んで「マザンダラーンの叛乱事件(同盟では革命運動)」と称される一連の事件だが、その前提として、帝国暦30~40年代の共和主義勢力の状況について概説したい。

 

 平定戦役の進展によって、帝国領内の共和主義勢力はほぼ根絶されたかに見えたが、表立っては反抗していないけれども、内心、連邦体制への回帰を望む者達は少なくなかった。彼らの多くは、連邦末期、企業経営等を通じて相応の利益を上げていた中小の企業家や事業主達で、帝国成立後も、今まで培ってきた人脈やノウハウを活かし、名目上は帝国政府、或いは経済活動権を有する貴族家の傘下に入りつつ、実際は半独立の事業体として、経済共同体所属の企業と交易等を行い、依然として利益を上げる事が出来ていた。

 

 しかし、帝国暦32年、ルドルフは経済共同体と締結していた協約を破棄。共同体所属の企業に対し、今までは許可していた帝国領内での経済活動を全面的に禁止すると共に、自国への即時撤退を通告した。また、共同体所属の企業と取引していた帝国所属の企業には、他国籍企業との取引は厳禁、もし取引を行った場合は大逆罪と見なす事、そして、自主経営権を放棄し、政府管轄の国営企業の傘下に入るか、または特定の貴族家に属する公営企業になるか、改めて二者択一を迫った。

 

 ただ、この時点では、数多の企業を傘下に収められるほどの経済力を持つ貴族家は少なく、勢い、半独立系の事業主たちの大多数は、国営企業の傘下に入る事を余儀なくされ、共同体撤退以前と比較すれば、収入は急減した。中には、事業継続が困難になり、国営企業の社員とならざるを得なかった者、或いは税金滞納等の理由で農奴に転落する者も少なくなかった。

 

 それは、経済活動で利益を上げる事を嫌悪し、金を「忌まわしき怪物」と見なし、統制経済を大々的に推進したルドルフには当然の政策であったが、かつての生活を忘れられず、帝国政府の方針に不平不満を抱く元企業家は一定数、存在した。

 

 彼らは共同体、及び同国と同盟関係にあったシリウスの住民と日常的に接していた事もあり、自由経済を容認する共和主義国家にシンパシーを感じる傾向が強く、帝国領内の共和主義勢力に対して、密かな資金援助を行う者、帝国から共同体やシリウスへの亡命を斡旋する者、また帝国領内の共和主義勢力間のメッセンジャーを務める者などがいたと言われる。彼らの隠れた支援を受け、帝国暦30年代後半に至っても、帝国領内の共和主義勢力は、決して根絶されてはいなかった。

 

 しかし、彼らの弱点は、個々の共和主義勢力をまとめ上げ、その力を結集させられる指導者が不在だった事。個々の勢力は、シリウスや共同体、攻守連合などの敵諸国と通謀し、帝国政府への反感を募らせる元企業家や、一部の領主貴族の密かな支援も受け、各所で反帝国活動を行っていたが、所詮、惑星レベルの騒乱でしかなく、現地総督府所属の警備部隊、そして社会秩序維持局の治安維持部隊で十分に対応可能だった。

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