【概説】ゴールデンバウム朝銀河帝国史:第2巻「拡大期~強堅帝ジギスムント1世」   作:旧王朝史編纂所教授

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第5節 総督エヌマエル・フォン・ヘッセン

 惑星マザンダラーンでの変事が帝都オーディンに報告された後、新帝ジギスムントの決断と行動は迅速だった。まず、帝国宰相に就任したノイエ・シュタウフェン公に相談し、総督ヘッセンの罪は問わない事、惑星マザンダラーンでの騒擾が他の星系に波及する前に、ヘッセンを責任者として奪還作戦を敢行する事を決定すると、ヘッセンを新無憂宮に召喚した。

 

 今回の失態で、極刑を覚悟していたヘッセンだったが、ジギスムントは本人と群臣を前にして「此度の変事において、総督ヘッセンに罪は無い。彼は先帝陛下、そして嘗ての上官たる故ファーレンハイト伯爵を敬慕すること一方ならず、その忠節を嘉し、特に葬儀への参列を許したのは余である。故に、変事の責任は全て余にある。余の不明で臣民の生存と安寧を毀損してしまった事、深く責任を感じている。だが同時に、先帝陛下崩御との大事に際し、殊更に騒擾を起こした、皇恩を理解せぬ不逞の輩に対して、激しい憤りを覚えてもいる。よって、総督ヘッセンに対し、特に命じる。速やかに帝都オーディンを出立し、惑星マザンダラーンを不当に占拠する不逞の輩を討滅して、帝国の一隅を平穏ならしめよ!」と下命した。

 

 皇帝ジギスムントの温情に感激したヘッセンは、ノイエ・シュタウフェン公の指示で編成された遠征軍―標準型戦艦10隻と巡航艦100隻で構成された軽騎兵艦隊、及び中央地上軍所属の10個師団―を率いて、通常航行なら半月はかかる航路を10日弱で踏破、アルドワン達が事態を認識する前に、惑星上に艦隊を展開、制宙権を確保すると、即時の無条件降伏を勧告した。

 

 だが、皇帝から許されたとは言え、今回の失態を深く恥じていたヘッセンは、そもそも降伏など許す気は無かったようだ。降伏勧告と同時に、特殊部隊を密かに惑星上に降下させると、総督府の状況を探らせた。その防衛体制が決して十分ではない事を看破すると、衛星軌道上から、食料生産プラントや発電施設等の重要設備を威嚇爆撃、アルドワン達の注意を引きつけ、その隙に特殊部隊を総督府に突入、占拠させてしまった。

 この時、やはり自分達の失態を恥じ、また総督の温情に預かりたい一心で、先に降伏した総督府の職員や兵士達が内応、率先してアルドワン達のグループを攻撃、殺害していったと云う。

 

 総督府を回復したヘッセンは、一切の仮借無く、共和主義勢力の逮捕と処刑に乗り出した。また、惑星に暮らす国民に対しては、今回の変事は総督府の管理不行届の結果であり、決して国民の責任では無い事、故に、国民の罪は一切問わない事、しかし、叛乱を起こした共和主義勢力の所在を知りつつ、総督府に通報しなかった場合は、劣悪遺伝子排除法の明確な違反だとして、即時逮捕する事を布告。国民からの情報提供を促した。

 

 もともと、惑星住民から決して好意的に見られていなかったアルドワン達のグループは、住民達の自己保身も手伝って、次々と潜伏場所を密告されていった。また、宇宙港も無期限閉鎖されて、総督府と軍に所属する宇宙船を除き、全ての宇宙船の動力部を破壊するなど、徹底した逃亡防止策を講じた結果、僅か1ヶ月の間に、首謀者アルドワン以下、ほぼ全ての構成員が銃殺、または逮捕されている。

 

 なお、アルドワンからの急報を受けたシリウス政府は、後述する攻守連合と同様、自国の存立を帝国に認めさせるため、一度は大規模な勝利が必要だとの考えから、同国艦隊のほぼ全軍を率いて帝国領に侵攻しようとしたが、アルフヘイム軍管区所属の地方艦隊が迎撃、一蹴している。後年、帝国政府が叛乱事件の黒幕はシリウス政府と断定した根拠の1つは、この時の国境侵犯があった。

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